認知症 OT 見当識ドリルは「時・場所・状況」を同条件で反復すると運用が安定します
見当識ドリルは、正答率だけで終わらせず「手がかり量」「再指示回数」「疲労・不安の徴候」まで同じ軸で残すと、次回の負荷設定が迷いません。
ポイントは、課題を変える前に同条件(環境・声かけ・時間)を固定して反復することです。担当者が変わっても比較可能性を保てます。
見当識ドリル(L1〜L3)ダウンロード
以下の 3 枚は同一フォーマットなので、レベルが変わっても記録軸を揃えられます。実施前に「目的 1 文」「所要時間」「中止基準」をチームで共有してください。
同条件の固定(最小セット)は、①実施場所(席・机)②声かけ(導入文)③時間(目安)④課題数(枚数)を毎回そろえることです。
見当識ドリル L1(やさしめ)
初回・不安が強い日・拒否が出やすい日は L1 から開始します。成功体験を優先し、途中で疲労が出たら課題数を減らしても構いません。
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見当識ドリル L2(標準)
通常運用の基準レベルです。進級時は「課題量・時間・ルール」のうち 1 要素のみを変更し、同条件で取り直します。
プレビューを開く(L2)
見当識ドリル L3(やや高負荷)
負荷耐性・生活接続の確認に使います。疲労徴候が増えたら L2 に戻すほうが、比較可能な記録が残ります。
プレビューを開く(L3)
使い分けの目安
開始レベルは「できる/できない」だけでなく、声かけ量と疲労反応で決めると実務に馴染みます。進級時は、課題量・時間・ルールのうち1 要素のみを変更してください。
迷ったら「同条件で 2 回とれる設計」に戻すと、経時比較が安定します。
| 場面 | 推奨開始 | 進級の目安 | 運用ポイント | 戻し/中止の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 初回・不安が強い | L1 | 手がかり最小で 7〜8 割以上 | 説明は短く固定し、成功体験を優先 | 疲労・拒否が出たら課題数を減らす |
| 通常セッション | L2 | 誤反応・再指示回数が安定して減少 | 時間か課題量のどちらかだけ変更 | 再指示増なら L1 に一時戻す |
| 負荷耐性・生活接続確認 | L3 | 遂行過程が安定し中断が少ない | 疲労徴候が増えたら L2 に戻す | 中断が続く日は L2 以下で固定 |
5 分で回す実施フロー
短時間運用では、手順の固定が最重要です。担当者ごとの差を減らすために、導入文・観察項目・次回設定をテンプレ化します。
導入文(読み上げ例):「いまから “今日の日付と場所” を一緒に確認します。わからなかったら、私がヒントを出します。」
- 導入(30 秒):本日の目的を 1 文で共有する(例:「今日の日付と場所を確認します」)。
- 実施(3〜8 分):当日の開始レベル( L1 / L2 / L3 )を決め、無理な進級をしない。
- 記録(1 分):正答だけでなく、支援量が残る形で統一して書く。
- 次回設定(30 秒):同レベル継続か 1 段階変更かを明確にする(変更は 1 要素のみ)。
記録の最小セット(省略しない)は、①正答 ②手がかり量(なし/少/多)③再指示回数 ④疲労・不安(有/無)です。
現場の詰まりどころ
詰まりやすいのは「毎回説明が変わる」「一気に難しくする」「点数だけ残す」の 3 点です。これらは比較可能性を下げ、介入につながる情報を失います。
- 回避の基本:5 分フローを固定する(導入文・順序・記録をそろえる)
- 失敗を先回り:よくある失敗と対策を確認(変更 1 要素の原則)
- 記録で迷う:採点・記録テンプレ(語彙固定)をそのまま使う
よくある失敗と対策
| よくある失敗 | 起きる理由 | 対策 |
|---|---|---|
| 説明文が毎回変わる | 評価条件が揃わず比較しにくい | 導入文を 1 文で固定して読み上げる |
| 難易度を一気に上げる | 失敗体験が増えて拒否につながる | 変更は 1 要素のみ(量・時間・ルール) |
| 正答数だけ記録する | 次回設定に必要な情報が不足する | 手がかり量・再指示・疲労徴候を必ず残す |
| 同日の条件が揃っていない | 成績のぶれが「介入効果」か判別できない | 場所・時間・課題数・声かけを最小セットで固定 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
どのレベルから始めるのが安全ですか?
初回は L1 開始を基本にしてください。手がかり量が減り、再指示回数が安定して少ない状態が続いたら L2 へ進めます。L3 は疲労徴候と中断有無を確認して導入すると安全です。
L1〜L3 は同日に連続して実施してよいですか?
同日実施は可能ですが、疲労が出やすい場合は 1〜2 レベルで止めるほうが運用しやすいです。当日は変更要素を 1 つに絞ると比較可能性を保てます。
進級の判断は何で決めますか?
正答率だけでなく、手がかり量、再指示回数、所要時間、疲労徴候を合わせて判断します。悪化があれば同レベル維持か 1 段階戻してください。
短時間の日はどこを省略すべきですか?
課題数を省略して調整し、記録項目は省略しないのが原則です。最小運用でも「正答・手がかり量・再指示・中断有無」は残してください。
家族・スタッフへの共有は何を伝えればよいですか?
「本日の課題」「必要だった支援」「次回設定(維持/変更)」の 3 点に固定すると、短時間でも伝達精度が上がります。
次の一手
まずは 2 週間、同条件で見当識ドリルを回して比較可能な基準線を作りましょう。A:紙面ドリル集で全体像を確認 → B:採点・記録テンプレで記録語彙を固定。
参考文献
- Livingston G, Huntley J, Sommerlad A, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. Lancet. 2020;396(10248):413-446. doi:10.1016/S0140-6736(20)30367-6
- World Health Organization. Risk reduction of cognitive decline and dementia: WHO guidelines. Geneva: WHO; 2019. PubMed
- 日本作業療法士協会. 認知症に関する情報・実践資料. 公式サイト
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


