急性期脳卒中の高頻度リハとは|1日何回・何分が目安?
急性期脳卒中の高頻度リハビリテーションは、1回の訓練時間を長くするのではなく、患者の状態に応じて実施回数を増やす考え方です。2025年の国内研究では、発症後48時間以内の立位開始を目標とし、14日間にわたりPT・OTによるリハを頻回に実施した群で、歩行能力に関する指標が良好でした。ただし、すべての患者に同じ回数・時間を適用できるわけではありません。
この記事では、急性期病棟で働くPT・OTに向けて、研究で実施された回数・時間、離床開始時期、対象患者、効果と安全性の限界、臨床での組み立て方を整理します。研究結果と実務上の判断を区別し、次の介入につなげることが目的です。
研究での高頻度リハは1日何回・何分だったのか
2025年の国内研究では、高頻度群のリハ実施頻度は中央値3.3回/日、1回25.7分、14日間の合計820分でした。研究では、1回1〜2単位、1日3〜5回を目標としていました。これはPT・OTによるリハ全体の実施量であり、離床だけの時間や回数ではありません。[1]

高頻度と高用量は同じ意味ではない
高頻度は主に実施回数、高用量は実施時間や活動量などを含む訓練量に関係します。国内研究では、高頻度群の1回当たりの実施時間は対照群より短い一方、14日間の合計実施時間は長くなっていました。
| 指標 | 何を表すか | 注意点 |
|---|---|---|
| 開始時期 | 発症から離床・立位開始までの時間 | 早いほどよいとは限らない |
| 実施頻度 | 1日にリハを実施する回数 | PT・OT合算か、離床回数かを区別する |
| 1回時間 | 1回のリハに要した時間 | 離床時間や実際の運動時間と同義ではない |
| 総実施量 | 一定期間の合計実施時間 | 頻度だけでなく総量の影響も考える |
研究で得られた「3.3回/日」は、全患者に推奨される標準回数ではありません。また、短時間に分割すれば総実施量を無制限に増やしてよいという意味でもありません。患者の状態と介入後の反応を確認しながら、頻度・時間・内容を個別に調整します。
高頻度リハの効果|歩行指標は良好、mRSには有意差なし
研究では、退院時にFunctional Ambulation Categories(FAC)が3以上となった患者の割合は、高頻度群で有意に高くなりました。一方、modified Rankin Scale(mRS)0〜1の割合には、統計学的な有意差が認められませんでした。[1]
| 評価項目 | 高頻度群(121名) | 対照群(93名) | 群間比較 |
|---|---|---|---|
| FAC 3以上 | 106名 | 69名 | 有意差あり(p=0.013) |
| mRS 0〜1 | 71名 | 42名 | 有意差なし(p=0.054) |
| 不動関連の合併症 | 5名 | 5名 | 有意差なし(p=0.750) |
| 神経学的有害事象 | 4名 | 2名 | 有意差なし(p=0.699) |
FAC 3以上には、監視や助言のもとで歩行できる段階も含まれます。そのため、FAC 3以上を「完全な歩行自立」と同一視しないことが重要です。
また、合併症や神経学的有害事象に有意差がなかったことは、両群の安全性が同等であると証明されたことを意味しません。研究の対象条件や症例数を踏まえて解釈する必要があります。
研究結果をそのまま標準手順にできない理由
この研究は、単一施設で実施された後ろ向きの非無作為化比較研究です。高頻度リハ導入前後の異なる時期の患者を比較しているため、医療体制や診療内容の変化などが結果に影響した可能性があります。
さらに、高頻度群121名のうち103名はNIHSS 1〜7の軽症例でした。高頻度群は対照群と比較して実施頻度だけでなく総実施時間も長かったため、頻度を増やしたこと自体が歩行指標の差を生んだと断定することはできません。
研究から読み取れるのは、選択された急性期脳卒中患者に対して頻回のリハを提供することが、良好な歩行転帰と関連する可能性です。重症例を含むすべての患者で、同じ方法の有効性と安全性が確立したわけではありません。
