ICDSC の評価方法| 8 観察領域の見方とスコア解釈(ICU せん妄)

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ICDSC の評価方法| 8 観察領域の見方とスコア解釈( ICU せん妄 )

ICDSC( Intensive Care Delirium Screening Checklist )は、ICU でのせん妄スクリーニングを「短時間のテスト」だけに頼らず、シフト全体の観察として積み上げやすい評価ツールです。せん妄は日内で変動しやすく、タイミングによっては陰性に見えることがあるため、ICDSC のように観察を構造化して記録に残す設計はチーム連携に向きます。

本記事は、ICDSC を現場で回すために必要な前提(まず覚醒度を確認)→ 8 観察領域の見方 → スコアの解釈 → 記録のコツまでを、PT/OT/ST でも迷わない形でまとめます。ワークシートや公式資料は配布元で更新されるため、必要に応じて公式リソースも参照してください。

評価の「順番」を固定すると、記録と連携が一気に整います。 評価 → 介入 → 再評価の型を確認する( PT キャリアガイド )

ICDSC とは:短時間テストではなく「観察をスコア化」する

ICDSC は、せん妄に関連する所見を 8 つの観察領域として整理し、一定期間(例:シフト)で「該当するか」を積み上げてスコア化します。短時間の注意課題が難しい状況(疲労、タイミング、環境要因)でも、観察と記録を統一することで、変動の拾い上げを助けるのが強みです。

一方で、観察が散らばるとスコアが不安定になります。評価者間のズレを減らすために「いつ」「何を」「どの記録から拾うか」を最小セット化しておくのがコツです。

評価の前提:まず覚醒度(鎮静の深さ)を確認する

せん妄スクリーニングは、そもそも観察が成立する覚醒度が必要です。深鎮静で反応が乏しい時間帯は、せん妄の有無を無理に決めず「評価が取りにくい状態だった」として扱い、覚醒が得られるタイミングで再評価します。

運用全体の「順番(まず鎮静 → 次にせん妄)」は親記事で整理しています。関連:ICU の鎮静・せん妄評価の基本(親記事)

ICDSC のやり方: 8 観察領域を“同じソース”から拾う

ICDSC は、 8 観察領域(せん妄に関連する所見)を「期間内にあったか」で積み上げます。コツは、毎回バラバラに拾うのではなく、同じ情報源から拾うことです(例:看護記録、夜間の行動、ライン抜去の有無、見当識の変動、コミュニケーションの一貫性など)。

ICDSC の 8 観察領域:見方の目安(成人・実務用の言い換え)
観察領域(要点) 拾い方の例 つまずきポイント 安定させる工夫
意識の“いつもと違う”変化 清明よりぼんやり/過覚醒などのズレ 鎮静や疼痛の影響と混ざる 鎮静の強さ・時間帯を併記して解釈
注意の保ちにくさ 指示に乗り続けられない、途中で抜ける 聞こえ・見えの問題で偽陽性 補聴器/眼鏡、提示方法を調整
見当識・理解の揺れ 場所・状況の理解が揺れる、説明が通りにくい 失語・認知症・せん妄の区別が難しい 「急性/変動」の有無を必ずセットで確認
幻覚・妄想などの体験 見えないものが見える、誤認が強い 夜間せん妄で取りこぼし 夜間の記録・家族情報を拾う
精神運動の亢進 落ち着かない、抜去行動、過活動 痛み・呼吸苦による不穏との混同 疼痛・呼吸状態を確認してから判断
精神運動の低下 反応が鈍い、動きが少ない、無動に近い 「鎮静のせい」に見えて見落とす 鎮静の変化とセットで評価する
睡眠‐覚醒リズムの乱れ 夜間不眠、昼夜逆転、断片的な睡眠 ICU 環境そのものの影響も大きい 環境調整の介入と並行して追う
症状の変動 良い時間帯と悪い時間帯がある 短時間評価だけだと拾えない 期間(シフト)でまとめて拾う

スコアの付け方と解釈:まず「拾い漏れ」を減らす

ICDSC は、 8 観察領域のうち「該当するもの」を積み上げて評価します。実務では、点数よりもまず拾う項目が毎回同じになることが重要です。評価者が変わっても同じ結論に近づけるよう、情報源(どの記録を見るか)とタイミング(いつまとめるか)を決めておきます。

スコアの境界や施設の運用ルール(陽性の扱い、再評価頻度)は、配布元の資料や施設 SOP に合わせてください。ここが曖昧だと、同じスコアでも「次のアクション」がバラつきます。

