ICF の書き方と記載例【理学療法士向け・ PDF 付き】

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ICF の書き方と記載例(結論: d から決めると実務で使いやすい)

ICF を最短で整理するなら、まず全体像をつかんでから、修飾子と環境因子を深掘りすると迷いにくくなります。 ICF と目標設定ハブを見る

関連:ICF 修飾子 0–4・8 / 9 の決め方ICF 環境因子( e )の書き方

ICF は、患者さんの状態を単に「できる / できない」で整理するだけの表ではありません。何を目標にするか( d )、それを妨げている心身機能・身体構造( b / s )、発揮しやすさを左右する環境因子( e )を分けて考え、チームで共通理解をつくるための枠組みです。この記事では、理学療法士がカルテやカンファレンスでそのまま使えるように、書く順番・ Performance / Capacity ・修飾子・高齢者の記載例・ A4 記録シート PDFまで実務目線でまとめます。

このページで答えるのは、「 ICF をどう書けば臨床で使いやすい形になるか」です。全コードの網羅や制度書式ごとの細かな違いではなく、まずは迷わず書ける基本形に絞ります。書き方の型を先に持っておくと、評価・共有・再評価の流れがそろいやすくなります。

評価の型は、個人の努力だけで定着するとは限りません。今の職場で教育体制がない、相談相手がいない、教材に触れにくい、見本となる先輩が少ないと感じるなら、学び方と環境の整え方を先に整理しておくと動きやすくなります。

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まずここだけ( 1 分サマリー)

  • d から書く:活動・参加( d )を先に決めると、 b / s と e が「目標に対する要因」として整理しやすくなります。
  • Performance / Capacity を分ける:実際にしていることと、標準条件での「できる力」は同じとは限りません。
  • 修飾子は根拠つきで: 0–4 は距離・時間・介助量など、判定軸を 1 本に固定するとブレが減ります。
  • e 因子は阻害 / 促進で書く:「ある / ない」ではなく、活動にどう影響したかまで書きます。
  • 個人因子を 1 行添える:価値観や生活歴を書くだけで、目標設定のズレが減ります。
ICF 記載の基本 4 ステップを示した図版。 d を決める、 b / s を整理する、 e を確認する、計画・再評価につなげる、の順で整理している。
ICF 記載は、 d → b / s → e → 計画・再評価 の順でみると整理しやすくなります。 P / Cap を分け、個人因子を 1 行添えると、記録と共有が安定します。

ICF の構成( b / s ・ d ・ e ・個人因子)

ICF は、健康状態のまわりにある心身機能・身体構造活動・参加環境因子個人因子の相互作用で、その人の生活機能をみる考え方です。実務でまず押さえたいのは、「 d は目標」「 b / s は原因」「 e は発揮条件」という役割分担です。ここが曖昧だと、評価は集まっていても記録が読みにくくなります。

とくに理学療法士の記録では、筋力や ROM などの機能面に寄りやすく、 d の記載が薄くなりやすい点が詰まりどころです。まずは「何をできるようにしたいか」を 1 文で言えるようにしてから、 b / s や e を並べると、カンファレンスでも伝わりやすくなります。

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ICF の構成と、理学療法士が記録で押さえたい役割
領域 何を書くか コード例 臨床での書き方
心身機能・身体構造( b / s ) 活動を妨げる機能・構造の要因 b730(筋力)、b280(痛み)、s750(下肢) 膝伸展筋力低下、膝痛、下肢構造の問題などを原因側として書く
活動・参加( d ) 何をできるようにしたいか d450(歩く)、d410(体位変換)、d540(更衣) 屋内歩行、更衣、外出、買い物など目標側として書く
環境因子( e ) 発揮しやすさを左右する外的条件 e115(製品・技術)、e355(介助者)、e150(建築環境) 杖が促進、段差が阻害、家族支援が促進など影響つきで書く
個人因子 価値観、生活歴、役割、対処傾向 コードなし 「買い物を再開したい」「独居で家事継続が重要」などを 1 行で添える

ICF 記載の基本( d → b / s → e → 修飾子 → 計画)

ICF の記録で迷ったら、d → b / s → e → 修飾子 → 計画の順に並べると安定します。これは分類を暗記する順番ではなく、実際に共有しやすい順番です。最初に d を置くと、「何を良くしたいのか」が先に決まり、そのあとに原因と条件を書けます。

  1. d を 1〜2 項目に絞る:まずは歩行、更衣、移乗など、今回いちばん重要な活動・参加を決めます。
  2. b / s を原因として並べる:筋力、痛み、可動域、姿勢制御など、 d を妨げる要因を整理します。
  3. e を阻害 / 促進で書く:補助具、家族、住環境、制度などが、実行状況にどう影響しているかを書きます。
  4. 修飾子を付ける: Performance / Capacity を分けて、根拠のある数字にします。
  5. 計画と再評価指標を決める:介入内容だけでなく、何で再評価するかまでセットにします。