離床開始は24時間以内?48時間以内?|AVERTと国内指針を整理
日本脳卒中学会の「脳卒中急性期リハビリテーション診療の指針」では、主に脳梗塞を対象として、発症後24〜48時間からの離床開始が妥当と考えられています。一方、軽症脳卒中や非高齢の虚血性脳卒中では、離床時間を短くし頻度を増やすなどの調整を行ったうえで、24時間以内の開始も検討できるとしています。[2,3]
AVERTで問題となったのは何か
AVERTは、発症後24時間以内から開始する超早期・高用量の離床介入を通常ケアと比較した無作為化比較試験です。超早期・高用量離床群では、3か月後に良好な機能的転帰を得た患者の割合が通常ケア群より低い結果となりました。[4]
この結果を「脳卒中では24時間以内の離床を一律に禁止する」と解釈するのは適切ではありません。離床開始時期と、1回の離床時間・実施頻度・総実施量を分けて考えることが重要です。
| 情報源 | 主な内容 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| AVERT(2015) | 発症24時間以内の超早期・高用量離床では良好な機能的転帰が減少 | 超早期に高い離床量を一律に課さない |
| 国内指針(2024年掲載) | 主に脳梗塞では24〜48時間からの離床開始が妥当。24時間以内は対象を選んで検討 | 病型、重症度、治療内容、安定性を確認する |
| 国内研究(2025) | 48時間以内の立位開始を目標に14日間の頻回リハを検討 | 実施量と歩行転帰の関連を示すが、全例への適用基準ではない |
国内研究の立位開始中央値5時間をどう解釈するか
2025年研究では、発症から立位開始までの時間は高頻度群で中央値5時間、対照群で中央値11時間でした。ただし、両群間に統計学的な有意差は認められていません。[1]
この研究における「48時間以内の立位開始」は、24〜48時間帯だけを意味するわけではなく、24時間以内に立位を開始した患者も含まれます。また、立位開始時刻は研究対象者の実測値であり、発症5時間後の立位を推奨するものではありません。
実際の臨床では、脳卒中の病型、神経症状、画像所見、血圧管理、再灌流療法後の管理条件、医師の安静度指示を優先して離床開始を判断します。
対象患者の選び方|研究対象と対象外を分ける
国内研究の結果を臨床へ応用する際は、患者が研究対象に近い条件を満たしているかを確認します。脳梗塞か脳出血かだけで判断せず、病巣、治療内容、重症度、発症前ADL、医学的安定性を照合する必要があります。
| 確認項目 | 研究での扱い | 臨床上の注意点 |
|---|---|---|
| 病巣 | テント上病変を対象 | 脳幹・小脳などのテント下病変へ直接一般化しない |
| 治療内容 | 保存的治療例を対象 | 外科的手術や人工呼吸器管理などを要する患者は別途判断する |
| 重症度 | 軽症例が多数 | 重症例へ同じ回数・時間を機械的に適用しない |
| 発症前ADL | 発症前mRS 4・5は除外 | 発症前の介助量や移動能力を確認する |
| 医学的安定性 | 施設の早期離床中止基準に該当する患者を除外 | 神経症状、循環動態、合併症などを確認する |
研究では、一過性脳虚血発作、くも膜下出血、テント下病変、外科的手術・人工呼吸器管理・人工透析などを要する患者も除外されました。[1]
対象外であることは、リハビリテーションそのものが禁忌であることを意味しません。この研究の実施量と転帰を直接適用できないという意味であり、それぞれの疾患・治療経過に応じた判断が必要です。
脳出血や80歳以上でも同じように実施できるか
研究では脳出血患者や80歳以上の患者についても有害事象を比較しましたが、各群の人数は限られており、十分な安全性が保証されたわけではありません。
脳出血では、血圧管理、血腫の変化、脳浮腫、水頭症、神経症状などを確認する必要があります。年齢のみで実施可否を判断するのではなく、病態・重症度・治療内容・全身状態を合わせて評価します。
