歩行時にふらつく患者への対応|原因の見分け方・安全な介助・中止基準

臨床手技・プロトコル
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  1. 歩行時にふらつく患者への対応は安全確保から始める
  2. 歩行時にふらついた直後は転倒を防いで安全な姿勢へ移す
    1. ふらついた直後に行うこと
  3. 最初の30秒は意識・呼吸・循環・下肢支持性を確認する
  4. 歩行時のふらつきは出現するタイミングから原因を切り分ける
    1. 起立直後のふらつきは起立性低血圧を確認する
    2. 歩行後半のふらつきは疲労と呼吸循環反応を確認する
    3. 方向転換や障害物でのふらつきは動的バランスを確認する
    4. 膝折れや支持性低下は筋力だけで決めつけない
    5. 荷重時のふらつきは疼痛と外傷を確認する
    6. 傾眠や反応低下を伴う場合は薬剤と当日の状態を確認する
  5. 原因評価は再現条件と普段との差をそろえて進める
    1. 評価の基本順序
    2. 歩行観察では崩れる瞬間を記録する
  6. 安全な介助方法は原因と崩れる方向に合わせて調整する
    1. 介助者の位置はふらつく方向と危険場面から決める
    2. 介助量は歩行開始前に一段階高く設定する
    3. 補助具は安定性だけでなく操作能力まで確認する
    4. 歩行距離・速度・課題を下げて再評価する
  7. 意識変化・胸痛・呼吸苦・急な神経症状があれば歩行を中止する
  8. 歩行再開は症状の消失だけでなく原因と安全条件を確認して決める
    1. 再開前の確認項目
  9. 記録は「場面・変化・対応・結果」を具体的に残す
    1. 記録例
    2. 申し送り例
  10. 歩行時のふらつき対応でよくある失敗
  11. 歩行時のふらつきに関するよくある質問
  12. 次の一手はふらついた場面を特定して安全条件を共有すること
  13. 参考文献
  14. 著者情報

歩行時にふらつく患者への対応は安全確保から始める

歩行時に患者がふらついた場合は、原因を考える前に身体を支え、転倒を防ぐことが最優先です。そのうえで、意識、顔色、呼吸、胸部症状、血圧、脈拍、SpO₂、疼痛、膝折れなどを確認し、歩行を継続できる状態か判断します。ふらつきの背景は、起立性低血圧、疲労、筋力低下、バランス障害、疼痛、薬剤の影響などさまざまです。本記事では、最初の30秒で行う対応、原因の切り分け方、安全な介助方法、中止サイン、記録例までを臨床の流れに沿って解説します。

この記事の結論

  • ふらついたら、評価より先に転倒を防ぐ
  • 意識・胸部症状・呼吸状態などの赤旗を最初に確認する
  • ふらついたタイミングと場面から原因を切り分ける
  • 原因が不明なまま介助量だけを増減しない
  • 再開時は条件を下げ、同じ反応が出ないか再評価する

なお、「ふらつき」は診断名ではなく、患者本人の訴えや介助者が観察した不安定性をまとめた表現です。歩行だけを見て原因を断定せず、当日の全身状態や普段との違いを含めて判断する必要があります。

歩行時にふらついた直後は転倒を防いで安全な姿勢へ移す

歩行中にふらつきを認めたら、まず患者の体幹や骨盤周囲を支持し、転倒を防ぎます。原因を確認しようとして、その場で不安定な立位を続けさせてはいけません。近くに椅子や車椅子、ベッドがあれば、安全を確認しながら誘導します。

椅子まで移動すること自体が危険な場合は、無理に歩かせず、周囲のスタッフを呼びます。介助者一人で支持し続けることが難しい場合や、急な意識変化・脱力を伴う場合は、院内や施設の緊急対応手順を優先してください。

ふらついた直後に行うこと

  1. 身体を支える:急に腕だけを引かず、体幹・骨盤に近い位置で支持する
  2. 歩行を止める:安全が確認できるまで惰性で歩かせない
  3. 安全な姿勢へ移す:椅子、車椅子、ベッドなどへ誘導する
  4. 赤旗を確認する:意識、胸痛、呼吸苦、麻痺、急な脱力などを見る
  5. バイタルと症状を確認する:安静を保ちながら状態を評価する

注意:ふらついた患者を支える際、転倒を防ごうとして介助者が身体をひねったり、患者の上肢だけを強く引いたりすると、患者と介助者の双方が受傷する可能性があります。支持しきれないと判断したら、一人で抱え続けず応援を要請します。

