CTARとシェーカー法|違い・負荷量・使い分け【記録シート】

栄養・嚥下
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結論:CTARとシェーカー法は姿勢・頸部負担・実施可能性で選ぶ

CTARとシェーカー法は、どちらも舌骨上筋群に負荷をかけ、嚥下時の舌骨・喉頭の前上方移動や上部食道括約筋(UES)開大を支えることを狙う嚥下訓練です。CTARを一律に第一選択とするのではなく、座位・仰臥位の可否、頸部負担、フォーム保持、継続可能性から選びます。

大きな違いは負荷設定です。シェーカー法には研究で用いられた原法がありますが、CTARは研究ごとに器具・保持時間・反復回数・頻度が異なり、至適用量は確立していません。そのため、CTARでは固定回数を「標準」とせず、実施条件と反応を記録しながら調整することが重要です。1, 7, 8

CTARとシェーカー法の違い早見表
比較項目 CTAR シェーカー法
基本姿勢 座位 仰臥位
負荷方法 顎でボール・専用器具などを押す 肩を床につけたまま頭部を挙上する
負荷量 研究ごとに異なり、至適用量は未確立 原法は60秒保持×3回+30回反復
選びやすい条件 座位で実施でき、仰臥位での頭部挙上が負担になる場合 仰臥位が安定し、頭部挙上フォームを保てる場合
主な注意点 抵抗量・保持時間・回数を固定化しない 頸部疲労、肩すくめ、フォーム崩れに注意する

CTARとシェーカー法は何を狙う訓練か

CTARとシェーカー法の共通点は、舌骨上筋群へ負荷を与え、嚥下時の舌骨・喉頭の前上方移動やUES開大に関わる機能を高めることを狙う点です。シェーカー法は、異常なUES開大を伴う嚥下障害を対象とした研究から発展しました。1, 2

CTARは、シェーカー法と近い目的を座位で行える方法として開発されました。健康成人を対象とした筋電図研究では、CTARで舌骨上筋群を活動させながら、シェーカー法より胸鎖乳突筋活動が少なかったことが報告されています。ただし、これは筋活動を比較した研究であり、すべての嚥下障害患者でCTARが優れることを意味しません。3, 4

脳卒中後嚥下障害ではCTARによる嚥下機能改善を示した臨床研究やメタ解析があります。一方で、対象疾患や実施方法にはばらつきがあり、CTARの最適な負荷量はまだ確立されていません。6, 7, 8

重要:「むせがある」「湿性嗄声がある」という症状だけでCTARやシェーカー法を選ぶわけではありません。嚥下機能のどこを変えたいのかを整理し、必要に応じてVFSS・FEESなどの評価結果も踏まえて訓練目的を設定します。

CTARとシェーカー法の違いは負荷のかけ方と実施条件にある

CTARとシェーカー法は狙いが近いため、「どちらが常に優れているか」で選ぶより、同じ目的を達成できる条件の中から安全に再現できる方法を選びます。特に確認したいのは、姿勢、頸部負担、フォーム、負荷調整のしやすさです。

CTARとシェーカー法を比較するときのポイント
観点 CTAR シェーカー法
姿勢 座位で実施する 仰臥位で実施する
運動 顎を抵抗物へ押し込む 肩を床につけたまま頭部を挙上する
等尺性運動 抵抗物を押した状態を保持する 頭部挙上位を保持する
反復運動 顎で抵抗物を繰り返し押す 頭部挙上を繰り返す
用量の考え方 統一された至適用量はない 原法の研究プロトコルがある
負担 座位で行えるが、頸部負担がないとは限らない 頸部筋の疲労や頭部挙上困難が問題になりやすい
記録で重要な点 器具・抵抗・保持時間・回数・セット数を残す 原法か、負荷を変更した方法かを区別する
CTARとシェーカー法の選び方。目的を確認し、姿勢・頸部負担・実施可能性から方法を選び、実施後に症状や嚥下機能を再評価する流れ
図:CTARとシェーカー法の選び方。どちらかを一律の第一選択とせず、姿勢・頸部負担・実施可能性を確認し、実施後に再評価します。

CTARのやり方|標準回数ではなく実施条件を固定する

CTARでは、座位で顎と胸骨上部付近の間に抵抗物を置き、顎を下方へ押して抵抗を加えます。原著では空気を入れたゴムボールが使用され、その後の研究では専用器具や修正版も報告されています。3, 6