再灌流療法後、くも膜下出血、進行性の神経症状がある患者などでは、それぞれの治療方針と安静度指示を優先します。
臨床でどう組み立てるか|開始条件から頻度調整まで
臨床では、研究の回数をそのまま採用するのではなく、開始できる状態か→どの活動を行うか→どれだけ実施したか→反応はどうか→次回どう調整するかの順に組み立てます。
| 段階 | 確認すること | 次の判断 |
|---|---|---|
| 1. 開始前 | 病型・治療内容、安静度指示、神経症状、血圧・呼吸循環状態 | 離床可能か、評価や医師への確認を優先するか |
| 2. 初回実施 | 座位、立位、移乗などでの症状・体位反応 | 実施できる活動と介助条件を決める |
| 3. 用量設定 | 1回の時間、活動内容、日内の実施回数 | 患者の反応に応じて個別に設定する |
| 4. 実施後 | 症状、バイタル、疲労、神経所見の変化 | 継続・減量・中止・相談を判断する |
| 5. 次回 | 前回との変化、実施条件の再現性 | 時間・頻度・活動内容を調整する |
この表は研究プロトコルをそのまま示したものではなく、急性期リハの実施量を検討するための実務上の整理です。離床の実施可否や増量の決定では、医師の指示と施設の安全管理基準を優先してください。
1日の回数を増やす前に確認すること
高頻度リハを検討する際は、単純に実施回数だけを増やすのではなく、1回ごとの反応を確認します。
- 前回の介入後に神経症状や全身状態の悪化がないか
- 座位・立位・歩行などの活動を同じ条件で再現できるか
- 実施後の疲労や起立性症状が回復しているか
- 回数を増やすことで1回時間や総実施量がどう変わるか
- 病棟での移動・ADLとリハ場面の活動量を区別できているか
医学的に安定していても、実施後に疲労が強く残る、介助量が増える、次回の再現性が低下する場合は、頻度・時間・活動内容を再検討します。増量の条件を一律の数値だけで固定しないことが重要です。
14日間の高頻度リハ|日数だけで段階を固定しない
2025年研究では発症から14日間にわたり頻回のリハが行われましたが、すべての患者に共通する日数別の進行表が検証されたわけではありません。臨床では経過日数だけでなく、医学的安定性・現在の活動能力・介入後の反応から次の課題を選びます。
| 活動段階 | 主な課題 | 次へ進む前の確認点 |
|---|---|---|
| 離床開始期 | 安静度、体位反応、座位・立位の可否 | 神経症状・循環動態の安定 |
| 基本動作拡大期 | 移乗、立位保持、介助下歩行 | 介助量、活動後の疲労、症状変化 |
| 活動反復・拡大期 | 歩行・ADL練習、日内の頻度調整 | 同条件での再現性、病棟での安全性 |
上記は日付で機械的に切り替える段階ではありません。患者によっては早期から歩行練習が可能な場合もあれば、医学的管理を優先して離床を進められない場合もあります。
また、14日間は今回紹介した研究の介入期間です。すべての患者が14日目まで同じ頻度を維持すべきという意味ではなく、退院・転棟・医学的状態の変化に応じて計画を見直します。
高頻度リハの中止・再開判断|頻度より安全を優先する
新たな神経症状、意識レベルの低下、著しい循環・呼吸状態の変化が生じた場合は、予定した実施頻度よりも中止と原因確認を優先します。症状の安定が確認できない状態で、単に負荷を1段階下げて再開することは適切ではありません。
- 意識レベル、麻痺、失語、失調などの新たな変化
- 増悪する頭痛・悪心など、脳卒中病変の進行を疑う所見
- 血圧、心拍、呼吸状態、SpO2の著しい変化
- 起立性低血圧に伴う症状や失神リスク
- 強い疲労や、活動後に状態が回復しない場合
研究では施設独自の早期離床中止基準を設定し、その基準に該当する患者を対象から除外していました。したがって、研究の結果を根拠に、医学的に不安定な患者へ同じ実施量を提供することはできません。[1]
異常が生じた際は、必要な初期対応と医師・病棟スタッフへの報告を行い、再評価の結果と新たな指示に基づいて再開可否を判断します。