最初の30秒は意識・呼吸・循環・下肢支持性を確認する

安全な姿勢を確保したら、最初の30秒で「歩行を中止して緊急対応につなげる状態か」を確認します。細かな歩行分析より、普段と異なる全身状態を見落とさないことが優先です。

歩行時にふらついた直後の確認ポイント
確認項目 観察する内容 注意したい変化
意識・会話 呼びかけへの反応、受け答え、見当識 反応低下、会話が成立しない、急な混乱
顔色・発汗 蒼白、冷汗、チアノーゼ、表情 普段と異なる顔色、冷汗、苦悶様表情
呼吸 呼吸数、呼吸の深さ、会話時の息切れ 強い呼吸苦、努力性呼吸、急激な呼吸状態の変化
胸部症状 胸痛、胸部不快感、動悸 新たな胸痛、圧迫感、強い動悸
神経症状 麻痺、構音、視線、急な脱力 新たな片麻痺、呂律困難、顔面の左右差
下肢支持性 膝折れ、足部位置、荷重の左右差 反復する膝折れ、急な支持不能
疼痛 部位、強さ、荷重との関係 急な強い痛み、転倒・外傷後の痛み
バイタル 血圧、脈拍、SpO₂、必要に応じて体温 本人の基準値や指示範囲を外れる変化
歩行時にふらつく患者への対応5ステップと歩行中止サイン
歩行時にふらついたときは、安全確保、中止サインの確認、原因評価、介助方法の見直し、再評価の順で対応します。

図版に示したSpO₂の数値は一般的な注意の目安であり、すべての患者に一律適用する中止基準ではありません。慢性呼吸器疾患、在宅酸素療法、循環器疾患などでは個別の目標値や医師の指示が優先されます。また、パルスオキシメータの値は体動、冷感、末梢循環、装着状態などの影響を受けるため、数値だけでなく症状と測定状態を合わせて判断します。

歩行時のふらつきは出現するタイミングから原因を切り分ける

ふらつきの原因は一つとは限りません。特に高齢患者や複数の疾患を持つ患者では、筋力低下、循環変動、感覚障害、薬剤、疲労などが重なっていることがあります。

原因を切り分ける際は、「どのようにふらついたか」だけでなく、いつ、どの場面で、何をしたときに出現したかを確認します。

ふらつきが出現する場面と主な確認ポイント
ふらつく場面 考えられる要因 最初に確認すること
起立直後 起立性低血圧、循環調節の遅れ、脱水 症状、血圧、脈拍、起立までの手順
歩き始め 足部位置不良、支持性低下、すくみ、恐怖心 開始姿勢、重心移動、第一歩、補助具
歩行の途中 疲労、呼吸循環負荷、筋持久力低下 歩行距離、呼吸、脈拍、SpO₂、休憩前後
方向転換 動的バランス低下、足の交差、注意配分の低下 回転方向、歩数、速度、視線、補助具操作
狭い場所・二重課題 注意機能低下、環境適応の困難さ 会話、障害物、周囲の人、床面
疼痛側への荷重時 疼痛、関節不安定性、荷重回避 痛みの部位、荷重との関係、急性変化
突然の脱力 全身状態の悪化、神経症状、膝折れ、失神前状態 歩行中止、意識・神経症状・バイタル確認

起立直後のふらつきは起立性低血圧を確認する

臥位や座位から立ち上がった直後に、めまい、眼前暗黒感、冷汗、脱力を伴ってふらつく場合は、起立性低血圧を疑います。血圧値だけでなく、症状が出た時刻、体位、脈拍、顔色、会話反応を合わせて確認します。

起立性低血圧が疑われる場合は、歩行だけを再開するのではなく、臥位・座位・立位のどの段階で状態が変化したかを整理します。測定条件や段階的離床の進め方は、起立性低血圧のリハビリ対応と離床手順で詳しく解説しています。

歩行後半のふらつきは疲労と呼吸循環反応を確認する

開始時は安定していても、歩行距離が延びるにつれて足取りが乱れる場合は、筋持久力低下や呼吸循環負荷の影響を考えます。歩行距離、速度、休憩までの時間、呼吸数、脈拍、SpO₂、患者の自覚症状を記録し、負荷量との関係を確認します。

