DASC-21 と CDR の違い【比較・使い分け】

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DASC-21 と CDR は「目的」と「場面」で決める(比較・使い分け)

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DASC-21 と CDR は、どちらも「認知機能低下が生活に与える影響」を捉える評価ですが、現場で迷うポイントは“どちらを先に使うべきか”です。結論から言うと、地域・在宅の一次スクリーニングで拾うなら DASC-21専門的に重症度を段階づけて共有するなら CDR が適しています。

本記事は、設問本文の掲載はせず、使い分けの判断軸(目的・情報源・負担・アウトプット)を「表」と「フロー」で整理します。明日からのカンファや紹介状、ケアマネ連携で迷いにくくなることを狙います。

結論:地域は DASC-21、精密なステージングは CDR

時間と情報が限られる場面では、観察+短い聴取で「認知+生活」を同時に拾える DASC-21 が強いです。合計点が 31 点以上なら「認知症の可能性あり(リスク)」として拾い上げ、追加評価や受診・連携につなげます。

一方、研究や専門外来、施設内の共通言語として「重症度を段階づけたい」なら CDR が向きます。6 領域の box scoreを統合して Global score(0 / 0.5 / 1 / 2 / 3)や CDR-SB(Sum of Boxes)を出し、経過比較や多職種共有に使えます。

DASC-21 の特徴(観察+聴取で「認知+生活」をまとめて拾う)

DASC-21(Dementia Assessment Sheet for Community-based Integrated Care System)は、認知機能と日常生活機能( IADL / ADL )の両面を、21 項目を 1〜4 点で評価して合計点で判定する枠組みです。合計点が 31 点以上の場合に「認知症の可能性あり」として拾い上げる運用が基本です。

家族・介護者からの情報が得られれば精度が上がりますが、独居などで情報提供者がいない場合でも、本人への質問と生活の観察で評価を組み立てる考え方が示されています。さらに合計点が 31 点以上のときは、特定の項目のプロファイルから、軽度〜中等度〜重度の“可能性”をスクリーニングできます。

CDR の特徴(6 領域の box score から Global/SOB を出す)

CDR(Clinical Dementia Rating)は、記憶・見当識・判断/問題解決・社会生活・家庭/趣味・身の回りの 6 領域を評価し、各領域の box score(0 / 0.5 / 1 / 2 / 3)をもとに Global CDR を算出します。Global は「段階(ステージ)」を示すのに強く、CDR-SB(6 領域の合計)は経過の微細な変化を追うのに使われます。

一方で、CDR は面接・情報統合のスキルが要求され、評価者の訓練や所要時間が課題になりがちです。「短時間で拾う」よりも、「共通言語でステージングして共有する」用途で力を発揮します。

DASC-21 と CDR の違い早見表

DASC-21 と CDR の比較(目的・場面・負担・アウトプットの整理)
観点 DASC-21 CDR
主目的 地域・現場での一次スクリーニング(認知+生活機能のまとめ取り) 認知症の重症度ステージング(共通言語化)
使いやすい場面 地域包括・在宅・入退院支援・初期集中支援の入口 専門外来・研究・施設内の重症度共有・経過管理
情報源 家族/介護者+本人質問+観察(独居でも観察で組み立て可) 本人面接+情報提供者面接(統合判断が必要)
負担/所要 短時間運用を想定(拾う→つなぐ) 訓練・時間が必要(精密に段階づける)
アウトプット 合計点( 31 点以上=リスク)+プロファイルで軽度〜重度の可能性 Global(0 / 0.5 / 1 / 2 / 3)+ CDR-SB(合計)
強み 生活機能を含めて「今困っている」まで拾いやすい 重症度の段階が共有しやすく、経過比較の軸になりやすい
注意点 情報源の偏り(本人のみ/家族のみ)で過小・過大評価になり得る 評価者の熟練度で差が出やすい(判断根拠の記録が重要)

迷ったときの使い分けフロー(紹介・連携まで)

