- ICU-AW の評価は「測れる条件→ MRC-SS → 48/36 点→鑑別→再評価」を固定すると迷いません
- 5 分フロー|ICU-AW を疑った日の「最短手順」
- ICU-AW を疑う 3 つの “見た目”|左右対称・びまん性・脳神経は保たれる
- MRC-SS( 60 点満点 )の “最小手順”|48 点未満が疑い、36 点未満は重度の目安
- 測定できる条件を先に決める|覚醒・協力度がない日は “測れない日の記録” を残す
- 鑑別の “外し方”|ICU-AW と決める前に、別の原因を先に潰す
- 記録の最小セット|点数より「条件」を残すと、再評価の意味が明確になります
- 現場の詰まりどころ|点が伸びない原因が「患者」ではなく「条件」だった
- よくある質問(FAQ)
- 次の一手|評価を「回る形」にして、チーム共有まで一気に進める
- 参考文献
- 著者情報
ICU-AW の評価は「測れる条件→ MRC-SS → 48/36 点→鑑別→再評価」を固定すると迷いません
ICU(集中治療)では、鎮静・せん妄・疼痛・人工呼吸器などが重なり、筋力評価が「今日は測れる?」「点数がブレるのは患者?条件?」で迷いやすいです。ICU-AW( ICU acquired weakness )は “病態名” というより、重症病態の経過中に新規で出てきた、左右対称のびまん性筋力低下をまとめた臨床診断です。
結論として、①測れる条件(覚醒・協力度)を先に固定し、② MRC-SS( 60 点満点 )を 24 h 以上あけて 2 回、③ 48 点未満(重度は 36 点未満)の目安で “疑い” を立て、④他の原因( GBS/ MG/電解質など)を外す、この順番で回すとチームで揃います。 [oai_citation:0‡日本集中治療医学会](https://www.jsicm.org/provider/pics/pics02.html)
5 分フロー|ICU-AW を疑った日の「最短手順」
まずは「今日の評価が成立するか」を確認し、成立するなら MRC-SS を取りにいきます。成立しない日は “測れない日の記録” を残して、翌日の再評価につなげます。
このページでは、採点の細かな原則よりも、現場で止まりやすい開始条件・中止基準・記録の型を優先して整理します。 [oai_citation:1‡日本集中治療医学会](https://www.jsicm.org/provider/pics/pics02.html)
| 手順 | やること(最小セット) | 記録の一言 | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| 1 | 覚醒・理解・疼痛を確認(「評価できる日」か判定) | 評価可/不可(理由:鎮静・せん妄・疼痛・疲労) | 不可なら代替で “到達度” を残す |
| 2 | MRC-SS( 12 筋群、 0–5 )を左右で採点 | MRC-SS:○○/60(体位・指示・介助量) | 同条件で翌日も再検 |
| 3 | 48 点未満で ICU-AW を “疑い” として共有 | ICU-AW 疑い( 48 未満 )/重度( 36 未満 ) | 他原因の鑑別チェックへ |
| 4 | GBS/ MG/中枢病変/電解質などを “外す” | 左右差・脳神経・感覚・反射・採血所見を確認 | 必要時は医師へ即共有 |
| 5 | 24 h 以上あけて 2 回以上(同条件)で再現性を見る | 再検:○○/60(条件固定) | 回復傾向/停滞の理由を分析 |
ICU-AW を疑う 3 つの “見た目”|左右対称・びまん性・脳神経は保たれる
ICU-AW は、重症病態の経過中に出てきたびまん性で左右対称の筋力低下が基本です。近位・遠位ともに弱り、弛緩性で、脳神経は概ね保たれる(顔面は保たれやすい)という特徴が整理されています。
逆に、左右差が強い/脳神経症状が目立つ/感覚や反射のパターンが典型的などは “別の原因” を先に疑う合図になります。 [oai_citation:2‡日本集中治療医学会](https://www.jsicm.org/provider/pics/pics02.html)
| 見る点 | ICU-AW らしい | まず外したい(赤信号) | 共有ポイント |
|---|---|---|---|
| 分布 | 近位+遠位、四肢でびまん性 | 片麻痺・明確な左右差 | 左右差の有無を最初に書く |
| 左右対称性 | 概ね左右対称 | 急な左右差/急な局所痛 | “対称” か “偏り” か |
| 脳神経 | 顔面は保たれやすい | 嚥下・眼球運動・構音の急変 | 脳神経症状があれば即共有 |
MRC-SS( 60 点満点 )の “最小手順”|48 点未満が疑い、36 点未満は重度の目安
MRC-SS( Medical Research Council sum score )は、左右 6 筋群ずつ(合計 12 筋群)を 0–5 で評価し、合計 0–60 点で筋力をまとめる方法です。合計が 48/60 点未満で ICU-AW を疑う目安、36/60 点未満で重度の目安として整理されています。
ポイントは “点数” だけでなく、同じ条件で繰り返し取れることです。24 h 以上あけて 2 回以上(同条件)で再現性を見る、という運用が推奨されています。 [oai_citation:3‡日本集中治療医学会](https://www.jsicm.org/provider/pics/pics02.html)
| 領域 | 代表 6 筋群(左右で実施) | 詰まりやすい点 | 条件固定のコツ |
|---|---|---|---|
