- 起立性低血圧の評価は「条件固定・起立試験・症状確認」をセットで行います
- 起立性低血圧の判定基準|立位3分以内の血圧低下を確認します
- 開始前チェック|数値より先に危険症状と起立との関連を確認します
- 測定準備|安静時間・腕の高さ・カフサイズをそろえます
- 起立試験の方法|臥位5分・立位1分・立位3分でBP・HR・症状を確認します
- 結果の見方|血圧低下・心拍数・症状・回復を組み合わせます
- 原因探索|神経因性・体液量減少・薬剤・廃用などを整理します
- 当日の対応|続行・負荷調整・中止を症状と安全性から判断します
- 非薬物対応|原因と禁忌を確認して組み合わせます
- 離床の進め方|短時間・段階的・反復を基本にします
- よくある失敗|測定条件と症状の記録が揃わないと比較できません
- 記録方法|条件・BP・HR・症状・対応を1セットで残します
- 起立性低血圧の評価に関するよくある質問
- まとめ|起立試験の条件と記録項目を固定することから始めます
- 参考文献
- 著者情報
起立性低血圧の評価は「条件固定・起立試験・症状確認」をセットで行います
起立性低血圧(orthostatic hypotension:OH)は、一般に臥位から立位へ移行したあと3分以内に、収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上持続して低下する状態です。
ただし、リハビリ中の判断は血圧低下だけでは決められません。臥位での安静時間、起立後の測定時点、心拍数、症状、支持性、安静後の回復を同じ条件で確認することが重要です。
この記事では、起立性低血圧を疑ったときの開始前確認、起立試験、結果の見方、当日の対応、記録方法を順番に整理します。原因をその場で断定するのではなく、転倒や失神を防ぎながら次の評価・相談につなげましょう。
起立性低血圧の判定基準|立位3分以内の血圧低下を確認します
一般的な起立性低血圧は、臥位から立位へ移行したあと3分以内に、次のいずれかを認める場合に該当します。
- 収縮期血圧が20mmHg以上低下する
- 拡張期血圧が10mmHg以上低下する
判定には、立位前の臥位血圧と、立位後の血圧との差を用います。1回の測定値だけでなく、血圧低下が持続しているか、症状を伴っているかも確認します。
| 確認項目 | 確認する内容 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 血圧 | 臥位から立位後のSBP・DBPの変化 | OHの判定基準に該当するか確認する |
| 心拍数 | 起立に伴うHRの変化 | 循環反応や原因探索の参考にする |
| 症状 | めまい、眼前暗黒感、悪心、脱力感、冷汗など | 転倒・失神危険性と当日の対応を判断する |
| 出現時点 | 起立直後、1分、3分、その後 | 早期または遅れて出現する変化を把握する |
| 回復 | 座位・臥位へ戻したあとの症状と血圧 | 中止後の経過と報告の必要性を判断する |
血圧低下があっても症状が出ない場合があります。反対に、基準を満たさなくても、めまいや失神前兆が強い場合は安全確保を優先してください。
開始前チェック|数値より先に危険症状と起立との関連を確認します
測定を始める前に、胸部症状、呼吸困難、意識状態などを確認します。危険症状がある場合は、起立試験を続けず、安全な体位で安静を確保して施設の手順に従って報告します。
| 確認項目 | 見るもの | 実務のポイント |
|---|---|---|
| 危険症状 | 胸部不快感、強い呼吸困難、意識低下、失神前兆 | 認める場合は起立せず、安全確保と報告を優先する |
| 起立との関連 | 端座位・立位で悪化し、臥位で改善するか | 症状が出た体位と時点を記録する |
| 反復パターン | 朝、食後、排泄後、入浴後、服薬後など | 同じ場面で繰り返すか確認する |
| 薬剤 | 降圧薬、利尿薬、α遮断薬など | 薬剤名を断定材料にせず、服薬時刻を共有する |
| 体液量に関する情報 | 口渇、尿量低下、発熱、下痢、嘔吐、食事摂取量 | 脱水や体液量減少が疑われる場合は共有する |
| 立位の安全性 | 下肢支持性、介助量、失神歴、転倒歴 | 必要に応じて複数名介助やベッドサイドで実施する |
測定準備|安静時間・腕の高さ・カフサイズをそろえます