  1. 入口(地域・病棟の“気づき”):家族/介護者の情報が揃うなら DASC-21 を優先。情報が乏しければ、本人質問+観察で「できる/できない」を具体例で補う。
  2. DASC-21 が 31 点未満:ただし“主訴が強い”ときは、気分・せん妄・薬剤影響・聴覚/視覚などの要因も確認し、必要なら再評価(環境調整後)へ。
  3. DASC-21 が 31 点以上:追加評価(認知機能検査、BPSD、生活課題、家族負担)へ。医師受診や多職種カンファに進める。
  4. 専門的な段階づけが必要:紹介状や専門外来、研究・施設内の共通言語化が必要なら CDR(Global / CDR-SB)でステージングし、経過の軸をそろえる。

現場の詰まりどころ(境界例・情報源不足・再評価)

境界( DASC-21 の 31 点前後)で迷う

31 点前後では「その日の体調」「環境」「質問の具体性」で点が動きやすくなります。“できると言う” をそのまま取らず、具体例(いつ・どこで・何を・どの程度)で確認し、観察情報(服薬管理、金銭管理、買い物、電話、予定)と照合します。

情報提供者がいない(独居・同居でも日中独居)

独居では「家族が答えられない」ことも多いので、本人質問+生活観察を主軸に、訪問時の物的情報(カレンダー、領収書、服薬カレンダー、家電の使用状況など)を“記録の根拠”に残します。

記録が抽象的で、次の人が再評価できない

評価結果は点数だけでなく、点が付いた根拠(観察事実・発言・具体例)を 1 行で添えるのが再評価の質を上げます。

つまずきやすい点と、明日からの対策(記録ポイントつき)
よくあるつまずき 起こる理由 対策 記録ポイント
本人の自己申告だけで点を付ける “できる” の定義が曖昧 具体例質問(いつ/どこで/誰と/頻度)+観察で照合 発言+観察事実をセットで残す
家族の不安が強く過大評価 介護負担や不安が混ざる 困りごと(安全・金銭・服薬・外出)を分解して確認 “困っている行動” を具体的に記載
急性期の体調で一時的に悪化 せん妄・睡眠・感染・薬剤 環境調整後に再評価( 1〜2 週間など) 当日の体調/薬剤/睡眠を併記

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. まずはどちらを先にやればいいですか?

時間や情報が限られる入口では、DASC-21 のほうが「認知+生活」をまとめて拾いやすいです。31 点以上で“次の評価や連携に進む”という運用にすると、チーム内の迷いが減ります。精密な重症度共有が必要になった段階で CDR を検討するとスムーズです。

Q2. DASC-21 が 31 点未満でも、家族が強く心配しています

点数だけで否定せず、困りごと(服薬・金銭・火の管理・外出・転倒・夜間不穏など)を分解して確認してください。体調や睡眠の影響が疑われるなら、環境調整後の再評価も有効です。

Q3. CDR は誰が使うのが現実的ですか?

施設内で“重症度の共通言語”が必要なチーム(外来、認知症ケアチーム、研究など)で、評価者トレーニングや面接時間を確保できる環境が向きます。運用するなら「判断根拠(面接要点)」の記録までセットにするとブレが減ります。

参考文献

  1. Awata S, et al. Development of the dementia assessment sheet for community-based integrated care system. Geriatr Gerontol Int. 2016. (cut-off 30/31 の感度・特異度を含む) PubMed
  2. DASC-21 公式サイト:評価方法(合計点 31 点以上=リスク、プロファイル判定) Web
  3. DASC-21 Manual(独居時は本人質問+観察で組み立てる等) PDF
  4. O’Bryant SE, et al. Staging Dementia Using Clinical Dementia Rating Scale Sum of Boxes Scores. Arch Neurol. 2008. PMC
  5. National Alzheimer’s Coordinating Center. CDR® Calculator(6 領域の確認) Web
  6. 日本老年医学会:認知機能の評価法と認知症の診断(DASC-21 のスクリーニングに関する記載) Web

おわりに

DASC-21 と CDR は、優劣ではなく役割の違いです。入口で拾って連携につなぐ(DASC-21)重症度を共通言語で共有して経過を見る(CDR)というリズムを作ると、チームでの迷いが減ります。

評価の質を上げる近道は「根拠の残し方」をそろえることです。面談準備チェックと職場評価シートは こちら から使えます。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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