- 検査値でみる栄養リスク評価(結論):GNRI・CONUT・PNI は「入口の層別化」に使い、確定は別軸で詰めます
- 位置づけ:検査値指標は「スクリーニング→アセスメント」につなぐ補助線です
- 3 指標の早見(まずは「何が必要で、何が得意か」を揃える)
- GNRI:Alb と「体重比」を足して、高齢者のリスクをシンプルに拾う
- CONUT:Alb・TLC・TC の 3 点で「蛋白・脂質・免疫」の入口を一括評価
- PNI( Onodera ):Alb と TLC だけで作れる“超シンプル”な層別指標
- 現場の詰まりどころ:検査値が「栄養以外」で動く典型を先に除外します
- 次アクション:陽性なら「摂取・体重・筋量・機能」を取りに行く
- 関連記事(このシリーズ)
- よくある質問(FAQ)
- 参考文献
検査値でみる栄養リスク評価(結論):GNRI・CONUT・PNI は「入口の層別化」に使い、確定は別軸で詰めます
Alb・総リンパ球数( TLC )・総コレステロール( TC )などの採血データから作る指標( GNRI / CONUT / PNI )は、低栄養リスクを「短時間に層別化」するための入口として有用です。一方で、炎症・体液量・薬剤の影響を強く受けるため、これだけで「低栄養確定」と短絡しないのがコツです。
本記事では 3 指標を必要データ/得意場面/落とし穴/陽性後の次アクションで横並び比較し、運用の迷いを減らします。まずは栄養スクリーニング全体像(入口の選び方)を押さえたい方は 栄養スクリーニングの使い分け(総論) を先に確認すると理解が早いです。
位置づけ:検査値指標は「スクリーニング→アセスメント」につなぐ補助線です
検査値ベース指標は、①拾い上げ(スクリーニング)→ ②深掘り(アセスメント)→ ③介入のうち、「①から②へ進める判断材料」として働きます。とくに回復期・慢性期では、体重変化や摂取状況の情報が揃うまで時間がかかるため、入院直後や初回評価での層別化に役立ちます。
診断(低栄養の確定)に寄せるなら、GLIM のように表現型(体重減少・低 BMI ・筋量低下)と病因(摂取低下/吸収障害・炎症/疾患負荷)を組み合わせて評価します(「スクリーニングの陽性」=「確定」ではありません)。Cederholm T, et al. 2019( GLIM )
3 指標の早見(まずは「何が必要で、何が得意か」を揃える)
現場で迷いやすいのは「どれを使えばいいか」よりも、「陽性をどう解釈して、次に何を取りに行くか」です。まずは 3 指標を“同じ物差し”で比較し、運用の一貫性を作ります。
下の表は、必要データ → 得意な場面 → ズレやすい条件 → 次の一手の順で整理しています(スマホは横スクロールでご覧ください)。
| 指標 | 必要データ | 得意な使いどころ | ズレやすい条件(例) | 陽性後の次アクション |
|---|---|---|---|---|
| GNRI | Alb + 体重(理想体重) | 高齢者/体重変化を含めてリスクを見たい | 浮腫・脱水/急性炎症/体重の測定条件が不統一 | 摂取量・体重推移の確認 → 筋量/身体機能(握力等) → GLIM で整理 |
| CONUT | Alb + TLC + TC | 入院採血だけで“免疫栄養”の入口を作りたい | 感染・ステロイド等で TLC が変動/スタチン等で TC が低下 | 炎症・薬剤・疾患背景を確認 → 体重/摂取量/筋量の追加評価 |
| PNI( Onodera ) | Alb + TLC | データが少なくても簡便に層別したい(周術期など) | 急性期の炎症/免疫抑制/採血タイミングの差 | “なぜ Alb/ TLC が動いたか”を先に分解 → 臨床像と整合させて解釈 |
GNRI:Alb と「体重比」を足して、高齢者のリスクをシンプルに拾う
GNRI( Geriatric Nutritional Risk Index )は、Alb と体重(理想体重比)から作る指標で、高齢者の栄養関連リスクの層別化に使われます。原著では、入院高齢者の予後リスクを段階化できる簡便な指標として提案されています。
基本式は GNRI = 14.89 × Alb( g/dL )+ 41.7 ×(現体重/理想体重)で、体重が理想体重を超える場合は比を 1 として扱う運用が一般的です。Bouillanne O, et al. Am J Clin Nutr. 2005;82(4):777-83. doi:10.1093/ajcn/82.4.777
CONUT:Alb・TLC・TC の 3 点で「蛋白・脂質・免疫」の入口を一括評価
CONUT( Controlling Nutritional Status )は、Alb・総コレステロール( TC )・総リンパ球数( TLC )を点数化して合計( 0–12 点 )するスクリーニング指標です。日常採血から自動算出しやすい点が強みで、入院患者の栄養リスクを日々モニターする目的で提案されました。
ただし、TLC は感染・薬剤で動きやすく、TC も治療(例:スタチン)や炎症で低下し得ます。「点数が高い=栄養だけが原因」ではないため、背景(炎症・薬剤・疾患負荷)を確認してから次の評価へ進めるのが安全です。de Ulíbarri JI, et al. Nutr Hosp. 2005;20(1):38-45. PubMed PMID:15762418
PNI( Onodera ):Alb と TLC だけで作れる“超シンプル”な層別指標
