退院支援の進め方|退院困難要因・地域連携パスの書き方

制度・実務
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退院支援の進め方|早期着手+情報整理テンプレで“毎回同じ順番”にする

退院支援は、退院先を最後に決める仕事ではなく、入院早期から退院困難要因をそろえ、必要な支援(サービス・環境・家族支援)を前倒しで並べるほど成功率が上がります。現場で難しいのは、患者差が大きいほど「話す順番・集める情報・書き方」がバラつき、合意形成が遅れることです。

本記事は、退院支援を属人化させないために、①最短フロー( 5 ステップ)②情報整理テンプレ③家族説明テンプレ④連携サマリ(地域連携パス)の順で“型”を固定します。必要に応じて、下のリンクから該当フェーズへ飛んでください。

退院支援加算・地域連携パスは「名称」より“運用の中身”をそろえる

退院支援(入退院支援加算を含む)の実務は、入院中に退院に必要な段取りを整え、退院後の生活で起きるリスクを前もって減らすための仕組みです。点数や区分の理解も大切ですが、現場で効くのは「退院困難要因を早期にそろえる」「関係者で同じ粒度で共有する」「次の一手を日程と担当に落とす」の 3 点です。

地域連携パスは、急性期・回復期・生活期でケアが切れないように、情報を標準化して共有するための共通フォーマットです。PT は、機能評価だけでなく、生活の危険場面(どこで転ぶ/どこで介助が増える)を“伝わる言葉”に翻訳し、支援の優先順位をつける役割が強いです。

最短フロー:退院支援を“毎回同じ順番”で回す( 5 ステップ)

退院支援は、個人差が大きいほど順番が重要です。おすすめは、①退院困難要因の棚卸し(早期)→②退院先の候補を並べる→③必要支援を具体化→④家屋調査/試験外泊で検証→⑤連携サマリで引き継ぎ、の流れです。状態が変わっても「戻る場所」が明確になり、チーム内の認識ズレが減ります。

退院支援フロー( 5 ステップ)と成果物:順番を固定して属人化を減らす
ステップ 目的 成果物(書くもの) 次の一手(例)
1. 早期整理 退院困難要因を見える化 情報整理テンプレ(下の表) 不足情報を「担当+期限」で決める
2. 選択肢化 退院先候補を複数並べる 自宅/施設/転院の候補と条件 条件が満たせるかを分解する
3. 具体化 必要支援を優先順位づけ サービス・用具・住宅改修の ToDo 「まず 1 つだけ」決めて進める
4. 検証 机上の見立てを現場で確認 家屋調査/試験外泊の所見メモ 危険場面を 1 つに絞って再調整
5. 引き継ぎ 地域に同じ粒度で共有 連携サマリ( 300–400 字) 依頼文を 1 文で明確にする

続けて読む:

退院前訪問(家屋調査)を当日迷わない手順でまとめました → 退院前訪問(家屋調査)の回し方

テンプレ 1:情報整理(退院困難要因を 5 分でそろえる)

ここは“欄”を固定すると経験差が出にくくなります。最低限、①介助量(どこで)②転倒(いつ)③認知・行動(何が起きる)④嚥下・栄養(何が制限)⑤住環境・介護力(誰が何をできる)をそろえると、退院先の議論が前に進みます。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。短文例は必ず 1 行でそろえると、チーム内の粒度が安定します。

退院支援の情報整理テンプレ:埋める欄(粒度)を固定して迷いを減らす
領域 最低限の確認 PT の書き方(短文例: 1 行) 次の一手(例)
介助量 移乗/歩行/トイレ/更衣(どこで増えるか) 「夜間トイレで介助増(立ち上がり初動ふらつき)」 夜間動線の確認、見守り体制の検討
転倒 転倒歴、ふらつき、危険場面(いつ・どこで) 「方向転換+立ち上がりで不安定、屋内は見守り必須」 手すり位置、歩行補助具、段差対応
認知・行動 注意障害、見当識、夜間せん妄、指示理解 「疲労で注意低下、二重課題でミス増」 声かけの統一、環境刺激の調整
嚥下・栄養 食形態、水分、服薬、体重変化(制限点) 「食事に時間、体重減少あり(栄養介入要)」 栄養指導、食事環境、在宅支援の相談
住環境 段差、手すり、トイレ・浴室、動線(どこが危ないか) 「玄関段差あり、トイレ動線に手すり必要」 家屋調査、福祉用具、住宅改修の検討
介護力 同居者、日中不在、夜間対応、主介護者の負担 「日中不在、夜間は家族 1 名で見守り」 サービス導入、見守り分担、緊急時手順の確認

関連:退院困難要因の見落とし対策に → 環境要因( ICF )の整理テンプレ

テンプレ 2:家族説明( 30 秒で“今日決めたいこと”を共有する)

家族説明は、情報を詰め込みすぎると合意が取れません。最初の 30 秒で結論(退院先の選択肢と今日決めたいこと)を伝え、その後にリスクと必要支援を順に置くと短くなります。説明の目的は「理解」より先に「次の一手(担当・期限)」を決めることです。

家族説明テンプレ(台本):言う順番を固定して合意形成を早くする
パート 言うこと(型) 例文(短く)
結論( 30 秒) 退院先候補+今日決めたいこと 「自宅退院も可能性はありますが、夜間トイレの安全が課題です。まずは支援をそろえる方向で進めてよいか確認したいです」
リスク 危険場面を 1 つに絞る 「一番危ないのは立ち上がり直後のふらつきです」
必要支援 サービス・用具・環境を具体化 「手すり位置と歩行補助具、見守り体制で安全域が広がります」
次の一手 日程と担当を決める 「家屋調査を来週、試験外泊を再来週に設定しましょう」

