ABC スケールの評価方法|採点・解釈・記録テンプレ

評価
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ABC スケールとは?(バランスの「自信度」を数値化)

評価は「実施 → 記録 → 解釈 → 次の一手」までが 1 セット。まずは “ブレない型” を作ると回ります。 PT キャリアガイドを見る(評価の型を作る)

ABC スケール(Activities-specific Balance Confidence Scale/活動特異的バランス自信度スケール)は、日常の活動場面に対して「転倒せずにできる自信」を 0〜100%で答えてもらい、平均値で “バランス自信度” を数値化する主観尺度です。能力そのものではなく、自信(自己効力感に近い側面)を扱うのがポイントです。

転倒への不安(心配)を問う尺度や、近い概念の尺度との使い分けは、比較記事にまとめました:FES-I・ABC・MFES の違い(比較・使い分け)

1 分まとめ(結論:ABC は “自信のズレ” を拾う)

ABC は、TUG や BBS などの客観検査だけでは見えにくい「できる力」と「やる自信」のズレを拾うのに強い尺度です。運用のコツは、①基準期間(最近 1〜2 週)を固定し、② 0〜100% の意味づけを揃え、③平均(%)+低値の場面をセットで記録することです。

関連:ABC/FES-I/MFES をどう選ぶかの全体像は、PROM(自信・不安)の選び方(親記事)にまとめています。

構成・採点(16 項目 × 0〜100%)

ABC は 16 項目の活動場面について、各項目を 0%(全く自信がない)〜100%(完全に自信がある)で評価し、全回答の平均(%)を総合スコアとして扱います。やり方自体はシンプルですが、説明と集計ルールを標準化しないとブレやすい点に注意します。

  • 最終スコアは 平均(%)で提示(小数第 1 位程度で十分)。
  • 未経験などで答えられない項目は欠測として扱い、母数を併記(例:78.1%(15/16))。
  • 欠測がある場合は、理由(未経験・環境がない等)をメモして、再評価でも同ルールで運用。
ABC スコアの目安(臨床での “ざっくり層別” )
平均スコア(%) 解釈の目安 臨床メモ
< 67 自信が低い(転倒リスク増の示唆) 転倒歴・既往・補助具・歩行能力と合わせて評価。まず安全確保とリスク要因の整理を優先。
67〜80 中等度(環境で回避が残りやすい) 屋外・段差・方向転換など “場面依存” を特定して、環境調整+段階づけ練習へ。
> 80 比較的高い(苦手がピンポイント化) 階段・人混みなど特定場面の低値を抽出し、実場面に近い練習設計へ。

対象と実施タイミング(向く/向かない)

向くのは、立位・歩行がある程度可能で、生活場面(屋内〜屋外)に対する自信の変化を追いたいケースです。「機能は上がったのに外出が増えない」「転倒後に行動が縮む」などで価値が出やすいです。

注意が必要なのは、質問の理解が難しい場合や、急性増悪で状態が安定しない場合です。まずは説明の統一と基準期間の固定(最近 1〜2 週)を優先します。

実施手順(自記/面接のやり方)

ABC を “ブレなく回す” ための最重要点は、「能力」ではなく「自信」を聞いていると最初に共有することです。以下の 3 ステップで標準化します。

  1. 説明:「できるかどうか」ではなく「転倒せずにできる自信の程度」を評価することを共有。見本 1 問で 0・50・100%のイメージを確認。
  2. 回答方法:自記は読み書き・視力を確認。面接は誘導を避け、第一印象に近い数値を尊重。
  3. 集計:16 項目の平均(%)を算出。欠測があれば 母数併記(例:78.1%(15/16))。

所見の読み方と次のアクション(ズレで介入が決まる)

ABC は単独で “安全/危険” を決める検査ではなく、「自覚的な自信」と「客観的な能力」の関係を整理するための尺度です。以下の 3 パターンで読むと、目標設定が作りやすくなります。

  • ABC 低値 + 客観的バランス低下:筋力・バランス訓練、環境調整、転倒予防教育を組み合わせて、まずリスク低減を優先。
  • ABC 低値だが能力は保たれる:恐怖・回避が前面に出ている可能性。段階づけ(成功体験の積み上げ)と説明設計を重視。
  • 特定場面だけ低値:階段・段差・人混み・方向転換など “場面依存” を抽出し、その場面に寄せた課題設計へ。

