変形性膝関節症の運動療法|痛みがあっても進めるコツ

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変形性膝関節症の運動療法は「痛みをゼロにしてから」ではなく調整しながら進めます

臨床の型を整えたい方へ

評価や再評価が回りやすい職場の探し方は、PT 向けの総合ガイドにまとめています。

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変形性膝関節症の運動療法で大切なのは、痛みがあるから止めることではなく、症状に合わせて負荷を調整しながら続けることです。膝 OA では、筋力トレーニングだけでなく、有酸素運動や日常動作に近い練習を組み合わせることで、痛みや生活機能の改善につなげやすくなります。

迷いやすいのは「何を優先して始めるか」と「痛みが出た日にどう調整するか」です。この記事では、外来や通所で回しやすい形に絞って、筋トレ・有酸素運動・立ち上がり練習・再評価の流れを整理します。

まず決めること|何を目標に運動するか

膝 OA の運動療法は、同じ「膝の痛み」でも目標が違うと組み方が変わります。最初に、痛みを軽くしたいのか、立ち上がりを楽にしたいのか、階段を改善したいのか、歩行量を増やしたいのかを言語化すると、種目の優先順位が決めやすくなります。

ここが曖昧だと、筋トレ・歩行練習・生活指導が並ぶだけの記事になり、再評価も散らばります。まずは「主訴 1 つ」「日常場面 1 つ」「確認する評価 1 つ」を固定すると、臨床でぶれにくくなります。

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膝 OA の目標別にみた最初の優先順位
主な困りごと 優先しやすい運動 見たい変化 再評価の例
立ち上がりがつらい 膝伸展系+立ち上がり反復 反復のしやすさ、代償の減少 5xSTS
階段がつらい 股関節外転・伸展+段差課題 片脚支持の安定性、降段の恐怖感 KOOS / WOMAC + 動作観察
歩くと痛い 歩行量の調整+有酸素運動 歩行後の症状、翌日の残り方 WOMAC / KOOS
全体的に体力が落ちた 低負荷筋トレ+有酸素運動 活動量、疲労感、継続率 主観指標 1 つ+活動記録

最初に組む運動メニュー|筋トレ・有酸素運動・立ち上がり練習

最初のメニューは増やしすぎない方が続きます。膝 OA では、① 大腿四頭筋を中心にした筋力トレーニング、② 股関節外転・伸展の補助、③ 立ち上がり反復、④ 歩行や自転車などの有酸素運動、の 4 本柱で組むと整理しやすいです。

特に外来では、膝だけを見ていると階段や方向転換の困りごとが残りやすくなります。膝伸展筋の強化に加えて、骨盤の安定性や片脚支持を支える股関節周囲筋、有酸素運動による活動量の底上げを一緒に考えると、日常生活につながりやすくなります。

膝 OA の運動療法 4 本柱を整理した図版
膝 OA の運動療法は、筋力トレーニング・股関節周囲筋・立ち上がり練習・有酸素運動を軸に、痛みの反応をみながら調整して進めます。

大腿四頭筋を中心にした筋力トレーニング

最初の主役は、大腿四頭筋を狙った運動です。膝伸展方向の負荷は、椅子座位での膝伸展、ミニスクワット、段差昇降の前段階として入れやすく、立ち上がりや階段に直結しやすいのが利点です。

ただし、深い屈曲角度や反復量を一気に増やすと痛みが出やすい時期もあります。最初は浅い可動域、ゆっくりした速度、少ない回数から始め、フォームが安定してから回数や可動域を広げる方が安全です。

股関節外転・伸展を足す理由

膝 OA では、膝周囲だけでなく股関節周囲筋の弱さや使いにくさが、片脚支持や階段での不安定さにつながることがあります。とくに中殿筋や大殿筋は、骨盤の安定や体幹のぐらつき抑制に関わるため、早めに補助として入れる価値があります。

側臥位での外転、立位での外転保持、ヒップヒンジのような低負荷課題でも十分に始められます。膝の痛みが強い日ほど、膝関節への局所負荷を下げつつ股関節側で支える発想が役立ちます。

