FILS(嚥下)とは?1〜10で「実際にしている摂食状況」を評価する
FILS(Food Intake LEVEL Scale)は、嚥下障害のある方が日常生活で実際にどの程度経口摂取しているかを1〜10で評価する尺度です。1〜3は食事としての経口摂取なし、4〜6は経口摂取と代替栄養の併用、7以上は3食を経口摂取し代替栄養を必要としない状態として整理します。
判定で迷いやすいのは、3と4、5と6、6と7、そして9と10の境界です。この記事では、FILSの原文を転載するのではなく、隣のレベルへ変わるときに何を確認すればよいかを中心に整理します。記事後半には、判定根拠を残すためのExcel・PDFも用意しています。
先に結論:食形態名やむせの有無だけでFILSを決めるのではなく、まず「食事として経口摂取しているか」「何食食べているか」「非経口の代替栄養が必要か」を確認します。FILS 7以上では、さらに食物制限と医学的配慮の有無でレベルを分けます。

FILS 1〜10の全体像|まず4つのグループに分ける
FILSは10段階ですが、最初から10択で考える必要はありません。まず、経口摂取の成立、代替栄養、3食経口摂取、食物制限・医学的配慮から大きなグループを絞ると判定しやすくなります。
以下は、原尺度の判定構造を臨床で確認しやすいように要約したものです。正式な判定文そのものではありません。
| FILS | 大区分 | 判定の要点 | 次のレベルとの境界 |
|---|---|---|---|
| 1 | 経口摂取なし | 口腔ケアを除き、嚥下訓練を実施していない状態 | 食物を使わない嚥下訓練を始めると2を検討 |
| 2 | 経口摂取なし | 食物を使用しない嚥下訓練を行っている状態 | 少量でも食物を用いた訓練を始めると3を検討 |
| 3 | 経口摂取なし | 少量の食物を用いた訓練は行うが、食事としての経口摂取はしていない | 日常的な経口摂取が食事・楽しみとして成立すると4を検討 |
| 4 | 経口+代替栄養 | 1食分には満たない量を経口摂取し、栄養は主に代替栄養に依存する | 1〜2食として経口摂取が成立すると5を検討 |
| 5 | 経口+代替栄養 | 嚥下しやすい食事を1〜2食経口摂取し、代替栄養も使用する | 3食の経口摂取が栄養摂取の主体になると6を検討 |
| 6 | 経口+代替栄養 | 3食の経口摂取が主体だが、不足分を代替栄養で補う | 代替栄養が不要になると7を検討 |
| 7 | 経口摂取のみ | 嚥下しやすい食事を3食経口摂取し、代替栄養を使用しない | 特に食べにくい食品だけを除けばよい状態になると8を検討 |
| 8 | 経口摂取のみ | 特に嚥下しにくい食品を避ければ、3食経口摂取できる | 食物そのものの制限がなくなると9を検討 |
| 9 | 経口摂取のみ | 食物制限なく3食経口摂取できるが、嚥下に関する医学的配慮が残る | 嚥下障害を示唆する問題への医学的配慮も不要になると10を検討 |
| 10 | 正常 | 食物制限なく3食経口摂取し、摂食嚥下障害に関する問題を認めない | FILSの最上位 |
ポイント:FILSは順序尺度です。「6から7への1点」と「9から10への1点」が同じ大きさの改善を意味するわけではありません。点数だけでなく、どの境界を越えたのかを一緒に確認します。
FILSで迷いやすい判定境界|隣のレベルと何が違うか
FILSで実際に迷いやすいのは、各レベルの説明を覚えることよりも、今の状態を隣のレベルとどう区別するかです。特に重要な境界を順番に整理します。
FILS 1・2・3|「訓練で食物を使っているか」で分ける
FILS 1〜3はいずれも、食事としての経口摂取を行っていないグループです。そのなかで、嚥下訓練の実施状況によってレベルが変わります。
- 1→2:食物を使用しない嚥下訓練が始まったか
- 2→3:少量でも食物を用いた嚥下訓練が始まったか
- 3→4:食物を用いる訓練ではなく、日常の経口摂取として成立したか
特に3と4では、「食物を口にしている」という所見だけでは区別できません。FILS 3はあくまで訓練としての食物摂取であり、4では1食未満でも日常的な経口摂取へ移っている点が境界になります。
FILS 4・5・6|「何食分を経口で摂れているか」で分ける
FILS 4〜6では経口摂取を行っていますが、まだ代替栄養を必要とする段階です。ここでは、経口摂取がどの程度食事として成立しているかを確認します。
| レベル | 経口摂取 | 代替栄養 | 判定の分かれ目 |
|---|---|---|---|
| 4 | 1食分未満 | 主体 | 楽しみ程度の経口摂取 |
