奇異性呼吸とは?胸と腹の動き・横隔膜機能低下との関係を解説

臨床手技・プロトコル
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  1. 奇異性呼吸とは?|通常とは異なる胸郭・腹部・胸壁の動き
  2. 正常呼吸と腹部奇異性運動では何が違う?
  3. 奇異性呼吸には異なるパターンがある
  4. 奇異性呼吸はどう観察する?|胸郭と腹部を同時に見る
  5. 腹部奇異性運動は臥位で明らかになることがある
  6. 腹部奇異性運動と横隔膜機能低下の関係
  7. シーソー呼吸と奇異性呼吸の関係|用語より実際の動きを記録する
  8. 奇異性呼吸の原因|横隔膜・呼吸筋・胸壁を分けて考える
  9. 横隔膜機能低下の腹部奇異性運動と動揺胸郭は別に考える
  10. 奇異性呼吸と陥没呼吸の違い
  11. SpO2が正常でも奇異性呼吸があれば換気を確認する
  12. 奇異性呼吸を見つけたら何を確認する?
  13. 奇異性呼吸を認めた後の追加評価
  14. リハ中に奇異性呼吸が出現したら?
  15. 奇異性呼吸は「名称」ではなく実際の動きを記録する
  16. 奇異性呼吸で避けたい3つの思い込み
  17. 奇異性呼吸のよくある質問
    1. 奇異性呼吸とは簡単にいうと何ですか?
    2. 奇異性呼吸とシーソー呼吸は同じですか?
    3. 奇異性呼吸は横隔膜麻痺を意味しますか?
    4. 腹部奇異性運動がなければ横隔膜機能低下は否定できますか?
    5. 奇異性呼吸は臥位で確認した方がよいですか?
    6. 奇異性呼吸と陥没呼吸は何が違いますか?
    7. SpO2が正常なら奇異性呼吸があっても大丈夫ですか?
  18. まとめ|奇異性呼吸は「どこが・いつ・どちらへ動くか」で見る
  19. 参考文献

奇異性呼吸とは?|通常とは異なる胸郭・腹部・胸壁の動き

奇異性呼吸とは、胸郭・腹部・局所胸壁などが、呼吸に伴って通常とは異なる方向やタイミングで動く呼吸パターンを表す言葉です。

「奇異性呼吸」という言葉は1つの動きだけを意味するわけではありません。臨床では、胸郭と腹部が逆方向へ動く胸腹部の非同期や、胸部外傷で局所胸壁が通常とは逆方向へ動く状態などに使われます。

本記事では、その中でもベッドサイドで重要な胸腹部の非同期、とくに横隔膜機能低下でみられる腹部奇異性運動を中心に整理します。

代表的なのが、吸気時に胸郭が拡張している一方で、腹部が内側へ引き込まれるパターンです。

正常な吸気では、横隔膜が収縮して尾側へ移動するため腹部は外側へ動きます。一方、横隔膜が十分に機能しない場合には、胸郭の吸気運動によって生じる胸腔内陰圧の影響を受け、腹部が吸気時に内側へ動くことがあります。

ただし、「吸気時に腹部がへこむ=横隔膜麻痺」と単純に判断することはできません。どの部位がどちらへ動いているのか、体位で変化するか、呼吸仕事量や全身状態はどうかまで確認する必要があります。

呼吸数・努力呼吸・胸郭運動など呼吸の視診全体は、呼吸評価の基本|ベッドサイド観察と記録の型で整理しています。

正常呼吸と腹部奇異性運動では何が違う?

横隔膜機能低下を考えるときは、「吸気時に腹部がどちらへ動くか」を胸郭と同時に観察します。

正常な横隔膜呼吸と腹部奇異性運動の違い
呼吸パターン 吸気時の胸郭 吸気時の腹部
正常な横隔膜呼吸 拡張する 外側へ動く
腹部奇異性運動 拡張する 内側へ動く

正常な吸気では、横隔膜が収縮して尾側へ下がり、腹腔内圧が高まることで腹壁は外側へ動きます。

横隔膜機能が大きく低下すると、胸郭を拡張する筋によって胸腔内陰圧が生じても横隔膜が十分に収縮できず、腹部が内側へ引き込まれることがあります。

「胸が広がっているから正常」と判断せず、胸郭と腹部の方向を同時に見ることがポイントです。

奇異性呼吸には異なるパターンがある

奇異性呼吸を「胸郭が外へ、腹部が内へ動く呼吸」だけで定義すると、別の重要なパターンを見落とします。

奇異性運動としてみられる代表的なパターン
パターン 吸気時の動き 考える背景
腹部奇異性運動 胸郭が拡張し、腹部が内側へ動く 横隔膜機能低下など
胸郭の奇異性運動 胸郭が内側へ動き、腹部が外側へ動く 肋間筋機能低下など
局所胸壁の奇異性運動 胸壁の一部分が吸気時に内側へ動く 動揺胸郭など