記録テンプレ(そのままコピペ)

数値(平均%)だけで終わらせず、低値の場面を 1 行で残すと介入がブレません。

〖ABC〗平均 __.__ %(母数 __ / 16)
方式:自記・面接(担当:____)/基準:最近 1〜2 週
低値項目:____(例:外出先での歩行、階段下降、人混み)
併用評価:TUG __.__ 秒、5xSTS __.__ 秒、FGA __ / 30、Mini-BESTest __ / 28 など
解釈:自信と能力のズレ(例:自信が低いが能力は保たれる)
対応:場面の段階づけ(場面:____)+環境調整+再評価(同条件)

よくあるミスと対策(OK/NG 早見)

ABC がブレる典型パターンと対策(OK/NG 比較)
NG 起きやすい理由 OK(対策) 記録ポイント
「できますか?」と能力を聞いてしまう 質問の軸がズレて結果が変わる 「転倒せずにできる “自信” は何%?」に統一 導入文をテンプレ化
数値を提案して誘導する 面接で起きやすい 候補値を言わず、迷う時間も尊重 面接/自記を明記
初回と再評価で条件が違う 説明・環境が変わる 基準期間、言い回し、補助具条件を固定 基準と条件を併記
欠測の扱いが毎回違う 平均値が比較不能になる 母数併記+欠測理由を残す ○/16 と理由
平均%だけ見て終わる 介入につながらない 低値 “場面” を 1 行で残し課題へ 低値項目の具体

バランス評価全体の中での位置づけ(ABC は “自信”、機能検査は “能力”)

ABC は「どれくらい自信があるか」を示し、FGA や Mini-BESTest、5xSTS などは「どれくらいできるか」を示します。日常生活での活動範囲や回避行動を検討するときは、能力と自信のギャップを見ることで、目標設定と説明が具体化します。

評価の全体像(どの指標をどう組み合わせるか)を先に整理したい場合は、評価ハブも合わせてどうぞ:評価ハブ(全体像)

現場の詰まりどころ(「配る」だけで終わらせない)

現場では、ABC を “とりあえず配っている” ものの、その後の介入に結びつかず止まることがあります。詰まりの本質は「平均%」の高低ではなく、①低値の場面を課題に落とす②客観評価とのズレを共有する③同条件で経時変化を追うの 3 点が運用として固定されていないことです。

特に新人が入るタイミングで崩れやすいので、説明テンプレと記録テンプレを先に用意しておくと回ります。見学・面談で「教育体制」「評価の型」「振り返りの仕組み」を確認するチェックもあると詰まりが減ります:面談準備チェックを見ておく

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. ABC は何を測る検査ですか?

日常 16 場面について「転倒せずにできる自信」を 0〜100% で評価し、平均値で “バランス自信度” を数値化します。能力そのものではなく “自信” を扱う点がポイントです。

Q2. 実施時間はどれくらいですか?

自記で 5〜10 分が目安です。面接の場合も、誘導にならないよう導入文を揃え、第一印象に近い数値を尊重します。

Q3. 欠測(未経験項目)はどう扱えばいい?

欠測は母数から除外し、平均%(○/16)の形で母数併記します。欠測理由(未経験・環境がない等)もメモして、再評価でも同ルールで運用します。

Q4. カットオフはどう解釈すればいい?

集団データで目安は示されますが、単独で転倒の有無を断定するものではありません。転倒歴、補助具、歩行能力、客観的バランス指標と組み合わせて総合的に判断します。

次の一手(続けて読む)

参考文献

  1. Powell LE, Myers AM. The Activities-specific Balance Confidence (ABC) Scale. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 1995;50A(1):M28-M34. doi:10.1093/gerona/50a.1.m28. PubMed
  2. Talley KMC, Wyman JF, Gross CR. Psychometric properties of the activities-specific balance confidence scale. J Am Geriatr Soc. 2008;56(2):328-333. doi:10.1111/j.1532-5415.2007.01550.x PubMed
  3. Shirley Ryan AbilityLab. Activities-specific Balance Confidence Scale(概要). 公式ページ
  4. Ishige S, et al. Reliability/validity of the Activities-specific Balance Confidence scale in stroke(日本語文献は施設の購読環境に応じて確認).

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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