リハビリが予定通り進まない日は珍しくない
リハビリの予定が思った通りに進まない日は、どの現場でもあります。
検査、処置、眠気、拒否、食事、入浴、急変、家族対応、病棟都合などが重なると、朝に立てたスケジュール通りに動くことは難しくなります。
特に若手の頃は、「自分の回し方が悪いのではないか」「もっと効率よく動かないといけないのではないか」と感じやすいかもしれません。
しかし実際には、予定が崩れること自体は珍しくありません。大切なのは、予定を一度も崩さないことではなく、崩れたあとにどう優先順位を立て直すかです。
この記事では、PT・OT・STが現場で予定変更に対応するときの考え方を、原因、NG行動、優先順位、病棟共有、残業化を防ぐ視点に分けて整理します。
リハ予定が崩れる主な原因
リハビリの予定が崩れる原因は、ひとつではありません。実際の現場では、患者さんの体調、病棟スケジュール、検査や処置、家族対応、急変対応、記録や書類など、複数の要因が重なって予定変更が起こります。
予定変更を「失敗」と捉えるよりも、崩れる前提でどう立て直すかを考える方が、実際の臨床には合いやすい場面があります。
検査・処置が重なる
CT、MRI、採血、内視鏡、処置、点滴対応などが重なると、予定していた時間に介入できなくなることがあります。
特に午前中は、検査待ち、処置待ち、病棟指示待ちが集中しやすく、スケジュールが崩れやすい時間帯です。「あとで戻ってきます」と言われても、実際には戻り時間が読みにくく、その後の予定まで連鎖的に崩れることもあります。
眠気・覚醒低下がある
高齢患者さんや急性期後の患者さんでは、眠気、倦怠感、血圧低下、覚醒低下などで、予定通りに介入できないことがあります。
食後、入浴後、薬剤変更後などは影響が出やすい場面です。この場合、無理に予定通り進めようとすると、転倒や過負荷につながることもあるため、安全面を優先した判断が必要になります。
食事・入浴と重なる
病棟によっては、食事介助、入浴、清拭、排泄介助などの時間とリハ予定が重なることがあります。
特に療養病棟や介助量の多い患者さんでは、病棟側の介助スケジュールとの調整が必要になり、リハ単独では時間を決めきれないことも少なくありません。介助終了待ちが長くなると、その後の予定にも影響しやすくなります。
拒否や気分変動がある
患者さんによっては、疲労感、不安、疼痛、気分変動などから、リハを拒否する日があります。
もちろん毎回すぐに見送るわけではありませんが、声かけだけで進めるのか、時間を空けるのか、内容を変更するのか、その日は見送るのかなど、状況に応じた判断が必要です。
急変・病棟対応が入る
発熱、血圧低下、SpO2低下、転倒、ナースコール対応など、予定外対応が入ることがあります。
こうした場面では、単位数や予定よりも、安全確認や病棟共有が優先されます。「予定通り回せなかった」ではなく、「必要な対応を優先した」と整理した方が、実際の臨床には近いこともあります。
予定が崩れた日にやりがちなNG行動
予定が崩れた日に、何とか全部回そうとして無理を重ねると、かえって残業や記録遅れにつながりやすくなります。
特に若手の頃は、「全部予定通りにやらないといけない」と思いやすいですが、実際には優先順位を立て直すことの方が重要になる場面もあります。
全部ひとりで抱え込む
予定変更が続くと、リスケ調整、病棟確認、記録、家族対応などをひとりで抱え込みやすくなります。
しかし、抱え込むほど判断が遅れ、結果的に全体が崩れやすくなることがあります。迷う場面ほど、早めに上司や同僚、病棟スタッフに共有することが大切です。
記録を最後に回す
「あとでまとめて書こう」とすると、予定変更が重なった日に一気に負担が増えます。
介入内容、反応、リスク、次回方針などは、時間が空くほど思い出しにくくなります。すべてを完成させなくても、最低限の骨子だけ先に残しておく方が、結果的に負担を減らしやすくなります。
昼休みや残業で埋めようとする
短期的には回っているように見えても、昼休みや残業で補い続けると、疲労、記録精度低下、判断ミス、モチベーション低下につながりやすくなります。
毎日残業しないと回らない状態が続いている場合は、個人の工夫だけでなく、部署全体の運用として考えた方がよいケースもあります。
優先順位を決めない
予定変更が起きた日に、「とにかく全部回る」ことだけを優先すると、重要度の高い患者さんへの対応が遅れることがあります。
実際には、急性変化、退院前、リスク管理、評価期限、家族指導など、優先して確認したいケースがあります。全部を同じ優先度で考えないことも大切です。
予定が崩れたときの優先順位
予定が崩れたときは、「誰から回るか」だけでなく、「何を今日中に確認すべきか」を考える必要があります。
優先順位は施設や病棟機能によって変わりますが、現場では次のような視点で整理すると判断しやすくなります。
| 優先度 | 確認すること | 具体例 |
|---|---|---|
| 高 | 急性変化・安全確認 | 発熱、血圧低下、転倒後、SpO2低下 |
| 高 | 退院前・家族指導 | 退院前評価、介助指導、福祉用具確認 |
| 中 | 評価期限・方針確認 | 初回評価、再評価、計画書更新前の確認 |
| 中 | リスク管理が必要な患者 | 起立性低血圧、転倒リスク、呼吸状態不安定 |
| 低〜中 | 後日調整できる内容 | 自主トレ確認、軽い環境調整、書類補足 |
大切なのは、「予定が崩れたから全部を急ぐ」のではなく、今日中に必要なことと、後日でも調整できることを分けることです。
予定変更時の代替行動を決めておく
予定が崩れたときに毎回ゼロから考えると、判断だけで時間を使ってしまいます。あらかじめ代替行動を決めておくと、崩れた日でも立て直しやすくなります。
短時間介入に切り替える
