- ADL-D scaleはCOPDのADL時の息切れを15項目で評価する尺度です
- ADL-D scaleとは?「できるか」ではなくADL時の息切れを見ます
- ADL-D scaleの評価方法|15活動の息切れを0〜4点で採点します
- ADL-Dの点数は「低いほど息切れが強い」と解釈します
- 低得点の活動は追加問診で「なぜ苦しいか」を掘り下げます
- ADL-Dを介入につなげるときは条件を1つずつ変えます
- ADL-Dを使うときは開発対象と状態変動に注意します
- mMRC・J-BI-d・6MWTとは「何を知りたいか」で使い分けます
- ADL-Dの記録は「正式スコア」と「追加問診」を分けて残します
- ADL-D scaleのよくある質問
- まとめ|ADL-Dは低得点活動から追加問診へつなげます
- 参考文献
- 著者情報
ADL-D scaleはCOPDのADL時の息切れを15項目で評価する尺度です
ADL-D scale(Activity of Daily Living Dyspnoea scale)は、COPD患者の日常生活活動(ADL)で生じる息切れを評価する疾患特異的尺度です。15の活動を0〜4点で採点し、合計は0〜60点。高得点ほど息切れが少なく、低得点ほどADL時の息切れが強いと読みます。
臨床では合計点だけを見るのではなく、どの活動で点数が低いかを確認し、その後に距離・速度・休息・回避・代行などを追加問診することが重要です。この記事では、設問全文を転載せず、ADL-Dの評価方法、点数の解釈、mMRC・J-BI-d・6MWTとの使い分け、記録へのつなげ方を整理します。
先に全体像を整理したい方へ
ADL-D scaleとは?「できるか」ではなくADL時の息切れを見ます
ADL-D scaleは、COPD患者にみられる「動作そのものはできるが、息切れが強い」というADL障害を捉えるために開発されました。Barthel Indexなどの一般的なADL尺度では、自立している動作は高く評価される一方、その動作に強い息切れを伴っているかまでは十分に表現できないことがあります。
開発研究では、安定期にある日本人男性COPD患者83例を対象として26項目の候補から項目を選定し、最終的に15項目のADL-D scaleが作成されました。MRC dyspnea grade、Incremental Shuttle Walking Test(ISWT)、SGRQとの関連が確認され、内的整合性を示すCronbach’s αは0.96でした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な対象 | COPD患者のADL時の息切れ |
| 項目数 | 15項目 |
| 各項目 | 0〜4点 |
| 合計点 | 0〜60点 |
| 得点方向 | 高得点ほど息切れが少なく、60点は全項目で息切れを認めない状態 |
| 評価の中心 | ADLを行うときに感じる息切れの強さ |
尺度利用上の注意:この記事ではADL-D scaleの設問全文は掲載していません。実際の採点では、原著・正式資料の質問項目と説明を確認して使用してください。
ADL-D scaleの評価方法|15活動の息切れを0〜4点で採点します
ADL-Dの正式な評価では、各活動を行ったときの息切れの強さを0〜4点で回答します。方向を逆に覚えないことが重要で、4点が息切れなし、0点が最も強い息切れです。
原著では、回答者に過去1週間に感じた息切れの平均的な強さを選ぶよう説明しています。そのため、「今日だけ調子がよい」「昨日だけ外出して疲れた」といった1日の状態ではなく、直近1週間を振り返って回答します。
| 確認事項 | 実施時の考え方 |
|---|---|
| 振り返る期間 | 過去1週間に感じた息切れの平均的な強さを回答する |
| 各項目の点数 | 0〜4点で息切れの強さを評価する |
| 4点 | その活動で息切れを感じない側 |
| 0点 | その活動で最大レベルの息切れを感じる側 |
| 普段しない活動 | その活動を行ったと仮定して、どの程度の息切れが生じるかを回答する |
