通信機能付き福祉用具|位置情報・故障通知はどこまで対象?

制度・実務
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通信機能付き福祉用具(結論:まず「給付対象の機能」と「対象外の費用」を分ける)

通信機能付き福祉用具は、介護保険でどこまで給付対象になるのかが分かりにくいテーマです。結論からいうと、制度の芯は「通信できるか」ではなく、「何を通知する機能か」と「その後の対応や費用を誰が負担するか」の線引きにあります。

特に、位置情報通知や、維持管理・修理交換・使用状況把握に資する通知は対象側で整理される一方、通話やチャット、動画、通信費などは対象外です。 PT ・ OT が在宅支援や福祉用具選定に関わるなら、機能の良し悪しより先に、この線引きを押さえておくと説明しやすくなります。

同ジャンルで全体像を先に確認する

制度の全体像から見たい場合は、制度・実務ハブで介護報酬、通知差分、実務対応の位置づけを先に確認しておくと理解しやすいです。

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このテーマの現在地(2026 年 4 月時点)

この論点は、介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会で議論が重ねられ、2026 年 3 月 30 日の介護給付費分科会で「報告」として整理された内容を土台にしています。したがって、現場では「もう全部決まった」と読むより、今後の通知や Q&A で具体化される前提で押さえる方が安全です。

記事としては、制度の背景を深掘りし過ぎるより、「どの機能が対象か」「何が対象外か」「福祉用具専門相談員やケアマネ、 PT ・ OT は何を説明するか」に絞って整理します。改定の全体差分を追いたい場合は 令和 8 年改定の更新差分 もあわせて確認してください。

何が変わるのか

これまでは、通信機能を本来機能として持つ貸与種目は、基本的に認知症老人徘徊感知機器に限られていました。また、通信機能が物理的に区分できる場合に限って、福祉用具本体部分のみを給付対象とする整理が中心でした。

今回の見直しでは、その枠組みを広げて、認知症老人徘徊感知機器の通報範囲や内蔵要件の考え方を見直しつつ、認知症老人徘徊感知機器以外の福祉用具貸与種目でも、一定の通信機能を内蔵した用具を新たに給付対象とする方向が示されています。

通信機能付き福祉用具の給付対象と対象外を整理した早見図
給付対象の機能、対象外の機能、費用の線引きを 1 枚で整理した図です。

給付対象になる機能

ここで大切なのは、「通信機能がある」こと自体ではなく、効果が明確な機能に限定して給付対象を考えることです。制度上は大きく 2 つに整理すると分かりやすいです。

1 つ目は福祉用具の位置情報を通知する機能、2 つ目は福祉用具の維持管理や修理交換、使用状況把握に資する情報を通知する機能です。後者には、バッテリー状態、異常・故障、使用状況などが含まれます。

スマホでは表を横スクロールできます。

通信機能付き福祉用具で給付対象として整理される主な機能
区分 機能の例 現場での意味
位置情報通知 福祉用具の位置情報を家族、隣人等へ通報する機能 徘徊や屋外移動時の位置把握につながる
維持管理通知 バッテリー状態、異常・故障、使用状況の通知 安全な継続使用、修理交換、稼働確認に役立つ
内蔵型通信 本来機能に付属する通信機能を用具に内蔵する形 歩行器、車いす、特殊寝台などでの活用を考えやすい

どの福祉用具で考える?

資料では、認知症老人徘徊感知機器に加えて、認知症老人徘徊感知機器以外の福祉用具貸与種目として、杖、車いす、歩行器、特殊寝台などが例示されています。つまり、今後は「通信機能付き福祉用具」という話を徘徊感知機器だけで考えない方がよくなります。

ただし、すべての通信機能が認められるわけではありません。歩行器や車いすに GPS が付いているから自動で対象、ではなく、通知する内容と費用の線引きまで確認する必要があります。

給付対象外の機能・費用

ここは現場で最も誤解が起きやすいところです。給付対象外とされるのは、効果が明確な通知機能以外の機能、通話・チャット・動画等のコミュニケーション機能、バイタルセンシングで体調変化を検知し通知する機能です。

加えて、通信費、ソフトウェアやアプリの導入・利用料、サブスクリプション費、スマートフォンやタブレットなどの受信端末費、モデム・ルーターなど通信環境整備に要する費用は給付対象外です。導入時は「本体」と「周辺費用」を分けて説明する必要があります。

スマホでは表を横スクロールできます。

通信機能付き福祉用具で給付対象外と整理される主なもの
区分 対象外の例 実務での注意点
機能 通話、チャット、動画、体調変化を検知するバイタル通知 便利でも介護保険給付とは切り分けて説明する
費用 通信費、アプリ利用料、端末費、通信環境整備費 利用者負担になる部分を契約前に明確にする
自己負担サービス ナビゲーション等、取得データを使った付加サービス 保険給付と自己負担契約を混同しない

通知後の対応は誰の仕事か

制度の線引きは、機能だけでなく「通知を受けた後の対応」にもあります。位置情報の通報後に行う駆けつけ、安否確認などの緊急時対応は、保険給付内の役務ではなく、自己負担による契約サービスとして整理されています。