たとえば頸髄損傷などで肋間筋機能が低下し、横隔膜による呼吸が主体となっている患者では、吸気時に腹部が外側へ動く一方で胸郭が内側へ動くことがあります。

一方、横隔膜機能低下では、吸気時に胸郭が拡張する一方で腹部が内側へ動くパターンがみられることがあります。

そのため、「奇異性呼吸あり」という名称だけではなく、どの部位が・どの呼吸相で・どちらへ動いたかを具体的に見ることが重要です。

奇異性呼吸はどう観察する?|胸郭と腹部を同時に見る

奇異性呼吸の観察では、胸だけ、腹だけを見るのではなく、胸郭と腹部の動きを同時に数呼吸確認します。

まず、患者が無理なく呼吸できる体位で胸郭と腹部の動きを観察します。

確認したいのは次のポイントです。

  • 吸気時に胸郭が外側へ動くか、内側へ動くか
  • 吸気時に腹部が外側へ動くか、内側へ動くか
  • 胸郭と腹部が同期しているか、逆方向へ動いているか
  • 局所胸壁だけが逆方向へ動いていないか
  • 数呼吸にわたって同じパターンが続いているか
  • 座位と臥位で動き方が変化するか

呼吸が速い場合や努力呼吸が強い場合には、1呼吸だけでは判断しにくいことがあります。複数回の呼吸で同じ現象が再現されるかを確認します。

また、衣服や寝具によって胸腹部運動が見えにくいことがあります。患者の安全とプライバシーに配慮しながら観察条件を整えます。

腹部奇異性運動は臥位で明らかになることがある

横隔膜機能低下による胸腹部奇異性運動は、座位より臥位で目立つことがあります。

臥位では腹腔内容が横隔膜を頭側へ押す影響が大きくなるため、横隔膜機能が低下している患者では換気が不利になりやすくなります。

そのため、座位では目立たなかった患者でも臥位になると、

  • 吸気時に腹部が内側へ動く
  • 呼吸が浅く速くなる
  • 呼吸補助筋使用が増える
  • 呼吸困難が増悪する

といった変化が明らかになることがあります。

ただし、奇異性呼吸を確認するためだけに、呼吸困難の強い患者を無理に臥位へする必要はありません。患者が安全にとれる体位を優先し、日常の体位変化や既存の診療情報も利用します。

臥位で呼吸困難が増悪し、上体を起こすことで軽減する場合は、起坐呼吸とは?|原因・心不全との関係と観察ポイントも参考にしてください。

腹部奇異性運動と横隔膜機能低下の関係

吸気時に腹部が内側へ動く腹部奇異性運動は、横隔膜機能低下を疑う重要な手がかりです。

正常な横隔膜は吸気時に収縮して尾側へ移動します。この動きによって胸腔内圧が低下し、腹腔内圧が上昇するため、通常は腹部が外側へ動きます。

横隔膜が十分に収縮できない場合には、胸郭を拡張する呼吸筋がつくる陰圧によって横隔膜が受動的に頭側へ動き、腹部が内側へ引き込まれることがあります。

この所見は、とくに両側性の横隔膜機能障害や高度な横隔膜筋力低下で重要な手がかりとなります。

一方で、腹部奇異性運動があるから横隔膜麻痺と確定できるわけではありません。強い呼気筋活動など、横隔膜そのものの麻痺以外の影響によって似た胸腹部運動が生じることがあります。

反対に、腹部奇異性運動が見えないからといって、横隔膜機能低下を否定することもできません。呼吸筋の組み合わせや腹筋活動などによって、予想される奇異性運動が目立たない場合があります。

したがって、

  • 奇異性運動あり → 横隔膜機能低下を疑う手がかり
  • 奇異性運動あり → それだけで横隔膜麻痺とは確定しない
  • 奇異性運動なし → 横隔膜機能低下を否定できない