「病棟まで歩けたか」だけでなく、何メートル付近から歩隔が変わったか、介助量が増えたか、会話が難しくなったかを残すと、次回の距離設定に活用できます。

方向転換や障害物でのふらつきは動的バランスを確認する

直線歩行は安定していても、方向転換、停止、狭い場所、障害物、会話をしながらの歩行でふらつく場合は、動的バランスや注意配分の問題が考えられます。

評価尺度の点数だけで判断せず、実際に崩れた課題を確認します。静的・動的バランスやBBS、TUGなどの選び方は、バランス評価の使い分けも参考にしてください。

膝折れや支持性低下は筋力だけで決めつけない

膝折れがあると大腿四頭筋の筋力低下に注目しやすいですが、疼痛、感覚障害、足部位置、股関節・体幹の制御、疲労、装具の状態なども関与します。

MMTの数値だけでなく、立ち上がり、片脚支持、方向転換、着座直前など、どの場面で支持性が崩れるかを観察します。急に支持不能となった場合は、単純な筋力低下と決めつけず、全身状態や新たな神経症状を確認してください。

荷重時のふらつきは疼痛と外傷を確認する

疼痛によって患側への荷重を避けると、歩幅や立脚時間が変化し、ふらつきにつながります。疼痛部位、発症時期、安静時痛、荷重時痛、腫脹、熱感、転倒歴を確認します。

急な強い疼痛や外傷後の疼痛がある場合は、歩行練習を続けず、必要な診察や検査につなげます。

傾眠や反応低下を伴う場合は薬剤と当日の状態を確認する

睡眠薬、抗不安薬、降圧薬、鎮痛薬などの影響や、服薬時間の変更が歩行状態に関係する場合があります。薬剤の影響を理学療法士だけで断定せず、眠気、反応速度、血圧、服薬時間、直近の処方変更を確認して医師・看護師・薬剤師へ共有します。

原因評価は再現条件と普段との差をそろえて進める

ふらつきの評価では、多くの検査を一度に追加するより、現象が起きた条件を再現できる形で整理することが重要です。ただし、赤旗がある場合や再現による危険が高い場合は、歩行を再試行しません。

評価の基本順序

  1. 普段との差を確認する:いつもと比べて急に悪化したのかを確認する
  2. 出現場面を特定する:起立直後、直線、方向転換、歩行後半などに分ける
  3. 全身状態を確認する:意識、症状、バイタル、服薬、食事・水分、睡眠を見る
  4. 身体機能を確認する:筋力、感覚、疼痛、関節可動域、バランスを見る
  5. 環境と用具を確認する:靴、床面、歩行器、杖、装具、点滴ルートなどを見る
  6. 条件を下げて再評価する:必要な場合のみ、短距離・高い介助量で反応を確認する

歩行観察では崩れる瞬間を記録する

歩行の評価は「ふらつきあり・なし」だけでは不十分です。次の項目を場面とともに記録します。

  • ふらついた方向
  • 出現した歩行距離
  • 直線・方向転換・停止などの場面
  • 膝折れ、つまずき、足の交差の有無
  • 歩行速度と歩幅の変化
  • 補助具の操作状況
  • 必要となった介助量
  • 症状とバイタルの変化

安全な介助方法は原因と崩れる方向に合わせて調整する

安全な介助とは、単に強く支えることではありません。患者が崩れる方向とタイミングを予測し、必要な支持を行いながら、過介助にならない条件を探すことが重要です。

介助者の位置はふらつく方向と危険場面から決める

介助者は患者の斜め後方を基本とし、左右差や麻痺側、補助具、崩れやすい方向に応じて位置を調整します。方向転換で外側へ崩れやすい場合や、特定側で膝折れが起きる場合は、その場面を支えられる位置を選びます。

患者の腕だけをつかむ介助は、体幹を制御しにくく、肩関節への負担にもなります。必要に応じて歩行ベルトなどを用い、施設の手順と患者の状態に沿って体幹・骨盤に近い位置から支持します。

介助量は歩行開始前に一段階高く設定する

ふらつきが出現した直後の再評価では、これまで見守りだった患者でも、軽介助や二人介助など安全側へ調整します。状態を確認せず、同じ見守り条件のまま再開することは避けます。

介助量を下げるのは、短距離でふらつきが再発せず、患者自身の修正反応と全身状態を確認してからにします。

補助具は安定性だけでなく操作能力まで確認する

杖から歩行器へ変更すると支持基底面は広がりますが、歩行器の持ち上げ、方向転換、ブレーキ操作が難しければ、かえって危険になる場合があります。

補助具を変更するときは、以下を確認します。

  • 高さが患者に合っているか
  • 患側・健側と杖の使用側が適切か
  • 歩行器を身体から離しすぎていないか
  • 方向転換で足と補助具が交差しないか
  • ブレーキや前輪を操作できるか
  • 病棟や自宅の通路幅で使用できるか