Performance と Capacity の違い

Performance は、補助具や家族介助、病棟構造、段差などを含んだ現実環境で実際にしていることです。Capacity は、条件をできるだけそろえた場面でのできる力です。同じ d450(歩く)でも、病棟では見守りが必要なのに、訓練室ではよりよく歩ける、という差が起こります。

この差を分けて書くと、問題が能力そのものなのか、環境との相互作用なのかが見えやすくなります。現場では「歩ける / 歩けない」で終わりがちですが、P と Cap を並記するだけで、環境調整で改善できる部分が見つけやすくなります。

修飾子( 0–4・8 / 9 )の考え方

修飾子は、 ICF を「概念」ではなく「比較できる記録」に変えるための要です。重要なのは、数字だけを付けることではなく、その数字を何で判定したかをそろえることです。歩行なら距離、時間、介助量のどれで判断したかを固定しておくと、再評価でブレにくくなります。

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修飾子の基本(運用は距離・時間・介助量のいずれか 1 本を基準に)
意味 目安 記録のコツ
0 問題なし 0–4% ほぼ支障なし。条件を書いておくと再現しやすい
1 軽度の問題 5–24% 境界なので、距離・時間・介助量のどれで判定したかを残す
2 中等度の問題 25–49% 「できるが安定しない」を書き分けると使いやすい
3 重度の問題 50–95% 介助や代替手段が前提なら、その条件を併記する
4 完全な問題 96–100% 実施不能・成立困難なら、不能理由を短く添える
8 未特定 情報不足。次回どの条件で評価するかを一言入れる
9 非該当 その人の生活や役割として対象外であることを明記する

環境因子( e )は「ある / ない」ではなく「どう影響したか」で書く

環境因子で止まりやすいのは、「家族あり」「杖あり」「手すりあり」と事実だけを書いて終わることです。 ICF の e 因子は、その要素が活動にとって阻害なのか、促進なのかまで書いて初めて意味が出ます。理学療法士の記録では、対象 → 影響 → 対応の順にすると、介入へつながりやすくなります。

  • 阻害要因の例:e150.-2 玄関段差が屋外移動の中等度の阻害
  • 促進要因の例:e115.+2 四点杖が屋内歩行の中等度の促進
  • 人的支援の例:e355.+1 家族の見守りが更衣を軽度に促進

個人因子( personal factors )は 1 行でも入れる

個人因子には ICF コードが付きませんが、実務では軽視しないほうがよい部分です。本人の価値観、生活歴、役割、仕事、趣味、対処傾向は、同じ機能レベルでも目標設定を大きく変えます。たとえば「独居で買い物継続が重要」「元農家で屋外活動へのこだわりが強い」などは、 d の選び方に直結します。

長く書く必要はありません。「個人因子:○○」と 1 行足すだけでも十分です。機能面の説明に偏りやすい場面ほど、個人因子を 1 行残す意味があります。

高齢者の ICF 記載例(短文テンプレ)

ここでは、屋内歩行が不安定な高齢者を想定した短文例を示します。ポイントは、 d を先に置き、 b / s ・ e ・個人因子・計画をあとにつなぐことです。

目標( d ):d450(歩く) 屋内 20 m の移動。 Performance = 3 → 2 を目標、 Capacity = 2。
b / s :b730(膝伸展筋力)2、b280(膝痛)1。
e :e115.+2(四点杖)、e150.-2(玄関段差)。
個人因子:独居。買い物を自分で続けたい意欲が強い。
計画:下肢筋力練習、疼痛コントロール、段差練習、杖条件の調整。
再評価:歩行速度、歩行距離、介助量、疼痛尺度。

この 1 本の形を持っておくと、 ICF が「分類」ではなく「記録の型」になります。迷ったら、d → b / s → e → 個人因子 → 計画の順に戻れば十分です。

現場の詰まりどころ(失敗を減らす見方)

ICF 記載で止まりやすいのは、d と b / s の混同P / Cap の書き分け漏れe 因子が事実列挙で終わるの 3 つです。先に見たい方へ:よくある失敗 5 分で回避する手順 / 関連:再評価指標の決め方を見る

よくある NG / OK

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ICF 記載のありがちなミスと直し方
詰まりどころ NG 例 OK 例
d と b / s の混同 「歩けない( b730 )」で終わる d450(歩く)が困っている活動。 b730 はその原因として別に書く
Performance / Capacity の混在 d450 = 2 とだけ書く P = 3、 Cap = 2 のように並記して、環境差を見える化する
e 因子が事実列挙で終わる 「杖あり」「家族あり」 e115.+2、e355.+1 のように、活動への影響つきで書く
修飾子の根拠が曖昧 「なんとなく 2 」 距離・時間・介助量のどれで判定したかを 1 行添える

