FOIS は「経口摂取レベルの変化」を最短で共有できる尺度です
FOIS( Functional Oral Intake Scale )は、摂食嚥下の状態を「経口摂取の実際」で段階化し、チーム内で共有しやすくするための尺度です。臨床では、嚥下所見そのものだけでなく、今どこまで食べられているかを簡潔に伝える必要があります。FOIS はその共通言語として有用です。
本記事では、FOIS の段階の読み方、判定がブレる場面、記録の型までを一連で整理します。点数化して終わりにせず、次の介入と再評価につながる運用まで確認できます。
FOIS とは何か
FOIS は、経口摂取の可否と内容を 7 段階で示す指標です。低い段階は経口摂取が難しい状態、高い段階は制限が少なく経口摂取できる状態を表します。重要なのは「嚥下機能の精密検査結果」だけでなく、「現時点の実際の食事形態と摂取状況」を反映して運用することです。
そのため、FOIS は病棟・回復期・在宅での情報連携に向いています。カンファレンスや申し送りで、短時間でも状態変化を共有しやすい点が強みです。
FOIS 7 段階の実務的な見方
| 段階 | 状態の要点 | 現場での確認ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 経口摂取なし | 禁食の理由、栄養経路、再評価の予定時点を明確化 |
| 2 | 経口摂取は最小限・一貫しない | 試行条件(姿勢・量・介助)を固定して安全性を確認 |
| 3 | 経口摂取ありだが栄養の主は代替経路 | 経口での負担と栄養充足のバランスを評価 |
| 4 | 単一形態の経口摂取 | 形態変更の基準を事前にチームで合意 |
| 5 | 複数形態だが特別な準備・代償が必要 | 必要な代償手段(姿勢・一口量・速度)を記録 |
| 6 | 特別準備なしで経口摂取、ただし一部制限あり | 制限食品の根拠を明示し、解除条件を設定 |
| 7 | 制限なく経口摂取可能 | 誤嚥リスク再燃を防ぐ生活指導・セルフモニタリング |
判定をブレさせない 5 分フロー
- 当日の摂取実態を確認(食形態・介助量・むせ・疲労)
- 安全条件を固定(姿勢、食事速度、一口量、環境)
- FOIS 段階を暫定判定
- 判定理由を 1 行で記録(例:代償手段の有無)
- 再評価タイミングを設定(次回条件も記録)
運用を統一したい場合は、嚥下評価ワークフロー記事とセットで使うと、病棟内の記録品質をそろえやすくなります。
現場の詰まりどころ
よくある失敗
| 失敗パターン | 何が問題か | 修正の要点 |
|---|---|---|
| 検査所見だけで段階を決める | 実際の摂取状況と乖離する | 「当日の実食状況」を必ず判定根拠に含める |
| 担当者ごとに条件が違う | 再現性が落ちる | 姿勢・一口量・介助条件を定型文で固定 |
| 段階変更の理由が曖昧 | 次回介入に活かせない | 「何ができたか/何が制限か」を 1 行で明記 |
回避のチェック手順
- 判定前に「今日の摂取実態」を確認したか
- 安全条件(姿勢・介助・量)を固定したか
- 段階の根拠を文章で残したか
- 次回の見直し時点を決めたか
記録の型(そのまま使える文例)
「FOIS 5。複数形態の経口摂取は可能だが、食事速度調整と一口量の管理が必要。むせは軽度で、姿勢調整にて改善。次回は同条件で段階維持可否を再評価。」
このように、段階+必要条件+次回評価を 1 セットで残すと、引き継ぎ時の認識ズレを減らせます。
症例ミニケース(急性期→回復期→在宅)
FOIS は「単発の点数」よりも、経時変化を共有する道具として使うと価値が高まります。ここでは、同一患者を想定したミニケースで、段階変化と記録の型を確認します。
| 時期 | FOIS | 状態の要点 | 介入・調整 | 記録の一言(例) |
|---|---|---|---|---|
| 急性期(入院初期) | 3 | 経口摂取は一部可能だが、栄養は主に代替経路 | 姿勢調整、少量試行、疲労とむせの観察を固定条件で実施 | 「FOIS 3。経口は試行レベル。安全条件下で実施し、栄養は代替経路主体。」 |
| 回復期(機能改善期) | 5 | 複数形態の経口摂取が可能、ただし代償手段が必要 | 一口量とペースの自己管理、食形態の段階的拡大 | 「FOIS 5。複数形態に対応可。速度調整と一口量管理で安全に摂取。」 |
| 在宅(生活再建期) | 6 | 特別準備なしで摂取可能だが、一部食品に制限あり | 家族指導、外食時の注意点、再増悪時の受診目安を共有 | 「FOIS 6。日常摂取は概ね自立。制限食品と再評価条件を家族と共有。」 |
ポイントは、FOIS の段階だけでなく、その段階になった理由(条件)と次回評価の条件をセットで残すことです。これで担当者が変わっても判定のブレを抑えられます。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
FOIS は単独で使ってもよいですか?
単独でも経口摂取レベルの共有には有用です。ただし、原因分析や介入計画には、観察所見や他の評価結果を併用した方が安全です。
段階が上がったり下がったりするのは問題ですか?
問題ではありません。重要なのは、変化した理由を条件付きで記録し、次回の判断材料として残すことです。
FOIS 4 と 5 の境目で迷います
複数形態に対応できるか、特別な準備や代償が必要かを基準に整理すると判定しやすくなります。チーム内で境界の運用ルールを共有するとブレが減ります。
在宅場面でも使えますか?
使えます。家族介助の有無、食事環境、疲労の出方など、生活場面の要素を合わせて記録すると有効です。
次の一手
- 運用を整える:嚥下評価ハブ(全体像)
- 共有の型を作る:嚥下評価ワークフロー(すぐ実装)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Crary MA, Mann GDC, Groher ME. Initial psychometric assessment of a functional oral intake scale for dysphagia in stroke patients. Arch Phys Med Rehabil. 2005;86(8):1516-1520. doi: 10.1016/j.apmr.2004.11.049
- O’Horo JC, Rogus-Pulia N, Garcia-Arguello L, Robbins J, Safdar N. Bedside diagnosis of dysphagia: a systematic review. J Hosp Med. 2015;10(4):256-265. doi: 10.1002/jhm.2311
- Martino R, Pron G, Diamant NE. Oropharyngeal dysphagia: surveying practice patterns of the speech-language pathologist. Dysphagia. 2004;19(3):165-176. doi: 10.1007/s00455-004-0019-3
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