と整理しておくと、身体所見を過大評価しにくくなります。

シーソー呼吸と奇異性呼吸の関係|用語より実際の動きを記録する

臨床では、胸郭と腹部が逆方向へ動く異常呼吸パターンを「シーソー呼吸」と表現することがあります。

厚生労働省の人工呼吸器離脱に関するSBT手順書でも、呼吸促迫の兆候として「シーソー呼吸(奇異性呼吸)」が挙げられています。

一方で、文献や診療領域によって、paradoxical breathing、thoracoabdominal paradox、abdominal paradox、奇異呼吸、奇異性呼吸、シーソー呼吸など、使用される表現には幅があります。

したがって、「シーソー呼吸=すべて同一の病態」と固定して覚えるより、実際に観察した動きを具体的に表現する方が臨床では有用です。

たとえば、

「臥位、吸気時に胸郭は拡張するが腹部は内方へ移動」

と記載すれば、「奇異性呼吸あり」だけの場合より、どの現象を観察したのかが伝わりやすくなります。

奇異性呼吸の原因|横隔膜・呼吸筋・胸壁を分けて考える

奇異性呼吸を認めたときは、名称から原因を決めるのではなく、どの部位の運動が異常なのかから背景を考えます。

奇異性呼吸・奇異性運動を認める主な背景
背景 観察のポイント
横隔膜機能低下 吸気時に腹部が内側へ動くことがあり、臥位で目立ちやすい
神経筋疾患 浅速呼吸、呼吸補助筋使用、臥位での換気悪化などを伴うことがある
肋間筋など胸郭筋の機能低下 吸気時に胸郭が内側、腹部が外側へ動くパターンがみられることがある
呼吸負荷増大・呼吸筋機能低下 胸腹部の協調性が崩れ、異常な呼吸運動が目立つことがある
動揺胸郭 外傷部の局所胸壁が吸気時に内側、呼気時に外側へ動く

つまり、奇異性呼吸という言葉だけで原因を決めるのではなく、胸郭・腹部・局所胸壁のどこが逆方向へ動いているのかを最初に確認します。

横隔膜機能低下の腹部奇異性運動と動揺胸郭は別に考える

「奇異性運動」という言葉は横隔膜機能低下と動揺胸郭の両方で使用されますが、起きている現象は異なります。

横隔膜機能低下と動揺胸郭でみられる奇異性運動の違い
項目 横隔膜機能低下 動揺胸郭
主に見る場所 胸郭と腹部の関係 損傷した局所胸壁
吸気時 胸郭が拡張する一方、腹部が内側へ動くことがある flail segmentが内側へ動く
主な背景 横隔膜・呼吸筋機能低下など 複数肋骨骨折による胸壁不安定性

動揺胸郭では、胸壁の一部が残りの胸郭から機械的に分離し、通常とは逆に吸気時に内側、呼気時に外側へ動くことがあります。

一方、横隔膜機能低下では局所的な胸壁外傷ではなく、胸郭と腹部の運動関係に注目します。

「奇異性呼吸あり」だけでは両者を区別できないため、どこがどう動いたかを記載することが重要です。

奇異性呼吸と陥没呼吸の違い

陥没呼吸は吸気時の局所的な胸壁の引き込み、奇異性呼吸は胸郭・腹部・胸壁の動く方向やタイミングの異常として整理すると区別しやすくなります。

奇異性呼吸と陥没呼吸の違い
項目 奇異性呼吸 陥没呼吸
主な観察対象 胸郭・腹部・局所胸壁の動く方向や位相 胸骨上・鎖骨上・肋間など
特徴 通常とは異なる方向・タイミングで動く 吸気時に胸壁の一部が内側へ引き込まれる
主に考えること 横隔膜・呼吸筋・胸壁の機能異常など 強い吸気努力・呼吸仕事量増加

局所的な「引き込み」を見るのが陥没呼吸、胸腹部や胸壁の「動く方向・タイミング」を見るのが奇異性呼吸、と考えると整理しやすくなります。

陥没呼吸の詳しい見方は、陥没呼吸とは?|見る場所・原因と努力呼吸の観察ポイントで解説しています。

SpO2が正常でも奇異性呼吸があれば換気を確認する

奇異性呼吸を認めた場合、SpO2が保たれていることだけで換気や呼吸筋機能が正常とは判断できません。

SpO2は酸素化の指標です。一方、胸腹部運動は呼吸力学や呼吸筋の使われ方を観察する手がかりであり、PaCO2や換気状態をSpO2だけから判断することはできません。

特に酸素投与中では、SpO2が保たれていても肺胞低換気によってCO2が蓄積している可能性があります。

奇異性呼吸に加えて、次のような変化がないか確認します。

  • 浅い呼吸
  • 頻呼吸または呼吸数低下
  • 呼吸補助筋使用
  • 臥位での呼吸困難
  • 眠気・反応性低下
  • 会話のしにくさ

「SpO2は保たれているが、呼吸の動きがおかしい」という場合は、酸素化と換気・呼吸筋機能を分けて考えることが重要です。

奇異性呼吸を見つけたら何を確認する?