テンプレ 3:地域連携パス/連携サマリ( 300–400 字で“同じ粒度”にする)

引き継ぎで困るのは、情報が長いことではなく粒度がバラバラなことです。地域側が行動に移せるように、サマリは「現状」+「リスク」+「条件」+「依頼」の 4 点に固定します。条件が書かれていると、地域側が評価と介入を同じ方向で始められ、やり直しが減ります。

連携サマリ( 300–400 字)の書式:現状+リスク+条件+依頼の 4 点で統一する
項目 書くこと 短文例( 1 行)
現状 介助量・補助具・移動範囲 「屋内歩行は T 字杖で見守り、移乗は軽介助」
リスク 危険場面 1 つ+トリガー 「方向転換と立ち上がり初動でふらつき」
条件 安全条件(環境/用具/見守り) 「トイレ動線に手すり必須、夜間は見守り必要」
依頼 やってほしいこと( 1 文) 「屋内動線の再評価と手すり位置の提案を希望」

コピペ枠( 300–400 字の骨格)

【現状】(介助量・補助具・移動範囲)

【リスク】(危険場面 1 つ+トリガー)

【条件】(環境/用具/見守り:安全条件)

【依頼】(お願いしたいこと: 1 文)

依頼文( 1 文)の型:迷ったらこのまま使う

  • 「屋内動線の再評価と、手すり位置(○○)の提案をお願いします」
  • 「夜間トイレの安全確保に向け、見守り体制と用具(○○)の適合をお願いします」
  • 「方向転換時のふらつき対策として、歩行補助具の再選定をお願いします」

現場の詰まりどころ:退院が遅れる“ 3 つのズレ”

退院支援が停滞する原因は、能力が足りないからではなく、情報と合意の順番がズレていることが多いです。特に、①退院先を先に決めようとして揉める②家族説明が長くて合意が取れない③地域への引き継ぎが抽象で再評価がやり直しになる、の 3 つが頻発します。

よくある失敗(ズレ)と修正ポイント:記録に残す“一言”まで揃える

修正はシンプルで、「順番を固定」し、「短文テンプレで粒度をそろえる」ことです。個人の説明力に依存せず、チームの仕組みとして回すと忙しい病棟でも崩れにくくなります。

退院支援が進まない原因(ズレ)と修正:記録に残す一言までセットにする
ズレ 起こりやすい場面 修正ポイント 記録で残す一言(例)
退院先を先に決める 入院直後の家族面談 先に退院困難要因を整理して、候補を複数並べる 「候補:自宅/施設/転院。条件を確認中」
説明が長い 専門用語が多い説明 最初の 30 秒で“今日決めたいこと”を共有する 「本日の合意:家屋調査と試験外泊の実施」
引き継ぎが抽象 連携サマリが人によって違う 現状+リスク+条件+依頼の 4 点に固定する 「夜間トイレが最大リスク。条件:手すり+見守り」

回避の手順/チェック:止まったら“戻る場所”を固定する

退院支援が止まったときは、結論(退院先)に戻る前に、①危険場面(リスク)②安全条件に戻すと立て直しやすいです。下のチェックは、会議や面談前の 1 分確認として使えます。

退院支援が止まったときの 1 分チェック:リスクと条件に戻して次の一手を決める
確認 見るポイント 決めること 次の一手(例)
危険場面 一番危ない動作は何か( 1 つに絞る) 最優先で守る場面 夜間トイレ/方向転換/段差などに限定
安全条件 何があれば安全か(用具・環境・見守り) 条件の優先順位 手すり位置/動線/見守り体制を決める
不足情報 決めるのに足りない情報は何か 担当+期限 家屋調査の実施日/試験外泊の条件を設定
共有 地域へ伝える粒度は揃っているか 4 点(現状・リスク・条件・依頼) 依頼文を 1 文で明確にして送る

具体:手すり・段差・動線の確認はここにまとめています → 住宅改修チェック( PT 向け)

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

退院支援はいつから始めるのが良いですか?

基本は早いほど良いです。入院早期に退院困難要因を棚卸ししておくと、退院先の議論が前に進み、必要支援(サービス・用具・環境)の手配が遅れにくくなります。まずはテンプレで情報をそろえ、次の一手(家屋調査や試験外泊など)を決めていくのが実務的です。

家族説明で揉めたとき、どこから立て直せばよいですか?

退院先の結論に戻る前に、「一番危ない場面(リスク)」と「安全にする条件(手すり、見守り、サービス)」に戻すと立て直しやすいです。説明は長くしない方が合意が取りやすいので、最初の 30 秒で今日決めたいことを共有し、次の一手を日程に落とすと前に進みます。

地域連携パス/連携サマリで一番大事な情報は何ですか?

「現状(どこまでできる)」と「リスク(どこが危ない)」に加えて、「条件(何があれば安全)」を短文で書くことです。条件が書かれていると、地域側が評価と介入を同じ方向で始められ、やり直しが減ります。最後に依頼(何をお願いしたいか)を 1 文で置くと連携がスムーズになります。

退院先が決まらず長引くとき、PT は何を優先すべきですか?

機能回復だけでなく、「退院後に危険が出る動作」と「それを安全にする条件」を優先して整理します。たとえば夜間トイレ、方向転換、段差、入浴動作などです。これらを家族・地域が理解できる言葉にして共有できると、サービスや環境調整が進みやすくなります。

次の一手:運用を整える → 共有の型を作る → 環境の詰まりも点検する

教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。

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参考文献

  • 厚生労働省. 令和 6 年度 診療報酬改定の概要(入退院支援加算等). PDF
  • 厚生労働省. 地域医療計画と地域医療連携クリティカルパス(地域連携パスの考え方). PDF
  • 日本医師会. 医療の地域連携に関する情報(地域連携の枠組み). Web

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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