食事中の窒息対応と再開判断|嚥下障害の安全プロトコル【現場用】

栄養・嚥下
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この記事のねらいと想定読者

本記事は、食事中の「窒息発生~その後 48 時間」の対応を、嚥下障害のある高齢者を想定して現場で運用できる手順にまとめたものです。一次対応(役割分担・救急要請の判断)、吸引と観察、再評価(RSST/EAT-10)から食事再開の判断までを、配布シートと併せて統一します。対象は病院・老健・通所の PT・OT・ST・看護・介護職です。

嚥下リハの実務フローもまとめて確認する

発生時(疑い~完全閉塞)の一次対応

施設の SOP に沿って、①声掛け・意識確認→②応援要請→③気道確保と観察→④救急要請の基準判定を即時に並行実施します。背部叩打法や腹部突きなどの具体手技は各施設の研修手順に準拠し、場にいる最適者が実施。誤嚥後は偽安心に注意し、短時間で症状軽快しても低酸素血症や化学性肺炎の遅発を見越してフローに従い継続観察します。役割は「主対応(気道・症状)/タイム・記録/救急連絡/周囲安全」の4つに即時分担します。

吸引と救急要請の判断基準

赤旗:SpO₂ 低下(例:< 92 % 持続)、呼吸困難・喘鳴、チアノーゼ、意識変容、努力呼吸、反復する嘔吐・強い咳嗽、胸痛・湿性ラ音の増悪。これらがあれば救急要請を優先し、施設内の吸引体制・手技資格に従って可及的速やかに対応します。吸引後も SpO₂ や呼吸数がベースに戻らない場合、遅発性合併症(肺炎・無気肺等)を疑い、医師に速やかに報告します。

窒息後 48 時間の観察プロトコル

初期 2~4 時間は 30~60 分ごと、その後 48 時間は少なくとも 6~8 時間ごとに呼吸数・SpO₂・体温・咳嗽・痰性状・胸部所見・食欲・倦怠感・誤嚥徴候を記録します。微熱・咳の持続、湿性ラ音の増悪、SpO₂ 低下の遷延などは肺炎の早期兆候になり得ます。観察ログは多職種で共有し、「いつ・誰が・何を見て・どう判断したか」が追跡できる形で残します。

再評価:RSST/EAT-10 と口腔ケア・姿勢再設計

症状が安定したら、嚥下再評価を実施します。RSST で反復嚥下の可否を把握し、EAT-10 で自覚症状の悪化を確認。次に口腔ケアで口腔内の汚染・乾燥を是正し、姿勢・一口量・とろみ粘度の見直しを行います。必要に応じて VE/VF を医師に提案し、検査までの暫定食形態と観察点を明確化します。関連解説は嚥下ハブを参照してください。

食事再開の目安と「保留・再検査」の条件

再開の目安:安静時 SpO₂ が基準に復し、呼吸困難・喘鳴なし、湿性ラ音が増悪していない、咳嗽がコントロール可能、発熱がない/解熱傾向、注意・指示理解が十分。保留・再検査:SpO₂ 低下遷延、咳嗽反射低下、湿性ラ音増悪、発熱持続、反復誤嚥徴候、意識変容等。保留時は「とろみ付水分の嚥下テストも控える」など明確な禁止事項をチーム内で共有します。

再発予防:食事前準備・姿勢/シーティング・環境整備

食事前の口腔湿潤・覚醒度確認、座位の骨盤前方回旋+頭頸部軽度前屈、足底・前腕支持、食器高・一口量の微調整、声掛け速度の統一が基本です。車椅子座位は滑落・後傾を避けるセッティングを標準化し、食形態・摂取速度・介助量は「指示文」を掲示して班間のバラツキを抑えます。

多職種連携:SBAR での報告と家族説明

医師・家族への報告は SBAR で簡潔に。Situation(何が起きたか)、Background(既往・嚥下歴)、Assessment(観察所見・バイタル)、Recommendation(受診/検査/再開可否の提案)をひとつの紙にまとめて共有します。家族へは「本日の対応・今後 48 時間の観察点・食事再開の条件」を統一メッセージで伝達します。

ダウンロード(現場配布シート)

運用上の注意

本記事は現場の手順統一を目的としたもので、施設の医療安全規程・医師指示・各職種の業務範囲を優先します。救急対応の詳細手技(背部叩打法・腹部突き等)は施設研修資料・SOPに従ってください。外部資料を参照する場合は最新の一次情報を確認のうえ、引用は最小限に留めます。

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