CTARの基本手順

  1. 骨盤・体幹が安定する座位をとる
  2. 顎と胸骨上部付近の間にボールや抵抗器具を配置する
  3. 体幹を大きく丸めず、顎で抵抗物を押す
  4. 等尺性保持または反復運動を行う
  5. 頸部痛、呼吸、代償運動、疲労を確認する
  6. 実施条件と反応を記録し、次回も同条件で比較する

「顎を引く」という言葉だけでは、頸部全体を過度に屈曲させたり、体幹まで前屈したりすることがあります。何回できたかだけでなく、同じ運動方向を再現できているかを確認します。

CTARの回数・保持時間に統一された標準量はない

CTARには、すべての患者へ適用できる標準的な「○秒×○回」という至適用量は確立されていません。システマティックレビューでも、研究ごとに器具、等尺性・反復運動の組み合わせ、回数、頻度、介入期間が異なることが指摘されています。7, 8

そのため臨床では、「10秒×5回」などをCTARの標準として固定するのではなく、以下の条件を記録して再評価できるようにします。

CTARで記録したい負荷条件
項目 記録する内容 再評価で見ること
抵抗物 ボール、器具、硬さ・設定など 前回と同程度の抵抗を再現できるか
等尺性負荷 保持時間、回数、セット数 フォームを保ったまま実施できるか
反復負荷 回数、セット数 後半に動作範囲や方向が崩れないか
頻度 1日・1週あたりの実施頻度 実際に継続できているか
自覚的運動強度 RPEなど、同じ尺度で記録 同条件で負担感がどう変化したか
症状・代償 頸部痛、めまい、呼吸苦、肩すくめなど 負荷増加に伴って悪化していないか

RPEは負荷の記録には使えますが、特定のRPE範囲をCTARの標準処方とみなす根拠は十分ではありません。「RPEが何点だから増量する」と単独で判断せず、フォーム、症状、実施可能性と合わせて判断します。

シェーカー法のやり方|原法と負荷を変更した方法を分ける

シェーカー法(Shaker exercise/Head Lift Exercise)は、仰臥位で肩を床につけたまま頭部を挙上し、つま先を見るような位置まで持ち上げる訓練です。持続する等尺性運動と、頭部挙上を繰り返す反復運動を組み合わせます。1, 2

シェーカー法の原法は60秒保持×3回+30回反復

シェーカー法の研究プロトコルでは、次の方法が用いられています。

シェーカー法の原法として用いられた研究プロトコル
段階 内容
等尺性運動 仰臥位で頭部を60秒間挙上する×3回
休息 各60秒保持の間に1分間休息する
反復運動 続けて頭部挙上を30回反復する
頻度・期間 研究では1日3回、6週間のプログラムが用いられた

この負荷量は「原法で用いられた研究プロトコル」であり、すべての患者にそのまま実施すべき標準処方という意味ではありません。原法を完遂できない対象者に、無理に60秒保持や30回反復を求める必要はありません。

負荷を短縮した場合は「原法」と区別して記録する

頸部筋力や持久力、全身状態のため原法を実施できない場合は、保持時間・回数・セット数を変更することがあります。その場合は「シェーカー法60秒×3」と記録せず、実際に行った負荷量をそのまま残します。

シェーカー法を記録するときの区別
実施方法 記録例
原法を実施 等尺60秒×3回(各1分休息)+反復30回
負荷を変更 実際の保持時間・回数・セット数を記載し、「原法から負荷調整」と残す

特に、保持時間が短くなったこと自体を「失敗」とみなす必要はありません。重要なのは、どの条件ならフォームを崩さず実施でき、その条件を次回も再現できるかです。

使い分け|CTARを一律に優先せず実施条件から選ぶ

CTARとシェーカー法を選ぶときは、訓練名から決めるのではなく、狙う嚥下機能を確認したうえで、姿勢・頸部負担・フォーム・継続可能性を比較します。

健康成人の筋電図研究ではCTARで胸鎖乳突筋活動が少ない結果があり、脳卒中後嚥下障害でもCTARの有効性を示す研究があります。2023年のメタ解析ではCTARによる嚥下安全性改善が報告されましたが、対象の中心は脳卒中患者であり、研究ごとの訓練条件にも差があります。4, 8

成人嚥下障害を対象とした比較研究・レビューでもCTARとシェーカー法を含む嚥下リハ介入の有効性が検討されていますが、集団レベルの結果だけで個々の患者にCTARを一律の第一選択とすることはできません。9

