脊髄レベル一覧|C5〜S1の代表筋・感覚・反射とADLの見方

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脊髄レベルとは

脊髄レベルとは、運動・感覚・反射の所見から、障害されている脊髄髄節や神経根の高さを捉える考え方です。脊髄損傷では、左右の運動レベルと感覚レベルを評価し、神経学的損傷レベルを判定します。

この記事では、C5〜T1・L2〜S1の代表運動を中心に、頸髄・胸髄・腰仙髄レベルの特徴、深部腱反射、ADLへの影響、臨床での確認手順をPT・OT・ST向けに整理します。

最初に押さえるポイント

脊髄レベルは、1つの筋力や動作だけでは判断しません。運動・感覚・反射・ADL・随伴症状を組み合わせ、脊髄損傷ではISNCSCIなどの標準化された方法で評価します。

脊髄レベルには複数の意味がある

臨床で使われる「脊髄レベル」は、文脈によって意味が異なります。何のレベルを示しているのかを区別して理解することが重要です。

脊髄レベルに関係する用語の違い
用語 意味 臨床での確認方法
脊髄髄節 脊髄を神経根の出入りによって区分した高さ 運動・感覚・反射の分布を確認する
神経根レベル 末梢へ向かう神経根の高さ ミオトーム、デルマトーム、反射を確認する
運動レベル 一定の条件を満たす最も尾側の主要筋の髄節 左右の主要筋を徒手筋力検査で評価する
感覚レベル 触覚とピン刺激が正常な最も尾側の髄節 左右の主要感覚点を評価する
神経学的損傷レベル 左右の運動・感覚が正常と判定できる最も尾側の髄節 ISNCSCIに沿って左右別に判定する

日常臨床では「C6レベルの筋力低下」「C7髄節付近の障害」などと表現することがあります。一方、脊髄損傷の正式な分類では、左右の運動・感覚を所定の手順で評価し、神経学的損傷レベルを決定します。

また、脊椎の画像で確認される高さと、脊髄髄節や神経根の高さは必ずしも一致しません。画像所見だけでなく、神経学的所見を合わせて整理する必要があります。

脊髄レベル一覧

まずは、代表的な髄節と確認しやすい運動を一覧で整理します。

脊髄レベル一覧として頸髄・胸髄・腰仙髄の機能と確認項目を整理した図
脊髄レベルは、頸髄・胸髄・腰仙髄に分け、運動・感覚・反射・ADLを合わせて確認します。
脊髄レベルと代表的な運動・主要筋
レベル 代表運動 主に確認する筋 評価時の注意
C5 肘関節屈曲 上腕二頭筋、上腕筋 肩関節機能や疼痛の影響も確認する
C6 手関節背屈 長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋 手関節背屈による腱固定作用も確認する
C7 肘関節伸展 上腕三頭筋 移乗や除圧に使える支持性を確認する
C8 中指DIP関節屈曲 深指屈筋 握力だけでなく指節間関節を個別に確認する
T1 小指外転 小指外転筋 手内在筋の筋力と巧緻性を分けてみる
L2 股関節屈曲 腸腰筋 骨盤の代償や体幹屈曲に注意する
L3 膝関節伸展 大腿四頭筋 股関節肢位と膝関節可動域を確認する
L4 足関節背屈 前脛骨筋 足趾伸展や足部内反による代償に注意する
L5 母趾伸展 長母趾伸筋 足関節背屈と分けて母趾を確認する
S1 足関節底屈 腓腹筋、ヒラメ筋 臥位の筋力と立位での支持性を分けてみる

C5〜T1とL2〜S1は、脊髄損傷の神経学的分類で主要筋が設定されている髄節です。ただし、実際の筋は複数の神経根から支配されるため、単一筋の低下だけで障害高位を確定することはできません。

