- ADL-D scale は COPD の息切れによる ADL 制限を場面別に見る評価です
- この記事で答えることを ADL-D の臨床運用に絞ります
- ADL-D scale で決まるのは「どの生活場面が息切れで細っているか」です
- ADL-D は「できるけど苦しい」ADL が残るときに使います
- 実施は「期間・場面・息切れ行動」の 3 点を固定します
- 解釈は「合計点」より「点が落ちた ADL の条件」を優先します
- mMRC・CAT・6MWT・BI-d とは役割で使い分けます
- 現場の詰まりどころは「点数だけで終わる」ことです
- 5 分ミニ運用なら「入口・深掘り・宿題」で回せます
- ADL-D 記録シート PDF
- 記録は「点数+生活条件+次回目標」で残します
- よくある質問( FAQ )
- 次の一手
- 参考文献
- 著者情報
ADL-D scale は COPD の息切れによる ADL 制限を場面別に見る評価です
ADL-D scale( Activity of Daily Living Dyspnoea scale )は、COPD 患者の「動作はできるが、息切れで生活が細くなる」状態を場面別に確認する評価です。Barthel Index や FIM のような汎用 ADL 尺度だけでは見えにくい、息切れによる回避・休息・速度低下を拾いやすい点が特徴です。
この記事では、設問文の転載は行わず、ADL-D scale の使いどころ、点数の読み方、mMRC・CAT・6MWT との使い分け、記録例まで整理します。呼吸リハ、外来、訪問で「どの ADL を優先して整えるか」を決めたい PT / OT / ST 向けの実務記事です。
この記事で答えることを ADL-D の臨床運用に絞ります
このページで答えるのは、ADL-D scale を COPD の息切れによる ADL 制限の評価として、いつ使い、どう解釈し、どう記録・介入につなげるかです。COPD の診断、薬物療法、呼吸リハ全体のプログラム設計は主題から外し、必要な範囲だけ触れます。
ADL-D は、点数を出して終わる評価ではありません。高く出た項目を「生活のボトルネック」として扱い、ペーシング、休息の入れ方、呼吸法、家事動作の分割、環境調整へつなぐことで臨床価値が高まります。
| 区分 | 内容 | この記事での扱い |
|---|---|---|
| 答えること | ADL-D の使いどころ、解釈、記録、併用評価 | COPD の息切れ × ADL 評価に絞って解説 |
| 深掘りしないこと | COPD の診断、薬物療法、包括的な呼吸リハ処方 | 必要時のみ関連評価として触れる |
| 内部リンクで逃がすこと | 症状 × ADL 評価全体、6MWT の手順 | 親記事・兄弟記事へ案内する |
ADL-D scale で決まるのは「どの生活場面が息切れで細っているか」です
ADL-D scale は、COPD 患者の ADL 障害を「息切れ」という症状負荷から見る尺度です。開発研究では、安定期 COPD 患者を対象に質問項目を整理し、最終的に 15 項目で構成されるスケールとして提示されています。
得点範囲は 0〜60 点で、息切れが全くない場合は 60 点です。つまり、点数が低いほど息切れによる ADL 制限が強いと読みます。重要なのは合計点だけでなく、どの場面で点が落ちているかを確認し、介入の優先順位に変換することです。
| 項目 | 臨床での見方 | 記録のポイント |
|---|---|---|
| 対象 | COPD 患者の ADL 場面での息切れ | 安定期か、増悪・感染・入退院の影響があるかを併記 |
| 項目数 | 15 項目 | 設問文は原版・正式資料で確認し、本文では丸写ししない |
| 得点 | 0〜60 点。高いほど息切れによる制限が少ない | 合計点だけでなく、点が落ちた生活場面を残す |
| 使い道 | 生活指導、呼吸リハ、退院支援、訪問での優先順位づけ | ペーシング、休息、動作分割、環境調整に変換する |
ADL-D は「できるけど苦しい」ADL が残るときに使います
ADL-D scale は、基本動作やセルフケアが自立していても、生活の中で息切れが強く、活動量が落ちている COPD 患者に向いています。特に「ADL は自立だが家事・買い物・階段を避ける」「退院後に生活範囲が広がらない」といった場面で有用です。
