リハビリ実施時間は「予定単位」ではなく実際の実施内容で記録する
リハビリ実施時間は、予定表の単位数ではなく、患者さんへ実際に提供した時間と内容で整理します。検査で中断した、疼痛で短縮した、拒否で一部のみ実施した、移動だけで終わったなど、予定どおり進まない日は記録の整合性が特に重要です。この記事では、PT・OT・ST向けに、実施時間の考え方、短縮・中断時の書き方、監査で確認されやすいポイントを実務目線で整理します。
先に全体像を確認したい方へ
この記事は「実施時間の記録」に絞って解説します。算定できない日や拒否時の記録を確認したい場合は、先に関連する総論記事を確認すると整理しやすくなります。
実施時間で迷いやすいケース早見表
実施時間で迷う場面では、「何分関わったか」ではなく「個別療法として説明できる時間か」を確認します。直接訓練していない待機時間や、単なる移動・説明の時間を安易に実施時間へ含めないことが重要です。
| 場面 | 考え方 | 記録ポイント |
|---|---|---|
| 検査で中断 | 待機時間は訓練時間と分ける | 実施時間、中断理由、再開可否 |
| 途中で拒否 | 実施分と拒否後の対応を分ける | 実施内容、拒否理由、再提案予定 |
| 疼痛で短縮 | 安全判断と実施内容を残す | 症状、対応、共有先、次回方針 |
| 移動のみ | 訓練目的があるか確認する | 歩行練習・移乗練習としての観察内容 |
| 説明のみ | 個別療法の実施と混同しない | 説明内容、反応、次回の提案 |
検査・診察で中断した場合は実施分と中断理由を分ける
検査・診察・処置・採血・画像検査などでリハビリが中断した場合は、実際に訓練した時間と中断理由を分けて記録します。検査待ち、搬送待ち、医師待ちの時間を訓練時間として扱わないよう注意します。
臨床では、予定では2単位でも、検査呼び出しにより10分で終了することがあります。この場合は「予定2単位」ではなく、「何時から何時まで、何を実施し、なぜ終了したか」を残すと後から説明しやすくなります。
疼痛・発熱・呼吸苦で短縮した場合は安全判断も残す
疼痛、発熱、呼吸苦、血圧異常、SpO2低下などでリハビリを短縮した場合は、実施時間だけでなく、安全判断と対応を残します。「途中終了」だけでは、何を実施したのか、なぜ短縮したのかが分かりません。
たとえば、歩行練習中に膝痛が増悪して終了した場合は、歩行距離、実施時間、疼痛部位、症状変化、看護師への共有、次回の負荷調整まで短く記録します。算定判断とは別に、リスク管理の記録としても重要です。
移動・待機・説明時間は訓練時間と区別する

移動、待機、説明、記録、計画書作成などの時間は、患者さんに直接訓練を実施した時間と区別して考えます。特に、検査待ちや処置待ちの時間をリハビリ実施時間に含めると、実施内容との整合性が取りにくくなります。
一方で、病室から訓練室までの移動が歩行練習や移乗練習として計画的に行われている場合は、単なる移動介助とは意味が異なります。その場合は「移動した」ではなく、「歩行練習として距離・介助量・ふらつき・休憩の有無を確認した」と記録します。
| 場面 | 扱い方 | 記録の工夫 |
|---|---|---|
| 検査待ち | 訓練時間とは分ける | 中断理由として記録する |
| 病棟内移動 | 訓練目的があるか確認する | 歩行距離、介助量、観察点を残す |
| 説明のみ | 個別療法の実施と混同しない | 説明内容と反応を経過記録に残す |
| 休憩 | 訓練時間との区別が必要 | 休憩前後の実施内容を分ける |
開始時刻・終了時刻は実施内容とセットで残す
開始時刻・終了時刻は、実施時間の根拠になります。ただし、時刻だけが残っていても、内容が曖昧では後から確認しにくくなります。特に短縮・中断・一部実施の日は、時刻と内容をセットで残すことが大切です。
毎日同じ時刻、同じ内容、同じ定型文が続く記録は、実際の介入内容が伝わりにくくなります。電子カルテの定型文を使う場合も、検査中断、疼痛、拒否、体調変化があった日は個別に修正します。
NG記録と改善例
実施時間の記録で避けたいのは、「20分実施」「中止」「短縮」など、時間や結果だけで終わる書き方です。実施した内容、中断・短縮の理由、対応、次回方針が分かるように残します。
| NG記録 | 改善例 | 改善ポイント |
|---|---|---|
| 20分実施 | 9:00〜9:20、端座位保持と立位練習を実施。 | 時刻と内容を明確にする |
| 検査で中止 | 9:00〜9:10、歩行練習後にCT呼び出しあり終了。 | 実施分と中断理由を分ける |
| 疼痛で短縮 | 立位練習中に右膝痛増悪あり10分で終了。看護師へ共有。 | 症状・対応・共有先を残す |
| 説明のみ | 本日は不安訴え強く訓練見送り。離床目的を説明し午後再提案予定。 | 訓練実施と説明を分ける |