| 5 | 1〜2食 | 併用 | 1食以上が食事として成立 |
| 6 | 3食が主体 | 不足分を補完 | 3食経口だが非経口栄養が残る |
「3食出ているからFILS 7」とは限りません。3食経口摂取していても、経管栄養などで不足分を補っているのであれば、FILS 6との境界を確認します。
FILS 6と7|代替栄養が残っているか
FILS 6と7の最も重要な違いは、非経口の代替栄養を併用しているかどうかです。
FILS 6では3食の経口摂取が栄養摂取の主体になっていても、経管栄養や点滴などを補完的に使用します。FILS 7では3食を経口摂取し、代替栄養を必要としません。
「代替栄養」の意味に注意:FILSでいう代替栄養は、経管栄養や点滴などの非経口栄養です。口から飲む栄養補助飲料は非経口栄養ではないため、FILSの「代替栄養」とは分けて考えます。
FILS 7・8・9・10|食物制限と医学的配慮で分ける
FILS 7以上では、3食を経口摂取し、代替栄養は不要です。ここからは、どの程度食物を制限しているかと、嚥下障害を示唆する問題への医学的配慮が残っているかを確認します。
- 7→8:嚥下しやすく調整した食事が必要な段階から、特に食べにくい食品だけを避ける段階へ
- 8→9:避ける必要のある食品がなくなり、食物制限なしへ
- 9→10:食物制限だけでなく、嚥下障害を示唆する問題への医学的配慮も不要な状態へ
FILS 9と10はどちらも食物制限なく3食経口摂取できるため、食事内容だけを見ると区別しにくい境界です。むせや咽頭残留感など、摂食嚥下障害を疑う問題に対して指導・検査・診察などの配慮が継続している場合は、9と10の違いを確認します。
FILSの採点基準と、併記したい臨床所見を分ける
むせ、湿性嗄声、姿勢、食事介助量、疲労、食事時間などは、嚥下評価や安全管理では重要な情報です。ただし、これらを独立したFILSの採点項目として点数化するわけではありません。
FILSのレベルを決めたあと、必要な臨床所見を別に記録すると、「なぜその食形態・摂取状況になっているのか」をチームで共有しやすくなります。
| 区分 | 確認する内容 | 扱い |
|---|---|---|
| FILS判定 | 経口摂取の成立、食事回数、代替栄養、食物制限、医学的配慮 | FILS 1〜10を決める |
| 併記情報 | 食形態、水分条件、摂取量、むせ、湿性嗄声、姿勢、介助量、疲労など | 判定根拠や安全管理の補足として記録する |
また、摂食嚥下能力グレードに用いられる介助の付記と、FILSの「実際にしている摂食状況」は混同しないことが重要です。FILSを記録するときは、介助量が必要であれば別項目として具体的に残します。
FILS・FOIS・JDD2021の違い|同じものを評価しているわけではない
FILS、FOIS、JDD2021はいずれも摂食嚥下領域で使われますが、目的は同じではありません。1つの尺度にすべての情報を持たせるのではなく、何を共有したいかで使い分けます。
| 指標 | 主に表すもの | 段階 | 確認したいこと |
|---|---|---|---|
| FILS | 日常で実際にしている経口摂取・栄養摂取の状態 | 1〜10 | 食事としてどこまで経口摂取が成立しているか |
| FOIS | 機能的な経口摂取レベル | 1〜7 | 経管依存や食事制限を含め、経口摂取の機能的段階を追う |
| JDD2021 | 嚥下調整食・とろみの分類 | 食事・とろみの分類 | どのような性状の食事・飲料を提供するか |
したがって、「JDD2021のこのコードだからFILSはこの点」と1対1で決めるのではありません。FILSは実際の摂食状況から判定し、必要に応じて食形態分類を別に記録します。
FOISの7段階や判定方法を確認したい場合は、FOISの評価と使い方で整理しています。
FILSの記録方法|点数だけでなく「なぜそのレベルか」を残す
FILSは点数だけ記録するより、隣接レベルと区別した根拠を短く添えると再評価しやすくなります。特に4〜7では経口摂取の食事回数と代替栄養、7〜10では食物制限と医学的配慮を残します。
記録例(rehabilikunblogによる実務例)
FILS 6。嚥下しやすい食事を3食経口摂取し、経口摂取が栄養の主体。夜間の経管栄養を補完的に併用。水分はとろみ付き、食事は見守り。
この例では、「3食経口だから6」ではなく、3食経口が主体である一方、非経口の代替栄養が残っているため6という判定根拠が分かります。水分条件や見守りはFILSの採点項目ではなく、併記する臨床情報です。
再評価は摂食状況が変わったときに行う