PNI( Prognostic Nutritional Index )は、周術期領域を中心に用いられてきた指標で、Alb と TLC の 2 つから算出します。必要データが少ないため、情報が限られる場面でも回しやすいのがメリットです。
代表的な式( Onodera の PNI )は PNI = 10 × Alb( g/dL )+ 0.005 × TLC( /μL )です。炎症や免疫抑制などで TLC がぶれやすい点は前提にし、臨床像(摂取・体重変化・活動性)とセットで解釈します。Onodera T, et al. Nihon Geka Gakkai Zasshi. 1984;85(9):1001-5. PubMed PMID:6438478
現場の詰まりどころ:検査値が「栄養以外」で動く典型を先に除外します
検査値指標で詰まりやすいのは、「指数が悪い」よりも「何が原因で悪く見えているのか」が曖昧なまま介入が進むことです。とくに Alb は炎症や体液量で変動し、TLC は感染や薬剤の影響を受けやすいため、栄養に結び付ける前に“前提条件”を確認します。
チェックの順序は ①採血タイミング(発症直後/術後直後か)→ ②炎症・感染の有無 → ③薬剤(ステロイド、脂質低下薬など)→ ④体液量(浮腫/脱水)。この 4 点を押さえるだけで、指標の読み間違いは大きく減ります。
次アクション:陽性なら「摂取・体重・筋量・機能」を取りに行く
検査値指標が陽性(リスク高め)なら、次に必要なのは「確定の材料」と「介入の設計図」です。具体的には、摂取量(何がどれだけ入っているか)/体重推移(どれくらい減っているか)/筋量(減っているか)/身体機能(握力や歩行など)をそろえ、介入目標を決めます。
診断や重症度の整理は、表現型+病因の組み合わせで考えると迷いにくくなります( GLIM の枠組み)。リハでは「安全な離床・運動負荷」と「摂取タイミング」を合わせて、再評価(同条件)までセットで運用すると改善点が見えやすいです。Cederholm T, et al. JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2019. doi:10.1002/jpen.1440
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よくある質問(FAQ)
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検査値だけで「低栄養」と判断していいですか?
おすすめしません。検査値指標は入口の層別化に強い一方、炎症・体液量・薬剤の影響を受けます。陽性なら「摂取・体重変化・筋量・機能」を追加し、表現型+病因のセットで評価してから判断すると安全です( GLIM の考え方)。
どれを選べばいいか迷います( GNRI / CONUT / PNI )
高齢者で体重情報が取れるなら GNRI、採血 3 点( Alb・TLC・TC )が揃い免疫栄養の入口を作りたいなら CONUT、データが少なくても簡便に回したいなら PNI から始めると整理しやすいです。いずれも「陽性後の次アクション」を同じ手順で回すのがポイントです。
スタチン内服中で TC が低い場合、CONUT は使えますか?
使えますが、TC 低下が治療の影響で起きている可能性を前提に解釈します。CONUT が高く出たときは、炎症・薬剤・疾患背景を確認し、摂取量・体重推移・筋量/機能を追加して整合を取りましょう。
参考文献
- de Ulíbarri JI, González-Madroño A, de Villar NGP, et al. CONUT: a tool for controlling nutritional status. First validation in a hospital population. Nutr Hosp. 2005;20(1):38-45. PubMed
- Bouillanne O, Morineau G, Dupont C, et al. Geriatric Nutritional Risk Index: a new index for evaluating at-risk elderly medical patients. Am J Clin Nutr. 2005;82(4):777-783. doi:10.1093/ajcn/82.4.777. PubMed
- Onodera T, Goseki N, Kosaki G. Prognostic nutritional index in gastrointestinal surgery of malnourished cancer patients. Nihon Geka Gakkai Zasshi. 1984;85(9):1001-1005. PubMed
- Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition: A consensus report from the global clinical nutrition community. JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2019;43(1):32-40. doi:10.1002/jpen.1440. PubMed Central

