ICARSとは?19項目・4領域を0〜100点で評価します
ICARS(International Cooperative Ataxia Rating Scale)は、小脳性運動失調を19項目、姿勢・歩行、四肢協調、構音、眼球運動の4領域で評価する尺度です。合計は0〜100点で、得点が高いほど運動失調の程度が大きいことを示します。
ICARSの強みは、合計点だけでなく、変化がどの領域に現れたかを詳しく整理できることです。一方、特定の点数だけで軽症・中等症・重症を一律に区切る尺度ではありません。実施条件、下位尺度、観察所見、生活上の変化を合わせて解釈します。
この記事では、4領域の配点、SARAとの使い分け、採点前の条件固定、実施手順、点数の見方、再評価、自動計算ツールまで、臨床で迷いやすい順に解説します。
運動失調評価の全体像から確認する
ICARSの配点|19項目・4領域・合計0〜100点
ICARSは、姿勢・歩行34点、四肢協調52点、構音8点、眼球運動6点の4領域で構成されます。合計点は全体像、領域別小計は変化の内訳として確認します。
同じ合計点でも、姿勢・歩行を中心に得点が増えた場合と、四肢協調を中心に増えた場合では、生活上の問題や介入の優先順位が異なります。合計点だけで評価を終えず、領域別小計と所見をセットで残してください。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 下位尺度 | 項目数 | 主に評価する内容 | 配点 |
|---|---|---|---|
| 姿勢・歩行 | 7項目 | 歩行、立位、姿勢保持、座位など | 0〜34点 |
| 四肢協調 | 7項目 | 測定障害、振戦、運動分解、反復運動など | 0〜52点 |
| 構音 | 2項目 | 発話の明瞭性と流暢性 | 0〜8点 |
| 眼球運動 | 3項目 | 眼振、追視、サッケード | 0〜6点 |
| 合計 | 19項目 | 4領域の総合評価 | 0〜100点 |
採点時の注意:上表は構造と配点を理解するための要約です。各項目の正式な教示、実施条件、判定基準は、原著および施設で採用している正式資料を確認してください。
ICARSとSARAは評価目的で使い分けます
ICARSとSARAは、どちらが優れているかではなく、必要な情報量と継続運用のしやすさで選びます。ICARSは19項目・100点で眼球運動まで含めて詳しく整理でき、SARAは8項目・40点で短時間の反復評価に向いています。
「初回はICARS、次回からSARA」と尺度を変更すると、得点差をそのまま経時変化として比較できません。定期評価をSARAで行う予定なら最初からSARAを基軸にするか、切り替え時点で両方を測定して、それぞれの基準値を残す方法が実務的です。
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| 比較項目 | ICARS | SARA |
|---|---|---|
| 構成 | 19項目・4領域・0〜100点 | 8項目・0〜40点 |
| 主な役割 | 運動失調を領域別に詳しく分解する | 少ない項目で経過を継続して追う |
| 向いている場面 | 詳細評価、症状構成の確認、大きな状態変化時 | 定期フォロー、短時間の反復評価 |
| 眼球運動 | 含む | 含まない |
| 経時比較 | 原則として同じ尺度と実施条件を継続する | |
3尺度の役割をまとめて確認したい場合は、SARA・ICARS・BARSの違いをご覧ください。本記事では、ICARSを選択した後の実施と再評価に焦点を当てます。
ICARS自動計算ツール
ICARSは項目数が多いため、領域別小計と合計点の転記ミスを防ぐ補助として自動計算ツールを使用できます。未入力項目を確認しながら、姿勢・歩行、四肢協調、構音、眼球運動の小計と0〜100点の合計を整理します。
自動計算ツールは採点基準そのものではなく、入力後の集計を補助するものです。正式な基準に沿って判定した得点を入力し、計算結果は実施条件、介助量、疲労、観察所見と合わせて解釈してください。
記事内で自動計算ツールを開く
ICARS採点前に固定する5つの条件
ICARSの再評価では、点数の変化を見る前に、前回と同じ条件で実施できているかを確認します。原著の実施条件を優先し、安全上やむを得ず条件を変更した場合は、変更内容を明記してください。
最低限、正式な実施条件、補助具・介助、指示方法、実施順・休息、当日の状態を確認します。