5 分で回避する手順

  1. 最初に d を 1 つ決める:まず「何を良くしたいか」を 1 文で言えるようにします。
  2. b / s を 2〜3 個に絞る:原因候補を増やしすぎず、今回の主因だけ残します。
  3. e を 1 つずつ書く:阻害 1 つ、促進 1 つに絞ると実行しやすくなります。
  4. P / Cap を分ける:今していることと、条件をそろえたときの力を分けて評価します。
  5. 再評価指標を決める:歩行速度、距離、 MMT 、疼痛など、比較できる指標を最後に置きます。

記録テンプレ(コピペ用)

1 行テンプレ
ICF 記載:d450(歩く)P = 3 / Cap = 2。 b730 = 2、b280 = 1。 e115.+2(四点杖)、e150.-2(段差)。個人因子=独居、買い物継続希望。計画=下肢筋力練習、疼痛対応、段差練習。再評価=歩行距離、歩行速度、介助量。

カンファレンス向け短文化テンプレ
目標は屋内移動の安定化です。主な要因は膝伸展筋力低下と膝痛で、四点杖は促進、玄関段差は阻害です。独居で買い物継続の希望が強いため、歩行条件の安定化を優先します。

ICF 記録シート PDF( A4 ・ 1 枚)

ICF を「わかる」で終わらせず、実際の記録に落とし込みたい方向けに、A4 1 枚で使える ICF 記録シート PDF を用意しました。 d → b / s → e → 個人因子 → 計画 / 再評価の流れで書きやすいように調整しています。

ダウンロードしてそのまま使えます。病棟・外来・カンファレンス前の整理にも使いやすいレイアウトです。

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PDF を表示できない場合は、こちらから開いてください

記録シートの使い方

このシートは、最初から細かく埋めるためではなく、「今日の目標」「主な要因」「環境」「次回の確認点」を短時間でそろえるために使います。すべての欄を長文で埋めるより、短い言葉で判断の軸を残すほうが、次回の再評価や申し送りで使いやすくなります。

  • d:今回いちばん優先する活動・参加を 1 つ決める
  • b / s:主因を 2〜3 個に絞る
  • e:阻害 1 つ、促進 1 つを先に書く
  • 個人因子:目標に影響する生活背景を 1 行で残す
  • 再評価:次回も同条件でみる指標を 1〜2 個決める

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

活動と参加は別コードで分けるべきですか?

実務では「活動」と「参加」を厳密に切り分けようとして止まることがあります。まずは d の中から、今回の目標として重要なものを 1〜2 個選べば十分です。親記事では「何を良くしたいか」を優先し、細かな整理は運用に応じて合わせるほうが回しやすいです。

Performance と Capacity はどちらを先に決めますか?

先に見るのは Performance で問題ありません。実際に病棟や在宅でどうできているかを確認したうえで、標準化条件での Capacity を見ると、環境調整で改善できる部分が見えやすくなります。

個人因子はどこまで詳しく書けばよいですか?

長文は不要です。価値観、生活歴、役割、希望のうち、今回の目標に直結するものを 1 行書けば十分です。「何を大事にしている人か」が伝わるだけでも、目標設定と説明がそろいやすくなります。

修飾子の 8 と 9 はどう使い分けますか?

8 は「情報不足でまだ決められない」、 9 は「その人には対象外」です。未評価なら 8 、生活や役割としてもともと対象にならないものは 9 と考えると混乱しにくくなります。

次の一手

続けて読むなら、まずは全体像、その次に実装で詰まりやすい論点へ進むと理解しやすいです。


参考文献・公的資料

  • World Health Organization. International Classification of Functioning, Disability and Health. Geneva: World Health Organization; 2001. WHO PDF
  • World Health Organization. ICF Beginner’s Guide: Towards a Common Language for Functioning, Disability and Health. WHO PDF
  • World Health Organization. ICF Practical Manual: a guide for using the International Classification of Functioning, Disability and Health. WHO PDF
  • 厚生労働省. ICF(国際生活機能分類)-「生きることの全体像」についての「共通言語」-. 厚労省 PDF
  • 上田 敏. 新しい障害概念と 21 世紀のリハビリテーション医学―ICIDH から ICF へ―. リハビリテーション医学. 2002;39(3):123-127. DOI
  • Stucki G, Ewert T, Cieza A. Value and application of the ICF in rehabilitation medicine. Disabil Rehabil. 2002;24(17):932-938. PubMed
  • Okochi J, Utsunomiya S, Takahashi T. Health measurement using the ICF: test-retest reliability study of ICF codes and qualifiers in geriatric care. Health Qual Life Outcomes. 2005;3:46. DOI
  • Jelsma J. Use of the International Classification of Functioning, Disability and Health: a literature survey. J Rehabil Med. 2009;41(1):1-12. DOI

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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