| 移動実施 | 病室〜訓練室間を歩行練習として実施。見守りで20m、ふらつきなし。 | 移動目的と評価内容を明確にする |
監査では時刻・内容・単位数・患者状態の整合性が見られやすい
リハビリ実施時間の記録では、開始時刻・終了時刻、実施内容、単位数、患者状態の整合性が確認されやすくなります。予定どおりの単位数で記録していても、検査・処置・拒否・体調不良の経過と矛盾すると説明が難しくなります。
療養病棟では、検査や処置、体調変化、拒否が重なり、予定どおりに進まない日が少なくありません。そのため、通常どおり実施できた日よりも、短縮・中断・一部実施の日ほど具体的に残す意識が必要です。
| 確認点 | 見られやすい理由 | 対策 |
|---|---|---|
| 開始・終了時刻 | 実施時間の根拠になる | 短縮・中断日は特に明確にする |
| 実施内容 | 時間との整合性を確認される | 評価・訓練の要点を残す |
| 中断理由 | 予定単位との差を説明するため | 検査・疼痛・拒否などを具体化する |
| 定型文の連続 | 実態が伝わりにくい | 変化があった日は個別化する |
現場でよくある失敗は予定単位のまま記録すること
よくある失敗は、予定単位をそのまま記録してしまうことです。予定では2単位でも、検査や体調不良で途中終了した場合は、実際に実施した時間と内容に合わせて記録を調整します。
もう1つの失敗は、待機・移動・説明・記録の時間を訓練時間と混同することです。訓練として説明できる時間と、周辺業務の時間を分けると、記録の整合性が高まります。
迷ったときは5項目で記録を整理する
実施時間で迷ったときは、予定単位から考えるのではなく、実際に行った内容を5項目で確認します。確認順を決めておくと、短縮・中断・一部実施の日でも記録がぶれにくくなります。
| 順番 | 確認すること | 記録に入れる内容 |
|---|---|---|
| 1 | 開始・終了時刻 | 実際に訓練した時間 |
| 2 | 実施内容 | 評価・訓練の要点 |
| 3 | 中断・短縮理由 | 検査、疼痛、拒否、体調変化など |
| 4 | 対応・共有 | 報告先、再提案、負荷量調整 |
| 5 | 次回方針 | 再開条件、開始姿勢、確認項目 |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
検査待ちの時間はリハビリ実施時間に含めますか?
原則として、患者さんへ直接訓練を実施していない待機時間は訓練時間と分けて考えます。検査で中断した場合は、実施した時間と中断理由を分けて記録します。
移動時間は実施時間に含めてよいですか?
単なる移動介助なのか、歩行練習や移乗練習として評価・訓練しているのかで意味が変わります。訓練として扱う場合は、目的、介助量、距離、観察内容を記録します。
説明だけで終わった場合はどう記録しますか?
説明のみで個別療法を実施していない場合は、実施記録と混同しないようにします。説明内容、患者さんの反応、次回の再提案予定を経過記録として残します。
途中で疼痛が出て短縮した場合はどうしますか?
実施した時間と内容、疼痛が出た場面、対応、共有先、次回方針を記録します。安全判断と算定判断を分けて考え、必要に応じて医師や看護師へ共有します。
開始時刻・終了時刻は毎回必要ですか?
リハビリ実施時は、機能訓練の内容の要点と実施時刻を診療録等へ記載することが求められています。特に短縮・中断・一部実施の日は、時刻と内容の整合性が重要です。
次の一手
リハビリ実施時間の記録は、予定単位ではなく「実際に行った時間・内容」で整理します。検査中断、疼痛による短縮、説明のみ、移動のみなど、迷いやすい場面ほど、時刻・内容・理由・次回方針を短く残すことが大切です。
関連して、拒否で実施できなかった日の記録は リハビリ拒否時の記録記事、監査で見られやすい記録全体は リハ実施計画書の監査対策記事 をあわせて確認してください。
参考文献
- 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定について. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省. 令和6年度診療報酬改定について. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html
- 厚生労働省. 第7部 リハビリテーション. https://www.mhlw.go.jp/topics/2008/03/dl/tp0305-1d_0014.pdf
- 東北厚生局. 保険診療と個別指導(医科)第8回. 2025. https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tohoku/000412592.pdf
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