CTARとシェーカー法を選ぶときの判断例
確認した条件 考え方
座位は安定するが仰臥位での頭部挙上が難しい CTARを候補にしやすい
仰臥位が安定し、肩を浮かせず頭部挙上を保てる シェーカー法を候補にできる
シェーカー法で頸部疲労・肩すくめが強い 負荷設定を見直し、CTARを含む別方法を検討する
CTARでも頸部痛や強い代償が出る CTARに固執せず、負荷・目的・方法を再評価する
むせ・湿性嗄声だけを認める 症状だけで選ばず、嚥下機能のどこを狙うか再評価する
どちらでもフォームが安定しない 訓練量を増やさず、適応と実施方法を見直す

中止・見直し|回数よりフォームと全身反応を優先する

CTARやシェーカー法には、すべての対象者に共通する数値化された公式中止基準があるわけではありません。そのため、開始前に全身状態を確認し、実施中の症状・フォーム・代償を観察して継続可否を判断します。

以下は、本記事で臨床運用しやすいよう整理した中止・見直しポイントです。施設内手順、主治医やSTを含むチームの方針、個別の医学的リスクを優先してください。

CTAR/シェーカー法の中止・見直しポイント
所見 対応 記録する内容
頸部痛が出る・増悪する 中断し、姿勢・抵抗・保持時間・方法を見直す 部位、強さ、どの動作で出たか
めまい・吐き気が出る 中止して休息し、全身状態を確認する 発症時の姿勢、自覚症状、必要に応じバイタル
呼吸苦・息こらえが強い 中止または負荷を下げ、呼吸状態を確認する 呼吸数、SpO2、自覚症状、出現した負荷
肩すくめ・体幹屈曲などの代償が増える 回数を増やさず、フォームを再設定する 代償の種類、声かけや負荷変更で修正できるか
全身状態がいつもと異なる 訓練を優先せず、状態確認と必要な連携を行う 変化した症状、バイタル、対応内容

頸部痛があるから「シェーカー法ではなくCTARなら安全」と機械的に置き換えるのも避けます。CTARでも頸部運動を伴うため、どの方法なら症状を増悪させずに目的の運動を再現できるかを確認します。

効果判定と記録|実施量と嚥下機能の変化を分けて残す

「回数が増えた」「RPEが下がった」という変化は、訓練への耐久性を示す情報にはなりますが、それだけで嚥下機能が改善したとは判断できません。CTAR/シェーカー法の効果判定では、運動をどれだけ行えたかと、狙った嚥下機能がどう変化したかを分けて評価します。

CTAR/シェーカー法の再評価で分けて確認する項目
評価領域 確認する内容
実施量 抵抗、保持時間、回数、セット数、頻度
運動耐容能 RPE、頸部痛、疲労、翌日反応
フォーム 肩すくめ、体幹屈曲、運動方向のずれ、息こらえ
臨床所見 嚥下後症状、咽頭残留を疑う所見、経口摂取状況など
機器評価 必要に応じVFSS・FEESなどで目的に対応する所見を確認
次回調整 継続、負荷変更、方法変更、再評価・相談のいずれか

記録は「選択理由→負荷→反応→次回」で残す

CTAR/シェーカー法の記録テンプレート
項目 記載内容
方法 CTAR/シェーカー法
選択理由 狙う機能、姿勢条件、頸部負担、実施可能性
負荷 抵抗・保持時間・回数・セット数・頻度
反応 RPE、疼痛、呼吸、疲労、代償運動
嚥下所見 目的に対応する臨床所見・機器評価の変化
次回 同条件継続/負荷変更/方法変更/追加評価・相談

同じ患者でも、器具の硬さや保持時間が変われば負荷条件は変わります。「CTAR実施」の一言だけで終わらせず、再現できる条件を残しておくことが再評価では重要です。

CTAR・シェーカー法 選択・負荷・再評価シート

CTARとシェーカー法について、どちらを選んだか、その理由、実施量、症状・代償、中止・見直し条件、次回の調整を1枚で整理できる記録シートを作成しました。

CTARでは固定の標準回数を印刷せず、保持時間・回数・セット数・頻度を記入式にしています。シェーカー法では原法「60秒保持×3回(各1分休憩)+30回反復」を参考として確認しながら、実際に行った負荷を別に記録できます。

Excel版:院内運用に合わせて入力・編集したい場合に使用できます。

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PDF版:A4縦1枚で印刷し、手書きで記録したい場合に使用できます。

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よくある質問(FAQ)

Q1. CTARとシェーカー法はどちらから始めればよいですか?