| 合計 | 15項目を合計し0〜60点で示す |
図版の評価期間について:図では理解しやすさを優先して「過去1週間の平均的な1日」と表現していますが、正式な採点では原著の指示を優先し、過去1週間に感じた息切れの平均的な強さを回答します。
ADL-Dの点数は「低いほど息切れが強い」と解釈します
ADL-Dの合計点は0〜60点で、高得点ほどADL時の息切れが少なく、低得点ほど息切れが強いと読みます。60点は15項目すべてで息切れを認めない場合の得点です。
ただし、「○点以下なら重症」「○点以上なら軽症」といった単純なカットオフで分類する尺度ではありません。開発研究では、MRC dyspnea gradeの重症度群によってADL-D得点に差が認められましたが、特定の合計点を診断的な境界として提示しているわけではありません。
また、前回より合計点が上がったからといって、それだけで介入効果と断定するのも避けます。外出機会、家事量、体調、増悪、感染、家族による代行など、生活条件が変われば回答も変化し得るためです。
| 順番 | 確認すること | 臨床での意味 |
|---|---|---|
| 1 | 合計点 | ADL時の息切れを全体として把握する |
| 2 | 低得点だった活動 | 息切れが強い生活場面を特定する |
| 3 | 前回から変化した活動 | どの生活場面が変わったのかを見る |
| 4 | 生活条件や他の評価 | 合計点だけで改善・悪化を断定しない |
ポイント:ADL-Dは「合計点を付ける尺度」で終わらせず、低得点だった活動を次の問診対象にすると、生活指導や呼吸リハへつなげやすくなります。
低得点の活動は追加問診で「なぜ苦しいか」を掘り下げます
ここからはADL-Dそのものの正式採点ではなく、評価後に行う臨床上の追加問診です。この2つを混同しないことが重要です。
たとえばADL-Dで息切れの強い活動が見つかっても、尺度の点数だけでは「どの条件を変えれば楽になるか」までは分かりません。低得点項目について、距離、速度、休息、荷物、環境などを追加確認すると、介入可能な条件が見えてきます。
| 追加問診 | 確認例 | 介入につながる視点 |
|---|---|---|
| 距離・時間 | 何m、何分程度で息切れが強くなるか | 活動量や休息位置を調整する |
| 速度 | 急ぐと悪化するか、ゆっくりなら継続できるか | ペーシングを検討する |
| 休息 | 途中で止まるか、どのくらい休めば再開できるか | 計画的な休息を組み込む |
| 回避 | 息切れを予想して行わなくなった活動はないか | 生活範囲の縮小を把握する |
| 代行 | 家族が代わるようになった活動はないか | 実際の活動機会を確認する |
| 荷物・環境 | 荷物、坂道、階段、室温、動線などで変わるか | 環境調整や方法変更を検討する |
たとえば「買い物で息切れが強い」という結果なら、買い物そのものを一括して問題にするのではなく、歩行距離、荷物の重さ、移動速度、休憩場所、店内滞在時間などに分解します。すると、「150mごとに休む」「荷物を分ける」「急いで歩かない」など、次の評価・指導へ変換しやすくなります。
ADL-Dを介入につなげるときは条件を1つずつ変えます
低得点だった活動の原因が整理できたら、ペーシング、動作分割、休息の入れ方、環境調整などを検討します。呼吸法を使用する場合も、「呼吸法を指導した」で終えず、対象となる実際のADLの中で息切れや動作がどう変わったかを確認します。
複数の条件を一度に変えると、どの工夫が有効だったのか分かりにくくなります。可能であれば、速度、休息、動作手順、環境などから優先度の高い条件を1つ変え、その反応を確認します。
| 低得点の背景 | 変更する条件 | 再評価すること |
|---|---|---|
| 急ぐと息切れが増える | 移動速度を落とす | 同じ距離での息切れ・休息回数 |
| 連続した家事で苦しくなる | 作業を分割し休息を入れる | 作業継続時間と終了後の症状 |
| 荷物を持つと悪化する | 荷物を軽くする・運搬方法を変える | 同じ移動場面での息切れ |