頸髄レベルの見方

頸髄レベルでは、呼吸、上肢の到達動作、把持、支持性、手指操作を段階的に確認します。

頸髄レベル別の確認ポイント
レベル 代表的な機能 関連する反射 ADLで着目する動作
C4付近 横隔膜を中心とした呼吸機能 主要な深部腱反射による判定は困難 換気、咳嗽、発声、座位耐久性
C5 肘屈曲、肩周囲筋の一部 上腕二頭筋反射 手を口元へ運ぶ動作、上肢の位置調整
C6 手関節背屈 腕橈骨筋反射 腱固定作用を利用した把持、車椅子操作
C7 肘伸展 上腕三頭筋反射 上肢支持、移乗、除圧、更衣
C8 手指屈曲 単独で対応する一般的な深部腱反射は限られる 把持、食事、更衣、物品操作
T1 手指外転 単独で対応する一般的な深部腱反射は限られる 巧緻動作、書字、スマートフォン操作

C4付近では、呼吸数や酸素飽和度だけでなく、一回換気量、咳嗽力、喀痰排出、発声の持続、疲労も確認します。横隔膜機能は重要ですが、C5〜T1の主要筋と同じ方法で運動レベルを決める項目ではありません。

C5〜T1の筋力検査と代償動作については、ミオトームまとめ|神経根ごとの筋力検査・覚え方を図で整理で詳しく確認できます。

胸髄レベルの見方

胸髄レベルでは、上肢機能よりも体幹制御、感覚レベル、呼吸補助筋、自律神経症状を重視します。

胸髄レベルで確認する機能
区分 主な確認項目 ADLで着目する点
上位胸髄 胸郭運動、呼吸補助筋、上部体幹の安定性 座位耐久性、車椅子操作、上肢活動時の姿勢
中位胸髄 体幹筋活動、感覚障害の高さ、座位での立ち直り リーチ、物品操作、移乗準備動作
下位胸髄 腹筋群、骨盤制御、動的座位バランス 起き上がり、移乗、床上動作

胸髄には、四肢のように髄節ごとに定められた主要筋がありません。そのため、運動レベルは感覚所見や上位髄節の正常性を含めて判断し、体幹筋力だけで特定の胸髄レベルを断定しないことが大切です。

腰髄・仙髄レベルの見方

腰髄・仙髄レベルでは、下肢の支持性、振り出し、足部制御に加え、会陰部感覚と排尿・排便機能を確認します。

腰髄・仙髄レベル別の確認ポイント
レベル 代表運動 関連する反射 動作で着目する点
L2 股関節屈曲 一般的な深部腱反射との対応は限定的 下肢の振り出し、起き上がり時の下肢操作
L3 膝関節伸展 膝蓋腱反射は主にL3〜L4 立ち上がり、立位での膝折れ
L4 足関節背屈 膝蓋腱反射は主にL3〜L4 遊脚期のつま先クリアランス
L5 母趾伸展 一般的な深部腱反射との対応は限定的 足部の選択的運動、歩行時の足部制御
S1 足関節底屈 アキレス腱反射 立位支持、蹴り出し、段差昇降
S2〜S4 仙髄領域の感覚・骨盤臓器機能 球海綿体反射、肛門反射など 排尿、排便、性機能、会陰部の感覚

S4〜S5の感覚や随意肛門収縮などは、脊髄損傷が完全損傷か不全損傷かを分類するうえで重要です。排尿・排便障害や会陰部感覚の変化がある場合は、下肢筋力だけでなく仙髄領域まで確認します。

