深部感覚の検査方法【位置覚・運動覚・振動覚】

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深部感覚とは(位置覚・運動覚・振動覚の検査方法)

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※本記事は 「感覚検査の完全ガイド」 の子記事です。

深部感覚は、関節・筋・腱・骨からの入力を通じて姿勢制御や巧緻動作を支える基盤の感覚です。伝導路としては主に脊髄後索から内側毛帯を経て大脳皮質へ上行する「後索・内側毛帯路」が関わり、障害部位により分節性・遠位優位などのパターンが変わります。本稿では、臨床で使いやすい「深部感覚の検査方法」を軸に解説します。

評価の中心は 位置覚・運動覚・振動覚 で、まずはベッドサイドでのスクリーニングで左右差と遠位優位かどうかを確認します。そのうえで、歩行・バランス評価や ADL 自立度評価、患者さんの自覚症状と統合して解釈します。脳卒中などでは、施設で用いている機能評価(例:体性感覚項目)と整合をとり、視覚代償の有無を必ず記録しておくとリハビリ方針につなげやすくなります。

位置覚・運動覚の検査方法:末節把持・最小移動・回答形式

深部感覚の位置覚・運動覚検査方法として、まず手指や足趾の末節骨を側面からピンチし、関節面を押しつぶさないように注意しながら最小角度で動かします。視覚を遮蔽した状態で「今は上向きですか?下向きですか?」と回答してもらい、左右・遠位/近位をランダムに各関節 3 回程度提示します。動かす速度を一定にすると、位置覚と同時に運動覚も評価しやすくなります。

判定では、誤答率だけでなく反応の遅れや試行間の一貫性も重視します。近位関節では正答するのに遠位で誤答が増える場合は、遠位優位の深部感覚障害を示唆します。把持点が末節末端や爪にずれていたり、角度が大きすぎたりすると皮膚牽引や関節痛による偽陰性・偽陽性を生むため、「把持位置」「角度」「患者の痛みの訴え」などは備考欄に必ず記録しておきます。

振動覚( 128 Hz )の検査方法:当て方・消失点の比較

振動覚は 128 Hz の音叉を用いて評価します。音叉を打ち鳴らしたあと、指節骨・内果・膝蓋骨・棘突起などの骨隆起に軽く当て、「今、振動を感じますか?」「もう振動は消えましたか?」と報告してもらいます。左右同一部位で実施し、遠位から近位へ順に当てていくことで、消失点のパターンを比較しやすくなります。検者自身も同じタイミングで音叉に触れておくと、一種のコントロールとして有用です。

判定では、遠位からの振動覚消失や左右差の有無を確認しつつ、皮膚温や浮腫、末梢循環不良などの影響にも目を向けます。寒冷環境や冷えは閾値を上げ、振動を感じにくくする典型的な交絡因子です。必要に応じて患肢の再加温や体位変更を行い、条件をそろえて再検します。疼痛や皮膚病変がある部位は無理に実施せず、安全性と本人の同意を優先することが前提です。

信頼性を上げる要点(練習試行・ランダム化)

深部感覚は、患者さんの理解度や「こう答えた方が良さそう」という期待バイアスの影響を受けやすく、説明不足のまま本番に入ると誤答が増えます。まず健側や保たれていると考えられる部位で 1〜2 回の練習試行を行い、「このくらいの動きで、上か下かを答えてください」と具体的にイメージを共有します。提示順序は必ずランダム化し、ダミー試行を 20〜30 % 混ぜると、当てずっぽう回答を減らせます。

検者は、毎回同じ角度・同じ速度・同じ時間で刺激を与えることを意識し、声かけのリズムや表情で答えを誘導しないよう注意します。同日内の再検では、同じ条件で実施して一貫性を確認し、誤答が増えているときは注意機能の低下や疲労、疼痛、睡眠不足などの交絡因子を疑います。必要に応じて開眼/閉眼条件を分けて実施し、「視覚代償あり/なし」の 2 系統で記録を残すと、評価の信頼性が高まります。

現場の詰まりどころ(どこで迷いやすいか)

現場で深部感覚の検査が「なんとなく避けられがち」になる背景には、(1) 手順が煩雑で時間がかかるイメージ、(2) 所見の書き方があいまいになりやすい、(3) 歩行や ADL との結びつきがイメージしづらい、という 3 つの詰まりどころがあります。特に「やや低下」「問題なし」といった一語コメントだけで済ませると、再評価や他職種カンファレンスで情報が活かしきれません。

本記事では、検査方法を「末節把持・最小移動」「128 Hz 音叉」「練習試行+ランダム化」という最小限のセットに絞り、A4 1 枚の評価用紙で誤答率と左右差を定型的に残せるようにしています。まずは片麻痺や末梢ニューロパチーなど、深部感覚低下が疑われる患者さんに限定して導入し、「所見の書き方」「歩行・バランスとの結びつけ方」に慣れていくと、習得コストを抑えつつ臨床の情報量を増やすことができます。