| 上肢 | 肩外転、肘屈曲、手関節背屈 | 代償が出る/疼痛で力が入らない | 体位・支持面・疼痛( NRS 等)を同時に残す |
| 下肢 | 股関節屈曲、膝伸展、足関節背屈 | ベッド上での姿勢が日によって違う | 背上げ角度・膝の支持・足底条件を固定する |
| 合計 | 0–5 点 × 12 筋群 = 0–60 点 | 「今日は 4 っぽい」を連発するとブレる | 4/5 を迷うときは “抵抗の質” を 1 行で補足 |
測定できる条件を先に決める|覚醒・協力度がない日は “測れない日の記録” を残す
ICU-AW の評価は、患者さんが覚醒しており、十分な協力と理解が得られることが前提です。せん妄などの意識障害がある場合は評価困難になりやすいので、無理に点数化せず “なぜ測れないか” を記録に残すほうがチームに有益です。
測れない日に備えて、到達度や介助量で状態を残せる指標を準備しておくと、翌日の再評価がスムーズです(例:IMS( ICU Mobility Scale ))。 [oai_citation:4‡日本集中治療医学会](https://www.jsicm.org/provider/pics/pics02.html)
| チェック | OK(評価へ) | NG(代替へ) | 記録の一言 |
|---|---|---|---|
| 覚醒 | 呼名で開眼し、指示に反応 | 鎮静が深い/反応が不安定 | 評価不可:覚醒不十分 |
| 理解 | 「上げて」「押して」が通る | 理解困難/せん妄が強い | 評価不可:指示理解困難 |
| 疼痛 | 疼痛コントロールされている | 疼痛で拒否・防御が強い | 評価不可:疼痛優位 |
| 疲労 | 短時間の反復が可能 | 呼吸困難・疲労が強い | 評価延期:疲労・呼吸負荷 |
鑑別の “外し方”|ICU-AW と決める前に、別の原因を先に潰す
ICU-AW は「重症病態以外に筋力低下をきたす疾患がない」ことを確認して初めて疑いとして成立します。特に、入室理由そのものが神経筋疾患(例: GBS、重症筋無力症)や中枢疾患(頸髄・脳幹)に関係する場合は、筋力低下の解釈が変わります。
鑑別は “全部を網羅する” より、見落とすと致命的なものを先に外すのが実務的です。 [oai_citation:5‡日本集中治療医学会](https://www.jsicm.org/provider/pics/pics02.html)
| まず外すもの | ヒント | 現場でできる確認 | 医師へ共有する一言 |
|---|---|---|---|
| 中枢(頸髄・脳幹) | 左右差、感覚障害、膀胱直腸、脳神経 | 左右差の有無、脳神経症状の確認 | 左右差+脳神経所見あり |
| GBS / MG など神経筋疾患 | 経過、反射、疲労性、呼吸筋 | 反射・疲労性の印象、経過の確認 | 神経筋疾患の可能性を否定できず |
| 電解質・内分泌 | 低 K、高 Mg など | 採血・薬剤( Mg 製剤など) | 電解質異常の影響が疑わしい |
| 薬剤・長期不動 | 筋弛緩薬、鎮静、長期臥床 | 投与歴・不動期間を確認 | 薬剤 / 不動の影響が大きい |
記録の最小セット|点数より「条件」を残すと、再評価の意味が明確になります
MRC-SS は、同じ人でも「体位」「支持」「指示」「疼痛」「疲労」で点が動きます。点数が変わったときに “改善” なのか “条件の違い” なのかを区別するには、条件の記録が必須です。
おすすめは、点数+条件+次回の再検条件を 1 行で固定することです。 [oai_citation:6‡日本集中治療医学会](https://www.jsicm.org/provider/pics/pics02.html)
| 項目 | 書く内容 | 例 | 再評価でブレないコツ |
|---|---|---|---|
| 点数 | MRC-SS(合計/60) | MRC-SS: 44/60 | 同じ 12 筋群・同じ順で |
| 条件 | 体位、支持、疼痛、協力度 | 背上げ 30°、疼痛軽度、指示理解可 | 体位と支持だけは固定 |
| 解釈 | 疑い/重度の目安 | ICU-AW 疑い( 48 未満 ) | 断定語ではなく “疑い” で共有 |
| 次回 | 再検の条件とタイミング | 24 h 後に同条件で再検予定 | 「同条件」を明記する |
現場の詰まりどころ|点が伸びない原因が「患者」ではなく「条件」だった
ICU の筋力評価が噛み合わない典型は、点数の上下を “患者の変化” だけで解釈してしまうことです。実際は、背上げ角度や支持、疼痛、疲労の違いで点が動いているケースが少なくありません。
迷うときほど、点数を増やすよりも条件を減らして固定するほうが、チームで一致しやすくなります。 [oai_citation:7‡日本集中治療医学会](https://www.jsicm.org/provider/pics/pics02.html)
| 失敗 | 起きやすい理由 | 対策(最小) | 記録の一言 |
|---|---|---|---|
| 4/5 が日替わり | 抵抗のかけ方が人で違う | 抵抗の方向・支持を統一 | 抵抗の質(瞬間で抜ける等)を補足 |
| 下肢だけ極端に低い | 体位で代償が出ない | 背上げ角度と膝支持を固定 | 背上げ角度を必ず書く |
| 測れない日が続く | 鎮静・せん妄・疼痛が優位 | 不可理由を残し、代替指標へ | 評価不可:理由を 1 つに絞る |
よくある質問(FAQ)
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Q1. MRC-SS は「いつ」測るのが現実的ですか?