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| 確認項目 | そろえる内容 | 理由 | 記録例 |
|---|---|---|---|
| 正式な実施条件 | 教示、課題条件、距離、姿勢、評価順 | 条件変更による得点差を減らす | 原著の条件で全項目実施 |
| 補助具・介助 | 補助具、靴、見守り、接触・身体介助 | 遂行能力と安全確保を区別する | T字杖、方向転換時のみ接触介助 |
| 指示方法 | 口頭指示、デモ、再説明の有無 | 理解や練習による差を確認する | 口頭指示後に1回デモ |
| 実施順・休息 | 実施順、休憩の有無と時間、中断条件 | 疲労による後半の悪化を区別する | 領域間に30秒休息 |
| 当日の状態 | 薬効、眠気、疼痛、めまい、感染症状 | 一時的な変動の影響を確認する | 内服2時間後、軽度眠気あり |
ICARSの実施手順
ICARSは、評価目的と安全条件を決め、正式な採点基準に沿って4領域を評価し、小計・合計・所見を記録する順で進めます。実施順や休息条件を施設内でそろえると、評価者間と再評価時の比較がしやすくなります。
- 評価目的と尺度を決める:詳細評価としてICARSが必要か、短時間の継続評価としてSARAが適するかを確認します。
- 正式な基準と安全性を確認する:原著の教示・判定基準を確認し、転倒を防げる介助位置を決めます。
- 開始条件を記録する:補助具、介助、指示、休息、服薬、体調を残します。
- 4領域を評価する:姿勢・歩行、四肢協調、構音、眼球運動を正式な条件に沿って確認します。
- 小計と合計を確認する:未評価や入力漏れがないかを確認し、4領域と合計点を算出します。
- 採点根拠と次回条件を残す:特徴的な崩れ方と、次回そろえる条件を1〜2行で記録します。
未評価項目がある場合:未評価を0点として扱わず、項目名と理由を記録します。一部項目を省略した結果は、全19項目を実施した正式な合計点と単純比較しないでください。
ICARSの下位尺度別観察ポイント
ICARSでは、点数と一緒に「どの課題で・どのように崩れ・どの条件で実施したか」を残します。採点表の転記だけではなく、次回に同じ視点で比較できる短い所見が重要です。
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| 領域 | 主な観察軸 | 比較時のポイント | 記録例 |
|---|---|---|---|
| 姿勢・歩行 | 支持の必要性、動揺、歩行、姿勢保持 | 補助具、靴、介助条件、安全確保をそろえる | T字杖使用。方向転換時に側方動揺が増加 |
| 四肢協調 | 測定障害、振戦、運動分解、反復運動 | 左右差と反復前後の変化を確認する | 右指鼻試験で終末振戦。反復後にずれが増加 |
| 構音 | 明瞭性、流暢性、速度、リズム | 同じ発話条件で比較する | 単語は明瞭だが、連続発話で不明瞭さが増加 |
| 眼球運動 | 眼振、追視、サッケード | 頭部、視標、距離、速度をそろえる | 右方注視で眼振あり。追視は断続的 |
四肢協調課題の実施方法や所見の言語化を確認したい場合は、協調性検査のやり方と判定も参考になります。
ICARSの点数は合計点と4領域の内訳で解釈します
ICARSは、得点が高いほど運動失調の程度が大きいことを示しますが、すべての疾患・病期に共通する単一の重症度カットオフで一律に分類する尺度ではありません。
得点が増えた場合は、まず前回との実施条件の違いを確認します。そのうえで、どの下位尺度と項目が増えたか、転倒、移動手段、食事、書字、会話などの生活上の変化と一致するかを確認します。
合計点が変わらなくても、領域間で改善と悪化が相殺されている場合や、補助具・介助量・代償方法が変化している場合があります。ICARS単独で診断や生活機能を確定せず、筋力、感覚、前庭機能、認知機能、ADL評価などと組み合わせてください。
記録例
ICARS合計42点、前回39点。姿勢・歩行領域が3点増加し、ほかの領域は前回と同程度。T字杖、運動靴、病棟廊下で実施。方向転換時の側方動揺と接触介助が増加した。内服条件は前回と同じ。
ICARS再評価で確認する順番
再評価では、最初に条件差と実施の完全性を確認し、その後に合計点、下位尺度、項目別得点、観察所見、生活上の変化を確認します。
- 実施条件:補助具、靴、介助、指示、休息、服薬条件が同じか。
- 実施の完全性:未評価や省略した項目がないか。
- 合計点:全体として増えたか、減ったか。
- 下位尺度:どの領域が変化したか。
- 項目別得点:具体的にどの課題が変化したか。