立ち上がり反復を入れる理由

立ち上がりは、膝 OA の患者さんが日常で何度も繰り返す動作です。筋トレだけで終わらず、実際の動作課題として立ち上がり反復を入れると、出力の使い方と日常生活の橋渡しがしやすくなります。

椅子の高さ、手の使用、足幅を調整すれば、負荷を細かく変えられます。立ち上がりが重いときは椅子を高くし、手すりや机支持を使い、反対に余裕が出てきたら高さを下げたり支持を減らしたりして進めます。

歩行・自転車などの有酸素運動の使い方

膝 OA の運動療法は筋トレだけで完結しません。有酸素運動を入れると、活動量の回復や全身持久力の底上げにつながり、日常生活で「動ける時間」を増やしやすくなります。

歩行で痛みが出やすい場合は、歩行時間を短くして回数を分ける、自転車エルゴメーターに置き換える、平地中心にするなどの調整が使えます。大切なのは、運動後の反応を見ながら続けられる形にすることです。

負荷設定の考え方|痛みがある日の調整と進め方

膝 OA で詰まりやすいのは、「痛みが出たから全部中止」と「我慢してそのまま続ける」の両極端です。実際には、その日の症状と翌日の残り方をみて、回数・可動域・支持物・種目を調整しながら続ける方が現実的です。

特に初期は、負荷そのものより「調整できる設計」が重要です。痛みが少ない日は少し進め、反応が強い日は一段戻せるようにしておくと、運動療法が止まりにくくなります。

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膝 OA で使いやすい負荷調整の基本
困りごと よくある原因 まず下げるもの 代わりに残すもの
その場で痛みが増える 可動域が深い、反復が多い 回数、可動域 低負荷の反復
翌日に残る 総量が多い、休息不足 セット数、頻度 短時間の継続
フォームが崩れる 難度が高い、支持が少ない 難度、支持なし条件 支持ありでの正確な動き
怖くて続かない 成功体験が少ない 目標の高さ 達成しやすい課題

現場の詰まりどころ|痛みが増えた、続かない、階段だけ悪い

膝 OA の運動療法は、正しい種目を選んでも続かなければ効果につながりません。臨床では「痛みが怖い」「忙しくて自宅でやれない」「階段だけ残る」といった詰まりどころを先に想定しておくと、離脱を減らしやすくなります。

ここでは、現場で止まりやすい場面を「やめる理由」ではなく「調整するポイント」として整理します。よくある失敗を先回りしておくと、患者さんへの説明も短く分かりやすくなります。

痛みが増えたとき

痛みが増えた日は、全部を止める前に、深さ・回数・速度・支持物を見直します。たとえばミニスクワットで痛みが出るなら、椅子からの立ち上がり反復へ置き換えるだけでも、運動量を保ちやすくなります。

「今日は 1 段戻す」という考え方を共有しておくと、患者さんが自己調整しやすくなります。反応の強い日ほど、ゼロにするより継続可能な形へ変換することが大切です。

自宅で続かないとき

自宅で続かない原因は、意欲不足よりもメニュー過多であることが少なくありません。最初から 5 種目以上を渡すより、「毎日やる 1 つ」「余裕がある日に足す 1 つ」のように役割を分けた方が継続しやすくなります。

立ち上がり 5 回、歩行 5 分、外転保持 10 秒など、短く具体的な単位にすると、忙しい日でも実行しやすくなります。続けられる設計は、負荷設定そのものと同じくらい重要です。

階段だけつらいとき

階段が残る場合は、筋力だけでなく片脚支持や体幹の制御も見直します。降段でつらいなら、膝の深い屈曲角度と遠心性の制御が詰まりやすいので、段差を低くした練習や支持物ありの練習から戻すと進めやすくなります。