奇異性呼吸を認めたら、「胸と腹が逆に動いた」で終わらせず、呼吸相・部位と方向・体位と努力・全身状態の順に整理します。

奇異性呼吸の見方。呼吸相、胸郭・腹部の部位と動く方向、座位と臥位での変化や呼吸努力、SpO2・会話・意識など全身状態を4段階で確認する流れ
奇異性呼吸は名称だけで判断せず、呼吸相 → 部位と方向 → 体位と努力 → 全身状態の順で整理し、実際に観察した動きを記録します。
  1. 呼吸相:吸気時・呼気時のどちらで異常運動が出るか
  2. 部位と方向:胸郭、腹部、局所胸壁のどこが、外側・内側のどちらへ動くか
  3. 同期性:胸郭と腹部が同方向か、逆方向か
  4. 体位:座位・臥位で動き方が変化するか
  5. 呼吸仕事量:RR、呼吸補助筋使用、努力呼吸を伴うか
  6. 全身状態:SpO2、HR、会話、意識状態に変化がないか

とくに臥位で吸気時の腹部内方運動が目立つ場合は、横隔膜機能低下を考える手がかりになります。

一方、胸部外傷後に局所胸壁だけが吸気時に内側へ動く場合は、動揺胸郭など別の病態を考えます。

奇異性呼吸を認めた後の追加評価

奇異性呼吸は身体所見であり、原因を確定したり横隔膜機能低下を除外したりできる検査ではありません。

症状や背景に応じて、次のような追加評価が検討されます。

  • 呼吸数・SpO2などの経時的評価
  • 血液ガスによるPaCO2・pHの確認
  • 座位と臥位での肺活量など呼吸機能の比較
  • 最大吸気圧やSNIPなど吸気筋力の評価
  • 横隔膜超音波による厚さ・厚さの変化・移動の評価
  • 胸部画像による横隔膜位置や胸壁外傷の評価

横隔膜超音波は、ベッドサイドで横隔膜の厚さ、吸気に伴う厚さの変化、横隔膜移動などを評価できる非侵襲的な方法です。

ただし、身体所見や超音波など単独の結果だけで病態を決めるのではなく、基礎疾患、症状、体位変化、呼吸機能などを組み合わせて判断します。

リハ中に奇異性呼吸が出現したら?

運動・離床中に新たな奇異性呼吸や明らかな胸腹部非同期が出現した場合は、そのまま負荷を進めず、まず運動を中断して呼吸状態を確認します。

安静時にはみられなかった異常な胸腹部運動が運動中に明らかになった場合、呼吸仕事量が増加し、呼吸筋による代償が難しくなっている可能性があります。

休息を確保したうえで、次の変化を確認します。

  • 奇異性運動や胸腹部非同期が軽減するか
  • 呼吸数・呼吸の深さが回復するか
  • 呼吸補助筋使用が軽減するか
  • SpO2・心拍数がどう変化しているか
  • 会話や意識状態が保たれているか
  • 体位によって呼吸状態が変化するか

強い呼吸困難、意識状態の変化、換気不全を疑う所見などを伴う場合は、運動再開より原因評価と医師・看護師への共有を優先します。

奇異性呼吸は「名称」ではなく実際の動きを記録する

記録では「奇異性呼吸あり」だけで終わらせず、どの体位で、どの呼吸相に、どの部位が、どちらへ動いたかを残します。

少なくとも、次の情報を組み合わせます。

  • 体位:座位、半座位、臥位など
  • 呼吸相:吸気時・呼気時
  • 部位:胸郭、腹部、局所胸壁
  • 方向:外側へ動く、内側へ引き込まれる
  • 同期性:胸郭と腹部が同方向か逆方向か
  • 併存所見:RR、SpO2、呼吸補助筋、呼吸困難など