- 観察所見:動揺、測定障害、振戦、疲労、代償がどう変わったか。
- 生活上の変化:転倒、歩行範囲、食事、書字、会話、介助量が変化したか。
- 次回の狙い:介入内容と次回そろえる条件を決める。
特定の研究で示された変化量や判定値を、疾患や病期の異なるすべての患者へ共通適用しないでください。1回の得点差だけで改善・悪化を断定せず、同じ条件での推移と生活上の変化を照合します。
ICARSでよくある失敗と対策
ICARSで起こりやすい失敗は、点数だけを残す、条件が毎回変わる、評価者間で境界判断が異なる、疲労の影響を区別できない、未評価項目を含む合計点を比較することです。
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| 詰まりどころ | 主な原因 | 回避策 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 得点が変化した理由が不明 | 補助具、靴、介助、体調などが前回と異なる | 前回条件を確認してから実施する | 変更した条件を明記する |
| 評価者で得点が異なる | 正式な基準や境界例の共通認識がない | 原著を確認し、院内で判定軸をそろえる | 迷った項目と採点根拠を書く |
| 後半だけ悪化する | 実施順や休息条件が統一されていない | 実施順と休息条件をそろえる | 疲労の出現時点を書く |
| 一部項目を省略して比較する | 未評価項目を0点として集計している | 未評価を明記し、正式な合計点と区別する | 省略項目と理由を書く |
| 得点だけで介入を決める | 関連する身体機能や生活課題を確認していない | 他評価と生活場面の観察を組み合わせる | 関連所見と生活上の問題を書く |
よくある質問
Q1. ICARSは何項目・何点満点ですか?
A. 19項目・100点満点です。姿勢・歩行34点、四肢協調52点、構音8点、眼球運動6点の4領域で構成されます。
Q2. ICARSは得点が高いほど良い評価ですか?
A. いいえ。ICARSは得点が高いほど運動失調の程度が大きい方向を示します。改善・悪化は合計点だけでなく、下位尺度、実施条件、観察所見、生活機能を合わせて判断します。
Q3. ICARSとSARAはどちらを使えばよいですか?
A. 運動失調を4領域に分けて詳しく評価したい場合はICARS、少ない項目で定期的に経過を追いたい場合はSARAが使いやすい傾向があります。経時比較では、原則として同じ尺度と条件を継続してください。
Q4. ICARSは何点から重症ですか?
A. すべての疾患や病期に共通する単一の点数で、軽症・中等症・重症を一律に判断する尺度ではありません。合計点、下位尺度、前回からの変化、生活機能を合わせて解釈します。
Q5. 評価できない項目は0点にしてよいですか?
A. 未評価を正常を意味する0点として扱わないでください。未評価項目と理由を明記し、全項目を実施した正式な合計点と単純比較しないようにします。
Q6. ICARSとSARAの得点を換算できますか?
A. 個々の患者の得点を単純に換算して経時比較することはできません。尺度を変更する場合は、切り替え時点で両方を評価し、それぞれの基準値を残す方法が実務的です。
まとめ|ICARSは条件・小計・所見をセットで記録します
ICARSは、小脳性運動失調を19項目、姿勢・歩行、四肢協調、構音、眼球運動の4領域、合計0〜100点で評価する尺度です。得点が高いほど運動失調の程度が大きいことを示します。
再評価では、合計点だけでなく、実施条件、評価の完全性、下位尺度、項目別得点、観察所見、生活上の変化を確認します。SARAへ変更した得点をICARSと単純比較せず、目的に合った同じ尺度と条件を継続することが重要です。
rehabilikun Library|ICARSの評価と運動失調を深く学ぶ2冊
ICARSを臨床で活用するには、採点表だけでなく、評価目的と各課題で観察する身体機能を理解することが重要です。評価の全体像と、姿勢・歩行を支える下肢・体幹の機能解剖を補う2冊を紹介します。
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参考文献
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著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に、臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

