5xSTS と TUG の違いは「立ち上がり」か「移動全体」かです
5xSTS と TUG は、どちらも短時間で実施できる下肢・移動系の評価です。ただし、見ている課題は同じではありません。5xSTS は椅子からの立ち上がりを中心に見る評価、TUG は起立・歩行・方向転換・着座を含めた移動全体を見る評価です。
この記事では、5xSTS と TUG の違い、使い分け、先に行う順番、結果後の次の一手を整理します。単体の詳しい手順ではなく、臨床で「どちらを選ぶか」「結果をどう次につなげるか」を判断できることを目的にしています。

まず比較表|5xSTS と TUG の違いを整理する
5xSTS と TUG は、どちらも秒数で記録しますが、秒数が意味する内容は異なります。まずは、評価課題と見やすい所見を分けて整理します。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 項目 | 5xSTS | TUG |
|---|---|---|
| 主に見るもの | 立ち上がり能力、下肢機能、代償動作 | 移動全体の安全性、動的バランス、方向転換 |
| 課題 | 椅子から 5 回連続で立って座る | 起立 → 3 m 歩行 → 方向転換 → 着座 |
| 見やすい所見 | 離殿の遅れ、前傾不足、上肢代償、膝折れ | 歩幅低下、ふらつき、方向転換の不安定さ、着座の危険性 |
| 向いている場面 | 立ち上がりの要因を深掘りしたいとき | 初回に移動全体をざっくり把握したいとき |
| 実務上の位置づけ | 追加評価・要因分析に使いやすい | 初回スクリーニングに使いやすい |
| 次の一手 | 歩行、バランス、筋力、サルコペニア評価へ広げる | 破綻区間に応じて 5xSTS や静的バランスを追加する |
ポイントは、5xSTS は立ち上がり寄り、TUG は移動全体寄りと分けることです。どちらが優れているかではなく、何を確認したいかで選びます。
5xSTS が向いている場面|立ち上がりの要因を見たいとき
5xSTS が向いているのは、歩く前の入口動作である立ち上がりの質を詳しく見たい場面です。離殿に時間がかかる、反動が大きい、体幹前傾が不足する、上肢で代償する、立位に乗った瞬間にふらつく、といった所見を拾いやすくなります。
また、5xSTS はサルコペニアやフレイルの文脈でも使いやすい評価です。AWGS 2019 では、5回椅子立ち上がりが身体機能評価の一つとして扱われています。歩行速度だけではなく、立ち上がり能力から身体機能低下を説明したいときに役立ちます。
実務では、TUG が遅かったときに「立ち上がりが原因なのか」を確認したい場面、立ち上がり練習の前後で変化を見たい場面、サルコペニア評価につなげたい場面で使いやすいです。
TUG が向いている場面|移動全体を短時間で見たいとき
TUG が向いているのは、初回評価で起立・歩行・方向転換・着座をまとめて確認したい場面です。3 m 歩行だけでなく、椅子から立つ、方向転換する、戻って座るまでを一連の移動課題として見られます。
TUG の強みは、どの区間で安全性が崩れるかを短時間で把握しやすいことです。立ち上がりで詰まるのか、歩行中に歩幅が落ちるのか、方向転換でふらつくのか、着座で勢いが強いのかを、タイムと一緒に残すと次の評価につながります。
CDC STEADI では、TUG 12 秒以上が高齢者の転倒リスクの目安として示されています。ただし、TUG の秒数だけで転倒リスクを決め切るのではなく、観察所見と合わせて判断することが大切です。
先にやる順番|迷ったら TUG → 5xSTS でそろえる
順番に迷う場合は、TUG → 5xSTSの順にすると判断が安定します。先に TUG で移動全体を見てから、必要に応じて 5xSTS で立ち上がり局面を深掘りする流れです。
この順番にすると、いきなり要因分析に入りすぎず、まず全体像をつかめます。たとえば、TUG で方向転換が不安定なら動的バランスを追加し、立ち上がりで時間がかかるなら 5xSTS を追加する、という判断がしやすくなります。
一方で、サルコペニア評価や立ち上がり練習の効果判定が主目的なら、最初から 5xSTS を主役にして問題ありません。迷ったときの既定路線は TUG、目的が立ち上がりに明確なら 5xSTS、と整理します。
5分フロー|結果から次の一手を決める
5xSTS と TUG は、測って終わりではなく、結果から次の評価や介入を決めることが重要です。以下の流れで整理すると、初回評価でも使いやすくなります。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 結果 | 考えやすい問題 | 次の一手 |
|---|---|---|
| TUG で立ち上がりから遅い | 離殿、前傾、下肢支持、上肢代償の問題 | 5xSTS を追加し、立ち上がり局面を観察する |
| TUG で方向転換が不安定 | 動的バランス、注意配分、回旋動作の問題 | 方向転換、歩行観察、バランス評価を追加する |
| 5xSTS で上肢代償が強い | 下肢筋力低下、前方重心移動不足、恐怖感 | 椅子高、上肢使用条件、立ち上がり練習を見直す |
| 5xSTS は可能だが TUG で遅い | 歩行、方向転換、着座コントロールの問題 | 歩行速度、動的バランス、着座動作を追加で見る |
このように、TUG は全体像、5xSTS は立ち上がり要因の確認として使うと、結果から次の評価を選びやすくなります。
記録例|秒数だけでなく「どこで崩れたか」を残す
記録では、秒数だけで終えず、破綻した場面と代償を 1 行で残すと共有しやすくなります。評価結果を介入につなげるためには、タイムよりも「中身」が重要になる場面があります。
