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理学療法士として以下の経験と実績を持つリハビリくんが解説します♪
MUSTとは

MUST(Malnutrition Universal Screening Tool)とは英国静脈経腸栄養学会が作成した成人用の低栄養スクリーニングツールになります。
MUST の最大の特徴は評価の容易さになります。評価項目は「BMI」「体重減少率」「急性疾患による栄養摂取への影響」の 3 つになるため、身長、体重の推移、食事状況を確認するだけで評価することができます。
血液生化学検査値などが評価項目に含まれていないため、在宅や施設入居者についても評価しやすく、このことはスクリーニングツールとして優れているといえます。
MUST は step 1 ~ step 5 までの 5 段階構成となっています。詳細な内容としては、step 1 ~ 3 で栄養障害のリスクを同定し、step 4 で栄養障害リスクの診断、step 5 ではガイドラインに準じて栄養管理を図ります。
step 1 ~ 3 の栄養障害のリスクを同定する方法になりますが、「BMI」「体重減少率」「急性疾患による栄養摂取への影響」の 3 項目について、適した設問を選択し、スコア化していきます。
項目ごとに、わかりやすく解説していきます。
BMI(Body Mass Index)
MUST の step 1 になります。BMI(Body Mass Index)の値から栄養状態をスコア 0 ~ 2 の 3 段階で判定します。BMI は以下の式で算出します。
BMI = 体重kg ÷ (身長m)2
- BMI > 20:スコア 0
- BMI 18.5 ~ 20:スコア 1
- BMI < 18.5:スコア 2
体重減少率
MUST の step 2 になります。体重減少率は過去 3 ~ 6 ヶ月の体重減少率をスコア 0 ~ 2 の 3 段階で判定します。
体重減少率は、以下の計算式で算出することができます。
(過去の体重 − 現在の体重)÷ 過去の体重 × 100 = 体重減少率
例題として、3 ヶ月前に体重 60 kg であった人の現体重が 50 kg であった場合の体重減少率を算出します。
(60 kg − 50 kg)÷ 60 kg × 100 = 16.67 %
この場合、1 日あたり 0.11kg のペースで減少したことになります。
- 体重減少率 < 5 %:スコア 0
- 体重減少率 5 ~ 10 %:スコア 1
- 体重減少率:> 10 %:スコア 2
急性疾患による栄養摂取への影響
MUST の step 3 になります。
この項目では「栄養摂取量が現時点で不足」または「5 日以上の栄養摂取を障害する恐れのある急性疾患の存在(例:消化管手術・化学療法・放射線療法、食欲不振、摂食嚥下障害)」について「なし」か「あり」の 2 段階で判定します。
- なし:スコア 0
- あり:スコア 2
栄養障害のリスク診断(合計点)
MUST の step 4 になります。
「BMI」「体重減少率」「急性疾患による栄養摂取への影響」3 項目のスコアの合計点からリスク診断します。
- スコア 0:低リスク
- スコア 1:中等度リスク
- スコア 2 以上:高度リスク
MUST の合計スコアは最低 0、最高 6 となります。スコアが低いほど栄養障害のリスクが低く、スコアが高いほど栄養障害のリスクが高いという指標になります。
MUST は、GLIM 基準の栄養障害リスクの同定に使用するスクリーニングツールとして推奨されています。GLIM 基準では MUST の合計点が 3 点以上の場合に栄養障害リスクありという判定に至り、2 つめのステップである栄養障害診断に続いていきます。
栄養管理のガイドライン
MUST の step 5 はガイドラインに準じて栄養管理を行います。
- スコア 0:低リスク
- スコア 1:中等度リスク
- スコア 2 以上:高度リスク
step 4 で合計スコアから判定されたリスクによって管理方法が区別されます。
【低リスク:スコア 0 】
低リスクの場合にはルーチンのケアを引き続き実施します。低リスクにおいて重要となることは継続的なスクリーニングを実施することになります。
病院であれば週に 1 回程度、施設であれば月に 1 回程度、在宅であれば 2 ~ 3 ヶ月に 1 回程度のスクリーニングを継続的に行い、栄養障害を未然に防ぎます。
【中等度リスク:スコア 1 】
中等度リスクの場合には要観察となります。この場合、3 日間程度食事摂取の状況を確認します。
その結果、問題がなければ低リスクと同様に、病院であれば週に 1 回程度、施設であれば月に 1 回程度、在宅であれば 2 ~ 3 ヶ月に 1 回程度のスクリーニングを継続的に行います。
栄養摂取の状況に問題がある場合には「栄養管理目標を設定または再設定」「食事摂取量の改善を図る」「食形態の見直し」を行う必要なあります。
【高度リスク:スコア 2 以上】
高度リスクの場合には栄養介入おより栄養管理が必要となり、以下のような対策が必要になります。
- NST など多職種で積極的な介入方法を検討
- 介入目標を設定または再設定
- 食事摂取量の改善を図る
- 食形態の見直し
- 定期的なモニタリング
- ケアプランを見直す
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「MUST」をキーワードに解説させて頂きました。
こちらの記事を読むことで MUST についての理解が深まり、臨床に欠かすことができないリハビリ×栄養管理の一助へとなれば幸いです。
参考文献
- 百崎良,安保雅博.リハビリテーションにおける栄養スクリーニング.Jpn J Rehabil Med .2017,54,p82-86.
- 早川麻理子,西村佳代子,山田卓也,岩田尚,竹村博文.栄養アセスメントツールの対象患者と効果的な活用.静脈経腸栄養 Vol.25 No.2 2010,p581-584.