記録のコツ:点数より「根拠の短文」を添える

ICDSC は「なぜ該当としたか」を 1 行添えると、次シフトで再評価が回りやすくなります。おすすめは、(1)時間帯(2)鎮静の強さ(3)根拠の短文(4)次の確認点の最小セットです。

ICDSC 記録の最小セット(例)
残す要素 ねらい
時間帯 夜間に不穏/日中は落ち着く 変動の把握
鎮静の強さ 鎮静調整後に反応が改善 鎮静の影響と分ける
根拠の短文 注意が続かず指示が途中で崩れる 再現性を上げる
次の確認点 翌シフトで同様の変動があるか再確認 再評価を回す

現場の詰まりどころ:ブレるのは「観察の分散」と「前提の崩れ」

ICDSC が回らない原因は、せん妄そのものより運用の揺れです。特に多いのは、観察が複数の記録に分散していて拾い漏れること。次に多いのは、聴覚・視覚・失語などで注意課題が成立していないのに、注意障害と誤って扱ってしまうことです。

対策は「情報源を固定」「前提を整える」「まとめる時刻を決める」の 3 つです。これだけで評価の再現性が上がり、連携もラクになります。

よくあるミスと対策(ICDSC 運用)
よくあるミス なぜ起きる? 対策 記録で残す一言
スコアが評価者でブレる 拾う情報源が毎回違う 見る記録とまとめる時刻を固定 情報源:○○記録を参照
夜間の症状を拾えない 日中だけで判断してしまう 夜間の記録・家族情報を必ず拾う 夜間の変動あり/なし
不穏=せん妄と決めつける 疼痛・呼吸苦・環境の影響が大きい 前提(痛み・呼吸・補助具)を確認 前提調整後に再評価
低活動型を見落とす 「鎮静のせい」に見える 鎮静の変化とセットで追う 鎮静調整と反応の関係

PT の使いどころ:離床・負荷設定の「前提情報」を揃える

PT の臨床では、ICDSC は“診断”よりも介入の安全域を整える前提情報として有用です。該当が増える(または変動が強い)場合は、課題を単純化し、刺激量を調整し、短時間で区切って反復するなど、注意の負荷を下げた設計が合いやすくなります。

逆に、該当が少なくても「夜間だけ不穏」「日中は落ち着く」などの変動があれば、実施する時間帯を調整し、転倒・ライン事故のリスク管理を優先します。

よくある質問(FAQ)

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Q1. ICDSC はいつ付けるのが良いですか?

A. シフトなど一定期間の観察をまとめる運用が合います。夜間に出やすい症状もあるため、日中だけで判断せず、期間の情報を統合して評価するのがコツです。

Q2. 短時間のテストが難しい患者でも使えますか?

A. 使いやすい場面があります。ICDSC は観察を構造化する設計なので、短時間の注意課題が成立しにくい状況でも「変動」「睡眠‐覚醒」「行動」などの情報を拾いやすいのが利点です。

Q3. 深鎮静の時間帯はどう扱えばいいですか?

A. 反応が取りにくい時間帯は、無理にせん妄の有無を決めず、覚醒が得られるタイミングで再評価する前提にします。鎮静の強さと時間帯を併記しておくと、解釈が安定します。

Q4. せん妄が疑わしいとき、PT は何から調整しますか?

A. まず安全(転倒・ライン事故)を確保し、刺激量・課題の複雑さ・時間を減らして「短く、同じ型で」介入します。あわせて睡眠・環境・疼痛・呼吸苦など、症状を悪化させやすい要因をチームで共有します。

参考文献

  1. Devlin JW, Skrobik Y, Gélinas C, et al. Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU. Crit Care Med. 2018;46(9):e825-e873. doi:10.1097/CCM.0000000000003299
  2. Bergeron N, Dubois MJ, Dumont M, Dial S, Skrobik Y. Intensive Care Delirium Screening Checklist: evaluation of a new screening tool. Intensive Care Med. 2001;27(5):859-864. doi:10.1007/s001340100909

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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おわりに

ICDSC は「前提の確認 → 観察の整理 → スコア化 → 根拠を 1 行で残す → 再評価」というリズムが作れると、せん妄の変動をチームで追いやすくなります。臨床の準備を整えつつ、面談準備チェックと職場評価シートもまとめて持っておきたい方は マイナビコメディカルのダウンロードも確認してみてください。

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