マン試験とロンベルグ試験の違い|結論は「難易度」と「観察目的」で使い分けます
マン試験とロンベルグ試験は、どちらも開眼・閉眼の差をみる静的バランス評価ですが、姿勢条件と難易度が異なります。先に結論を言うと、入口としてはロンベルグ試験、左右方向の不安定性まで深掘るならマン試験が実務で使いやすい順番です。
本記事は「何が違うか」で終わらせず、現場で迷わないように比較表 → 選択フロー → 記録の型まで整理しました。まずは静的バランス評価の全体像を確認したい方は 静的バランス評価(総論) を先に読むと全体がつながります。
まず 1 分で違いを把握|マンは「狭い支持基底面」、ロンベルグは「基礎評価」
ロンベルグ試験は閉脚立位での開眼・閉眼差を確認するため、初回評価の入口として使いやすい検査です。マン試験はタンデム立位で支持基底面をさらに狭めるため、同じ開眼・閉眼比較でも難易度が上がり、左右方向の破綻を捉えやすくなります。
つまり、ロンベルグで全体を把握し、必要時にマンで感度を上げるという流れが再現性と安全性の両立に向いています。
比較表|姿勢条件・観察ポイント・安全管理の違い
| 比較項目 | マン試験(Mann) | ロンベルグ試験(Romberg) | 実務での使い分けポイント |
|---|---|---|---|
| 姿勢条件 | タンデム立位(踵と足尖を接する) | 閉脚立位 | 最初は閉脚で安全確認、次にタンデムで負荷を上げる |
| 支持基底面 | 非常に狭い | 比較的広い | 不安定性の検出感度はマンが高い |
| 難易度 | 高い | 中等度 | 転倒リスクが高い対象はロンベルグ優先 |
| 主な観察点 | 左右方向の動揺、転倒側、左右入替での再現性 | 開眼・閉眼差の有無、全体的な姿勢保持 | 「方向」を深掘るならマン |
| 安全管理 | 後方〜側方で即介助位置が必須 | 見守りは必要だが介助介入頻度は低め | マンは実施可否判断を先に行う |
| 記録の型 | 方向・左右差・踏み出し・介助量を詳細化 | 開閉眼差と保持可否を簡潔に記録 | 再評価比較には条件固定の明記が必須 |
使い分け手順|迷ったら「ロンベルグ → マン」の順で判断
使い分けで迷うときは、次の順で進めると安全性と情報量のバランスが取りやすくなります。
| ステップ | 判断 | 実施 | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| 1 | 立位保持の安全が確保できるか | ロンベルグ(開眼→閉眼) | 保持困難なら条件緩和して再評価 |
| 2 | 開閉眼差はあるが方向情報が不足するか | マン試験(開眼 30 秒→閉眼 30 秒) | 左右入替で転倒側の固定性を確認 |
| 3 | 再評価で比較可能な記録になっているか | 条件固定(足位・視線・時間)で再測定 | 介入前後で同条件比較 |
現場の詰まりどころ|誤判定を減らす 3 つの確認
比較記事では「違いの理解」だけでなく、運用の詰まりを先に潰すことが大切です。まずは よくある失敗 と 記録テンプレ を揃え、手順のブレを減らしてください。マン試験の詳細手技は マン試験の実装記事 にまとめています。
- 比較時に姿勢条件(閉脚/タンデム)を書き分ける
- 開眼で安定してから閉眼へ移行する
- 左右入替の有無を必ず記録する
よくある失敗と回避策
| 失敗パターン | 何が問題か | 回避策 | 記録に残す項目 |
|---|---|---|---|
| 姿勢条件の混同 | 比較の前提が崩れ、所見が解釈不能になる | 検査名と足位をセットで記録 | 閉脚/タンデム |
| 閉眼導入が早い | 開始直後の崩れで安全性が低下する | 開眼安定を確認してから閉眼 | 閉眼開始タイミング |
| 左右入替を省略 | 方向の固定性が評価できない | マン試験は左右入替を原則実施 | 前後足の順序 |
| 介助量の未記録 | 再評価で改善/悪化が比較できない | 接触介助・踏み出しを段階化して記録 | 介助量・踏み出し |
記録テンプレ|比較記事で共有すべき最小セット
| 記録項目 | 記載例 | 比較時のポイント |
|---|---|---|
| 検査名と条件 | ロンベルグ:閉脚/マン:タンデム | 前提条件の統一 |
| 開眼・閉眼 | 開眼 30 秒可、閉眼 8 秒で踏み出し | 閉眼での破綻時点 |
| 動揺方向 | 左側方へ偏位 | 方向の一貫性 |
| 左右差 | マン:右前で不安定、左前で保持可 | 入替後の固定性 |
| 安全関連 | 接触介助 1 回、転倒なし | 介助量の増減 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
どちらを先に実施すべきですか?
迷った場合はロンベルグ試験から始めます。閉脚立位で安全性と開閉眼差を確認し、方向性の深掘りが必要なときにマン試験へ進むと実務で安定します。
マン試験だけ実施すれば十分ですか?
マン試験は情報量が多い一方で難易度が高いため、入口評価としてロンベルグを併用したほうが安全です。比較運用により結果の解釈も明確になります。
高齢者や不安定な対象ではどう使い分けますか?
まずロンベルグで可否を判断し、危険性が高い場合はマン試験を無理に実施しません。段階的に条件を調整し、再評価可能な記録を優先します。
比較するときに最も重要な記録項目は何ですか?
「姿勢条件」「閉眼での破綻時点」「動揺方向」「左右入替の有無」の 4 点です。これらが揃うと、介入前後の比較精度が大きく上がります。
次の一手
- 運用を整える:静的バランス評価の全体像を確認する(全体像)
- 共有の型を作る:マン試験のやり方・判定・記録を実装する(すぐ実装)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

