ADL と IADL の違い【比較・使い分け】PT 評価ガイド

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ADL と IADL の違いを整理:理学療法士の評価と覚え方ガイド

ADL(基本的日常生活活動)と IADL(手段的日常生活活動)の違いは理解していても、「どの尺度をいつ使うか」「リハビリ目標や退院支援とどう結びつけるか」で迷いやすいところです。本稿では、理学療法士・作業療法士 1 年目でも使いやすいように、ADL / IADL の違いと覚え方、代表的スケールの使い分けを 1 ページに整理します。

ポイントは、尺度を「入院=ADL、在宅=IADL」のように単純化せず、目的×対象×環境×制度の 4 軸で選ぶことです。ADL と IADL を往復しながら評価すると、介入の優先順位と退院後の生活像がつながり、カンファレンスや家族説明も一気に楽になります。

評価の「選び方」を整えると、臨床の迷いと手戻りが減ります。 評価 → 介入 → 再評価の流れを 3 分で確認する( #flow ) 面談準備チェック( A4 )と職場評価シート付き。臨床と両立しやすい環境づくりにも役立ちます。

結論:尺度は「目的×対象×環境×制度」で選ぶ

ADL / IADL 評価は、目的(能力か実施状況か)対象(疾患・年齢・認知・生活歴)環境(病棟/在宅/地域)制度・運用(退院支援・介護保険・通所サービスなど)の 4 軸で選ぶのが実務的です。キーワード検索では「入院なら ADL、在宅なら IADL」と語られがちですが、現場ではここまで単純に割り切れません。

病棟では退院支援との親和性から FIM が活きる場面が多い一方、BI で変化を素早く追う価値も高いです。在宅や通所・訪問では IADL が重要になりやすい傾向がありますが、あくまで個々の患者像に即して尺度を組み合わせていきます。

ADL / IADL 尺度の選び方早見( PT 実務:目的×対象×環境×制度 )
判断のポイント よく使う尺度の例 運用のコツ 落とし穴
目的 「できる(能力)」か「している(実施状況)」か BI=能力/ FIM=介助量(実施状況) カルテに「評価目的(能力/実施)」を先に書く 目的が混ざると、点数変化の解釈がズレる
対象 疾患特性(呼吸・嚥下・疲労・麻痺など)と感度 NRADL、SCIM III、ALSFRS-R など 一般尺度で拾えない「その疾患らしさ」を補う 一般尺度だけだと微小変化が見えない
環境 病棟/自宅/通所で「実際にやる行為」が変わる IADL( Lawton / 老研式 / FAI ) 退院後の生活像を具体化して、サービス選定に接続 IADL を後回しにして退院後の詰まりが残る
制度 退院支援、介護保険、通所/訪問の運用に乗るか FIM(病棟運用)、IADL(地域連携) カンファで「誰が・どこで・どう補助」を言語化 点数だけ共有して、支援設計が進まない

ADL / IADL の覚え方:DEATH・SHAFT と臨床イメージ

学生・国試対策では、ADL は「DEATH(Dressing, Eating, Ambulation, Toileting, Hygiene)」、IADL は「SHAFT(Shopping, Housekeeping, Accounting, Food preparation, Telephone/Transportation)」といった語呂で覚えることが多いです。まずは基本 ADL=生活の土台、IADL=社会生活の広がりという大枠を押さえると整理しやすくなります。

臨床では「代わってもらえるか/命に直結するか」というイメージが役立ちます。更衣やトイレ、移動など ADL の破綻は安全や生命に直結しやすく、優先的に介入が必要です。一方、買い物や金銭管理、趣味活動など IADL の低下は社会参加や QOL をじわじわと削っていきます。評価時には、ゴール設定や介入の優先順位とセットで説明できると、患者さん・家族にも伝わりやすくなります。

ADL 評価:BI と FIM の違い

BI( Barthel Index )は 10 項目・ 100 点で「できる ADL(能力)」の把握と経時変化の追跡に向きます。短時間で導入でき、急性期〜回復期の初期評価や全体像の把握に有用です。天井/床効果や認知面の取りこぼしはあるため、「大まかな層別化+変化のモニタリング」に位置付けると運用が安定します。

FIM( Functional Independence Measure )は 18 項目で「している ADL(実施状況)」=介助量を定義し、人的配置・安全管理・退院調整に直結します。採点基準(最小介助・監視など)はチームで統一し、実環境の観察とセットで運用することが重要です。点数は結論、根拠は「どこが危ない/何が必要か」を言語化して共有すると、連携の質が上がります。

IADL 評価:生活の広がりを可視化

IADL は買い物・交通・金銭管理・趣味・役割など、生活の広がりと社会参加を評価します。地域・在宅では重要度が増しやすい一方、入院時でも「退院後の生活像」の具体化に欠かせません。ADL が保たれていても IADL の縮小が続けば、閉じこもりやフレイル、介護負担の増大につながります。

Lawtonは手段的自立を、老研式活動能力指標は手段的自立・知的能動性・社会的役割を、FAI( Frenchay Activities Index )は活動頻度( 0〜45 点)を捉えます。ADL が維持されていても IADL が先に崩れることは多く、「できる/している」のギャップを評価することで、リハビリの重点や介護サービス選定を検討しやすくなります。