一方で、急性増悪直後、発熱・感染、薬剤変更直後、認知機能低下により自己報告が安定しない場合は、単回の点数だけで判断しない方が安全です。実施する場合は、状態変動を記録し、安定期に再評価して比較します。
| 場面 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 汎用 ADL は高得点だが、本人は息切れを訴える | 使いやすい | 「できる/できない」ではなく、息切れによる負担を確認できる |
| 呼吸リハ前後で生活場面の変化を見たい | 使いやすい | ペーシングや家事動作の工夫が生活に反映されたか見やすい |
| 退院前後で、どの ADL を優先して指導するか迷う | 使いやすい | 点が落ちた場面を優先指導の候補にできる |
| 急性増悪、感染、強い体調変動がある | 慎重に使う | 点数が一時的な悪化を反映しやすく、比較解釈が難しい |
| 自己報告の信頼性が低い | 観察評価を併用 | 家族情報、動作観察、6MWT などで補う必要がある |
実施は「期間・場面・息切れ行動」の 3 点を固定します
ADL-D scale の運用で最も大切なのは、毎回同じ条件で答えてもらうことです。対象期間、思い浮かべる生活場面、息切れでどう行動が変わったかを固定すると、点数の変化を介入効果として読みやすくなります。
設問文そのものを本文に並べる必要はありません。臨床では、原版を確認したうえで、患者さんが普段の生活を具体的に思い出せるように補助し、点数と生活条件をセットで記録します。
ステップ 1:回答の対象期間を固定する
「過去 1 週間」など、回答の対象期間を最初にそろえます。感染、増悪、受診、薬剤変更、外出機会の減少などがあった場合は、点数と同じ行にメモします。
ステップ 2:本人の生活場面を具体化する
「家事」「移動」「買い物」だけでは、患者さんが思い浮かべる場面が毎回変わります。階段の段数、歩く距離、作業時間、荷物の重さ、休む場所などを確認し、同じ場面を想起できるようにします。
ステップ 3:息切れで変わった行動を拾う
ADL-D では、単に「できるか」だけでなく、息切れで避けた、途中で休んだ、速度を落とした、家族に任せた、回数を減らしたといった行動変化を拾います。この情報が、次の介入目標になります。
解釈は「合計点」より「点が落ちた ADL の条件」を優先します
ADL-D scale の合計点は全体像の把握に役立ちますが、臨床で重要なのは点が落ちた ADL の再現条件です。同じ点数でも、階段で息切れするのか、入浴後に疲労が残るのか、買い物の荷物で休憩が増えるのかで、指導内容は変わります。
記録では、点数、ボトルネック ADL、息切れが出る条件、次回までの行動目標をセットにします。これにより、再評価時に「前回と何が変わったか」をチームで共有しやすくなります。
| 見るポイント | 確認すること | 次の一手 |
|---|---|---|
| 合計点 | 前回より上がったか、下がったか | 全体の改善・悪化を把握する |
| 点が落ちた項目 | どの生活場面で息切れが強いか | 優先して指導する ADL を 1〜3 個に絞る |
| 再現条件 | 距離、段数、作業時間、休息、速度、荷物の有無 | 次回も同じ条件で比較する |
| 行動変化 | 避けた、休んだ、速度を落とした、任せた | ペーシング・動作分割・環境調整へつなぐ |
mMRC・CAT・6MWT・BI-d とは役割で使い分けます
呼吸器の評価は、1 つの尺度だけで完結させるより、役割を分けて組み合わせる方が実用的です。ADL-D は、COPD 患者の生活場面での息切れを深掘りする評価として使います。
入口の息切れ重症度は mMRC、症状負担や QOL は CAT や SGRQ、歩行耐久性は 6MWT、ADL 場面の息切れは ADL-D や BI-d と整理すると、評価結果を介入へつなげやすくなります。
| 評価 | 主に見るもの | 強み | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ADL-D | COPD の生活場面での息切れによる ADL 制限 | 「できるが苦しい」「避ける」を拾いやすい | 自己報告が前提。条件メモがないと比較しにくい |
| mMRC | 息切れ重症度のスクリーニング | 短時間で把握できる | 生活場面ごとの優先順位は分かりにくい |
