ICU の鎮静・せん妄評価の基本| RASS → CAM-ICU / ICDSC の順番で迷わない
ICU では「鎮静が深いのか/せん妄なのか」が混ざると、離床・運動負荷・コミュニケーション介入の安全域が一気に曖昧になります。本記事は RASS で覚醒度(鎮静の深さ)を先に固定し、そのうえで せん妄スクリーニング( CAM-ICU / ICDSC )へ進むという“順番”を、現場で再現できる形に整理します。
ポイントは「同じ患者でも時間で状態が動く」ことです。評価 → 記録 → 再評価が回るよう、声かけ・刺激・記録項目を最小セット化して、チームでブレを減らします。
まずは流れを 3 ステップで固定する(鎮静→せん妄→次アクション)
運用はシンプルに 3 ステップで固定します。① RASS で覚醒度(鎮静の深さ)を判定、② 評価が成立する覚醒レベルなら せん妄スクリーニング( CAM-ICU / ICDSC )へ、③ 結果に応じて「環境・睡眠・離床・鎮静調整」の優先順位を整えます。
「意識レベルの総論( JCS / GCS など )」の全体像は、別記事で整理しています。意識レベル評価のまとめも必要に応じて参照してください。
RASS は“鎮静の深さ”を揃えるための共通言語
RASS は、鎮静が深いほどマイナス側、興奮が強いほどプラス側へ振れる 覚醒度のスケールです。ここが揃うと、同じ患者でも「今は評価ができる時間帯か」「運動負荷を上げて良いか」をチームで同じ前提で話せます。
注意点は、深鎮静(反応が乏しい状態)では、せん妄スクリーニング自体が成立しにくいことです。RASS を先に取るのは、せん妄評価へ進む“条件確認”の意味もあります。
せん妄評価は CAM-ICU / ICDSC を“使い分け”る
せん妄は「注意の障害」「急性発症・変動」「思考のまとまりの低下」などが絡むため、印象だけだと見落としが起きやすい領域です。ICU では 短時間で反復できるツールを選び、同じ手順で毎回回すのがコツです。
どちらか 1 つに統一しても良いのですが、施設の運用(記録様式・回診の流れ)に合わせて決めるとブレが減ります。詳しい手順と判定は、各ツールの記事を参照してください。
| ツール | 主目的 | 前提(成立条件) | 強み | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|---|
| RASS | 覚醒度(鎮静の深さ) | 声かけ・刺激への反応を観察 | 短時間で反復でき、チームで共有しやすい | 刺激の入れ方・声かけが揃わないとブレる |
| CAM-ICU | せん妄の診断支援(スクリーニング) | 一定の覚醒(深鎮静だと評価困難) | 短時間で実施しやすく、人工呼吸中でも運用しやすい | 評価できる“タイミング”を外すと陰性になりやすい |
| ICDSC | せん妄のスクリーニング(観察の積み上げ) | シフト全体の観察が前提になりやすい | 変動を拾いやすく、日内変動の把握に向く | 観察・記録が分散するとスコアが安定しにくい |
現場の詰まりどころ:ブレるのは「刺激」「時間」「記録」
いちばん多い詰まりどころは、評価そのものより やり方の揺れです。声かけの強さ、刺激の順番、実施する時間帯が変わると、同じ患者でもスコアが動いて見えます。まずは 声かけ → 触刺激 → それでも反応が乏しければ中止の“順番”を決めると安定します。
もう一つは「忙しい時間にまとめてやる」問題です。せん妄は変動しやすいので、評価しやすい時間帯(ケア直後・鎮静調整直後など)をチームで共有しておくと、見落としが減ります。
| よくある失敗 | なぜ起きる? | 対策(現場でやること) | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 評価者でスコアがズレる | 声かけ・刺激の強さが揃っていない | 声かけ文言と刺激の順番を決める(ミニ SOP 化) | 「いつ/どの刺激まで」行ったかを一言添える |
| 深鎮静のまません妄評価してしまう | 覚醒度の前提確認が抜ける | 先に RASS を取り、成立条件を満たす時だけ次へ | 「評価不能(覚醒不十分)」を明確に残す |
| 陰性でも違和感が残る | せん妄は変動し、評価タイミングに依存する | 時間帯を変えて再評価(鎮静調整後など) | 「再評価予定」を残し、次シフトにつなぐ |
よくある質問(FAQ)
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Q1. まず RASS を先に取るのはなぜですか?
A. せん妄スクリーニングは「一定の覚醒」が前提になりやすく、深鎮静のままだと評価が成立しにくいからです。先に RASS で覚醒度を揃えると、評価の可否と次アクションが一気に整理できます。
Q2. せん妄評価は CAM-ICU と ICDSC のどちらが良いですか?
A. 施設の運用(記録様式・回診の流れ・実施者)で “回しやすい方” を優先するのが現実的です。まずは 1 つに統一し、評価タイミングと記録の残し方を固定するとブレが減ります。
Q3. 評価のタイミングはいつが良いですか?
A. ケア直後や鎮静調整直後など、「反応が取りやすい時間」をチームで共有すると安定します。陰性でも違和感がある場合は、時間帯を変えて再評価して変動を拾うのがコツです。
Q4. PT はこの評価をどう臨床に使えばいいですか?
A. 離床・運動負荷・課題設定の安全域を決める“前提情報”として使います。覚醒が十分なら課題を進め、深鎮静なら無理に反応を取らず、呼吸・循環・環境調整の優先度を上げます。
関連ページ(小記事)
- RASS( Richmond Agitation-Sedation Scale )のやり方と判定
- CAM-ICU の評価方法| 4 特徴と判定フロー(人工呼吸中でも運用)
- ICDSC の評価方法| 8 観察領域の見方とスコア解釈(ICU せん妄)
参考文献
- Devlin JW, Skrobik Y, Gélinas C, et al. Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU. Crit Care Med. 2018;46(9):e825-e873. doi:10.1097/CCM.0000000000003299
- Ely EW, Truman B, Shintani A, et al. Monitoring sedation status over time in ICU patients: reliability and validity of the Richmond Agitation-Sedation Scale (RASS). JAMA. 2003;289(22):2983-2991. doi:10.1001/jama.289.22.2983
- Sessler CN, Gosnell MS, Grap MJ, et al. The Richmond Agitation-Sedation Scale: validity and reliability in adult intensive care unit patients. Am J Respir Crit Care Med. 2002;166(10):1338-1344. doi:10.1164/rccm.2107138
- Ely EW, Margolin R, Francis J, et al. Evaluation of delirium in critically ill patients: validation of the Confusion Assessment Method for the Intensive Care Unit (CAM-ICU). Crit Care Med. 2001;29(7):1370-1379. doi:10.1097/00003246-200107000-00012
- Bergeron N, Dubois MJ, Dumont M, Dial S, Skrobik Y. Intensive Care Delirium Screening Checklist: evaluation of a new screening tool. Intensive Care Med. 2001;27(5):859-864. doi:10.1007/s001340100909
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下
おわりに
ICU の評価は「安全の確保 → RASS で覚醒度を固定 → せん妄スクリーニング → 記録 → 再評価」の順番が決まると、チーム連携が一気にラクになります。臨床の型づくりを進めたい方は、面談準備チェックと職場評価シートも使える マイナビコメディカルのダウンロードも合わせて確認してみてください。