| 階段を避けるようになった | ペースや休息位置を調整する | 段数、休息回数、安全性 |
ADL-Dを使うときは開発対象と状態変動に注意します
ADL-Dの開発研究の対象は、呼吸リハビリテーションに参加していた安定期の日本人男性COPD患者83例でした。また、研究開始前3か月以内に急性増悪があった患者などは除外されています。
そのため、女性、COPD以外の呼吸器疾患、急性増悪期などに使用する際に、開発研究とまったく同じ測定特性が保証されると考えるのは避けます。特に急性増悪、感染、薬剤変更、入退院直後などでは、状態変化そのものが点数に影響する可能性があります。
| 状況 | 注意点 |
|---|---|
| 急性増悪・感染がある | 安定期の点数と単純比較せず、病状変化を併記する |
| 活動機会が大きく変わった | 家族の代行や外出減少による影響を確認する |
| 自己回答が難しい | 尺度得点だけに依存せず、動作観察や他の評価を組み合わせる |
| COPD以外で使用する | COPDを対象に開発された尺度であることを踏まえて解釈する |
| 経時変化を見る | 点数とともに病状・生活条件の変化を残す |
mMRC・J-BI-d・6MWTとは「何を知りたいか」で使い分けます
呼吸器患者の評価では、ADL-Dだけですべてを判断するのではなく、知りたい内容に応じて他の評価を組み合わせます。
mMRCは息切れによる活動制限を0〜4の段階で大きく捉える尺度で、GOLD 2026でも症状評価に用いられています。ADL-Dはそこからさらに、個々の生活活動で感じる息切れを15項目で確認したい場合に適しています。
6MWTは6分間に歩ける距離などから機能的運動耐容能を評価するパフォーマンステストです。ADL-Dが生活場面に対する自己報告であるのに対し、6MWTは実際の歩行課題で能力を確認できる点が異なります。6MWTの具体的な実施条件は、6分間歩行テスト(6MWT)の評価と実施手順で整理しています。
| 評価 | 主に知りたいこと | 使いどころ |
|---|---|---|
| ADL-D | COPDの個々のADLで感じる息切れ | どの生活活動で息切れが強いかを詳しく見る |
| mMRC | 息切れによる活動制限の全体的な重症度 | 短時間で症状負担を概括する |
| J-BI-d | Barthel Indexを基盤としたADL時の呼吸困難 | 基本的ADLに沿って呼吸困難を整理する |
| 6MWT | 機能的運動耐容能 | 実際の歩行パフォーマンスや運動時反応を見る |
J-BI-dはADL-Dとは別の尺度です。日本語版J-BI-dでは慢性呼吸器疾患患者を対象に信頼性・妥当性が検証されており、Barthel Indexを基盤とした基本的ADLでの呼吸困難を評価します。ADL-Dと名称や目的が似ていますが、項目構成や得点方法は異なるため混同しないようにします。
ADL-Dの記録は「正式スコア」と「追加問診」を分けて残します
カルテでは、ADL-Dの正式な得点と、評価後に行った追加問診を分けて書くと分かりやすくなります。「休んだ」「避けた」「家族に任せた」といった情報は重要ですが、ADL-Dそのものの採点項目ではなく、低得点活動を理解するための追加情報として記録します。
記録例
ADL-D:47/60点。前回42/60点。低得点活動は屋外移動・階段を含む場面。追加問診では屋外約300m、荷物約2kg、休息なしで息切れ増強。150m前後で休息を入れる条件を試し、同条件で息切れと活動継続状況を再評価する。
この記録例でも、「42点から47点になった=改善」とは断定していません。得点の変化とともに、低得点だった活動、実際の生活条件、次に変更する条件を残しています。
| 記録項目 | 残す内容 |
|---|---|
| 正式スコア | ADL-D合計点 |
| 低得点活動 | 息切れが強かった活動 |
| 追加問診 | 距離、速度、休息、回避、代行、荷物・環境 |
| 状態変化 | 増悪、感染、薬剤変更、活動量など |
| 次の条件 | 次回までに変更・確認する条件を1つ具体化する |
ADL-D scaleのよくある質問
ADL-D scaleは何点満点ですか?
