結論:回復期リハ病棟は「記録の置き場」と「会議体」を固定すると監査に強くなります
回復期リハ病棟で監査や届出対応が苦しくなる原因は、頑張り不足ではなく、証跡(記録・会議・情報提供)が分散して「追えない」ことです。結論として、元データの置き場と会議体(いつ、何を決めるか)を先に固定し、病棟の運用を “同じ順番” で回すと、スタッフが入れ替わっても説明が崩れません。
本記事は、施設基準の暗記ではなく、現場で手が動く形として最小セット( 5 点 )と 5 分フローに落として整理します。実績指数や退院支援などの個別論点は兄弟記事へ委ね、ここでは「監査で見られる型」を作ります。
運用を整えるなら、まず「転職の全体フロー」を固定しておくと迷いが減ります。
回復期の運用は、教育体制・記録文化・人員配置で回り方が変わります。環境の選び方も含めて、全体像を 1 ページで整理しています。
監査で見られやすいのは「実施したか」より「一貫性があるか」
監査で困るのは、何かが “足りない” というより、説明が一貫しないことです。例えば、評価日が揃っていない、会議で決めたはずの方針が記録に残っていない、退院時の情報提供が断片的で追えない、といったズレが積み重なると、現場の努力が伝わりません。
逆に、病棟が強いところは、① 元データの置き場が 1 つ、② 会議体の議題が固定、③ 退院前のチェックが定型です。ここを揃えると、個別論点(実績指数など)が動いても対応が楽になります。
まず決める 5 点:担当・締め日・会議体・記録先・証跡
最初に決めるのは制度の暗記ではなく、運用の 5 点固定です。ここが決まると、監査対応は “探し物” から “説明” に変わります。
| 固定する項目 | おすすめの決め方 | 残す証跡 | よくある詰まり | 対策 |
|---|---|---|---|---|
| 担当(誰が) | 病棟の窓口を 1 名固定+代替 1 名 | 役割分担表( 1 行で可) | 不在で止まる | 代替も同時に教育 |
| 締め日(いつ) | 週次の締め(例:毎週水曜) | 欠損チェックの記録 | 月末に集中 | 週次で小さく回す |
| 会議体(どこで) | 短いカンファを週 2 回で固定 | 議事メモ( 3 行) | 話題が散る | 決めることを 1 つに |
| 記録先(どこに) | 元データの置き場を 1 か所に統一 | 評価日・条件・要点 | 二重記録で破綻 | 元データ 1 つ→共有 |
| 証跡(何を残す) | 退院前 72 時間を定型チェック | 変更点/注意点/フォロー | 情報提供が断片 | 定型文とチェック欄 |
5 分フロー:週次で「欠損→決定→記録」を回す
回復期は “忙しいからできない” ではなく、まとめてやろうとして詰まることが多いです。おすすめは、週次で 5 分だけ、同じ順番で回すことです。
| タイミング | やること | 見るポイント | 残す証跡(最小) |
|---|---|---|---|
| 締め日前 | 評価日・欠損・未記載の確認 | 評価条件のズレ、空欄 | 欠損一覧(メモで可) |
| 締め日 | 短いカンファで “決めること 1 つ” を決める | 詰まり 1 点 | 議事メモ( 3 行) |
| 締め日後 | 元データの置き場へ反映し、共有 | 評価日・条件・要点 | 元データ更新履歴(日時) |
| 退院前 | 退院前 72 時間の定型チェック | 変更点と注意点 | 情報提供の定型欄 |
カンファの型:議題テンプレ( 3 行)で “決める” を残す
カンファで大事なのは、共有よりも意思決定が残っていることです。議題を 3 行に固定すると、短くても回ります。
| 行 | 書く内容 | 例 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 1 行目 | 現状( ADL とリスクの要点) | 移乗:見守り、歩行: T 字、転倒既往あり | 同じ地図で共有 |
| 2 行目 | 詰まり(いま困っている 1 点) | 病棟 ADL で介助量が上がる | 論点を固定 |
| 3 行目 | 決める(次の 7 日間の 1 つ) | 移乗手順を統一、トイレ動線を固定 | 証跡として残す |
記録の型:元データは 1 か所、評価日と条件を最優先に残す
監査で説明できる記録は、長文より比較できる要素が揃っています。具体的には、評価日と評価条件(体位・介助量・補助具)です。ここが揃うと、再評価や方針変更の根拠が伝わります。
施設基準の全体像は、施設基準ハブにまとめています(関連)。
現場の詰まりどころ:よくある失敗( OK / NG 早見)
ここは教育・引き継ぎにそのまま使えるように、失敗パターンを早見表にしています。
| 論点 | NG(詰まる) | OK(回る) | 直し方(最小) |
|---|---|---|---|
| 会議 | 共有だけで決まらない | 決めることを 1 つに絞る | 3 行テンプレ固定 |
| 記録 | 置き場が分散し探せない | 元データ 1 か所に統一 | 置き場を明文化 |
| 再評価 | 評価日・条件がバラバラ | 同条件で比較できる | 条件を必須項目に |
| 退院前 | 情報提供が断片で抜ける | 退院前 72 時間で定型チェック | 定型欄を作る |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q 1:まず最初に整えるべきポイントは何ですか?
最初は制度の細部より、元データの置き場と会議体の固定です。ここが決まると、欠損確認、意思決定、退院前の情報提供までが同じ流れで回ります。
Q 2:記録が長文化して時間が足りません。
長文より、評価日・評価条件・要点( 3 行)を優先します。比較できる形に揃えると、説明は短くても伝わります。
Q 3:カンファが長くなって疲弊します。
議題を 3 行に固定し、決めることを 1 つに絞ります。共有と意思決定を分けずに、短く回すのがコツです。
Q 4:退院前の情報提供が漏れます。
退院前は “増やす” より固定が有効です。退院前 72 時間の定型チェック(変更点/注意点/フォロー)を会議体で最終確認すると漏れが減ります。
次の一手
まずは、5 点固定(担当・締め日・会議体・記録先・証跡)を決めて、週次 5 分フローを 2 週間だけ回してみてください。監査対応は “探し物” ではなく “説明” に変わります。
運用を整える → 共有の型を作る → 環境の詰まりも点検(無料チェックシート)
教育体制・記録文化・人員の詰まりは、個人の努力だけでは解消しにくいです。環境面も含めて見直すと、病棟の “回り” が変わります。
参考文献
- 厚生労働省. 令和 8 年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案). https://www.mhlw.go.jp/public/bosyuu/iken/dl/p20260114-01-01.pdf
- 厚生労働省. 中央社会保険医療協議会(回復期リハ病棟の要件見直し等に関する記載を含む資料). https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001631272.pdf
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


