GLIM 基準の使い方|診断フローと重症度(この記事の結論)
臨床の学び方とキャリアの土台を、最短ルートで整える。 ロードマップを見る(無料) 評価→記録→再評価の型があると、GLIM も “運用” に乗ります。
GLIM( Global Leadership Initiative on Malnutrition )は、低栄養を「表現型 1 つ+病因 1 つ」で確定し、さらに重症度( Stage 1 / 2 )まで統一できる国際基準です。現場では「スクリーニング陽性→ GLIM の要素をそろえる→ 多職種で確定→ 介入→再評価」という 1 本の流れにすると迷いが減ります。
ポイントは、①体重変化(%と期間)② BMI ③筋量低下の根拠( BIA / DXA / CT / 周囲径など)④摂取低下または吸収不良⑤炎症(急性 / 慢性)のセット化です。この記事では、PT / OT でも 10 分で回せる “そろえ方” と、記録テンプレまでまとめます。
現場の詰まりどころ(よくある迷い)
GLIM が止まりやすいのは、「筋量をどう取る?」「炎症の根拠は?」「境界のとき誰に渡す?」の 3 点です。ここが曖昧だと、評価はしたのに介入が動かず、記録も施設内でばらつきます。
対策は、①代替可能な筋量指標を “院内で 1 本化” ②炎症は “疾患+検査+臨床像” のどれで拾うかを決める ③渡し先(栄養士 / 医師 / NST )と提出物( 1 枚)を固定、の 3 つです。下表を院内メモとして使うと運用が安定します。
| 詰まりポイント | 判断の軸(まず決める) | 記録の最小セット |
|---|---|---|
| 筋量が測れない / 測り方がばらばら | 第一選択( BIA / DXA / CT )+代替( CC / UAC など)を 1 本化 | 方法、測定側、浮腫の有無、再検条件 |
| 炎症の定義があいまい | 急性(感染・術後・外傷など)/ 慢性( COPD・ HF・ CKD など)を施設で整理 | 疾患名、発症 / 増悪時期、 CRP などの根拠 |
| 境界例で “次に誰へ” が不明 | スクリーニング陽性 → GLIM 要素を 1 枚化 → 栄養士 / 医師へ提出 | 体重%、 BMI、筋量指標、摂取率、炎症根拠 |
GLIM 基準とは(何が統一できる?)
GLIM は、低栄養を「疑い」ではなく診断( malnutrition )として扱うための枠組みです。診断は表現型( phenotype )と病因( etiology )の 2 軸で確定し、表現型の程度で Stage 1 / 2 を決めます。
表現型は「体重減少」「低 BMI」「筋量低下」の 3 つ、病因は「摂取低下または吸収不良」「炎症(疾患負荷)」の 2 つです。GLIM は “スクリーニングの代わり” ではなく、原則としてスクリーニング陽性後の確定診断に使う点が重要です。
GLIM を 10 分で回す 3 ステップ(全体像)
運用は 3 ステップに分けると、誰がやっても同じ質で回せます。①スクリーニングでリスクを拾う ② GLIM の要素をそろえる(表現型+病因)③重症度を整理して多職種へ渡す、の流れです。
PT / OT の役割は “診断そのもの” よりも、診断に必要な情報を時系列と根拠つきで 1 枚にまとめることです。下表は、手順の最短ルートです。
| 順番 | やること | 目安 | アウトプット |
|---|---|---|---|
| Step 1 | 栄養スクリーニング(リスク拾い上げ) | 3〜5 分 | 陽性 / 境界の判断 |
| Step 2 | 表現型 3 項目(体重 / BMI / 筋量)をそろえる | 3〜5 分 | 該当項目と根拠 |
| Step 3 | 病因 2 項目(摂取・吸収 / 炎症)をそろえる | 2〜3 分 | 低栄養の確定材料+ Stage |
Step 1:スクリーニング(入口をそろえる)
GLIM の前に、まずは検証済みツールで “リスクあり” を拾います。代表的なカットオフは、MUST は 1 点以上でリスク、NRS-2002 は 3 点以上でリスク、MNA-SF は 11 点以下で低栄養リスク( 0〜7 点=低栄養、 8〜11 点=リスク)です。
スクリーニングツールの “選び方” を場面別に整理した比較表は、別記事にまとめています。続けて読む:MNA-SF・MUST・GNRI の違いと使い分け【早見表】
| ツール | 向きやすい場面 | 判定の目安 | 次アクション |
|---|---|---|---|