この記事では、「3日安定したら更新」「24〜48時間で判定」といった固定日数をFILSの公式基準として設定しません。施設の運用に合わせつつ、次のような変化があったときにFILSを見直すと、前回との差を捉えやすくなります。
- 訓練としての食物摂取から、日常の経口摂取へ移行したとき
- 経口摂取できる食事回数が変わったとき
- 経管栄養・点滴などの代替栄養を開始、減量、終了したとき
- 食形態の制限範囲が変わったとき
- 嚥下障害を示唆する問題への医学的配慮が変わったとき
- 転棟・転院・退院などで摂食状況を引き継ぐとき
FILS判定・記録シート|Excel・PDF
FILSの判定境界と記録をそろえられるよう、Excel原本とA4横1枚のPDFを作成しました。FILSの公式判定に関係する項目と、むせ・姿勢・介助量などの併記情報を別枠にしています。
尺度の原文を転載するための用紙ではなく、隣接レベルとの境界を確認し、判定根拠を記録するための実務補助資料として使用してください。
FILS判定・記録シート|Excel版
判定・記録シートとFILS 1〜10の判定早見表を収載しています。院内運用に合わせて記録内容を確認したい場合はこちらを使用してください。
使用上の注意:Excel・PDFはFILSの原尺度そのものではなく、判定構造を確認するための補助資料です。実際の運用では原著・施設内ルールを確認し、嚥下の安全性評価や食形態の判断をFILSだけで完結させないでください。
よくある質問(FAQ)
FILS 6と7の違いは何ですか?
どちらも3食の経口摂取が可能ですが、FILS 6では経管栄養や点滴などの代替栄養を補完的に使用します。FILS 7では代替栄養を使用せず、3食を経口摂取します。
FILS 9と10は何が違いますか?
どちらも食物制限なく3食経口摂取できる段階です。FILS 9では摂食嚥下障害を示唆する問題への医学的配慮が残ります。FILS 10では、そのような問題を認めない正常な経口摂取と判断します。
経口の栄養補助飲料を飲んでいるとFILS 6になりますか?
経口で摂取する栄養補助飲料だけを理由にFILSの「代替栄養あり」とは扱いません。FILSでいう代替栄養は、経管栄養や点滴などの非経口栄養です。実際の食事回数、食形態、非経口栄養の有無を確認して判定します。
むせや食事介助量によってFILSの点数は変わりますか?
むせや介助量は重要な臨床情報ですが、それ自体を独立したFILSの採点項目として点数化するわけではありません。ただし、嚥下障害を示唆する問題への医学的配慮はFILS 9と10の境界に関係します。むせ、姿勢、介助量、疲労などはFILSと分けて具体的に記録すると共有しやすくなります。
次の一手
FILSは「現在どのように食べているか」を共有する尺度です。FILSの点数だけで嚥下の安全性や経口摂取開始の可否を判断せず、必要な評価へつなげます。
- 嚥下評価全体の順番を確認する:嚥下評価の進め方と判断フロー
- 栄養・嚥下領域の評価を探す:栄養・嚥下ハブ
参考文献
- Kunieda K, Ohno T, Fujishima I, Hojo K, Morita T. Reliability and validity of a tool to measure the severity of dysphagia: the Food Intake LEVEL Scale. J Pain Symptom Manage. 2013;46(2):201-206. doi:10.1016/j.jpainsymman.2012.07.020.(PubMed)
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会. 摂食嚥下障害臨床的重症度分類・摂食嚥下能力グレード/摂食嚥下状況のレベル.(学会e-learning)
- Crary MA, Carnaby Mann GD, Groher ME. Initial psychometric assessment of a functional oral intake scale for dysphagia in stroke patients. Arch Phys Med Rehabil. 2005;86(8):1516-1520. doi:10.1016/j.apmr.2004.11.049.(PubMed)
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021(JDD2021).(公式資料)
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

