点滴・CVC・PICC・動脈ラインがあっても離床できる?
点滴やCVC、PICC、動脈ラインが入っている患者さんを担当すると、「離床してよいのか」「どこを見ればよいのか」で迷いやすくなります。結論からいうと、ラインがあること自体は、離床・歩行の絶対的な禁忌ではありません。 ただし、ラインの種類だけで判断せず、なぜラインが必要なのか、何を投与・測定しているのか、どこに挿入されているのか、動いたときに何が変化しうるのかを確認することが重要です。
この記事では、末梢点滴・CVC・PICC・動脈ラインがある成人患者を対象に、PTが離床前・離床中に確認したいポイントを整理します。ラインごとの違い、体位変換や歩行で見たい変化、一旦中断して相談したい場面まで、臨床でそのまま使いやすい形でまとめました。
先に結論
- ラインが入っていることだけで、離床を一律に中止するわけではありません。
- 確認したいのは、目的・投与/測定内容・挿入部位・ライン状態・離床中の変化です。
- 抜去リスク、出血、流量低下、症状悪化などがあれば、一旦中断して共有します。

離床前は「なぜ入っているか」から確認する
離床前のライン確認は、刺入部だけを見て終わりではありません。まずは、そのラインがなぜ必要なのかを確認します。薬剤投与のためなのか、循環モニタリングのためなのか、安定した治療継続が必要なのかによって、離床時の注意点は変わります。
次に、何を投与・測定しているかを整理します。持続投与中の薬剤、輸液ポンプの有無、動脈圧のモニタリングなどを確認すると、離床中にどの変化を見落とせないかが分かりやすくなります。
そのうえで、どこに挿入されているか、ラインの固定や走行に問題がないか、患者さんの症状や全身状態に離床を見合わせる理由がないかを確認します。大切なのは、「ラインがあるから動かせない」のか、「そのラインを必要としている患者状態だから慎重に考えるべきなのか」を分けて考えることです。
| 確認項目 | 見る内容 | 判断につなげる視点 |
|---|---|---|
| なぜラインが必要か | 治療、薬剤投与、循環モニタリング、採血など | ラインを必要とする病態そのものが離床に影響しないか |
| 何を投与・測定しているか | 持続投与、ポンプ、動脈圧モニタリングなど | 離床中の変化が治療や測定へ影響しないか |
| どこに入っているか | 前腕、上腕、頸部、鎖骨下、大腿部など | 体位変換や関節運動で牽引・屈曲が起こらないか |
| ラインの状態 | 刺入部、固定、ドレッシング、走行、余裕 | 移乗や立位後も安全に保てるか |
| 患者状態 | 意識、症状、呼吸・循環、出血など | ライン以外に離床そのものを見合わせる理由がないか |
末梢点滴・CVC・PICC・動脈ラインでは確認ポイントが違う
ライン類は、すべてを同じ確認項目だけで扱うのではなく、役割に応じて追加で見るポイントを変えることが重要です。共通して確認したいのは、刺入部、固定、ラインの走行、牽引や屈曲の有無ですが、末梢点滴と動脈ラインでは「何を見たいか」が同じではありません。
| ライン | 主な役割 | PTが確認したいこと | 変化があれば注意したいこと |
|---|---|---|---|
| 末梢点滴 | 輸液・薬剤投与 | 刺入部、固定、ルート走行、滴下・ポンプの状態 | 疼痛、腫脹、漏れ、出血、アラーム、流量変化 |
| CVC | 中心静脈からの薬剤・輸液投与など | 挿入部位、固定、ドレッシング、ルートの長さ・牽引 | 固定の破綻、出血、抜去・位置ずれが疑われる変化、流量低下 |
| PICC | 上肢末梢から挿入する中心静脈カテーテル | 上腕の刺入部、固定、走行、上肢運動時の牽引 | 疼痛、腫脹、出血、ドレッシングの乱れ、外観上のずれ、流量異常 |
