【起立性低血圧の予防法】血圧低下のメカニズムと弾性包帯の使用方法

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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「起立性低血圧」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

 

早速ですが、起立性低血圧の症状って本当に厄介ですよね。よくある症状といえばその通りですが、いざ血圧が低下すると実際ヒヤヒヤして不安になると思います。特に臨床経験が少ない若手の頃は尚更じゃないかなと思います。また、起立性低血圧の存在により対象者の活動や参加の制限に繋がってしまい、モヤモヤした覚えがある方もいらっしゃると思います。

 

そのような中、起立性低血圧を認める患者様でも、なんとか離床活動を促進させてあげたくて弾性包帯や弾性ストッキングの使用を検討したことがありませんか?また、使用してはみたけど目に見える効果がでなくて、使用しなくなってしまったケースもあるかと思います。

  

こちらの記事ではそういった悩みや不安を解決していきたいと思います!

 

結論からお伝えしますと「弾性包帯を巻くことは起立性低血圧の予防となります!」

 

弾性包帯を巻く部位によっても期待できる効果が変わってくるため、下記にて起立性低血圧が発生する要因や弾性包帯を巻く部位について解説していきたいと思います!

リハビリくん
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理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

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起立性低血圧とは

起立性低血圧とは、臥位から立位へ移行する際に、血圧が急激に低下し、脳灌流の一過性低下を引き起こす状態を指します。具体的には、起立後 3 分以内に収縮期血圧が 20 mmHg 以上、または拡張期血圧が 10 mmHg 以上低下した場合に診断されます。

主な症状は、立ちくらみ、めまい、視野の暗転、場合によっては失神に至ることもあります。また、頭痛、動悸、悪心、倦怠感、集中力低下などの非特異的症状も併発することがあります。

原因としては、自律神経系の機能不全、脱水、薬剤性(降圧薬・利尿薬など)、加齢や神経変性疾患などが挙げられます。

特にリハビリテーション場面では、立位練習や移乗動作時の安全確保、活動量の調整に直結する重要な症状であり、介入前後のモニタリングが不可欠です。

原因

起立性低血圧の原因は多岐にわたりますが、主に自律神経系の調節障害が中心です。加齢に伴う血管反応性の低下や、交感神経系の反応遅延により、血圧が立位で維持されにくくなります。

疾患としては、糖尿病性神経障害、パーキンソン病、レビー小体型認知症などが関連します。

また、脱水、貧血、栄養不良、急性疾患後の体力低下もリスク因子となります。薬剤性も重要で、特に降圧薬、利尿薬、抗うつ薬、抗精神病薬などが起立性低血圧を誘発しやすく、薬歴の確認は不可欠です。

これらの要因が複合的に関与することも多く、単一の原因に絞られない点が臨床での注意点です。

評価方法

起立性低血圧の評価は、血圧と脈拍の変化を正確に測定することが基本です。標準的には臥位で 5 分安静にした後、起立または端座位へ移行し、1 分後および 3 分後の血圧を測定します。

収縮期血圧が 20 mmHg 以上、または拡張期血圧が 10 mmHg 以上低下すれば起立性低血圧と診断されます。

加えて、脈拍の変化(頻脈の有無)も評価し、神経原性か循環血液量減少性かを鑑別します。

自動血圧計では正確性に欠ける場合があるため、必要に応じてマニュアル測定や連続モニタリングも検討します。また、立位保持困難な症例ではティルトテーブル検査を用いることもあります。

起立性低血圧に対する弾性包帯の効果

起立性低血圧の予防・対策として、弾性包帯や腹帯の使用は有効な手段の一つとされています。弾性包帯は下肢に適度な外圧を加えることで、静脈の拡張を抑制し、血液の末梢貯留を軽減します。これにより静脈還流が促進され、心臓への血液の戻りが保たれることで、起立時の心拍出量の急激な低下を防ぐ効果が期待されます。

実際に、「失神の診断・治療ガイドライン(2012 年改訂版)」では、腹帯や弾性包帯の使用はクラスⅡa(有用である可能性が高い)として推奨されています。また、健常者を対象とした研究でも、腹部圧迫が起立時の循環動態維持に有効であることが示唆されています。

さらに、下腿から大腿にかけて異なる長さの弾性ストッキングを用いた研究でも、いずれの形状においても起立性低血圧の予防効果が報告されています。使用時は圧迫部位や圧力の強さに注意し、医師や専門職の指導のもとで適切に選択・装着することが重要です。

効果と作用機序

弾性包帯や弾性ストッキングは、主に下肢や腹部への外圧を加えることで、起立時の末梢静脈への血液貯留(プーリング)を抑制します。

これにより静脈還流量が確保され、1 回拍出量(stroke volume)の急激な低下を防ぐことができます。結果として、起立時の心拍出量が維持され、起立性低血圧の予防につながります。