記録例
「TUG:15.2 秒。立ち上がり時に上肢支持あり。方向転換で歩幅低下とふらつきあり。5xSTS:18.4 秒、3 回目以降に前傾不足と反動増加あり。立ち上がり要因と方向転換時の動的バランス低下が課題。」
このように書くと、次に行う練習や再評価の焦点が明確になります。単に「TUG 15 秒」「5xSTS 18 秒」と書くよりも、スタッフ間で同じ場面を共有しやすくなります。
よくある失敗|秒数だけで優劣を決めない
現場で多い失敗は、5xSTS と TUG を「どちらも秒数評価」として同じ意味で扱ってしまうことです。大事なのは、何秒だったかだけでなく、何を見た秒数なのかを分けることです。
- 比較表に戻って、課題の違いを確認する
- 5分フローで、結果後の次の一手を確認する
- 単体手順は TUG テストのやり方 で確認する
評価がうまく回らない背景には、個人の知識不足だけでなく、職場内で条件固定や記録の型が共有されていないこともあります。学び方や評価を標準化しやすい環境づくりまで考えたい場合は、次の記事も参考になります。
PT キャリアガイドを見る
よくある質問
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TUG があれば 5xSTS は不要ですか?
不要とは言い切れません。TUG は移動全体を見る評価ですが、立ち上がり局面を詳しく分けるには 5xSTS が使いやすいです。TUG で遅かったときの要因分析として、5xSTS は相性がよい評価です。
5xSTS を先にやってはいけませんか?
いけないわけではありません。サルコペニア評価や立ち上がり練習の効果判定が目的なら、5xSTS を先に行うのが自然です。迷った場合は、TUG で移動全体を見てから 5xSTS を追加すると判断しやすくなります。
カットオフはどちらを優先して覚えればいいですか?
数字だけで覚えるより、用途とセットで覚えるのがおすすめです。TUG の 12 秒以上は転倒リスクの目安として使われることがあり、5xSTS はサルコペニアや身体機能低下の文脈で使われます。同じ秒数でも意味が違うため、目的と一緒に整理します。
初回評価ではどちらを使えばいいですか?
初回に 1 つ選ぶなら、移動全体を見やすい TUG が使いやすいです。そのうえで、立ち上がりに問題がありそうなら 5xSTS を追加します。最初から立ち上がり能力を見たい場合は、5xSTS を主役にしても問題ありません。
秒数が改善していれば安全性も改善したと考えてよいですか?
秒数の改善は大切ですが、それだけで安全性が改善したとは言い切れません。方向転換時のふらつき、上肢代償、着座時の勢い、歩行補助具の使い方なども合わせて確認します。
次の一手|単体手順と全体像につなげる
5xSTS と TUG の違いが整理できたら、次は単体手順と全体像を確認すると臨床で使いやすくなります。評価の入口を整理したい場合は 歩行・バランス評価ガイド、TUG の 3 m・合図・停止基準を確認したい場合は TUG テストのやり方 が参考になります。
5xSTS の椅子高や上肢使用条件までそろえたい場合は 5回立ち上がりテストのやり方、包括評価との違いを見たい場合は SPPB と TUG の違い へ進むと整理しやすくなります。
参考文献
- Podsiadlo D, Richardson S. The timed “Up & Go”: a test of basic functional mobility for frail elderly persons. J Am Geriatr Soc. 1991;39(2):142-148. doi: 10.1111/j.1532-5415.1991.tb01616.x / PubMed
- Centers for Disease Control and Prevention. Timed Up and Go (TUG). STEADI Clinical Resources. PDF
- Whitney SL, Wrisley DM, Marchetti GF, Gee MA, Redfern MS, Furman JM. Clinical measurement of sit-to-stand performance in people with balance disorders: validity of data for the Five-Times-Sit-to-Stand Test. Phys Ther. 2005;85(10):1034-1045. doi: 10.1093/ptj/85.10.1034 / PubMed
- Chen LK, Woo J, Assantachai P, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300-307.e2. doi: 10.1016/j.jamda.2019.12.012 / PubMed
- Bohannon RW. Reference values for the five-repetition sit-to-stand test: a descriptive meta-analysis of data from elders. Percept Mot Skills. 2006;103(1):215-222. doi: 10.2466/pms.103.1.215-222 / PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、リハ栄養、シーティング、摂食・嚥下