15項目を各0〜4点で評価するため、合計0〜60点です。高得点ほどADL時の息切れが少なく、60点は全項目で息切れを認めない場合の得点です。
ADL-Dは何点以下なら重症ですか?
特定の合計点だけで「軽症・重症」を分けるカットオフとして使用する尺度ではありません。合計点に加えて、どの活動が低得点だったか、mMRCや運動耐容能、生活条件などを合わせて解釈します。
普段していない活動は0点にしますか?
いいえ。原著では、普段その活動を行う必要がない場合、その活動を実際に行ったと仮定して、どの程度の息切れが生じるかを予想して回答するよう説明されています。「実施していない=0点」ではありません。
「休む」「避ける」「家族に任せる」もADL-Dの採点項目ですか?
それらはADL-Dそのものの正式採点とは分けて考えます。本記事では、ADL-Dで低得点だった活動を臨床的に掘り下げる追加問診として、休息、回避、代行、速度などを確認する方法を提案しています。
mMRCだけでは不十分ですか?
目的が異なります。mMRCは息切れによる活動制限を大きく捉えるのに適しています。一方、どの具体的なADLで息切れが強いかを詳しく確認したい場合には、ADL-Dの情報が役立ちます。
急性増悪中でもADL-Dを評価できますか?
開発研究は安定期COPD患者を対象としているため、急性増悪中の点数を安定期と単純比較するのは避けた方がよいでしょう。評価する場合は、増悪・感染・治療変更などの状態を併記し、安定後の再評価と合わせて解釈します。
まとめ|ADL-Dは低得点活動から追加問診へつなげます
ADL-D scaleは、COPD患者のADL時の息切れを15項目・0〜60点で評価する尺度です。各活動は0〜4点で、高得点ほど息切れが少ない方向に採点します。
実施では、過去1週間に感じた息切れの平均的な強さを回答し、普段行っていない活動も「行ったとしたらどうか」を考えて採点します。結果は合計点だけで終わらせず、低得点活動を抽出 → 距離・速度・休息・回避・代行などを追加問診 → 条件を1つ変えて介入 → 再評価という順番で使うと、生活場面の問題を具体的な支援につなげやすくなります。
参考文献
- Yoza Y, Ariyoshi K, Honda S, Taniguchi H, Senjyu H. Development of an activity of daily living scale for patients with COPD: the Activity of Daily Living Dyspnoea scale. Respirology. 2009;14(3):429-435. doi: 10.1111/j.1440-1843.2009.01479.x / PubMed: 19207122
- 與座嘉康, 有吉紅也, 本田純久, 谷口博之, 千住秀明. COPD患者のための日常生活活動スケールの開発:日常生活活動息切れスケール. 日本呼吸器学会雑誌. 2009;47(10):858-864. J-STAGE
- Yamaguchi T, Yamamoto A, Oki Y, Sakai H, Misu S, Iwata Y, et al. Reliability and Validity of the Japanese Version of the Barthel Index Dyspnea Among Patients with Respiratory Diseases. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2021;16:1863-1871. doi: 10.2147/COPD.S313583 / PubMed: 34188463
- Vitacca M, Paneroni M, Baiardi P, De Carolis V, Zampogna E, Belli S, et al. Development of a Barthel Index based on dyspnea for patients with respiratory diseases. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2016;11:1199-1206. doi: 10.2147/COPD.S104376 / PubMed: 27354778
- ATS Committee on Proficiency Standards for Clinical Pulmonary Function Laboratories. ATS statement: guidelines for the six-minute walk test. Am J Respir Crit Care Med. 2002;166(1):111-117. doi: 10.1164/ajrccm.166.1.at1102
- Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease. Global Strategy for Prevention, Diagnosis and Management of COPD: 2026 Report. 2026.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