この作用機序は「失神の診断・治療ガイドライン(2012 年改訂版)」においても根拠とされ、腹部・下肢の圧迫による循環補助はクラスⅡa の推奨を受けています。

適応と対象者

以下のような対象に対して弾性包帯やストッキングは有効です。

  • 起立性低血圧が確認された患者
  • パーキンソン病・多系統萎縮症・糖尿病性自律神経障害など
  • 自律神経失調を伴う疾患患者
  • 早期離床期の術後・高齢入院患者
  • 長期臥床後のリハビリテーション初期段階
  • 薬物性低血圧(降圧薬、抗うつ薬、抗精神病薬など)に注意が必要な患者

圧迫圧の目安

弾性ストッキング・包帯の使用においては圧迫圧(mmHg)が重要です。

圧迫圧分類圧迫圧(mmHg)一般的な適応
軽度15〜20 mmHg軽度浮腫、疲労感予防
中等度20〜30 mmHg起立性低血圧、静脈瘤予防
高度30〜40 mmHg静脈不全、深部静脈血栓症後

起立性低血圧の場合は 20 ~ 30 mmHg程度の中等度圧迫が適応とされることが一般的です。

弾性包帯を巻く部位とその意義

起立性低血圧への対応として弾性包帯を使用する際、巻く部位の選択と巻き方の工夫が、効果の発現に大きく関わります。

一般的には、足関節から下腿・大腿にかけての下肢全体を巻くことで、重力による末梢静脈への血液貯留を防ぎ、静脈還流を促進します。

ただし、足関節や膝関節などの可動部は圧迫を避けることが原則です。関節に過剰な圧がかかると、運動制限や皮膚トラブル、血流障害を引き起こすリスクがあります。

また、巻圧の均等化と末梢の観察性確保も安全な使用のために重要です。文献では、圧迫部位の違いによる循環効果の検討が行われており、①下腿、②大腿、③腹部 ~ 下肢全体、④腹部のみ、という 4 つの部位における比較で、③および④(腹部を含む圧迫)が起立後の収縮期血圧低下をより抑制する可能性が示唆されています。

これは、腹部が体液の静脈プールとして重要な役割を持ち、起立時の体液移動の 70 % 以上がこの部位に集中するという生理学的背景に基づいています。

現時点では弾性包帯の効果に関するエビデンスは限定的であり、「万能」ではありませんが、薬物療法単独で十分な効果が得られない場合には、物理的圧迫による補助療法として有用であると考えられます。使用に際しては、医師や理学療法士・看護師と連携し、対象者ごとのリスクと効果を評価しながら導入することが望まれます。

弾性包帯の巻き方

弾性包帯を装着する部位については、上述したように指定されてはいませんが、弾性包帯の巻き方について、下肢末梢部から下腿部を例に出して説明します。

  1. 指の付け根から巻き始めます
  2. 足の甲を横巻きで少しずつ重なるようにずらして、かかとを包むように巻きます。
  3. 踵部は緩みやすいため、足関節をやや強めに固定しますが、締め過ぎないように注意します
  4. 踵部を固定した後は、中枢に向かっていきますが、圧迫力が均等になるように包帯を半分ずつ重ねながら巻いていきます
  5. 適切な圧迫力は 15 – 20 mmHg、巻いた後で、指が 2 – 3 本入る程度の圧迫力が適切になります
  6. 膝関節から 5 cm 程度下まで巻いて完了になります

弾性包帯の注意点、禁忌

以下の状態に当てはまる対象者に使用する場合は、担当医師に弾性包帯を巻いても良いか確認してから使用する必要があります。

  1. 急性期の深部静脈血栓症を認める患者
  2. 動脈血行障害、うっ血性心不全を認める患者
  3. 下肢に炎症性疾患、化膿性疾患、急性創傷を認める患者
  4. 急性循環不全等、末梢循環が不安定な患者
  5. 糖尿病患者
  6. 下肢表在静脈の血栓性静脈炎の患者
  7. 皮膚の感染症、開放創、皮膚炎、潰瘍がある患者
  8. 患肢に知覚・神経障害がある患者
  9. ストッキング素材に対する過敏症がある患者

まとめ

最後までお読み頂きありがとうございます。

起立性低血圧は、臥位から立位への移行時に血圧が急低下し、立ちくらみや失神を招く状態です。原因は自律神経障害、加齢、脱水、薬剤性など多岐にわたり、リハビリ場面では安全確保に直結します。

評価は起立前後の血圧・脈拍変化を測定し診断します。対策の一つとして弾性包帯やストッキングによる下肢・腹部圧迫が有効で、静脈還流を促進し血圧低下を防ぎます。使用時は圧迫圧(20 ~ 30 mmHg)、巻く部位、関節圧迫の回避、皮膚トラブル予防に留意し、医療者の指導下で実施します。

参考文献

  1. 橋本拓哉,髙橋智子,松山友子.下腿型弾性ストッキング着用の有無による離床時の血圧及び脈拍の比較検証.東京医療保健大学.第1号 ,2020年,
  2. 鈴木裕二, 守川恵助, 乾亮介, 芳野広和, 田平一行.下肢弾性ストッキング強度が起立時の血行動態に及ぼす影響. (社)日本理学療法士協会近畿ブロック.第51回近畿理学療法学術大会,
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