深部感覚の評価用紙と記録テンプレ(誤答率・左右差の扱い)

ここでは、ベッドサイドでそのまま使える「深部感覚 評価用紙」を想定した記録テンプレートを示します。A4 1 枚に、位置覚・運動覚・振動覚の結果と誤答率、左右差、備考を整理できる形にしておくと、多職種カンファレンスや経過の比較にも利用しやすくなります。

深部感覚 評価用紙(成人・ベッドサイド用記録シート)
項目 所見/語彙 備考
位置覚 ○/△/× ○/△/× 誤答率 xx %・遅延あり/なし 把持点・角度・痛みの有無
運動覚 ○/△/× ○/△/× 速度 一定/不一定・一貫性 代償動作・視覚依存
振動覚( 128 Hz ) 感じる → 消失点(遠位/近位) 感じる → 消失点(遠位/近位) 左右差 あり/なし 寒冷・浮腫・末梢循環・疼痛

NG/OK 早見(質を落とす典型と対策)

深部感覚検査がうまくいかない場面では、「把持の仕方」「提示のリズム」「環境調整」の 3 点に問題があることが多いです。よくある NG パターンと、その理由・対策を簡単な OK/NG 早見表として整理しました。新人教育や手順見直しのときに、チェックリスト感覚で使ってください。

実施の質を上げる OK/NG 早見表(深部感覚検査)
場面 OK(推奨) NG(避ける) 理由/メモ
把持 末節側面をソフトに把持し、最小角度で動かす 末節末端や爪を強くつまむ・大きく曲げる 皮膚牽引や痛みで誤所見(偽陽性・偽陰性)を生みやすい
提示 左右・遠位/近位をランダムに提示し、ダミーを 20〜30 % 混ぜる 「右 → 左 → 右 → 左」のような予測可能な一定リズム 期待バイアスが増大し、当てずっぽう回答でも正答率が上がってしまう
環境 十分な説明・練習試行・室温調整・体位調整を行ってから検査する 説明不足のまま開始・寒冷環境・痛みや不安への配慮不足 誤答率や閾値が上昇し、「深部感覚障害」と「単なるコンディション不良」が混在しやすい

歩行/バランス・ ADL と統合した解釈とリハビリ

深部感覚低下は、歩行時の足底接地や立位バランスの安定性、巧緻動作のぎこちなさとして現れます。たとえば、開眼立位ではなんとか安定しているが閉眼で急にふらつく場合は、視覚代償に強く依存しているパターンが疑われます。歩行では、足先のクリアランス低下やステップ長のばらつき、床の凹凸への過敏さとして観察されることも多く、バランス評価や歩行速度などと組み合わせて評価すると重症度を捉えやすくなります。

深部感覚リハビリのポイントは、「情報入力を増やす工夫」と「代償と安全性のバランス」を取ることです。具体的には、足底刺激を強めるインソールやテクスチャマットの活用、鏡や動画フィードバックによる運動覚の補強、段階的な閉眼課題によるバランストレーニングなどが挙げられます。脳卒中片麻痺では、感覚入力を高めた上での立ち上がり・荷重練習や、歩行中の足底接地タイミングを言語化しながら練習するなど、「感覚と運動をセット」で設計すると ADL や QOL につながりやすくなります。

おわりに

深部感覚の評価は、どうしても「時間がかかる」「所見が書きにくい」と後回しになりがちですが、姿勢制御や歩行安全性を考えるうえでの土台となる情報です。位置覚・運動覚・振動覚を、最小限のステップでスクリーニングし、誤答率と左右差という共通フォーマットで記録しておくと、再評価やカンファレンスでの共有が一気に楽になります。

明日からの臨床では、まずは「感覚障害が疑われる数名」に絞って本記事の手順を試し、評価用紙を使いながら歩行やバランス所見とのつながりを意識してみてください。深部感覚の所見が、介助量の変化や転倒リスクの説明、家族へのフィードバックにも生きてくる感覚を持てるはずです。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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よくある質問

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Q. 深部感覚の検査は、毎回すべての関節で行うべきですか?

A. すべての関節でルーチン評価する必要はありません。まずは症状や診断名、歩行・バランス所見から「障害が疑われる側」「遠位が怪しい部位」を絞り込み、代表的な関節でスクリーニングするのが現実的です。異常が疑われた場合にのみ、近位関節や上下肢の他部位へ範囲を広げていく段階的な運用をおすすめします。

Q. 認知機能低下や失語がある患者さんでは、深部感覚検査をどう解釈すれば良いですか?

A. 指示理解が難しい場合、誤答率の高さが「深部感覚障害」なのか「コミュニケーション困難」なのかを慎重に切り分ける必要があります。ジェスチャーや実物を用いた十分な練習試行を行ってから本検査に入り、回答形式をできるだけシンプルにすることが大切です。どうしても判断が難しいときは、「信頼性は低いが〜」と一言添えて記録し、他の感覚検査や歩行・バランス所見を重ねて総合評価する視点を優先してください。

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