運動失調ハブ| SARA・ ICARS・ UMSARS を臨床で回す導線【保存版】
運動失調( ataxia )は、①分類(小脳性/感覚性/前庭性/大脳性)→②最小セットで仮説を立てる→③スケールで “変化” を同条件で追うの順に固定すると、評価と介入がブレません。このハブでは、現場で迷いやすい 「どの尺度を、いつ、どの頻度で使うか」を最短で決められるように、記事導線と “運用の型” を 1 ページにまとめます。
評価の型が整うと、臨床はもちろん「働き方の選択」も迷いにくくなります(情報収集の入口)。 PT のキャリア設計も一緒に整える
まずここから(迷わない 3 本)
「読む順番」を固定すると、情報が散らばらず、初回〜再評価が一気に楽になります。まずは ①全体フロー→②追跡スケール→③疾患特異( MSA )の 3 本で土台を作ってください。
- 運動失調のリハビリ|評価→介入の流れと OK / NG 早見( PT )
- SARA 評価のやり方|採点・記録・解釈のコツ
- 多系統萎縮症( MSA )の理学療法評価| UMSARS・ SARA と安全管理
関連:バランス・歩行の指標を整理したい場合は 歩行・バランス評価ハブも併せて使うと、失調スケールと機能指標がつながります。
最初の 5 分フロー(初回の型)
初回は「全部測る」より、介入に直結する 最小セットで仮説を立てる方が安全で速いです。施設 SOP/主治医の指示を優先しつつ、次の順番を型として使ってください。
| 順番 | 見るもの | 狙い | 記録の型(短文) |
|---|---|---|---|
| ① | 発症様式/赤旗 | 除外とエスカレーション | 「突然/進行/めまい・複視・構音」 |
| ② | 四分類の当たり付け | 小脳性/感覚性/前庭性/大脳性 | 「閉眼で悪化」「頭位依存」「眼球運動」 |
| ③ | コア神経所見 | 破綻点の特定 | 「追従↓/サッケード不良/ロンベルグ+」 |
| ④ | 機能(最小) | 転倒リスクと練習設計 | 「方向転換で崩れる」「不整地×」 |
| ⑤ | 今日の介入目標を 1 つ | やりすぎ/守りすぎを防ぐ | 「協調/感覚統合/環境」 |
スケールの使い分け(結論)
結論として、運用は 「初回=全体把握」と「経過=短時間で追う」の二段にすると安定します。 SARA は機動性が高く縦の変化を追いやすく、 ICARS は全体像を精査したい場面で力を発揮します。 MSA など自律神経や ADL の比重が高い場合は UMSARS を併用すると、見落としが減ります。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 目的 | おすすめ | 強み | 運用のコツ | 関連 |
|---|---|---|---|---|
| 短時間で重症度を追う | SARA | 機動性が高い/経時変化が見やすい | 同条件(時間帯・靴・補助具・介助)を固定 | SARA 記事 |
| 全体像を丁寧に把握 | ICARS | 下位尺度で破綻部位が見える | 初回・方針変更・用具変更の前後で差し込む | ICARS 記事 |
| MSA で病勢と生活影響を拾う | UMSARS + SARA | 自律神経や ADL の重みが乗る | 病勢( UMSARS )と失調( SARA )を分けて記録 | MSA 評価まとめ / UMSARS 記事 |
最小セット(記録テンプレの考え方)
スケール運用が崩れる原因は「条件が毎回違う」「どこが崩れたかが残らない」の 2 つです。点数+破綻場面+条件をセットで残すだけで、再評価の解釈が安定します。
| 項目 | 固定すること | 最低限残す短文 | よくあるズレ | 対策 |
|---|---|---|---|---|
| 実施条件 | 時間帯/疲労/内服後/靴/補助具/介助量 | 「午前・内服後・ T 字杖・見守り」 | 条件が毎回違い点数が揺れる | テンプレ 1 行で固定(毎回コピペ) |
| 破綻場面 | 直線/方向転換/停止/不整地/デュアル | 「方向転換で外側へ流れる」 | 「ふらつく」で終わる | 場面+方向+原因仮説を短文化 |
| 安全管理 | 転倒歴/起立性低血圧/嚥下・痰 | 「立位 2 分でふらつき」 | 運動だけ見て “危険” を落とす | 起立性低血圧・ 誤嚥性肺炎ハブを並走 |
現場の詰まりどころ(よくある失敗)
運動失調は「やりすぎ」と「守りすぎ」の間で迷いが生まれます。詰まったら、①分類→②破綻場面→③条件固定に戻すと整理できます。
