Trendelenburg歩行の原因と評価|骨盤下制をどう見るか

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Trendelenburg(骨盤下制)歩行は原因仮説を 3 つに絞って確認する

Trendelenburg(トレンデレンブルグ)歩行は、立脚期に反対側の骨盤が下がる「骨盤下制」が目立つ歩行所見です。この記事では、見た目だけで「中殿筋低下」と決めつけず、股外転筋の出力・疼痛回避・支持戦略の 3 つに原因仮説を整理し、最小限の確認テストへつなげる流れを解説します。

対象は、歩行観察で骨盤下制や体幹側屈を見つけたものの、次に何を評価すべきか迷いやすい PT・OT です。この記事を読むと、Trendelenburg 歩行を「所見→仮説→検証→記録」まで 1 本の流れで整理できます。

同ジャンル回遊:歩行観察は、まず親記事の型に戻すと整理しやすくなります。

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Trendelenburg 歩行とは:立脚期の骨盤下制をみる所見

Trendelenburg 歩行は、立脚側の股関節外転機構が骨盤を支えきれず、反対側の骨盤が下がる歩行所見です。特に立脚中期から単脚支持の場面で目立ち、支持側への体幹側屈を伴うことがあります。

ただし、骨盤下制があるからといって、原因が中殿筋だけに限定されるわけではありません。股関節痛、腰痛、恐怖感、支持性低下、靴・装具条件でも似た見え方になります。まずは「骨盤が下がる」「体幹が倒れる」「痛みで逃げる」を分けて観察します。

最初の 30 秒で見るポイント

最初に決めるのは、細かい原因名ではなく「どの相で、何が、どの条件で出るか」です。条件を固定して観察すると、次に確認すべき評価が絞れます。

  • 出現相:立脚中期〜単脚支持で反対側骨盤下制が出るか
  • 骨盤と体幹:骨盤下制だけか、支持側への体幹側屈を伴うか
  • 条件:靴・装具・杖・手すり・歩行速度で変化するか

原因仮説は「出力・疼痛・支持戦略」の 3 つで絞る

Trendelenburg 歩行の評価では、原因を一気に決めるのではなく、まず 3 つの仮説に分けます。股外転筋の出力不足、疼痛回避、支持戦略のどれが濃いかを見てから、追加評価を 2〜3 個に絞ります。

骨盤下制の原因を3つに整理するTrendelenburg歩行の実用図版

この図版では、「骨盤下制を見つけたあと、何を疑い、何を変えて確認するか」を最短で整理しています。まずは原因候補を増やしすぎないことが重要です。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

Trendelenburg 歩行の原因仮説と確認ポイント
観察所見 疑う仮説 確認すること 記録の一言
立脚中期で反対側骨盤下制 股外転筋の出力不足、タイミング不良 片脚支持、股外転の等尺発揮、左右差 「立脚中期で反対側骨盤下制」
骨盤下制+支持側体幹側屈 疼痛回避、恐怖、支持戦略 股関節外側痛、鼠径部痛、腰痛、手すりでの変化 「骨盤下制に支持側体幹側屈を伴う」
日内変動・速度で変化 疲労、注意、バランス、感覚入力 速度変更、デュアルタスク、支持物の有無 「速度低下で骨盤下制が軽減」
靴・装具で左右差が変わる 脚長差、靴条件、装具条件 靴条件の統一、立位アライメント、装具適合 「靴条件変更で左右差が変化」

検証は「1 つだけ変える」で当たりを取る

その場検証では、複数の条件を同時に変えないことが重要です。手すりを使う、速度を落とす、姿勢キューを 1 つ出すなど、変える条件を 1 つに固定すると、原因仮説の当たりが見えやすくなります。

  • 支持変更:手すりや杖で骨盤下制が減る場合は、恐怖・疼痛・支持戦略の影響を疑う
  • 姿勢キュー:「骨盤を水平に」「頭を高く」など 1 つだけ伝えて変化を見る
  • 速度変更:ゆっくり歩行で改善するか、逆に不安定になるかを確認する

次に行う確認テストは 2〜3 個でよい

Trendelenburg 歩行を見つけた後は、評価を増やしすぎず、仮説に合うものだけを選びます。基本は、片脚支持、股外転発揮、疼痛確認の 3 つから始めます。

Trendelenburg 歩行で優先したい確認テスト
優先度 確認項目 見たいこと 臨床での使い方
片脚支持 骨盤を水平に保てるか、体幹側屈が出るか 歩行中の所見を静的条件で再確認する
股外転の等尺発揮 左右差、疼痛、発揮のしにくさ 出力不足と疼痛回避を分ける
疼痛確認 股関節外側痛、鼠径部痛、腰痛の有無 体幹側屈が痛み回避かを確認する
支持物での歩行 手すり・杖で骨盤下制が減るか 支持戦略・恐怖感の影響をみる
靴・装具条件 左右差が条件で変化するか 介入前に条件差を除外する