| 動脈ライン | 連続血圧測定、採血など | 刺入部、固定、圧ラインの走行、波形・表示値、トランスデューサとの位置関係 | 出血、抜去リスク、波形消失・変化、体位変換後の不自然な圧変化 |
末梢点滴:刺入部だけでなく「何が流れているか」を確認する
末梢点滴では、発赤、疼痛、腫脹、漏れ、固定状態などの局所所見に加えて、何を投与しているか、輸液ポンプを使用しているかを確認します。離床中にポンプの閉塞アラームや流量異常が出た場合は、機器の問題と決めつけず、ルートの屈曲、関節角度、刺入部、患者さんとの位置関係を見直します。
CVC:挿入部位と治療内容を分けて考える
CVCでは、頸部・鎖骨下・大腿部など挿入部位によって、牽引されやすい動作が異なります。固定やドレッシングだけでなく、端座位や立位でルートの長さが不足しないか、衣服やベッド柵へ引っ掛からないかを確認します。また、CVCを介した治療内容や患者さんの全身状態も、離床可否の判断に大きく関わります。
PICC:上肢運動で一律の角度制限を作らない
PICCでは、上腕の刺入部、固定、ドレッシング、ラインの走行を確認します。PICCが入っているという理由だけで上肢運動を一律に禁止するのではなく、運動によって牽引、疼痛、刺入部変化、流量異常が生じないかを見ながら進めることが重要です。全患者共通の可動域上限を決めるのではなく、カテーテルの位置、固定方法、治療内容、院内ルールを踏まえて判断します。
動脈ライン:「滴下」ではなく「圧測定系」として見る
動脈ラインでは、末梢点滴のように滴下を確認するというより、連続血圧を測定するシステムとして見る必要があります。刺入部・固定・圧ラインの牽引に加えて、離床後の圧波形や表示値、トランスデューサと患者さんとの高さの関係を確認します。
端座位や立位後に血圧が大きく変化した場合は、患者さんの症状や他のバイタルサインとあわせて、患者さん自身の循環変化なのか、測定条件の変化なのかを切り分ける視点が大切です。
体位変換・立位・歩行では「動いた後の変化」を見る
端座位→立位→歩行という順番を全員に固定する必要はありません。離床レベルは患者さんの状態に合わせて決め、その動作によってラインの走行・張力・固定・機器との位置関係がどう変わるかを確認します。
| タイミング | 確認したいこと |
|---|---|
| 動作前 | ラインの本数・挿入部位・走行、必要な長さ、ポンプやスタンドの位置を確認する |
| 体位変換時 | シーツ・衣服・ベッド柵などへの引っ掛かり、ラインの牽引・屈曲がないかを見る |
| 新しい姿勢になった後 | 刺入部、固定、ルート、ポンプアラーム、流量・圧波形などに変化がないか確認する |
| 移乗・歩行時 | 患者さんと点滴スタンド・機器が離れすぎないか、車輪や手すりにルートが巻き込まれないか確認する |
| 終了後 | 開始前と比較して刺入部、固定、ドレッシング、ルート・機器に変化がないか確認する |
複数のラインや機器を伴う場合は、誰が患者さんを介助し、誰がラインや機器を確認するかを開始前に共有しておくと安全管理につながります。
大腿部にCVC・動脈ラインがあるときは離床できない?
大腿部にカテーテルがあることだけで、端座位・立位・歩行を一律に禁止するわけではありません。 ただし、患者さんの状態が安定していること、カテーテルの種類・固定・治療内容を確認することが前提です。
そのため、「鼠径部だから離床不可」と決めるのではなく、カテーテルの種類、挿入目的、固定状態、許容される股関節運動、院内手順を確認して判断します。一方で、IABPやECMOなど管理方法が大きく異なるデバイスは、同じ考え方をそのまま当てはめないよう注意が必要です。
関節付近に点滴があるときのROMはどう考える?