歩行距離・速度・課題を下げて再評価する

ふらつきが疲労や負荷量と関係する場合は、距離を短くし、速度を下げ、休憩を早めに設定します。二重課題や障害物、急な方向転換は一度外し、単純な条件から反応を確認します。

「同じ距離を完遂すること」より、「どの条件なら安定して反復できるか」を明らかにすることが再発予防につながります。

意識変化・胸痛・呼吸苦・急な神経症状があれば歩行を中止する

歩行の中止判断は、単一の数値ではなく、症状、バイタル、普段との差、基礎疾患、医師の指示を合わせて行います。特に以下の所見がある場合は歩行を中止し、施設の手順に従って医師・看護師などへ報告します。

歩行を中止して報告・対応につなげる主なサイン
分類 主なサイン 初期対応
意識 反応低下、失神、急な混乱、会話困難 歩行中止、安全な姿勢を確保し応援を呼ぶ
循環 胸痛、胸部圧迫感、強い動悸、冷汗、蒼白 安静、バイタル確認、院内手順に沿って報告
呼吸 強い息切れ、会話困難、チアノーゼ、急なSpO₂低下 安静、呼吸状態と測定状態を確認し報告
神経 新たな麻痺、構音障害、顔面の左右差、急な運動失調 再歩行させず緊急評価につなげる
運動 反復する膝折れ、支持不能、制御できないふらつき 歩行中止、椅子・車椅子等へ移し再評価
疼痛 急な強い疼痛、外傷が疑われる痛み 荷重を中止し、必要な診察につなげる
患者の訴え 強いめまい、悪心、極度の疲労、「続けられない」との訴え 訴えを優先して中止し、症状を確認する

中止基準の考え方:血圧・脈拍・SpO₂などに施設基準がある場合は、その基準と個別指示を優先します。ただし、数値が基準内でも胸痛、意識変化、強い呼吸苦、新たな神経症状があれば、歩行を継続しない判断が必要です。

歩行再開は症状の消失だけでなく原因と安全条件を確認して決める

休憩後に「楽になった」と話していても、原因が不明なまま同じ条件で歩行を再開すると、再びふらつく可能性があります。再開前には、症状、意識、バイタル、下肢支持性、疼痛を再確認します。

再開前の確認項目

  • 意識と会話が普段の状態に戻っている
  • 胸痛、強い息切れ、めまいなどがない
  • バイタルが個別の許容範囲にある
  • 座位または立位を安全に保持できる
  • 急な麻痺や脱力などの神経症状がない
  • ふらつきの原因と対策をある程度整理できている
  • 介助量、補助具、距離、速度を安全側へ変更している

再開する場合は、短距離、低速度、高い介助量から始めます。立位で再び症状が出る場合や、原因が整理できない場合は、歩行再開を見送ります。

記録は「場面・変化・対応・結果」を具体的に残す

「歩行時ふらつきあり」だけでは、次の担当者が危険場面や必要な介助を判断できません。ふらついた場面、方向、距離、症状、バイタル、介助量、対応後の変化を残します。

歩行時のふらつきを記録するときの構成
項目 記載する内容
条件 補助具、介助量、靴、歩行場所、歩行距離
出現場面 起立直後、直線、方向転換、歩行後半など
具体的所見 左右どちらへ崩れたか、膝折れ、つまずき、支持増加
症状・バイタル めまい、胸痛、息切れ、血圧、脈拍、SpO₂など
対応 歩行中止、休憩、補助具変更、介助量変更、報告
結果 症状の変化、再開の可否、次回の安全条件

記録例

記録例:四点杖・右後方軽介助で病棟歩行を実施。開始時は安定していたが、約15mで右方向への体幹動揺と歩幅減少が出現。胸痛・めまいなし。会話可能で、椅子へ誘導して休憩した。休憩後に症状とバイタルを再確認し、歩行器・短距離・軽介助へ変更。方向転換時に再度動揺を認めたため、本日の歩行練習は終了した。病棟移動は歩行器使用、軽介助とし、方向転換時は右後方から支持するよう共有した。

申し送り例

結論:本日の病棟歩行は軽介助が必要です。
危険場面:15m前後と方向転換時に右へふらつきます。
介助方法:歩行器を使用し、右後方から支持してください。
継続事項:めまい、息切れ、膝折れがあれば歩行を中止して共有してください。