たとえば、

「臥位、吸気時に胸郭拡張を認める一方、腹部は内方へ移動。座位では目立たず。RR増加、呼吸補助筋使用あり」

のように記録すると、「奇異性呼吸あり」とだけ書くより所見を正確に共有できます。

また、前回と比べて新規出現なのか、体位によって増悪しているのかまで残すと再評価につながります。

奇異性呼吸で避けたい3つの思い込み

奇異性呼吸で避けたい判断
思い込み 実際の考え方
奇異性呼吸=腹部がへこむ呼吸 胸郭・腹部・局所胸壁に複数の奇異性運動パターンがある
腹部奇異性運動=横隔膜麻痺 横隔膜機能低下を疑う手がかりだが、単独では確定できない
奇異性運動がない=横隔膜は正常 身体所見だけでは横隔膜機能低下を除外できない

奇異性呼吸では「名称を当てること」より、「どこが・いつ・どちらへ動いたか」を捉えることが重要です。

奇異性呼吸のよくある質問

奇異性呼吸とは簡単にいうと何ですか?

胸郭、腹部、局所胸壁などが、通常とは異なる方向やタイミングで動く呼吸パターンです。代表的には、吸気時に胸郭が拡張する一方で腹部が内側へ動く腹部奇異性運動があります。

奇異性呼吸とシーソー呼吸は同じですか?

臨床では、胸郭と腹部が逆方向へ動く異常呼吸をシーソー呼吸と表現することがあります。厚生労働省のSBT手順書でも「シーソー呼吸(奇異性呼吸)」という表記があります。ただし用語の使われ方には幅があるため、「胸郭が外側、腹部が内側」など実際の動きを具体的に記録する方が明確です。

奇異性呼吸は横隔膜麻痺を意味しますか?

必ずしも意味しません。吸気時の腹部内方運動は横隔膜機能低下を疑う重要な手がかりですが、腹筋活動や胸郭運動などの影響も受けるため、身体所見だけで横隔膜麻痺を確定することはできません。

腹部奇異性運動がなければ横隔膜機能低下は否定できますか?

否定できません。横隔膜機能が低下していても胸腹部運動だけでは奇異性運動が明瞭にみえない場合があります。症状や臥位での変化、呼吸機能、横隔膜超音波などを組み合わせて評価します。

奇異性呼吸は臥位で確認した方がよいですか?

横隔膜機能低下による胸腹部奇異性運動は、臥位で目立つことがあります。ただし、呼吸困難が強い患者を観察目的だけで無理に臥位へする必要はありません。

奇異性呼吸と陥没呼吸は何が違いますか?

陥没呼吸は、吸気時に胸骨上・鎖骨上・肋間などの局所胸壁が内側へ引き込まれる所見です。奇異性呼吸では、胸郭・腹部・局所胸壁の動く方向やタイミングそのものに注目します。

SpO2が正常なら奇異性呼吸があっても大丈夫ですか?

SpO2だけでは判断できません。SpO2は酸素化の指標であり、肺胞換気や呼吸筋機能を直接示すものではありません。呼吸数、呼吸の深さ、呼吸補助筋使用、会話、意識状態なども合わせて確認します。

まとめ|奇異性呼吸は「どこが・いつ・どちらへ動くか」で見る

奇異性呼吸は、胸郭・腹部・局所胸壁などが通常とは異なる方向やタイミングで動く呼吸パターンを表す言葉です。

「奇異性呼吸=吸気時に腹部がへこむ呼吸」と狭く覚えないことが重要です。横隔膜機能低下では胸郭拡張時に腹部が内側へ動くことがありますが、肋間筋機能低下では胸郭が内側・腹部が外側へ動くパターンもあり、動揺胸郭では局所胸壁が奇異性運動を示します。

腹部奇異性運動は横隔膜機能低下の重要な手がかりですが、それだけで横隔膜麻痺と診断することはできません。また、奇異性運動がみられないからといって横隔膜機能低下を否定することもできません。

そのため臨床では、呼吸相 → 部位 → 動く方向 → 胸腹部の同期性 → 体位による変化 → 呼吸仕事量 → SpO2・会話・意識 → 必要に応じて横隔膜・換気の追加評価の順で整理します。

そして記録では、単に「奇異性呼吸あり」とせず、「臥位・吸気時に胸郭拡張、腹部内方移動」のように観察した現象そのものを残すことが、再評価と情報共有につながります。

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