| CAT | COPD の症状負担・健康状態 | 症状を広く把握できる | どの ADL が詰まるかは別評価が必要 |
| SGRQ | 疾患特異的 QOL | 研究・アウトカム評価に強い | 短時間の臨床運用では負担になることがある |
| 6MWT | 歩行耐久性・運動耐容能 | 客観的なパフォーマンス評価として使いやすい | 生活のどの場面がつらいかは質問票で補う |
| BI-d / J-BI-d | ADL 動作時の息切れ | Barthel Index の枠組みに近く、ADL と結びつけやすい | ADL-D とは対象・構成が異なるため、目的で選ぶ |
現場の詰まりどころは「点数だけで終わる」ことです
先に要点だけ確認したい方へ:よくある失敗 / 5 分ミニ運用 / 続けて読む:症状 × ADL 評価の全体設計
ADL-D は、点数だけをカルテに残すと「評価した」で止まりやすい尺度です。高く出た項目、低く出た項目、息切れが出る条件、次回までの行動目標まで書くことで、呼吸リハや生活指導につながります。
| よくある失敗 | なぜ起きる? | 対策 |
|---|---|---|
| 回答期間が毎回違う | 増悪、外出頻度、天候、受診前後で生活量が変わる | 対象期間を固定し、状態変動を 1 行で残す |
| 患者と評価者で場面のイメージが違う | 「家事」「移動」など抽象語だけで確認している | 段数、距離、作業時間、荷物、休息場所を具体化する |
| 点数だけ記録する | 評価結果を介入目標に変換していない | ボトルネック ADL と次回までの行動目標をセットで書く |
ここまで整えても、評価・記録・報告が毎回同じところで詰まる場合は、個人の努力だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。
5 分ミニ運用なら「入口・深掘り・宿題」で回せます
外来や訪問で時間が限られる場合は、ADL-D をすべて細かく説明しようとせず、入口評価、ADL-D の深掘り、次回までの宿題に分けると運用しやすくなります。
特に初回は、点数を完璧に解釈するよりも、生活のどこで息切れが出て、何を変えれば本人が動きやすくなるかを共有することが大切です。
| 手順 | 見ること | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
| 1. mMRC で入口確認 | 息切れの重症度をざっくり把握する | 1 分 |
| 2. ADL-D で場面を深掘り | 点が落ちた ADL を 2〜3 個に絞る | 3 分 |
| 3. 宿題を 1 つ決める | 速度を落とす、途中休憩を入れる、作業を分ける | 1 分 |
ADL-D 記録シート PDF
ADL-D の結果は、合計点だけでなく、点が落ちた生活場面、息切れが出た条件、次回までの行動目標をセットで残すと再評価に使いやすくなります。以下の PDF は、設問文を載せず、臨床記録とチーム共有に使いやすい形に整理した A4 1 枚の記録シートです。
PDF をページ内でプレビューする
記録は「点数+生活条件+次回目標」で残します
ADL-D の記録は、合計点だけではチームで使いにくくなります。点が落ちた項目を生活のボトルネックとして扱い、息切れが出る条件と次回までの行動目標を 1 行で残すと、再評価につながります。
カルテでは、点数の増減だけでなく「同じ条件で比較できたか」を必ず確認します。条件が変わっている場合は、点数の変化を改善・悪化と断定せず、生活量や体調変動の影響として整理します。
| 記録項目 | 書き方の例 | 意図 |
|---|---|---|
| 合計点 | ADL-D:前回 42 / 60 → 今回 47 / 60 | 全体の変化を把握する |
| ボトルネック ADL | 買い物後半、階段昇段、入浴後の更衣で息切れ残存 | 介入優先度を決める |
| 再現条件 | 屋外 300 m、荷物 2 kg、途中休憩なしで息切れ増強 | 次回も同じ条件で比較する |
| 次回目標 | 買い物は 150 m ごとに立位休憩を入れ、Borg と息切れ行動を確認 | 評価を生活指導へつなぐ |
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
ADL-D は COPD 以外の呼吸器疾患にも使えますか?
