COPD増悪予防をPT実務で回す:前兆→行動→記録の型

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COPD の増悪予防は「前兆 → 行動 → 記録」を型にすると再燃が減らせます

COPD の増悪は、息切れや咳痰などの症状が短期間(数日〜 14 日以内)に悪化するイベントとして整理されます。増悪を繰り返すと、活動量の低下や再入院につながりやすいため、PT は “運動” だけでなく前兆の拾い方と行動の決め方をチームで揃えることが重要です。

本記事では、増悪の確認を「薬(抗菌薬 / 全身性ステロイド)」「入院」の 2 点で固定し、前兆 → 行動 → 記録の流れを “そのまま現場で使える形” に落とし込みます。

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結論:増悪予防は「 3 ステップ」で回せます

増悪予防は難しく見えますが、実務は 3 ステップに落ちます。①増悪の確認を “薬+入院” で固定する、②前兆を 4 点で拾う、③行動を 3 段(自分で調整 → 連絡 → 受診)で決める、の順です。

この型をカルテに残して共有すると、同じ患者さんでも担当者で判断が割れにくくなり、退院後のフォローも一本化できます。

増悪とは?「数日〜 14 日以内の悪化」と「医療介入」をセットで考えます

COPD の増悪は、息切れ、咳、痰などが短期間(数日〜 14 日以内)に悪化するイベントとして整理されます。現場で大事なのは、単なる “調子が悪い” ではなく、医療介入が必要だったかを確認できる状態にすることです。

リハ場面では、増悪を「薬(抗菌薬 / 全身性ステロイド)が必要だった」「入院が必要だった」の 2 点で固定して確認すると、記憶の揺れが減って E(増悪リスク)を見落としにくくなります。

まずは増悪歴を “薬+入院” で揃えます(過去 1 年)

増悪予防の第一歩は、過去 1 年の増悪歴を同じ物差しで揃えることです。患者さんの自己申告だけだと “風邪っぽかった” と混ざりやすいので、可能なら退院サマリや処方歴で裏取りします。

増悪歴の確認(過去 1 年):PT が再現できる 2 点
確認 質問の型 記録の一言(例)
「抗菌薬 or 全身性ステロイドが必要な悪化は何回?」 過去 1 年:薬が必要な悪化 2 回(処方歴で確認)
入院 「悪化で救急受診/入院はありましたか?」 入院悪化 0 回(紹介状で確認)

前兆は 4 点で拾うと抜けが減ります(咳痰・息切れ・倦怠・睡眠)

増悪は “いきなり” のように見えて、前兆が出ていることが多いです。現場では細かい項目を増やしすぎると運用が崩れるため、まずは 4 点で揃えるのがコツです。

増悪の前兆:まず揃える 4 点(毎回同じ順で確認)
項目 見方(例) メモの型(例)
咳・痰 増加、粘調、色の変化(膿性) 痰:量 ↑ / 色 変化あり
息切れ 同じ動作で早く出る、回復が遅い 歩行で息切れが早期化(休憩回数 ↑ )
倦怠・食欲 だるさ、食事量低下 倦怠:午後に強い/食事: 7 割
睡眠 中途覚醒、夜間の咳、朝の疲労感 夜間覚醒: 2 回(咳)

行動は 3 段で決めると迷いません(自分で調整 → 連絡 → 受診)

前兆を拾った後に大切なのは、「何をしたらいいか」をその場で決められる形にしておくことです。薬の指示や受診判断は医師・地域ルールが関わるため、ここでは PT が共有しやすい “判断の枠” を作ります。

前兆が出たときの行動: 3 段で運用する(施設・地域ルールで調整)
状態(例) 行動(例) 記録ポイント
1. 自分で調整 軽い前兆(咳痰や息切れが少し増えた) 活動量を一時的に下げる/休憩計画を増やす/水分・睡眠を整える 前兆 4 点の変化、当日の活動量
2. 連絡 前兆が続く、または悪化している 主治医・訪問看護・病棟へ連絡(決めた窓口) いつから、何が増えたか、 SpO2 / バイタル
3. 受診 強い悪化、普段と違う危険サイン 医療機関へ受診(夜間は救急含む) 危険サインの有無、受診結果