予定していた内容が難しい場合でも、短時間で安全確認、姿勢確認、疼痛確認、離床可否の確認だけ行えることがあります。
ただし、短時間介入に切り替える場合も、目的を明確にして行うことが大切です。「少しでも単位を取る」ではなく、「今日確認すべきことを絞る」という視点で考えます。
病棟内対応に切り替える
訓練室までの移動が難しい場合、病棟内での座位確認、ポジショニング、移乗動作確認、病棟ADL確認などに切り替える方法もあります。
特に療養病棟や重症患者さんでは、訓練室での介入だけでなく、病棟生活に近い場面で確認する方が実用的なこともあります。
書類・記録時間に切り替える
患者さんの都合で実施できない時間が生じた場合、記録、計画書、サマリー、カンファレンス資料、家族説明の準備などに切り替えることもできます。
予定変更のたびに時間が消えてしまうのではなく、「できない時間を何に使うか」を決めておくと、終業前の負担を減らしやすくなります。
病棟共有で変わること
リハ予定が崩れる背景には、病棟との情報共有不足が関係していることもあります。
病棟側も、検査、処置、食事、入浴、排泄、急変対応など多くの業務を抱えています。そのため、リハ側だけで予定を組んでも、病棟の流れと合わないことがあります。
共有項目を絞る
毎回すべてを口頭で確認すると、待機時間が増えます。共有項目は、体調、処置予定、離床可否、注意点、予定変更の可能性などに絞ると整理しやすくなります。
病棟ボード、電子カルテ、申し送り、チャットツールなど、施設ごとの方法に合わせて「どこを見れば分かるか」を決めておくことが重要です。
実施できない理由を共有する
リハが実施できなかった日も、理由を共有しておくと次回の調整につながります。
「眠気が強かった」「検査で不在だった」「血圧低下があり見送った」「拒否が強く時間変更した」など、理由が分かるだけで、病棟側も次の予定を立てやすくなります。
残業化を防ぐ考え方
予定が崩れた日のしわ寄せは、記録や書類に出やすくなります。日中に予定変更が続き、終業前に記録が山積みになると、残業が常態化しやすくなります。
残業化を防ぐには、予定変更が起きた時点で、記録、共有、代替行動、後日対応を分けて考えることが大切です。単位数だけでなく、周辺業務まで含めて1日の流れを見直しましょう。
単位数が足りない背景を整理したい場合は、リハビリの単位数が足りない原因と対策も参考になります。
環境問題として考えた方がよいケース
予定変更が多いこと自体は珍しくありません。しかし、毎日のように昼休みや残業で埋めるしかない場合、個人の工夫だけでは限界があります。
以下のような状態が続く場合は、職場環境として相談した方がよいサインです。
- 毎日、終業後に記録が残る
- 予定変更時の相談先がない
- 新人がひとりで抱え込みやすい
- 病棟との共有ルールがない
- 人員不足が慢性化している
- 単位数だけで評価される
- 安全確認や患者説明の時間が取りにくい
このような場合は、「自分の効率が悪い」と決めつけず、部署の運用や人員体制として整理することが大切です。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
リハビリが予定通り進まないのは自分の能力不足ですか?
必ずしも能力不足とは限りません。検査、処置、眠気、拒否、食事、入浴、急変、病棟都合など、個人では調整しきれない要因も多くあります。まずは、予定が崩れた理由を分けて整理することが大切です。
リハを見送る判断はどのように考えればよいですか?
患者さんの安全、体調、リスク、医師や看護師からの情報、本人の意思を踏まえて判断します。迷う場合は、ひとりで抱え込まず、上司や病棟スタッフに相談することが重要です。
予定変更が多い日は何を優先すればよいですか?
急性変化、安全確認、退院前対応、評価期限、リスク管理が必要な患者さんを優先して確認します。すべてを同じ優先度で回ろうとせず、今日中に必要なことと後日でもよいことを分けましょう。
記録が終業後に残りやすい場合はどうすればよいですか?
介入直後に記録の骨子だけ残す、予定変更時に書類時間へ切り替える、記録テンプレートを整えるなどが有効です。毎日残業しないと終わらない場合は、部署全体の業務量として相談した方がよい状態です。
病棟と予定が合わないときはどうすればよいですか?
体調、処置予定、食事・入浴、離床可否、注意点など、共有する項目を絞ると調整しやすくなります。病棟側も多くの業務を抱えているため、リハ側だけで予定を固定せず、共有方法を整えることが大切です。
まとめ
リハビリが予定通り進まない日は、現場では珍しくありません。大切なのは、予定が崩れたこと自体を失敗と捉えるのではなく、崩れたあとにどう優先順位を立て直すかです。
検査、眠気、拒否、食事、入浴、急変、病棟都合などが重なる日は、すべてを予定通りに進めることよりも、安全確認、病棟共有、記録、次回対応を整理することが重要になります。
予定変更が続くときは、個人の効率だけで抱え込まず、業務の流れ、病棟連携、記録時間、人員体制まで含めて見直していきましょう。
参考文献
- 厚生労働省. 令和6年度診療報酬改定について. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html
- 厚生労働省. 第7部 リハビリテーション 通則. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000196294.pdf
- 日本理学療法士協会. 理学療法ガイドライン. https://www.japanpt.or.jp/activity/asset/pdf/gl/GL_all.pdf
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