起立試験では、体位変換前後の血圧差を比較します。安静不足や腕位置の違いがあると、変化が測定誤差なのか循環反応なのか判断しにくくなります。
同じ患者の経過を追う場合は、安静時間、測定肢、腕の高さ、血圧計、測定時刻を可能な範囲でそろえてください。
| 条件 | 条件が異なる場合の問題 | そろえ方 |
|---|---|---|
| 安静時間 | 直前の移動や運動による変動が残る | 臥位で5分程度安静にしてから測定する |
| 腕の位置 | 心臓より低い位置では高めに測定されやすい | 枕やタオルで上腕を心臓の高さに近づける |
| カフサイズ | 上腕に合わないカフでは誤差が生じる | 上腕周囲径に適したカフを素肌に装着する |
| 測定中の会話 | 測定値の再現性が低下する | 説明は事前に行い、測定中は会話を控える |
| 測定機器 | 機器間差が経時変化に含まれる | 可能なら同一機器を使用し、使用機器を記録する |
| 測定時刻 | 日内変動や食事・服薬の影響を比較しにくい | 時刻と食事・服薬との関係を記録する |
起立試験の方法|臥位5分・立位1分・立位3分でBP・HR・症状を確認します
実務では、臥位で安静にしたあと基準値を測定し、立位後1分と3分を目安に血圧・心拍数・症状を確認します。
立位直後に症状が出た場合は、予定した測定時点まで無理に立位を続けません。安全な体位へ戻し、症状、血圧、心拍数、回復状況を確認します。

| 手順 | 体位 | 時点 | 測定項目 | 観察項目 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 臥位 | 安静5分後 | BP・HR・症状 | 意識状態、呼吸、胸部症状、顔色 |
| 2 | 立位 | 起立後1分 | BP・HR・症状 | めまい、眼前暗黒感、悪心、冷汗、支持性 |
| 3 | 立位 | 起立後3分 | BP・HR・症状 | 症状の持続、増悪、会話量、介助量の変化 |
| 4 | 臥位または座位 | 中止・終了後 | BP・HR・症状 | 症状と循環状態が回復するか |
立位できない場合
立位が安全に行えない場合は、端座位までの血圧・心拍数・症状の変化を確認します。ただし、臥位から端座位への測定は、標準的な臥位から立位への起立試験と同じ条件ではありません。
記録には「端座位で実施」と明記し、端座位の結果だけでOHを確定せず、立位評価の可否や追加評価をチームで検討してください。
結果の見方|血圧低下・心拍数・症状・回復を組み合わせます
起立試験の結果は、判定基準への該当だけでなく、症状の有無、心拍数の反応、立位を維持できた時間、安静後の回復を組み合わせて解釈します。
| 所見 | 考え方 | 次の対応 |
|---|---|---|
| 判定基準を満たし、症状もある | 症候性OHとして転倒・失神リスクを優先する | 負荷を中止または調整し、経過を共有する |
| 判定基準を満たすが症状がない | 無症候でも立位・歩行中に変化する可能性がある | 追加観察を行い、個人の反復パターンを確認する |
| 基準未満だが症状が強い | 測定時点や別の原因を含めた評価が必要 | 数値だけで続行せず、安全確保と共有を優先する |
| 立位保持ができない | 循環反応だけでなく運動・認知・支持性も影響する | 安全な体位へ戻し、立位不能の理由を記録する |
| 3分以降に症状が出る | 通常の3分測定だけでは把握できない場合がある | 医師への相談や追加の起立・傾斜試験を検討する |
原因探索|神経因性・体液量減少・薬剤・廃用などを整理します
起立試験だけでOHの原因を確定することはできません。原因探索では、自律神経機能、脱水や出血、薬剤、循環器疾患、長期臥床などを整理します。
心拍数の変化は原因を考える手がかりになりますが、年齢、薬剤、不整脈、ペースメーカーなどの影響を受けます。心拍数の反応だけで神経因性OHを断定しないでください。
| 整理軸 | 確認する情報 | 実務での対応 |
|---|---|---|
| 神経因性 | 自律神経障害を伴う疾患、心拍数反応、臥位高血圧 | 所見をまとめ、原因疾患と治療方針を医師へ確認する |
| 体液量減少 | 発熱、下痢、嘔吐、食事・水分摂取、尿量、出血 | 摂取・排泄情報を看護師や医師と共有する |