リハ負荷は「上げすぎない」ルールを先に決めます

前兆がある時期に “頑張って取り戻そう” とすると、悪化を長引かせることがあります。増悪予防の実務では、前兆が出たら負荷を落とすルールを先に共有しておくと安全です。

たとえば、息切れの立ち上がりが早い、回復が遅い、咳痰が増えた、睡眠が崩れた、といった変化がある日は、歩行距離・回数を一段落として “成功体験” を残す設計にします。

現場の詰まりどころ:よくある失敗は「拾えない」「決められない」「残らない」です

この先で “詰まり” を一気に解消する

よくある失敗へ(まずここ)

回避の手順( 5 行チェック )へ

・関連(記録の型):呼吸評価の基本(観察と記録)

増悪予防での “詰まり” と対策(PT が回しやすい形)
よくある失敗 何が起きるか 対策(型)
増悪が曖昧(自己申告のみ) E の見落とし、方針が揺れる 過去 1 年を「薬+入院」で固定し、可能なら処方歴で裏取り
前兆の確認が担当でバラバラ 変化が拾えず、対応が遅れる 前兆 4 点(咳痰・息切れ・倦怠・睡眠)を順番固定
行動が決められない “様子見” が続き、悪化が長引く 3 段(自分で調整 → 連絡 → 受診)を施設ルールで合意
記録が残らない 次回に学びが繋がらない カルテ転記用の 5 行チェックを固定する

回避の手順:カルテに残す “ 5 行チェック ”(共有が一気に安定します)

増悪予防は “長文の指導” より、チームが同じ情報を見られる形に落とす方が回ります。下の 5 行だけ固定すると、前兆と行動の共有が速くなります。

増悪予防の 5 行チェック(カルテ転記用)
チェック 記録の一言(例)
1 過去 1 年の増悪(薬+入院) 増悪:薬 2 回/入院 0 回(処方歴で確認)
2 前兆 4 点 咳痰:量 ↑ /息切れ:歩行で早期化/倦怠:午後に強い/睡眠:中途覚醒 2 回
3 行動( 3 段 ) 本日:負荷 1 段落+窓口へ連絡(ルール通り)
4 負荷調整の内容 歩行:距離 70%/休憩回数 + 1/自覚症状の回復を優先
5 次回確認 次回:前兆 4 点と回復速度を再確認(悪化なら受診判断へ)

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. “増悪” と “風邪っぽい” はどう区別しますか?

完全に切り分けるのは難しいため、現場では「薬(抗菌薬 / 全身性ステロイド)が必要だったか」「入院が必要だったか」を固定して確認します。これで “医療介入が必要な悪化” を揃えやすくなり、増悪予防の学びが次回に繋がります。

Q2. 前兆は何を一番に見ればいいですか?

運用の抜けを減らすなら、咳痰・息切れ・倦怠・睡眠の 4 点を順番固定で見るのが実務的です。項目を増やしすぎると続かないため、まず “最小セット” を回して、必要に応じて追加します。

Q3. アクションプラン(行動計画)は作った方がいいですか?

行動計画は “配るだけ” だと効果が安定しにくい一方で、教育・フォローとセットの多面的支援として運用すると入院などのアウトカムに影響する可能性が示されています。施設や地域のルールと一緒に「連絡先」「判断の枠」を決め、継続フォローで運用するのが現実的です。

Q4. どのタイミングでリハ負荷を落とすべきですか?

息切れの立ち上がりが早い、回復が遅い、咳痰が増える、睡眠が崩れるなど “普段と違う変化” が出た日は、負荷を 1 段落として回復を優先します。受診や薬の判断は医師・地域ルールに従い、PT は “悪化を長引かせない運用” を支えます。

次の一手(次に読む)

教育体制・人員・記録文化など “環境要因” を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。

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参考文献

  • Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease (GOLD). Pocket Guide to COPD Diagnosis, Management, and Prevention: A Guide for Health Care Professionals (2026). GOLD(公式)
  • Agustí A, Celli BR, Criner GJ, et al. Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease 2023 Report: GOLD Executive Summary. Eur Respir J. 2023;61(4):2300239. DOI: 10.1183/13993003.00239-2023 / PubMed Central: PMC10111975
  • Lenferink A, Brusse-Keizer M, van der Valk PDLPM, et al. Self-management interventions including action plans for patients with chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2017; (8):CD011682. PubMed Central: PMC6483374

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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