歩行時のふらつき対応でよくある失敗

現場では、安全を優先しているつもりでも、原因の決めつけや記録不足によって同じふらつきが繰り返されることがあります。

歩行時のふらつき対応で避けたい失敗
よくある失敗 問題点 修正方法
もう少し歩かせて様子を見る 転倒や状態悪化につながる 一度止まり、安全な姿勢で評価する
筋力低下と決めつける 循環・神経・薬剤などを見落とす 普段との差、症状、バイタルから確認する
数値だけで判断する 症状や測定誤差を見落とす 症状・観察所見・個別基準を合わせる
介助量だけを増やす 原因が残り、再発予防にならない 距離、速度、補助具、環境も見直す
同じ条件ですぐ再開する 再びふらつく可能性が高い 条件を一段階下げて短距離から確認する
「ふらつきあり」とだけ記録する 危険場面と介助方法が伝わらない 場面・方向・対応・結果を記録する

歩行時のふらつきに関するよくある質問

Q1.少しふらついただけでも歩行を中止すべきですか?

一度立ち止まり、安全を確保して状態を確認します。軽いふらつきでも、急な変化、胸痛、強い息切れ、意識変化、神経症状、反復する膝折れを伴う場合は歩行を中止します。症状がなく、原因と安全条件を整理できた場合でも、再開時は距離や速度を下げて再評価します。

Q2.ふらついたら最初に血圧を測ればよいですか?

血圧測定は重要ですが、その前に転倒を防ぎ、安全な姿勢を確保します。また、意識、胸痛、呼吸苦、新たな麻痺などの赤旗を先に確認します。血圧が正常でも、神経症状や強い呼吸苦があれば歩行を継続できません。

Q3.SpO₂が90%未満なら必ず歩行中止ですか?

一般的には注意が必要な値ですが、すべての患者に一律適用する基準ではありません。基礎疾患、酸素療法、医師の指示、普段の値、低下幅、症状を合わせて判断します。体動や末梢冷感による測定誤差も確認します。強い呼吸苦、チアノーゼ、意識変化を伴う場合は、数値にかかわらず中止して対応します。

Q4.杖から歩行器に変更すれば安全になりますか?

支持基底面は広がりますが、歩行器を適切に操作できなければ安全とは限りません。高さ、身体との距離、方向転換、ブレーキ操作、通路幅を確認します。補助具の変更と同時に、介助量・距離・速度も見直します。

Q5.バランス評価はBBSとTUGのどちらを使いますか?

目的で選びます。BBSは立位・移乗・リーチなどを含む基本的なバランス能力を広く見やすく、TUGは起立、歩行、方向転換、着座を含む移動全体を観察しやすい評価です。実際に崩れた場面を確認したうえで、必要な評価を選択します。

Q6.看護師や介護士には何を申し送ればよいですか?

現在の介助量、ふらつく場面と方向、使用する補助具、介助者の位置、中止すべき症状を簡潔に共有します。「ふらつきあり」ではなく、「方向転換時に右へ崩れるため、歩行器を使用し右後方から軽介助」のように、次のスタッフが同じ対応を再現できる表現にします。

次の一手はふらついた場面を特定して安全条件を共有すること

歩行時に患者がふらついたら、まず身体を支えて歩行を止め、安全な姿勢で意識・呼吸・循環・神経症状を確認します。その後、起立直後、歩行後半、方向転換、荷重時など、ふらつきが出現した場面から原因を切り分けます。

歩行を再開する場合も、症状が消えたことだけで判断せず、介助量、補助具、距離、速度を安全側へ変更して再評価してください。記録と申し送りでは、ふらついた方向や場面、対応後の結果まで残すことで、リハビリ室・病棟・施設での介助方法を統一しやすくなります。


参考文献

  1. Fletcher GF, Ades PA, Kligfield P, et al. Exercise standards for testing and training: a scientific statement from the American Heart Association. Circulation. 2013;128(8):873-934. doi:10.1161/CIR.0b013e31829b5b44
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  3. Podsiadlo D, Richardson S. The Timed “Up & Go”: a test of basic functional mobility for frail elderly persons. J Am Geriatr Soc. 1991;39(2):142-148. doi:10.1111/j.1532-5415.1991.tb01616.x
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著者情報

rehabilikunblog編集部

理学療法士が、病院・施設で実践しやすい評価、臨床判断、介助方法、制度・実務情報を整理しています。本記事は医療・介護専門職への情報提供を目的としており、個々の患者に対する診断や治療、施設の緊急対応手順を代替するものではありません。患者の基礎疾患、医師の指示、所属施設の基準を優先してください。