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理学療法士として以下の経験と実績を持つリハビリくんが解説します♪
結論:尺度は「目的×対象×環境×制度」で選ぶ
ADL / IADL 評価は目的(能力か実施状況か)、対象(疾患・年齢・認知)、環境(病棟/在宅/地域)、制度・運用の 4 軸で選ぶのが実践的です。
病棟では退院支援との親和性から FIM が活きる場面が多い一方、BI で変化を素早く追う価値も高いです。
在宅や通所・訪問では IADL が重要になりやすい傾向がありますが、あくまで個々の患者像に即して最適な尺度を組み合わせます。
ADL評価の説明:BIとFIMの違い
BI は 10 項目・100 点で できるADL(能力)の把握と経時変化の追跡に向きます。短時間で導入でき、初期評価や全体像の把握に有用です。ただし天井 / 床効果や認知面の取りこぼしがあり、目的外使用に注意します。
FIM は 18 項目で しているADL(実施状況)=介助量を定義し、人的配置・安全管理・退院調整に直結します。採点基準(最小介助・監視など)はチームで統一し、実環境の観察とセットで運用します。関連記事:FIMの採点と運用上の注意
IADL評価の説明:生活の広がりを可視化
IADL は買い物・交通・金銭管理・趣味・役割など生活の広がりを評価します。地域・在宅では重要度が増しやすい一方、入院時でも退院後を見据えたゴール設定に役立ちます。
Lawton は手段的自立を、老研式 は手段的自立 / 知的能動性 / 社会的役割を、FAI は活動頻度(0 ~ 45 点)を捉えます。
ADL が保たれていても IADL の縮小は社会参加の断絶につながるため、早期から評価・介入します。関連記事:FAIの使い方
疾患特異的評価の説明:なぜ選ぶのか
疾患特異的尺度は ①内容的妥当性(その疾患らしさを反映)、②感度・応答性(微小変化を拾う)、③臨床意思決定への直結(介入や機器導入の判断基準)という利点があります。
例えば、呼吸器では NRADL が活動時息切れと ADL の難易度を結び、在宅プログラム設計に反映できます。
脊髄損傷では SCIM III がセルフケア・呼吸/括約筋・移動を包括し、移乗訓練や住宅改修の効果検証に適します。
ALS では ALSFRS-R が構音・嚥下・四肢・呼吸を縦断的に捉え、NIV 導入や栄養介入のタイミング検討に役立ちます。関連記事:呼吸リハ総論(mMRC・6MWT併用)
PTの実務フロー:評価→介入→再評価
- 初期:BI で全体像、FIM で介助量と安全を把握(必要に応じ IADL も早期に)。
- 詳細:IADL(Lawton / 老研式 / FAI)や疾患特異的尺度を追加し、退院後の生活像を具体化。
- 観察:病棟・自宅・通所など実環境で移乗・トイレ・入浴・外出を評価。
- 目標:SMART+「誰が・どこで・どう補助するか」を明記。人的配置・住環境・福祉用具へ直結。
- 再評価:同一尺度・同一条件で追跡。天井/床効果が出たら尺度を切替。
よくある落とし穴と対策
- 目的不一致:BI(能力)と FIM(実施状況)を混同しない。
- 基準のズレ:最小介助・監視の定義を文章化し、事例でキャリブレーション。
- IADLの見落とし:ADLが保たれていても IADL 縮小が続くと閉じこもりに。
- 疾患特異的尺度の未活用:一般 ADL 尺度のみだと微小変化や重要症状を取り逃す。
まとめ
傾向はあっても断定はしません。病棟では FIM が活きる場面が多く、在宅では IADL が重要になりやすいという視点を持ちつつ、最終的には目的×対象×環境×制度で個別最適に選びます。
BI・FIM・IADL・疾患特異的尺度を状況に応じて併用し、評価結果を介入・退院支援・地域生活の維持に直結させましょう。
参考文献
- Mahoney FI, Barthel DW. Functional Evaluation: The Barthel Index. Md State Med J. 1965;14:61–65. PubMed
- Keith RA, Granger CV, Hamilton BB, Sherwin FS. The Functional Independence Measure. Adv Clin Rehabil. 1987;1:6–18. PubMed
- Lawton MP, Brody EM. Instrumental ADL. Gerontologist. 1969;9:179–186. DOI
- Holbrook M, Skilbeck CE. Frenchay Activities Index. Age Ageing. 1983;12:166–170. Abstract
- Itzkovich M, et al. SCIM III: reliability & validity. Disabil Rehabil. 2007;29:1926–1933. PubMed
- Cedarbaum JM, et al. ALSFRS-R. J Neurol Sci. 1999;169:13–21. DOI
- Yoza Y, et al. Activity of Daily Living Dyspnea scale. Respirology. 2009;14:429–435. PubMed