ADL-D scale は COPD 患者を対象に開発・検証された尺度です。そのため、基本は COPD の息切れによる ADL 制限を見る評価として使います。間質性肺疾患や心不全などで症状 × ADL を見たい場合は、対象疾患に合う評価や、mMRC、6MWT、BI-d などとの併用を検討します。
mMRC があれば ADL-D は不要ですか?
mMRC は息切れ重症度の入口評価として便利ですが、どの生活場面が詰まっているかまでは分かりにくいことがあります。ADL-D は、生活場面ごとの息切れによる制限を確認し、家事・移動・休息の入れ方などの具体的な指導につなげたいときに有用です。
点数が上がれば必ず改善と判断してよいですか?
点数上昇は改善の可能性を示しますが、生活条件が変わっていないかを確認する必要があります。外出機会が少なかった、家族が代行した、体調が一時的に良かったなどの条件変化があると、点数だけでは判断しにくくなります。
増悪があった週に評価してもよいですか?
評価自体は可能ですが、安定期との単純比較は避けます。実施する場合は、増悪、感染、薬剤変更、受診、活動量低下などを併記し、状態が落ち着いてから再評価してベースラインを作ると解釈しやすくなります。
チームで共有するなら何を書けばよいですか?
合計点だけでなく、点が落ちた ADL、息切れが出る条件、本人が避けている行動、次回までの行動目標を書きます。特に「距離・段数・作業時間・休息の有無」をそろえると、次回評価で比較しやすくなります。
次の一手
- 全体像を整理する:心不全・呼吸器の「症状 × ADL」評価設計
- 客観指標を併用する:6 分間歩行テスト( 6MWT )の評価と実施手順
参考文献
- Yoza Y, Ariyoshi K, Honda S, Taniguchi H, Senjyu H. Development of an activity of daily living scale for patients with COPD: the Activity of Daily Living Dyspnoea scale. Respirology. 2009;14(3):429-435. doi: 10.1111/j.1440-1843.2009.01479.x / PubMed: 19207122
- Mahler DA, Weinberg DH, Wells CK, Feinstein AR. The measurement of dyspnea: contents, interobserver agreement, and physiologic correlates of two new clinical indexes. Chest. 1984;85(6):751-758. PubMed: 6723454
- American Thoracic Society. Dyspnea: mechanisms, assessment, and management: a consensus statement. Am J Respir Crit Care Med. 1999;159(1):321-340. doi: 10.1164/ajrccm.159.1.ats898
- Rochester CL, Alison JA, Carlin B, Jenkins AR, Cox NS, Bauldoff G, et al. Pulmonary Rehabilitation for Adults with Chronic Respiratory Disease: An Official American Thoracic Society Clinical Practice Guideline. Am J Respir Crit Care Med. 2023;208(4):e7-e26. doi: 10.1164/rccm.202306-1066ST / PubMed: 37581410
- Yamaguchi T, Yamamoto A, Oki Y, Sakai H, Misu S, Iwata Y, et al. Reliability and Validity of the Japanese Version of the Barthel Index Dyspnea Among Patients with Respiratory Diseases. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2021;16:1863-1871. doi: 10.2147/COPD.S313583 / PubMed: 34188463
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