- スケールを “測るだけ” で終わる:点数の横に「破綻場面」を 1 行だけ足す(方向転換/停止/不整地など)。
- 毎回条件が違う:靴・補助具・介助量・時間帯を固定し、変えたら “変更理由” を残す。
- 失調だけ見て危険を落とす: MSA では自律神経・嚥下が絡みやすい。必要時は MSA の評価まとめへ。
- 歩行だけで完結させる:上肢巧緻や構音・嚥下の問題が “生活” を押し下げる。全体像の確認に 栄養・嚥下ハブも使う。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
SARA と ICARS 、どちらを先に取るべきですか?
初回は「全体像を掴む」目的で ICARS を差し込むのが有効です。ただし、経過の縦比較は SARA を軸にした方が現場では回ります。どちらでも最重要なのは、同条件で再評価できるように “条件固定” を先に整えることです。
MSA では UMSARS と SARA 、どちらを重視しますか?
目的で分けます。病勢や生活影響をチームで共有するなら UMSARS 、失調そのものの変化を追うなら SARA を優先します。迷うときは「 UMSARS(病勢)+ SARA(失調)」の二段で分けて残すと解釈が安定します。
“めまい” が強いときも運動失調として進めてよいですか?
頭位依存や回転性めまいが強い場合は、前庭性要素が混ざる可能性があります。突然発症・複視・構音障害などがあれば、まずチーム方針(医師判断)を優先し、 PT 単独で抱え込まないのが安全です。評価は「分類に戻る」ことが近道です。
1 回の訓練で “何を優先” すると迷いが減りますか?
その日の優先は 1 つに絞ります。協調(タイミング)を狙うのか、感覚統合(視覚・体性感覚)を狙うのか、環境(転倒予防)を狙うのか。迷ったら「破綻場面」を 1 つ決め、その場面の再現性を上げる設計にするとぶれません。
次の一手
次にやることを 3 つに絞ります。①全体フローを固める ②バランス・歩行の “共通言語” を揃える ③安全管理(自律神経・嚥下)を並走させる、の順が最短です。
環境要因(教育体制・記録文化・人員)も一緒に点検する:運用が詰まるときは「スキル不足」より「環境の型」が原因のことが多いです。
参考文献
- Schmitz-Hübsch T, Tezenas du Montcel S, Baliko L, et al. Scale for the Assessment and Rating of Ataxia: Development of a new clinical scale. Neurology. 2006;66(11):1717-1720. doi: 10.1212/01.wnl.0000219042.60538.92 / PubMed: 16769946
- Trouillas P, Takayanagi T, Hallett M, et al. International Cooperative Ataxia Rating Scale for pharmacological assessment of the cerebellar syndrome. J Neurol Sci. 1997;145(2):205-211. doi: 10.1016/S0022-510X(96)00231-6 / PubMed: 9094050
- Wenning GK, Tison F, Seppi K, et al. Development and validation of the Unified Multiple System Atrophy Rating Scale (UMSARS). Mov Disord. 2004;19(12):1391-1402. doi: 10.1002/mds.20255 / PubMed: 15452868
- Milne SC, Corben LA, Roberts M, et al. Rehabilitation for individuals with genetic degenerative ataxia: A systematic review. Neurorehabil Neural Repair. 2017. doi: 10.1177/1545968317712469 / PubMed: 28595509
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