具体的な確認項目と再開判断は、離床の中止基準・再開判断の記事で詳しく整理しています。
記録の型|頻度・時間・反応を分けて残す
高頻度リハでは、「1日何単位実施したか」だけでは患者の活動量や反応を十分に把握できません。実施回数、1回時間、活動内容、体位・介助条件、症状変化、次回方針を分けて記録することで、継続・減量・増量の判断につなげます。
| 記録項目 | 記載の型 |
|---|---|
| 開始条件 | 発症後○時間/病型・治療内容/安静度指示/神経症状・バイタル |
| 1回の実施内容 | 活動内容/実施時間○分/立位・歩行条件/介助量 |
| 日内の実施量 | PT○回・OT○回/合計○回/合計○分 |
| 実施前後の反応 | 血圧・心拍・SpO2/神経症状/頭痛・悪心/疲労 |
| 次回方針 | 継続・減量・中止・再評価/変更する条件/共有先 |
記録例|実施回数と次回判断をつなげる
以下は記載方法を示すための架空の例であり、研究対象者の実データではありません。
記録例(架空症例)
発症後3日。医師の安静度指示を確認。介入前は神経症状の増悪なく、循環・呼吸状態は安定。
本日PT 2回、OT 1回を実施。PTでは立位保持と介助下歩行を実施し、各回の時間・歩行条件・介助量を記録。
介入前後に新たな神経症状は認めず。午後は疲労感が強く、予定していた歩行距離の増量を見送り。
次回は疲労の回復と歩行条件の再現性を確認し、実施時間・頻度を再検討する。
研究の数値と比較する場合は、PT・OTの実施頻度なのか、離床した回数なのか、歩行練習の回数なのかを区別してください。異なる指標を同じ「回数」として扱うと、用量を誤って解釈する可能性があります。
まとめ|回数より先に対象と用量の意味を確認する
急性期脳卒中の高頻度リハは、単純に実施回数を増やせばよいというものではありません。2025年の国内研究では、選択された患者に対する頻回のリハと良好な歩行転帰との関連が示されましたが、すべての患者に共通する最適な回数・時間が確立したわけではありません。
臨床で重要なのは、開始時期・1回時間・1日頻度・総実施量・患者の反応を分けて考えることです。研究対象との違いを確認し、医学的安定性を優先して、実施量の継続・変更・中止を判断してください。
次の一手|全体像と歩行用量を確認する
高頻度リハの考え方を整理したら、次は脳卒中リハの全体像、または歩行練習の具体的な用量設定を確認すると、実際の介入計画につなげやすくなります。
参考文献
- Watanabe K, Takada Y, Yamamoto H. 急性期脳卒中患者における高頻度リハビリテーションの有効性および安全性―テント上病変ならびに保存的治療例を対象とした検討―. 理学療法学. 2025;52(5):267-275. DOI / J-STAGE全文
- 日本脳卒中学会. 脳卒中急性期リハビリテーション診療の指針. 脳卒中. 2024;46(1):47-86. DOI / J-STAGE
- Kakuda W, Nakajima M, Oki K, et al. Evidence and Recommendations for Acute Stroke Rehabilitation from the Japan Stroke Society: Abridged Secondary Publication of the Japanese-language Version. Prog Rehabil Med. 2024;9:20240015. DOI / PubMed
- AVERT Trial Collaboration group. Efficacy and safety of very early mobilisation within 24 h of stroke onset (AVERT): a randomised controlled trial. Lancet. 2015;386(9988):46-55. DOI / PubMed
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