| MUST | 成人汎用(病棟・外来・施設など横断) | 0 =低 / 1 =中 / 2 以上=高( 1 以上でリスク) | 陽性なら GLIM 要素を収集 |
| NRS-2002 | 急性期入院(疾患負荷・炎症の影響が強い場面) | 3 以上でリスク | 早期に多職種へ連携 |
| MNA-SF | 高齢者(回復期・在宅・施設) | 12〜14 正常 / 8〜11 リスク / 0〜7 低栄養 | 再評価間隔もセット化 |
Step 2:表現型(体重・ BMI ・筋量)
表現型は 3 つのうち、どれか 1 つ満たせば OK です。体重減少は「期間」と「%」で整理し、BMI は年齢・地域差を踏まえつつ、院内で採用するしきい値を決めておくと運用が速くなります。
筋量は DXA / CT / BIA が望ましい一方、現場では周囲径(例: CC )や簡便指標を併用する場面もあります。浮腫・水分変動・ギプスなど “測れない理由” も同時に書き残すと、後日の再評価が安定します。
| 表現型 | 見るポイント | 根拠の例 | メモ欄(記録) |
|---|---|---|---|
| 体重減少 | 非意図的な減少、期間と%で評価 | 6 か月以内に 5 %超 / 6 か月超で 10 %超(目安) | __________ |
| 低 BMI | 年齢・地域のしきい値を施設で統一 | 例:<70 歳: 20 未満、 70 歳以上: 22 未満(目安) | __________ |
| 筋量低下 | 方法を明記し、再検条件も残す | BIA / DXA / CT / 超音波 / 周囲径(代替) | __________ |
Step 3:病因(摂取・吸収 / 炎症)
病因は 2 つのうち、どれか 1 つ満たせば OK です。摂取低下は「どれくらい」「どれくらいの期間」を言語化し、吸収不良(消化管疾患や下痢など)は “続いている期間” と “影響” を残します。
炎症は、急性(感染・術後・外傷など)と慢性( COPD・ HF・ CKD・がん等)で整理すると共有が速いです。検査値だけに寄らず、疾患の活動性や臨床経過も一緒に記録して、判断の根拠をそろえます。
| 病因 | 見るポイント | 根拠の例 | メモ欄(記録) |
|---|---|---|---|
| 摂取低下 / 吸収不良 | 摂取率、期間、症状(下痢など) | 必要量の 50 %未満が 1 週間超、または 2 週間以上の継続的低下(目安) | __________ |
| 炎症(疾患負荷) | 急性 / 慢性の区分と根拠 | 感染・術後・外傷、活動性の高い慢性疾患、 CRP 上昇など | __________ |
重症度( Stage 1 / 2 )の決め方
GLIM の重症度は、基本的に表現型の程度で決めます。たとえば体重減少や BMI の “より重いしきい値” に該当する場合は Stage 2 と整理し、介入の優先度と再評価間隔を上げます。
重要なのは「点数を付けること」ではなく、Stage に応じて介入の強さと追跡の頻度を変えることです。週次で体重・摂取率・筋力・歩行などを追い、改善が乏しければ多職種カンファで介入を上書きします。
記録テンプレ( 1 枚で渡すための書き方)
GLIM は、情報が散らばると一気に使いにくくなります。おすすめは「時系列」「表現型」「病因」「次アクション」を 1 枚にまとめ、栄養士 / 医師が Stage を判断できる形にすることです。
下表は、院内でそのまま使える “最小セット” です。測定不能(浮腫や機器なし)も含めて理由を残し、次回いつ・何を追加測定するかまで書くと、評価が “動く計画” に変わります。
| 項目 | 数値 / 所見 | 期間 / 条件 | 根拠(メモ) |
|---|---|---|---|
| 体重推移 | __ kg → __ kg | __週 / __か月 | 非意図的 / 意図的、測定条件 |
| BMI | __ | 身長 __ cm | 四捨五入ルール等 |
| 筋量 / 代替 | 方法:__ / 値:__ | 浮腫:有 / 無 | 機器なし等の制約 |
| 摂取状況 | 摂取率 __ % | __日 / __週 | 嚥下、食形態、間食 |
| 炎症 / 疾患負荷 | 疾患:__ | 急性 / 慢性 | CRP 等:__ |
| 次アクション | 栄養士へ依頼:__ / 再評価日:__ / 追加測定:__ | ||
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
GLIM は「表現型 1 つ+病因 1 つ」で本当に確定ですか?