疾患特異的評価を組み合わせる理由

疾患特異的尺度は、一般的な ADL / IADL 尺度では拾いきれない症状や微小変化を捉えやすい点が利点です。具体的には、①内容的妥当性(その疾患らしさを反映)②感度・応答性(小さな変化を拾う)③臨床意思決定への直結(介入や機器導入の判断基準)がポイントになります。

例えば呼吸器では NRADL が活動時息切れと ADL の難易度を結び、在宅プログラム設計に反映できます。脊髄損傷では SCIM III がセルフケア・呼吸/括約筋・移動を包括し、移乗訓練や住宅改修の効果検証に適します。ALSでは ALSFRS-R が構音・嚥下・四肢・呼吸を縦断的に捉え、NIV 導入や栄養介入のタイミング検討に役立ちます。

PT の実務フロー:評価 → リハビリ介入 → 再評価

  1. 初期評価:BI で全体像、FIM で介助量と安全を把握(必要に応じて IADL も早期に情報収集)。
  2. 詳細評価:IADL( Lawton / 老研式 / FAI )や疾患特異的尺度を追加し、退院後の生活像とリハビリのターゲットを具体化。
  3. 実環境での観察:病棟・自宅・通所など実際の環境で移乗・トイレ・入浴・外出を評価し、「評価結果が生活行為にどう現れているか」を確認。
  4. 目標設定:SMART+「誰が・どこで・どう補助するか」を明記。人的配置・住環境調整・福祉用具選定に直結。
  5. 再評価:同一尺度・同一条件で追跡し、変化の有無と介入の妥当性を確認。天井/床効果が出たら、尺度の切り替えや追加を検討。

よくある落とし穴と対策

  • 目的の取り違え:BI(能力)と FIM(実施状況)を混同すると、「元気になっているのに点数が下がる」などの誤解が生じます。記載では目的と解釈をセットで明示しましょう。
  • 基準のズレ:最小介助・監視の定義を文章化し、ケースレビューでキャリブレーションを行います。FIM は「点数」だけでなく「根拠と安全配慮」までセットで共有することが重要です。
  • IADL の見落とし:ADL が自立でも IADL が縮小していると、閉じこもりやフレイルの進行につながります。退院前カンファでは IADL の具体場面(買い物・交通・金銭管理など)を必ず確認しましょう。
  • 疾患特異的尺度の未活用:一般 ADL 尺度だけでは「呼吸疲労」や「言語・嚥下」の変化などが見えにくい場合があります。疾患特異的尺度を併用し、多職種連携に活かします。

関連して、教育体制や標準手順に不安があると「評価はできるのに、次の打ち手が決まらない」状態になりがちです。見学・情報収集の段階から使える A4 シートをまとめています:面談準備チェックと職場評価シートを確認する

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q. ADL と IADL の違いを患者さんや家族にどう説明すればよいですか?

A. 「ADL=身の回りの生活の土台」「IADL=その上に乗る社会生活の広がり」と説明すると伝わりやすいです。更衣・移動・トイレなど ADL は安全に直結しやすく優先度が高く、買い物や金銭管理、趣味など IADL は生活の張りや役割を支える部分として位置付けるとイメージしやすくなります。

Q. 急性期病棟でも IADL 評価は必要でしょうか?

A. 全項目を詳細に取る必要はありませんが、「退院前に問題になりそうな IADL」が想像できる程度には情報を集めておくと安心です。入院前の生活歴や役割、通院手段などをインタビューしておくと、回復期〜在宅へのバトンパスがスムーズになります。

Q. 学生や新人に ADL / IADL の覚え方を教えるときのポイントは?

A. DEATH・SHAFT などの語呂合わせ自体は有用ですが、丸暗記だけだと臨床で応用しづらくなります。「代わってもらえるか」「命に直結するか」「社会参加にどう影響するか」といった観点をセットで教えると、評価と目標のつなぎ方も自然に身に付きます。

Q. ADL と IADL は、どちらから評価するのが実務的ですか?

A. まずは安全に直結しやすい ADL(移動・トイレ・更衣など)で「土台」を押さえ、次に退院後の生活像に直結する IADL(買い物・交通・金銭管理など)で「広がり」を具体化する流れが実務的です。ADL が保たれていても IADL の縮小が続くケースは多いので、退院支援が見えてきた段階で IADL を必ず確認します。

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参考文献

  1. Mahoney FI, Barthel DW. Functional Evaluation: The Barthel Index. Md State Med J. 1965;14:61–65. PubMed
  2. Keith RA, Granger CV, Hamilton BB, Sherwin FS. The Functional Independence Measure. Adv Clin Rehabil. 1987;1:6–18. PubMed
  3. Lawton MP, Brody EM. Instrumental ADL. Gerontologist. 1969;9:179–186. DOI
  4. Holbrook M, Skilbeck CE. Frenchay Activities Index. Age Ageing. 1983;12:166–170. Abstract
  5. Itzkovich M, et al. SCIM III: reliability & validity. Disabil Rehabil. 2007;29:1926–1933. PubMed
  6. Cedarbaum JM, et al. ALSFRS-R. J Neurol Sci. 1999;169:13–21. DOI
  7. Yoza Y, et al. Activity of Daily Living Dyspnea scale. Respirology. 2009;14:429–435. PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下、ADL / IADL 評価

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