原則は、患者さんが覚醒しており、十分な協力と理解が得られるタイミングです。鎮静が深い、せん妄が強い、疼痛が優位など “成立しない日” は、無理に点数化せず不可理由を記録し、翌日の再評価につなげます。 [oai_citation:8‡日本集中治療医学会](https://www.jsicm.org/provider/pics/pics02.html)
Q2. 48 点未満なら ICU-AW と「確定」していいですか?
48/60 点未満は ICU-AW を疑う目安として使われますが、診断は臨床的で、他の原因が除外されて初めて成立します。実務では「 ICU-AW 疑い( MRC-SS 〇〇/60 )」として共有し、鑑別の確認と再評価をセットにすると安全です。 [oai_citation:9‡日本集中治療医学会](https://www.jsicm.org/provider/pics/pics02.html)
Q3. 36 点未満は何が違いますか?
36/60 点未満は重度の筋力低下の目安として整理され、呼吸筋を含む機能低下や離床・ ADL への影響が大きくなりやすい層です。評価だけでなく、介助量・安全管理・目標設定も “重度前提” に寄せて共有すると噛み合います。 [oai_citation:10‡PMC](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6480958/)
Q4. せん妄や鎮静で測れない日はどうしますか?
測れない日は「測れない理由(覚醒不十分、指示理解困難、疼痛優位など)」を 1 つに絞って残し、到達度・介助量で状態を残せる指標を使います。翌日、条件が整ったら同じ条件で MRC-SS を再開します。 [oai_citation:11‡日本集中治療医学会](https://www.jsicm.org/provider/pics/pics02.html)
Q5. 握力だけで代用できますか?
握力はスクリーニングとして扱われることがありますが、異常があれば MRC-SS で分布を含めて評価するのが基本です。チーム共有では「握力+ MRC-SS(可能な範囲)」の二段構えが実務的です。 [oai_citation:12‡PMC](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6480958/)
次の一手|評価を「回る形」にして、チーム共有まで一気に進める
ICU-AW は “評価だけ” で完結せず、測定条件の共有と、測れない日の代替まで含めて運用するとブレません。関連ページも合わせて使うと、評価の流れがさらに整います。
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参考文献
- 日本集中治療医学会. PICS 集中治療後症候群:身体機能障害( ICU-AW の診断基準). https://www.jsicm.org/provider/pics/pics02.html(参照日:2026-02-21). [oai_citation:13‡日本集中治療医学会](https://www.jsicm.org/provider/pics/pics02.html)
- Piva S, Fagoni N, Latronico N. Intensive care unit–acquired weakness: unanswered questions and targets for future research. F1000Res. 2019;8:F1000 Faculty Rev-508. doi: 10.12688/f1000research.17376.1. PMID: 31069055. [oai_citation:14‡PMC](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6480958/)
- Latronico N, Gosselink R. A guided approach to diagnose severe muscle weakness in the intensive care unit. Rev Bras Ter Intensiva. 2015;27(3):199-201. doi: 10.5935/0103-507X.20150036. PMID: 26376161. [oai_citation:15‡PMC](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4592111/)
- 武居哲洋. 重症患者に発症するびまん性神経筋障害:ICU-acquired weakness. Journal of Japanese Congress on Neurological Emergencies. 2015;27(3):1-7. J-STAGE PDF. [oai_citation:16‡J-STAGE](https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcne/27/3/27_1/_pdf)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