関節付近にラインがある場合も、「この角度までなら安全」という全患者共通のROM上限が決まっているわけではありません。重要なのは、ラインの走行と刺入部を確認したうえで、運動中に牽引・屈曲・疼痛・漏れ・アラームなどが出ないかを見ることです。
つまり、「ラインがあるから関節を動かさない」でも、「固定してあれば通常どおり動かしてよい」でもなく、その患者さんのライン位置と反応を確認しながら調整していきます。
どの変化で一旦中断して相談するか
ライン関連の変化を認めたときは、原因を確認しないまま負荷を上げないことが重要です。抜去リスク、刺入部出血、流量低下、症状悪化などがあれば、まずは安全を確保して一旦中断し、担当看護師や医師などへ共有します。
| 変化 | 確認したいこと | 対応 |
|---|---|---|
| 抜去・抜去リスク | 固定の破綻、ラインの強い牽引、明らかな位置変化 | 動作を中断し、安全を確保して速やかに共有する |
| 刺入部出血 | 新規出血、増加、ドレッシングへの広がり | 離床を中断し、担当者へ報告する |
| 疼痛・腫脹・漏れ | 刺入部やその周囲の変化 | 投与を自己判断で変更せず、ライン評価を依頼する |
| 流量低下・ポンプアラーム | 屈曲、関節角度、ルート走行、患者とポンプの位置 | 動作を止めて状況を確認し、解消しなければ共有する |
| 動脈圧波形・表示値の異常 | 患者症状、体位、トランスデューサ位置、圧ラインの屈曲 | 負荷を上げず、測定条件を含めて担当者と確認する |
| 症状・循環呼吸状態の悪化 | 意識、胸痛、呼吸苦、めまい、バイタル変化など | 一般的な離床中止基準に沿って中断・再評価・報告する |
異常時の共有と記録は「ライン名+変化+患者状態」を残す
記録では、「点滴あり」「ライン問題なし」だけでは次回の担当者に状況が伝わりません。少なくとも、ラインの種類・挿入部位、投与または測定内容、離床による変化、対応が分かるようにします。
記録例
右上腕PICC留置中。開始前、刺入部・固定・ドレッシングに明らかな変化なし。端座位〜立位でライン牽引およびポンプアラームなし。終了後も刺入部・固定状態に変化なし。
異常を認めた場合は、「何のラインで」「どの動作時に」「何が変化し」「患者状態はどうだったか」を短く伝えると共有しやすくなります。
共有例
立位移行時に右前腕の末梢点滴で閉塞アラームが出現したため中断しました。臥位へ戻すとアラームは消失しました。刺入部に出血はありません。再開可否を確認してください。
よくある質問
CVCやPICCが入っていても歩行できますか?
CVC・PICCが入っていることだけで歩行が一律に禁止されるわけではありません。患者状態、ラインを必要としている理由、投与内容、挿入部位、固定、ルートの長さなどを確認し、施設の基準に沿って判断します。
大腿部にCVCや動脈ラインがあれば端座位・立位は禁止ですか?
大腿部カテーテルだけを理由に絶対的に禁止するわけではありません。ただし、カテーテルの種類、固定状態、患者状態、許容される関節運動を確認する必要があります。IABPなど別の管理が必要なデバイスへは同じ考え方をそのまま適用できません。
動脈ラインの血圧が座位・立位で変わったらどう考えますか?
姿勢変化による実際の循環動態変化と、トランスデューサと患者さんとの位置関係による測定条件の変化の両方を考えます。患者さんの症状、他のバイタル、圧波形なども確認し、測定条件に疑問があれば担当者と確認します。
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参考文献
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- 日本離床学会. Q&A Vol.50 点滴ライン挿入部付近の関節可動域訓練実施に際してのポイント.
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- Perme C, Nalty T, Winkelman C, Nawa RK, Masud F. Safety and efficacy of mobility interventions in patients with femoral catheters in the ICU: a prospective observational study. Cardiopulm Phys Ther J. 2013;24(2):12-17. PMID:23801900.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