脊髄損傷レベルとADLの見方

損傷高位はADLを考える出発点になりますが、実際の自立度を単独で決めるものではありません。

脊髄損傷レベルからADLをみるときの着眼点
レベル 活用が期待される機能 評価するADL 併せて確認する条件
C5 肘屈曲、肩周囲筋 食事、整容、上肢の位置調整 補助具、上肢可動域、座位耐久性
C6 手関節背屈、腱固定作用 把持、車椅子操作、ベッド上動作 手指拘縮、手関節可動域、上肢支持性
C7 肘伸展 移乗、除圧、更衣、上肢支持 肩関節機能、体幹制御、疼痛
C8〜T1 手指屈曲、手内在筋 食事、更衣、排泄、巧緻動作 感覚障害、痙縮、手指変形
胸髄 上肢機能、レベルに応じた体幹機能 座位、移乗、車椅子ADL 体幹バランス、起立性低血圧、皮膚管理
腰仙髄 レベルに応じた下肢機能 立ち上がり、立位、歩行、段差 完全・不全、左右差、装具、感覚、疼痛

同じC6レベルでも、完全損傷か不全損傷か、左右差、年齢、関節可動域、疼痛、痙縮、呼吸・循環機能、認知機能、生活環境によって到達しやすいADLは変わります。表はゴールを断定するものではなく、評価項目を選ぶための目安として使用します。

ミオトーム・デルマトーム・反射の関係

障害レベルは、運動・感覚・反射の3方向から照合すると判断しやすくなります。

脊髄レベル評価を構成する3つの情報
評価 確認するもの 主な役割 注意点
ミオトーム 神経根ごとの代表運動・筋力 運動障害の高さを推定する 複数神経根の重複支配がある
デルマトーム 神経根ごとの皮膚感覚領域 感覚障害の高さと分布を確認する 末梢神経領域との違いを確認する
深部腱反射 反射弓と上位運動ニューロンの影響 病変部位の推定を補助する 急性期、緊張、手技、左右差の影響を受ける

例えば、足関節背屈の低下だけでL4レベルと決めるのではなく、関連する感覚領域、膝蓋腱反射、他の下肢筋力、疼痛、末梢神経領域を照合します。

臨床では3ステップで確認する

臨床では、運動、感覚・反射、ADL・随伴症状の順に確認すると、脊髄レベルに関係する情報を整理しやすくなります。

脊髄レベルを臨床で確認する3ステップ。運動、感覚・反射、ADL・随伴症状の順に評価する流れ
代表筋の運動、感覚・反射、ADL・随伴症状の順に確認し、1つの所見だけで障害レベルを判断しないことが重要です。

脊髄レベルをみる3ステップ

  1. 運動を左右別に確認する
    主要筋の筋力、関節可動域、疼痛、代償動作を確認します。
  2. 感覚と反射を照合する
    感覚障害の高さ、触覚・痛覚、深部腱反射、病的反射を確認します。
  3. ADLと随伴症状を確認する
    呼吸、座位、移乗、歩行、排尿・排便、自律神経症状まで含めて整合性をみます。

療養病棟では、拘縮、疼痛、廃用性筋力低下、認知機能低下などが混在し、教科書どおりの筋力分布にならないことがあります。筋力検査の数値だけで決めず、発症前後の経過、画像所見、感覚・反射、実際の動作を照合することが重要です。

脊髄レベル評価でよくある失敗

最も多い失敗は、代表筋を1つ確認しただけで障害レベルを決めてしまうことです。

  • 握力だけでC8を判断する:主要筋検査では、中指DIP関節の屈曲を確認します。
  • 股関節屈曲低下をすべてL2障害とする:疼痛、腸腰筋の廃用、体幹機能、末梢神経障害も確認します。
  • 反射の低下だけで神経根障害とする:打鍵方法、筋緊張、急性期、全身状態の影響を除外します。
  • 脊椎の画像上の高さと髄節を同一視する:脊椎高位、脊髄髄節、神経根は必ずしも同じ高さではありません。
  • 損傷高位だけでADL予後を断定する:完全・不全、左右差、合併症、環境、装具や福祉用具を併せて評価します。
  • 排尿・排便機能を確認しない:仙髄領域の感覚や骨盤臓器機能は重要な神経学的情報です。

