BBS と TUG のカットオフと使い分け【早見表】

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BBS と TUG の使いどころ(1 分要約)

日常のモビリティとバランスを手早く把握するなら TUG、静的バランスを 14 項目で段階的にみるなら BBS が基本線です。本ページでは手順そのものの詳解は各指標の専用記事に譲り、「どの条件で計るか」「代表的なカットオフをどう解釈するか」にしぼって整理します。補完として Mini-BESTest や FGA など動的バランス評価も組み合わせると、転倒リスクの取りこぼしを減らせます。

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TUG のやり方・採点(固定条件)

  • コース:椅子(肘掛け有)から 3 m 先のラインを往復。
  • 開始/停止:合図「Go」で立ち上がり、ふたたび椅子に深く腰掛けるまでを計測(原法)。
  • 速度:「普段どおりで安全に」。必要なら練習 1 回。
  • 補助具・靴:ふだん使用する歩行補助具・履物をそのまま使用。
  • 記録単位:0.1 秒。

記録ブレを減らす固定項目(テンプレ)

  • 椅子条件:背もたれあり・肘掛けあり(座面高の目安 ≈ 46 cm)。
  • 歩行路とターン:直線 3 m、ターンはライン外接の自然な回頭。
  • 補助具/介助:使用の有無と種類を必ず記録(例:TUG 14.2 s、single-point cane)。
  • 開始/停止基準:Go→着座完了 を統一。
  • 有害事象:ふらつき・途中休止・中止理由を備考に。

TUG のカットオフの目安と解釈

  • 地域在住高齢者: 13.5 秒以上転倒リスクが高い可能性(Shumway-Cook 2000 の提案)。ただし単独での予測力は限定的で、“ルールイン寄り”の指標です(系統的レビュー)。
  • 解釈のコツ:値が近傍(12–15 s)なら BBS / Mini-BESTest / ABC、服薬、起立性低血圧など併用評価で判断を。

BBS のやり方・採点の要点

  • 14 項目を 0–4 点で採点(最大 56)。採点基準文をそのまま読み上げ、補助は安全確保に限る。
  • 所要 15–20 分。必要に応じ補助具は評価者が安全第一で判断し、使用の有無を記録。

BBS のカットオフの目安と解釈

  • 汎用目安: <45/56 点転倒リスク上昇の目安として広く用いられます(支持研究あり)。
  • 脳卒中・地域在住: 46.5–50.5 点 付近が複数研究で妥当な閾値候補(AUC 0.72–0.81)。
  • 注意:BBS 単独の予測力は集団や環境で変動。単独使用は避け、既往転倒、歩行速度、恐怖感(ABC)などと統合。

代表的カットオフ早見表

BBS / TUG の代表的カットオフと対象(成人・2025 年版)
指標 カットオフの目安 対象/前提 解釈の注意
TUG ≥ 13.5 秒 地域在住高齢者 ルールイン寄り・単独使用不可。補助具/靴/椅子条件を固定して経時比較。
BBS < 45 / 56 点 高齢者全般(施設/地域) 集団で感度・特異度が変動。併用指標(ABC、歩行速度 等)と統合。
BBS(脳卒中/地域) 46.5–50.5 点 慢性期・地域在住 複数研究で一貫。AUC 0.72–0.81。単独より多面的評価を。

よくあるミス

  • TUG の開始/停止基準が評価者でバラバラ(→ 原法の Go→着座完了 で固定)。
  • 補助具や靴の条件を記録しない(→ 必ず記載)。
  • BBS を単独で“転倒予測テスト”として断定使用(→ 併用前提)。

現場の詰まりどころ

  • 「どちらを優先してとるか」で迷う:評価時間が限られる外来や通所では TUG に偏りがちですが、立位保持や方向転換で不安定さが目立つ症例は BBS を 1 回しっかり実施しておくと、その後の経時変化も読みやすくなります。
  • カットオフだけで“安全/危険”を分けてしまう:TUG 13.5 秒や BBS 45 点はあくまで「シグナル」であり、既往転倒、認知、起立性低血圧、環境(段差・狭所)などを合わせて判断しないと、介入の優先順位を誤りがちです。
  • 経時比較で条件がぶれる:リハ室と病棟で椅子や靴が変わったり、介助量が変化しているのに記録が残っていないと、数値差の解釈に詰まりやすくなります。測定条件をテンプレにして記録欄を固定しておくと、チーム全体で共有しやすくなります。

おわりに

バランス評価のリズムは「安全確認 → 条件をそろえて測定 → カットオフと経時変化を読み解く → 介入と再評価」に落とし込むと迷いが減ります。TUG と BBS はそれぞれ得意な領域が異なるため、本記事の早見表を手元に置きつつ、「誰にどちらを、どんな条件で実施するか」をチームであらかじめ決めておくことがポイントです。

評価を標準化できると、カルテ記載やカンファレンスでの説明がシンプルになり、新人教育もスムーズになります。自施設のプロトコルや記録様式を少しずつ整えながら、転倒予防と ADL 自立支援の質を底上げしていきましょう。

参考文献

  1. Podsiadlo D, Richardson S. The timed “Up & Go”. J Am Geriatr Soc. 1991;39(2):142–148. PubMed
  2. Shumway-Cook A, Brauer S, Woollacott M. Predicting falls with TUG. Phys Ther. 2000;80(9):896–903. PubMed
  3. Barry E, et al. TUG ≥ 13.5 s の有用性:系統的レビュー/メタ解析. BMC Geriatr. 2014;14:14. PMC
  4. Bogle Thorbahn LD, Newton RA. BBS 45 点カットオフの支持. Phys Ther. 1996;76(6):576–583. doi:10.1093/ptj/76.6.576. PubMed
  5. Lima CA, et al. BBS は単独予測に不十分. Physiotherapy. 2018;104:383–394. PubMed
  6. Matsumoto D, et al. 脳卒中の転倒リスクとカットオフ. J Rehabil Med. 2024;56:jrm00388. PMC
  7. SRALab RehabMeasures: Berg Balance Scale. Web

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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よくある質問

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TUG と BBS、時間がないときはどちらを優先すべきですか?

初回評価で時間が限られている場面では、まず TUG を優先してモビリティ全体の水準と転倒リスクの大まかなイメージをつかむ方法が実用的です。そのうえで、立位保持や方向転換で不安定さが目立つ症例、退院支援やサービス調整で詳細なバランス情報が欲しい症例には、別日に BBS を追加する二段構えにすると効率がよくなります。

TUG が 13 秒台の利用者は、どのようにフォローするとよいですか?

13 秒台はカットオフ近傍であり、「すぐに危険」ではなく「転倒リスクが高まっている可能性あり」というレベルです。段差やトイレ出入りなど実場面での安定性、起立性低血圧や薬剤(睡眠薬・降圧薬)なども確認し、必要に応じて環境調整・補助具の再検討・バランス訓練を組み合わせてフォローします。

TUG や BBS はどのくらいの頻度で取り直すのが妥当ですか?

急性期から回復期では 2〜4 週ごと、外来や通所の維持期では 1〜3 か月ごとに再評価するケースが多くみられます。転倒歴の追加や体調の変化、サービス調整(通所増減・独居化など)のタイミングでは、臨時で測定しておくとリスク評価と方針調整に役立ちます。

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