| 薬剤 | 降圧薬、利尿薬、血管拡張薬などと服薬時刻 | 自己判断で変更せず、症状との時間的関係を共有する |
| 廃用・長期臥床 | 臥床期間、活動量、下肢筋力、座位・立位耐性 | 短時間の離床を段階的に反復し反応を記録する |
| 循環器・その他 | 不整脈、心不全、貧血、感染症、内分泌疾患など | 新規症状や回復不良があれば医学的評価につなげる |
当日の対応|続行・負荷調整・中止を症状と安全性から判断します
リハビリを続けるかどうかは、OHの判定基準だけで一律に決めません。症状、意識状態、支持性、転倒危険性、血圧・心拍数の推移、安静後の回復、患者固有の指示を確認します。
| 区分 | 状態の例 | 対応 | 記録する内容 |
|---|---|---|---|
| 続行を検討 | 症状がなく、支持性が保たれ、循環状態が安定している | 反応を観察しながら段階的に進める | 測定値、症状なし、実施した負荷 |
| 負荷調整 | 軽い症状や血圧低下があるが、休息で速やかに改善する | 座位中心、短時間、休息を増やして再評価する | 症状、回復までの時間、変更した負荷 |
| 中止・相談 | 失神前兆、意識変化、胸部症状、強い呼吸困難、立位保持困難 | 安全な体位へ戻し、安静、再測定、報告を行う | 発症時点、症状、測定値、対応、回復状況 |
患者ごとの安静度、血圧管理目標、疾患、医師指示、施設の中止基準がある場合は、それらを優先してください。
非薬物対応|原因と禁忌を確認して組み合わせます
OHへの非薬物対応には、ゆっくりした体位変換、圧迫、飲水、食事や活動時間の調整などがあります。ただし、すべての患者に同じ方法を適用できるわけではありません。
| 対応 | 目的 | 確認事項 |
|---|---|---|
| 段階的な体位変換 | 急激な循環変化と転倒を避ける | 背上げ、端座位、立位の各段階で症状を確認する |
| 下肢・腹部の圧迫 | 下肢や腹部への血液貯留を抑える | 皮膚、末梢循環、呼吸苦、装着方法を確認する |
| 飲水・塩分調整 | 循環血液量を保つ | 心不全、腎機能障害、嚥下障害、食事制限の指示を優先する |
| 食後の時間調整 | 食後の血圧低下と転倒を避ける | 食後症状の有無と食事量、実施時間を確認する |
| 下肢筋収縮 | 筋ポンプ作用を利用する | 立位前に足関節運動などを無理のない範囲で行う |
具体的な運動療法や生活指導は、起立性低血圧の運動療法・生活指導で詳しく整理しています。
離床の進め方|短時間・段階的・反復を基本にします
立位耐性が低い場合は、長時間立ち続けるより、症状が出ない範囲の離床を短時間で反復します。一度に増やす要素は、座位時間、立位時間、立ち上がり回数、歩行距離のうち1つに絞ると反応を追いやすくなります。
| 段階 | 実施例 | 確認項目 |
|---|---|---|
| 1 | 背上げから端座位へ移行する | 症状、顔色、BP、HR、座位保持能力 |
| 2 | 短時間の立位を休息を挟んで反復する | 失神前兆、支持性、回復までの時間 |
| 3 | 短距離歩行と座位休息を組み合わせる | 歩行中の症状、転倒リスク、循環反応 |
| 4 | 症状が少ない時間帯へ活動を調整する | 朝、食後、服薬後などの日内変動 |
よくある失敗|測定条件と症状の記録が揃わないと比較できません
OHへの対応が担当者によって変わる主な原因は、測定条件、症状の表現、負荷調整の基準が共有されていないことです。
| よくある失敗 | 問題 | 対策 |
|---|---|---|
| 血圧だけで判断する | 失神前兆や支持性の低下を見落とす | BP・HR・症状・立位能力をセットで記録する |
| 起立後1分だけ測定する | 3分までに生じる血圧低下を見落とす | 安全に可能な場合は1分と3分を確認する |
| 毎回の条件が違う | 前回値との比較ができない | 体位、安静時間、測定時刻、機器を記録する |
| 端座位の結果を立位試験として扱う | 標準的なOH判定と条件が異なる | 端座位評価であることを明記する |
| 「ふらつきあり」だけで終える | 症状の程度や再現性を共有できない | 眼前暗黒感、冷汗、悪心、支持増加などを具体的に書く |
| 原因をその場で断定する | 薬剤や疾患など複数要因を見落とす | 観察事実と原因の推測を分けて共有する |