一律にCTARから始めるとは決めません。狙う嚥下機能を確認したうえで、座位・仰臥位の可否、頸部負担、フォーム保持、継続可能性を比較します。仰臥位での頭部挙上が難しく、座位でCTARを安定して実施できる場合はCTARを選択肢にしやすくなります。

Q2. CTARは何秒・何回行えばよいですか?

CTARには、すべての患者へ適用できる至適用量は確立していません。研究によって器具・保持時間・回数・頻度が異なるため、固定された「標準回数」として扱わず、実際の抵抗、保持時間、回数、セット数、頻度、反応を記録して調整します。

Q3. シェーカー法は30秒保持でもよいですか?

原法として研究された方法は60秒保持×3回(各1分休憩)+30回反復です。対象者に合わせて保持時間を短縮することはありますが、その場合は原法と同じものとして記録せず、「原法から負荷を調整した方法」として実際の保持時間・回数を残します。

Q4. 頸部痛があればシェーカー法からCTARへ変更すればよいですか?

CTARへ変更すれば必ず頸部負担がなくなるわけではありません。まず訓練を中断し、痛みの部位、姿勢、抵抗、代償を確認します。そのうえでCTARを含む別方法へ変更するか、訓練目的そのものを再評価します。

Q5. CTARやシェーカー法の効果はいつ再評価しますか?

研究では4〜6週間程度の介入期間を設定した報告がありますが、すべての患者に共通する再評価間隔ではありません。訓練開始後は実施量・症状・代償を継続的に確認し、目的に応じた嚥下機能評価を行います。体調変化、疼痛増悪、フォーム破綻、嚥下状態の変化があれば予定時期を待たずに見直します。

次の一手

CTAR/シェーカー法は、間接嚥下訓練全体の中で目的を決めて選ぶことが重要です。また、実施前には訓練全体の中止・相談条件も確認しておくと運用しやすくなります。


参考文献

  1. Shaker R, Easterling C, Kern M, et al. Rehabilitation of swallowing by exercise in tube-fed patients with pharyngeal dysphagia secondary to abnormal UES opening. Gastroenterology. 2002;122(5):1314-1321. doi:10.1053/gast.2002.32999. PubMed
  2. Logemann JA, Rademaker A, Pauloski BR, et al. A randomized study comparing the Shaker exercise with traditional therapy: a preliminary study. Dysphagia. 2009;24(4):403-411. doi:10.1007/s00455-009-9217-0. PubMed
  3. Yoon WL, Khoo JKP, Liow SJR. Chin tuck against resistance (CTAR): new method for enhancing suprahyoid muscle activity using a Shaker-type exercise. Dysphagia. 2014;29(2):243-248. doi:10.1007/s00455-013-9502-9. PubMed
  4. Sze WP, Yoon WL, Escoffier N, Liow SJR. Evaluating the training effects of two swallowing rehabilitation therapies using surface electromyography—Chin Tuck Against Resistance (CTAR) exercise and the Shaker exercise. Dysphagia. 2016;31(2):195-205. doi:10.1007/s00455-015-9678-2. PubMed
  5. Gao J, Zhang HJ. Effects of chin tuck against resistance exercise versus Shaker exercise on dysphagia and psychological state after cerebral infarction. Eur J Phys Rehabil Med. 2017;53(3):426-432. doi:10.23736/S1973-9087.16.04346-X. PubMed
  6. Park JS, An DH, Oh DH, Chang MY. Effect of chin tuck against resistance exercise on patients with dysphagia following stroke: a randomized pilot study. NeuroRehabilitation. 2018;42(2):191-197. doi:10.3233/NRE-172250. PubMed
  7. Park JS, Hwang NK. Chin tuck against resistance exercise for dysphagia rehabilitation: a systematic review. J Oral Rehabil. 2021;48(8):968-977. doi:10.1111/joor.13181. PubMed
  8. Liu J, Wang Q, Tian J, et al. Effects of chin tuck against resistance exercise on post-stroke dysphagia rehabilitation: a systematic review and meta-analysis. Front Neurol. 2023;13:1109140. doi:10.3389/fneur.2022.1109140. PubMed
  9. Lee CL, Banda KJ, Chu YH, et al. Efficacy of swallowing rehabilitative therapies for adults with dysphagia: a network meta-analysis of randomized controlled trials. GeroScience. 2025;47(2):2047-2065. doi:10.1007/s11357-024-01389-5. PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

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rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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