記録は「条件+相+骨盤+体幹+次評価」で残す

記録では、Trendelenburg という名称だけで終わらせず、観察条件と所見を分けて書きます。骨盤下制と体幹側屈を分けるだけで、申し送りの精度が上がります。

  • O:自由歩行。右立脚中期で左骨盤下制を認め、右体幹側屈を伴う。
  • A:右股外転筋出力低下、疼痛回避、支持戦略の影響を候補とする。
  • P:手すり歩行で変化確認。片脚支持、股外転等尺発揮、疼痛部位を追加評価する。

さらに歩行観察全体の記録を整える場合は、動作分析のやり方(型と記録テンプレ)で、観察・解釈・計画の分け方を確認できます。

現場の詰まりどころ:中殿筋だけで説明しようとして止まる

Trendelenburg 歩行で詰まりやすいのは、骨盤下制を見た瞬間に「中殿筋低下」と書いて終わってしまう場面です。実際には、疼痛回避や支持戦略が混ざるため、記録には仮説を 2〜3 個残して、次に確認する評価まで書く方が安全です。

よくある失敗へ / → 回避の手順へ / 関連:Trendelenburg テストの手順

ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方や手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。

PT キャリアガイドを見る

よくある失敗と修正ポイント

Trendelenburg 歩行の観察で起きやすい失敗と修正
よくある失敗 問題点 修正ポイント 記録例
中殿筋低下と断定する 疼痛回避や恐怖を見落とす 出力・疼痛・支持戦略の 3 仮説で書く 「股外転出力低下、疼痛回避、支持戦略を候補」
骨盤下制と体幹側屈を混ぜる 主所見と代償が曖昧になる 骨盤と体幹を別々に記録する 「左骨盤下制+右体幹側屈」
検証で条件を変えすぎる 何で改善したか分からない 手すり、速度、キューのうち 1 つだけ変える 「手すり使用で骨盤下制軽減」

回避の手順:5 ステップで評価を閉じる

  1. 靴・装具・補助具・速度を記録する
  2. 立脚中期〜単脚支持で骨盤下制が出るか確認する
  3. 骨盤下制と支持側体幹側屈を分けて書く
  4. 原因仮説を出力・疼痛・支持戦略の 3 つに整理する
  5. 片脚支持、股外転発揮、疼痛確認のうち 2〜3 個に絞って追加評価する

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. Trendelenburg 歩行は中殿筋低下で決まりですか?

決まりではありません。股外転筋の出力低下は重要な候補ですが、股関節痛や腰痛による疼痛回避、恐怖感、支持戦略でも似た所見になります。まずは骨盤下制と体幹側屈を分けて、原因仮説を 2〜3 個に絞ります。

Q2. 最初に確認するテストは何ですか?

片脚支持、股外転の等尺発揮、疼痛確認の 3 つを優先します。歩行中の所見を静的条件で再確認し、出力不足と疼痛回避を分けるためです。

Q3. 手すりや杖で改善する場合は何を疑いますか?

恐怖感、疼痛回避、支持戦略の影響を疑います。手すりや杖で骨盤下制や体幹側屈が軽くなる場合、筋力だけでなく支持条件の影響を記録に残します。

Q4. Trendelenburg テストも必要ですか?

歩行観察だけで判断に迷う場合は有用です。片脚立位で条件を固定し、骨盤下制、体幹側屈、疼痛の有無を確認します。詳しい手順は Trendelenburg テストの手順 を参照してください。

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参考文献

  1. Gandbhir VN, Lam JC, Lui F, Rayi A. Trendelenburg Gait. StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2026. PubMed
  2. McCarney L, Andrews A, Henry P, Fazalbhoy A, Selva Raj I, Lythgo N, Kendall JC. Determining Trendelenburg test validity and reliability using 3-dimensional motion analysis and muscle dynamometry. Chiropr Man Therap. 2020;28(1):53. PubMed
  3. Kendall KD, Schmidt C, Ferber R. Steps toward the validation of the Trendelenburg test: the effect of experimentally reduced hip abductor muscle function on frontal plane mechanics. Clin J Sport Med. 2013;23(1):45-51. PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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