一方で、メンテナンスや使用状況通知後の対応は、福祉用具貸与事業所の本来業務として考えられています。つまり、すべてを利用者の自己負担に回すのではなく、貸与事業所が本来行う維持管理業務との線引きを押さえることが重要です。

PT・OT が見る選定ポイント

PT ・ OT がこのテーマで役立てやすいのは、制度解説そのものより、在宅での福祉用具選定と情報共有の場面です。たとえば、車いすや歩行器では「移動手段の安全性」「バッテリー異常や故障時の影響」「誰が通知を受けるか」を先に整理しておくと、導入後の混乱を減らしやすくなります。

また、通信機能が付くことで安心感が高まる一方、利用者や家族への説明と同意、個人情報の取り扱い、自己負担となる範囲の整理が必要です。福祉用具専門相談員やケアマネ任せにせず、療法士も「生活場面で何が起きるか」を言語化して共有すると、選定の質が上がります。

PT・OT が確認しておきたい選定ポイント
視点 確認したいこと 理由
安全性 故障やバッテリー異常が生活動作にどう影響するか 転倒、離床困難、介助遅れを防ぎやすい
通知先 家族、貸与事業所、誰が通知を受けるか 対応の遅れや役割の混乱を減らす
費用説明 どこまでが保険給付で、どこからが自己負担か 導入後のトラブル予防につながる
活用場面 屋内外、移動距離、見守り体制、家族支援の必要性 必要性の低い機能の付け過ぎを防ぎやすい

厚労省資料では、福祉用具専門相談員や介護支援専門員が、導入時に利用者・家族へ必要性、活用方法、給付対象となる費用、事業者の業務範囲、個人情報の取り扱い等を説明し、同意を得ることが整理されています。ここは制度対応として非常に重要です。

療法士が関わる場合も、単に「便利です」で終わらせず、どの生活課題に対してその機能が必要か、どの情報が誰へ通知されるのか、自己負担部分は何かを共有した方が安全です。

現場の詰まりどころ

このテーマは、制度の文言より「現場での誤解」で止まりやすいです。特に多いのは、「通信できれば全部対象だと思う」「通知後の駆けつけまで保険給付だと思う」「端末費用も給付対象だと思う」の 3 つです。

以下のような OK / NG を先に共有しておくと、説明のズレを減らしやすくなります。

通信機能付き福祉用具で起こりやすい詰まりどころ
場面 OK NG
機能説明 位置情報通知と維持管理通知に分けて説明する 「通信機能付きだから対象」と一括で話す
費用説明 本体と通信費・端末費を分ける 自己負担部分を後から説明する
役割分担 通知先と通知後対応の担当を先に決める 家族、事業所、ケアマネの役割が曖昧なまま導入する
個人情報 位置情報や利用状況の扱いを同意まで含めて整理する 便利さだけを優先して説明を省く

導入前の確認フロー(最小 5 ステップ)

新しい機能を導入するときは、制度を読むだけでなく、現場で説明できる順番を決めておく方が実務的です。以下の 5 ステップで整理すると、導入後のトラブルを減らしやすくなります。

  1. その福祉用具に必要な通信機能が何かを絞る
  2. 給付対象の機能と対象外の機能・費用を分ける
  3. 通知先と通知後の対応者を決める
  4. 利用者・家族へ必要性と個人情報の扱いを説明する
  5. 貸与事業所、ケアマネ、療法士で活用場面を共有する

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

GPS 付きの車いすや歩行器は、すべて介護保険の給付対象になりますか?

いいえ。通信機能が付いていること自体ではなく、位置情報通知や維持管理・使用状況把握に資する通知など、対象として整理される機能かどうかで判断します。

通話やチャット機能も給付対象ですか?

いいえ。通話、チャット、動画などのコミュニケーション機能は給付対象外と整理されています。

通信費やスマートフォン代も介護保険で出ますか?

出ません。通信費、アプリ利用料、端末費、通信環境整備費は給付対象外です。

通知を受けた後の駆けつけ対応は誰が行いますか?

位置情報通知後の駆けつけや安否確認は、保険給付内の役務ではなく、自己負担契約によるサービスとして整理されています。

メンテナンス通知への対応も自己負担になりますか?

メンテナンスや使用状況通知後の対応は、福祉用具貸与事業所の本来業務として整理されています。すべてが自己負担になるわけではありません。

次の一手

このテーマは、機能名だけ知っていても現場では説明しにくい領域です。まずは給付対象の機能と対象外の費用を分け、そのうえで貸与事業所、ケアマネ、療法士で通知先と対応をそろえると使いやすくなります。


参考資料

  1. 厚生労働省. 通信機能を備えた福祉用具について(報告). 第255回社会保障審議会介護給付費分科会 資料4. 2026年3月30日.
  2. 厚生労働省. 第255回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料. 2026年3月30日.
  3. 厚生労働省. 通信機能を備えた福祉用具について. 第247回社会保障審議会介護給付費分科会 資料3. 2025年9月5日.
  4. 厚生労働省. 介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会. 令和7年度第3回 2026年3月9日.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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