誤嚥性肺炎患者の食事前評価は PT も重要
誤嚥性肺炎患者の食事前評価では、「飲み込めるか」だけでなく、「食事に耐えられる身体状態か」を確認することが重要です。PT は呼吸、座位姿勢、疲労、離床後反応をみることで、食事中に状態が崩れやすい患者を早期に拾いやすくなります。この記事では、食事前に PT が確認したいポイントと、食前離床を控える判断、ST・看護師へ共有したい記録例を整理します。
食事前に PT が確認したい 6 項目
食事前に PT が確認したいのは、嚥下機能そのものではなく、食事に向かえる身体状態です。
誤嚥性肺炎患者では、食前の呼吸促迫、痰増加、座位崩れ、疲労が食事中のリスクにつながることがあります。特に療養病棟では、昼食前にリハ・トイレ・移乗が重なると、食事開始時点ですでに消耗している患者もいます。
| 項目 | 確認内容 | PT がみる意味 |
|---|---|---|
| 呼吸状態 | 呼吸数、SpO2、努力呼吸 | 食事中の呼吸負荷増加を予測します。 |
| 痰・咳嗽 | 痰量、湿性嗄声、咳の強さ | 気道クリアランス低下を疑う材料になります。 |
| 座位姿勢 | 骨盤後傾、頸部位置、体幹保持 | 安全な食事姿勢を維持できるか確認します。 |
| 疲労 | 食前疲労、歩行後疲労、会話量低下 | 食事へ耐えられる余力をみます。 |
| 離床耐性 | 起立時症状、座位持続時間、回復時間 | 食前離床が有効か、逆に消耗になるか判断します。 |
| 覚醒 | 傾眠、集中低下、反応性 | 食事中の注意低下リスクを整理します。 |
SpO2 だけで安全判断しない
SpO2 が保たれていても、食事に安全とは限りません。
誤嚥性肺炎患者では、呼吸数増加、湿性嗄声、痰増加、咳嗽力低下、強い疲労が先に出ることがあります。SpO2 が正常でも、歩行後に会話量が減る、呼吸回復が遅い、座位保持が崩れる場合は、食前の負荷量を見直します。
| 所見 | 注意したい変化 | 対応の考え方 |
|---|---|---|
| 呼吸数 | 安静時より明らかに増える | 食前リハを短縮し、回復を待ちます。 |
| 湿性嗄声 | 食前または離床後に増える | ST・看護師へ共有し、食事場面の確認につなげます。 |
| 痰 | 痰量増加、喀出困難 | 食事前の排痰状況を確認します。 |
| 疲労 | 会話量低下、表情低下、座位崩れ | 食事まで含めた余力を優先します。 |
座位姿勢と呼吸予備力をみる
食事前は、姿勢保持と呼吸予備力をセットで確認します。
骨盤後傾、頸部伸展、体幹側屈が強い患者では、食事中に姿勢が崩れやすくなります。また、呼吸数増加や努力呼吸がある患者では、食事そのものが負荷になり、途中で疲労が強くなることがあります。
PT は、嚥下の詳細判定を単独で行うのではなく、「この姿勢と呼吸状態で食事時間を過ごせそうか」を整理してチームへ共有します。
食前離床はいつ有効で、いつ控えるか
食前離床は、覚醒向上や座位姿勢の改善に役立つ場合があります。
一方で、長い歩行練習、立位反復、トイレ動作練習を食前に行いすぎると、食事開始時点で疲労や呼吸負荷が強くなることがあります。食前では「離床できたか」よりも、「食事へ向かう余力が残っているか」を優先します。
| 場面 | 行いやすい対応 | 控えたい対応 |
|---|---|---|
| 覚醒が低い | 短時間離床、端座位、声かけ | 長時間歩行で疲労させる |
| 座位が崩れる | 座位調整、クッション調整 | 姿勢不安定のまま食事へ進む |
| 呼吸促迫がある | 休息、呼吸確認、負荷量調整 | 食前に立位反復を増やす |
| 疲労が強い | リハ内容を短縮し食事を優先 | 食事直前まで練習を続ける |
誤嚥性肺炎患者の食事前 PT 確認フロー
食事前の確認は、呼吸、姿勢、疲労、食前離床、共有の順に整理すると、判断の抜けを減らしやすくなります。

食事前に PT が確認したい 4 項目
食事前評価では、呼吸・姿勢・疲労・共有の 4 項目で整理すると、チーム内で判断をそろえやすくなります。

現場の詰まりどころ:食前に疲れさせてしまう
現場で多い失敗は、食前にリハを頑張らせすぎることです。
歩行練習、トイレ練習、ADL 練習を長く行ったあと、そのまま昼食へ進むと、食事中に疲労が強くなる場合があります。誤嚥性肺炎患者では、疲労によって咳嗽力低下、姿勢崩れ、食事量低下が起こりやすくなります。
| よくある場面 | 起こりやすい問題 | 見直しポイント |
|---|---|---|