脊髄レベルの覚え方

最初は、ISNCSCIで用いられる10個の代表運動を上肢と下肢に分けて覚えると整理しやすくなります。

脊髄レベルの代表運動を覚える順序
区分 覚える組み合わせ
上肢 C5:肘屈曲 → C6:手関節背屈 → C7:肘伸展 → C8:手指屈曲 → T1:小指外転
下肢 L2:股関節屈曲 → L3:膝伸展 → L4:足関節背屈 → L5:母趾伸展 → S1:足関節底屈

代表運動を覚えた後は、それぞれに感覚領域と深部腱反射を重ねます。最後に、把持、移乗、立位、歩行などの動作と結び付けると、臨床で使いやすい知識になります。

まとめ

脊髄レベルは、代表筋の一覧を覚えるだけでなく、運動・感覚・反射・ADLを統合して判断することが重要です。

  • C5:肘関節屈曲
  • C6:手関節背屈
  • C7:肘関節伸展
  • C8:中指DIP関節屈曲
  • T1:小指外転
  • L2:股関節屈曲
  • L3:膝関節伸展
  • L4:足関節背屈
  • L5:母趾伸展
  • S1:足関節底屈

まず主要筋を左右別に確認し、次に感覚と反射を照合します。そのうえで呼吸、体幹機能、移乗、歩行、排尿・排便機能を確認し、所見同士に矛盾がないかを整理しましょう。

FAQ

脊髄レベルとは何ですか?

運動、感覚、反射などの所見から、障害されている脊髄髄節や神経根の高さを捉える考え方です。脊髄損傷では、左右の運動レベルと感覚レベルを評価し、神経学的損傷レベルを判定します。

脊髄レベルは筋力だけで判断できますか?

筋力だけでは判断できません。複数の筋、感覚障害の高さ、深部腱反射、病的反射、画像所見、疼痛、ADL、排尿・排便機能などを組み合わせて判断します。

C5・C6・C7では何を確認しますか?

C5では肘屈曲、C6では手関節背屈、C7では肘伸展を主に確認します。それぞれ上腕二頭筋、手関節伸筋群、上腕三頭筋が代表的な評価対象です。

C8は握力を確認すればよいですか?

握力だけでは不十分です。ISNCSCIの主要筋検査では、中指のDIP関節屈曲を確認します。握力は複数の筋と神経根の影響を受けるため、補助的な情報として扱います。

脊髄損傷レベルからADLの自立度を予測できますか?

損傷高位は重要な目安になりますが、それだけでは決まりません。完全損傷か不全損傷か、左右差、年齢、関節可動域、疼痛、痙縮、呼吸・循環機能、生活環境、装具や福祉用具を含めて検討します。

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参考文献

  1. American Spinal Injury Association. 脊髄損傷の神経学的分類の国際基準(ISNCSCI)日本語版.
  2. American Spinal Injury Association. International Standards for Neurological Classification of Spinal Cord Injury. Revised 2019.
  3. Rupp R, Biering-Sørensen F, Burns SP, et al. International Standards for Neurological Classification of Spinal Cord Injury: Revised 2019. Top Spinal Cord Inj Rehabil. 2021;27(2):1-22. doi:10.46292/sci2702-1.
  4. Kirshblum SC, Burns SP, Biering-Sørensen F, et al. International standards for neurological classification of spinal cord injury. J Spinal Cord Med. 2011;34(6):535-546. doi:10.1179/204577211X13207446293695.
  5. 日本理学療法学会連合. 理学療法ガイドライン第2版.
  6. 国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局別府重度障害者センター. 頸髄損傷理学療法マニュアル Ver.2.01(2024年版).

著者情報

rehabilikun

理学療法士。脳卒中認定理学療法士、褥瘡・創傷ケア認定理学療法士、登録理学療法士、3学会合同呼吸療法認定士。療養病院での臨床経験をもとに、PT・OT・STが評価と治療へつなげやすい実務情報を発信しています。