記録方法|条件・BP・HR・症状・対応を1セットで残します
OHは日内変動や測定条件の影響を受けます。次回も同じ条件で評価できるように、体位、安静時間、測定時刻、血圧、心拍数、症状、対応をまとめて記録します。
| 時点 | 体位 | BP(mmHg) | HR(/分) | 症状・所見 | 対応 |
|---|---|---|---|---|---|
| 基準値 | 臥位・安静5分 | ___/___ | ___ | ______ | ______ |
| 起立後1分 | 立位 | ___/___ | ___ | ______ | ______ |
| 起立後3分 | 立位 | ___/___ | ___ | ______ | ______ |
| 対応後 | 臥位・座位 | ___/___ | ___ | 改善・不変・増悪 | ______ |
記録例:臥位5分後126/72mmHg、HR68/分、症状なし。立位1分104/64mmHg、HR76/分、軽い眼前暗黒感あり。立位継続を中止して臥位へ戻し、2分後に症状消失。担当看護師へ共有。
起立性低血圧の評価に関するよくある質問
Q1.起立後は1分と3分のどちらを測定しますか?
A.安全に実施できる場合は、起立後1分と3分の両方を測定します。一般的なOHの判定は、立位後3分以内の血圧低下を基準とします。症状が出た場合は、3分まで無理に立位を続けません。
Q2.端座位で血圧が下がればOHと判定できますか?
A.端座位での変化は循環反応を把握する参考になりますが、標準的な臥位から立位への起立試験とは条件が異なります。「端座位で実施」と記録し、端座位の結果だけでOHを確定しないようにします。
Q3.血圧が下がっても症状がなければリハビリを続けられますか?
A.無症状でも、歩行や長時間立位で症状が出る場合があります。血圧低下の程度、心拍数、支持性、患者固有の指示を確認し、必要に応じて負荷を調整します。
Q4.心拍数が上がらなければ神経因性OHですか?
A.起立時の心拍数上昇が乏しいことは神経因性OHを考える手がかりの一つですが、それだけでは確定できません。薬剤、不整脈、ペースメーカー、年齢などの影響も含めて評価します。
Q5.リハビリ中に失神前兆が出た場合はどうしますか?
A.立位や歩行を中止し、転倒を防ぎながら臥位などの安全な体位へ戻します。意識状態、血圧、心拍数、胸部症状、呼吸状態を確認し、施設の手順に従って速やかに共有してください。
まとめ|起立試験の条件と記録項目を固定することから始めます
起立性低血圧の評価では、臥位から立位後3分以内の血圧低下を確認します。ただし、リハビリ中の安全判断には、血圧だけでなく心拍数、症状、立位能力、安静後の回復を組み合わせる必要があります。
まずは臥位5分後・立位1分・立位3分のBP/HR/症状を同じ条件で記録してください。失神前兆、意識変化、胸部症状、強い呼吸困難などがある場合は、測定の完遂より安全確保と報告を優先します。
低血圧が起きた直後の対応は、バイタル変化の初期対応で確認できます。
参考文献
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- Juraschek SP, Cortez MM, Flack JM, et al. Orthostatic Hypotension in Adults With Hypertension: A Scientific Statement From the American Heart Association. Hypertension. 2024;81(3):e16-e30. doi:10.1161/HYP.0000000000000236. PubMed
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- Umemura S, Arima H, Arima S, et al. The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension (JSH 2019). Hypertens Res. 2019;42(9):1235-1481. doi:10.1038/s41440-019-0284-9. PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下