| 長い歩行練習 | 食前疲労、呼吸促迫 | 食前は短時間離床へ調整します。 |
| 立位反復を繰り返す | 姿勢保持低下 | 食事前は座位安定を優先します。 |
| SpO2 のみ確認 | 疲労や痰増加を見逃す | 呼吸数、痰、咳嗽も確認します。 |
| 離床を優先しすぎる | 食事量低下 | 食事まで含めた余力を確認します。 |
ST・看護師と共有したい情報
PT が共有したいのは、「嚥下できる・できない」の単独判断ではなく、呼吸・疲労・姿勢・離床後反応です。
例えば、「歩行後に湿性嗄声が増える」「座位保持が崩れる」「食後に強い疲労が残る」といった情報は、看護師や ST が食事姿勢、食事時間、食形態、見守り方法を検討する際の参考になります。嚥下スクリーニングの考え方を確認したい場合は、RSST の評価方法 も参考になります。
記録例:食事前評価を踏まえた PT 記載
記録では、呼吸・疲労・姿勢をセットで残すと、食事前後の変化を共有しやすくなります。
記録例
食前に軽度湿性嗄声と呼吸数増加あり。歩行練習後に疲労を認めたため、本日は短時間離床と座位調整を中心に実施。食事前後の状態変化を看護師・STへ共有した。
PDF:食事前 PT 確認シート
誤嚥性肺炎患者で、食事前に PT が確認したい呼吸・姿勢・疲労・共有項目を整理したチェックシートです。食前離床前の確認、若手教育、カンファレンス整理に使いやすい内容にしています。
中身をプレビューする
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
SpO2 が正常なら食事は安全ですか?
SpO2 が正常でも、呼吸数増加、湿性嗄声、痰増加、疲労が強い場合は注意が必要です。SpO2 だけで安全判断しないことが重要です。
食前離床は必ず行った方がよいですか?
一律ではありません。覚醒向上や姿勢改善に有効な場合もありますが、疲労や呼吸負荷を強める場合は、短時間離床や座位調整に変更します。
PT が嚥下評価まで行う必要がありますか?
PT は、呼吸、姿勢、疲労、離床耐性を中心に確認します。嚥下機能そのものの詳細評価は ST と連携します。
食前リハで注意したいことは何ですか?
長い歩行練習や立位反復で疲労を強めると、食事量低下や姿勢崩れにつながる場合があります。食事まで含めた余力を確認します。
看護師や ST へ何を共有すればよいですか?
食前後の呼吸変化、湿性嗄声、痰、咳嗽力、座位保持、疲労の残り方を共有します。「嚥下できるか」ではなく、食事場面で状態が崩れないかを伝える視点が重要です。
次の一手
誤嚥性肺炎患者では、食事前の呼吸・姿勢・疲労を整理すると、離床と食事を安全につなげやすくなります。続けて読むなら、低栄養患者の理学療法 を確認すると、食事量や栄養状態とのつながりを整理しやすくなります。
参考文献
- Maeda K, Akagi J. Treatment of sarcopenic dysphagia with rehabilitation and nutritional support: a comprehensive approach. J Acad Nutr Diet. 2016;116(4):573-577. doi:10.1016/j.jand.2015.09.016
- Cabre M, Serra-Prat M, Force L, et al. Oropharyngeal dysphagia is a risk factor for readmission for pneumonia in the very elderly persons: observational prospective study. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2014;69(3):330-337. doi:10.1093/gerona/glt099
- Attrill S, White S, Murray J, et al. Impact of oropharyngeal dysphagia on healthcare cost and length of stay in hospital: a systematic review. BMC Health Serv Res. 2018;18(1):594. doi:10.1186/s12913-018-3376-3
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