このとき、単に回数を増やすだけでは改善しにくいことがあります。骨盤の左右動揺、体幹の倒れ込み、足部の置き方まで含めて動作を見る視点が必要です。

再評価のやり方|WOMAC / KOOS と 5xSTS / TUG をどう戻すか

再評価は、主観指標 1 つと客観指標 1 つを固定すると回しやすくなります。膝 OA では、痛み・症状・生活影響をみるなら WOMAC または KOOS、立ち上がりを含む機能変化をみるなら 5xSTS や TUG を組み合わせると整理しやすいです。

評価項目の組み方を先に整理したい場合は、膝 OA の外来評価【KOOS・WOMAC・TUG の使い分け】 もあわせて確認すると、初回評価から再評価までの流れをそろえやすくなります。

再評価では、点数だけでなく「何ができるようになったか」を短く残すことが重要です。たとえば、立ち上がり時の手支持が減った、歩行後の痛みが軽くなった、階段降段の恐怖感が減った、といった変化は、運動療法の価値を患者さんと共有しやすくします。

間隔は、急に細かく測りすぎるより、負荷を変えた後に反応が見える程度のまとまりで戻す方が実務的です。尺度・条件・記録方法を固定し、変化を同じ言葉で追うことを優先します。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

変形性膝関節症は痛みがあっても運動していいですか?

はい。大切なのは、痛みがあるから完全に止めることではなく、負荷を調整しながら続けることです。深さ・回数・速度・支持物を調整し、翌日に強く残る反応がないかを見ながら進めます。

膝 OA では筋トレと有酸素運動のどちらを優先しますか?

基本は両方です。立ち上がりや階段の困りごとが強いなら筋トレと動作練習を優先し、活動量低下や体力低下が目立つなら有酸素運動も早めに入れます。主訴と生活場面に合わせて比重を変えると整理しやすくなります。

階段だけ痛いときは何を見直せばいいですか?

膝伸展筋力だけでなく、股関節外転・伸展、片脚支持、体幹の倒れ込み、降段時の制御を見直します。段差を下げる、支持物を使う、降段の前段階からやり直す、という戻し方が実務では使いやすいです。

再評価はどのくらいの間隔で行えばいいですか?

大切なのは間隔そのものより、同じ条件で戻せることです。主観指標 1 つと客観指標 1 つを固定し、負荷を調整したあとに変化が見える単位で再評価すると、臨床で回しやすくなります。

次の一手

まずは、主訴に合わせて「主観 1 つ+客観 1 つ」を決め、このページの 4 本柱から最初の 2 種目だけ始めてみてください。やることを増やすより、続けられる型を作る方が先です。

続けて整理したい方は、次の 3 本を読むと評価から介入までつながります。

環境を整える視点も一緒に見直したい方は、面談準備チェック&職場評価シート も活用してみてください。


参考文献

  1. National Institute for Health and Care Excellence. Osteoarthritis in over 16s: diagnosis and management. NICE guideline NG226. 2022. Available from: https://www.nice.org.uk/guidance/ng226/chapter/Recommendations
  2. American Academy of Orthopaedic Surgeons. Management of Osteoarthritis of the Knee (Non-Arthroplasty). Clinical Practice Guideline. 2021. Available from: https://www.aaos.org/globalassets/quality-and-practice-resources/osteoarthritis-of-the-knee/oak3cpg.pdf
  3. Holden MA, Metcalf B, Lawford BJ, et al. Recommendations for the delivery of therapeutic exercise for people with knee and/or hip osteoarthritis. Osteoarthritis Cartilage. 2023;31(3):386-396. DOI: 10.1016/j.joca.2022.10.009
  4. Kolasinski SL, Neogi T, Hochberg MC, et al. 2019 American College of Rheumatology/Arthritis Foundation guideline for the management of osteoarthritis of the hand, hip, and knee. Arthritis Rheumatol. 2020;72(2):220-233. DOI: 10.1002/art.41142
  5. Bannuru RR, Osani MC, Vaysbrot EE, et al. OARSI guidelines for the non-surgical management of knee, hip, and polyarticular osteoarthritis. Osteoarthritis Cartilage. 2019;27(11):1578-1589. DOI: 10.1016/j.joca.2019.06.011

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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