原則はその通りです。表現型(体重減少 / 低 BMI / 筋量低下)から 1 つ、病因(摂取低下・吸収不良 / 炎症)から 1 つを満たすと低栄養として確定し、表現型の程度で Stage 1 / 2 を整理します。
筋量が取れない現場ではどう運用すればいいですか?
第一選択( BIA / DXA / CT )が難しい場合は、代替指標(周囲径や身体計測)を “院内で 1 本化” し、測定条件(浮腫の有無など)を必ず残します。後日、条件が整った時点で再検して上書きする運用が現実的です。
炎症の根拠は CRP だけで良いですか?
CRP は有用ですが、それだけに寄ると判断がぶれます。疾患の活動性(感染・術後・外傷、慢性疾患の増悪など)と検査・臨床経過をセットで記録し、急性 / 慢性のどちらで拾うかを施設で統一すると連携が速くなります。
スクリーニング “境界” のときはどうしますか?
境界は「 2 週間以内に再評価する」など、再検のルールを先に決めるのがおすすめです。体重推移(%)、摂取率、活動量(離床量)をセットで追うと、短期間でも変化が見えます。
再評価はどれくらいの頻度が現実的ですか?
急性期・増悪期は週次、回復期・在宅は 2〜4 週ごとが目安です。体重・摂取率・筋力 / 歩行・ ADL を同じ条件で追い、改善が乏しければ介入を上書きします。
ダウンロード(A4・印刷可:院内テンプレとして使う)
このページ下部の「記録テンプレ」表は、コピーしてそのまま A4 で印刷できる形にしています。公式ツールの設問文を転載せずに、GLIM 判定に必要な “根拠” だけを残す目的のテンプレなので、院内の記録様式にも合わせやすいはずです。
運用のコツは「最初から完璧に測ろうとしない」ことです。まず体重%と摂取率をそろえ、次に BMI と筋量、最後に炎症の根拠を上書きしていくと、忙しい現場でも回りやすくなります。
参考文献
- Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition: A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. doi:10.1016/j.clnu.2018.08.002. PubMed
- Keller H, de van der Schueren MAE, Jensen GL, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition: A consensus report—Guidance for validation studies. JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2020;44(6):992-1004. doi:10.1002/jpen.1806. PubMed
- Barazzoni R, Jensen GL, Correia MITD, et al. Guidance for assessment of the muscle mass phenotypic criterion for the GLIM diagnosis of malnutrition. Clin Nutr. 2022;41(6):1425-1433. doi:10.1016/j.clnu.2022.02.001. PubMed
- Correia MITD, et al. Utilization and validation of the GLIM criteria for malnutrition: A scoping review. Clin Nutr. 2022. doi:10.1016/j.clnu.2022.01.018. PubMed
- Kondrup J, Rasmussen HH, Hamberg O, Stanga Z. Nutritional Risk Screening (NRS 2002): a new method based on an analysis of controlled clinical trials. Clin Nutr. 2003;22(3):321-336. doi:10.1016/S0261-5614(02)00214-5. PubMed
- Stratton RJ, Hackston A, Longmore D, et al. Malnutrition in hospital outpatients and inpatients: prevalence, concurrent validity and ease of use of the ‘Malnutrition Universal Screening Tool’ (MUST) for adults. Br J Nutr. 2004;92(5):799-808. doi:10.1079/BJN20041258. PubMed
- Rubenstein LZ, Harker JO, Salva A, Guigoz Y, Vellas B. Screening for undernutrition in geriatric practice: developing the Short-Form Mini-Nutritional Assessment (MNA-SF). J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2001;56(6):M366-M372. doi:10.1093/gerona/56.6.M366. PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下
おわりに:GLIM は「評価」ではなく「回る仕組み」にする
GLIM は、スクリーニングで拾ったリスクを「表現型+病因」に落とし込み、重症度( Stage )まで揃えて初めて、介入の優先度が明確になります。現場ではスクリーニング → GLIM 要素の収集 → 介入(摂取+運動+疾患管理)→ 2〜4 週で再評価のリズムに乗せるのが近道です。
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