令和 8 年改定の注目論点:疾患別リハが「訓練内容」で評価へ?
令和 8 年度 診療報酬改定に向けた「これまでの議論の整理(案)」では、リハ領域の論点として「疾患別リハビリテーション料を、訓練内容に応じた評価へ見直す」方向性が示されました。点数や要件が確定した話ではありませんが、“何をしたか(訓練の中身)”が、いま以上に評価の軸に入る可能性があるため、現場の記録・運用に影響が出やすいテーマです。
本記事では、(案)の段階で読み取れる範囲を守りつつ、何が変わり得るのかと、今のうちに整えておくと強い「記録の型」を整理します。結論から言うと、対応の中心は「新しい加算を追う」より先に、訓練の目的 → 内容 → 量(負荷)→ 結果を一貫して残す仕組みづくりです。
制度が動くときに差がつくのは「臨床の型(評価 → 記録 → 解釈)」です。学び直しとキャリア設計を一緒に整えるなら、こちらにまとめています。
PT キャリアガイドを見る(臨床の型を作る)「訓練内容に応じた評価」とは何が起こり得る?
資料には、質の高いリハを推進する観点から、疾患別リハビリテーション料を「訓練内容に応じた評価」に見直す旨が示されています。ここで重要なのは、疾患名や算定区分が同じでも、“実際に提供している中身”の違いを区別して評価する設計が検討され得る点です。現場感で言えば、「とりあえず歩行練習」「筋トレ」のような抽象記録が、これまで以上に弱点になります。
ただし、現時点では制度の詳細は未確定です。したがって本稿では、制度設計として現実的に想定されるパターンを「可能性」として整理し、どの方向に転んでも損をしにくい準備(記録の標準化)に落とします。
| パターン | 制度の動き(例) | 現場で先に整えること |
|---|---|---|
| A:内容カテゴリの区別 | 同じ疾患別リハでも、生活機能回復に直結する訓練、運動療法、セルフマネジメント支援などを区別して評価 | 目的と手段をセットで記録(「何のために、その訓練か」) |
| B:量・質の可視化 | 訓練の濃度(負荷量、反復、難易度、介助量、環境調整)を前提に評価設計が進む | 負荷(回数、時間、強度、介助量)と環境条件(補装具、歩行補助具、路面など)を残す |
| C:適正化の強化 | 名ばかり訓練や、疾患別リハとして妥当性が説明しにくい運用の抑制(監査耐性の論点が増える) | ICF で「機能 → 活動 → 参加」をつなぐ説明(目標の整合性)をテンプレ化 |
なぜ(4)が“現場インパクト大”なのか
(4)は「算定の入口(対象・上限)」ではなく、提供プロセス(訓練の中身)に踏み込む可能性を示す論点です。ここが動くと、リハ室・病棟・外来での「運用のクセ」がそのまま算定のリスクや評価の差になり得ます。つまり、制度対応は点数表を待つだけでなく、記録の標準化が先に必要になります。
逆に言えば、ここで勝てる施設はシンプルです。訓練が「何を」「どのくらい」「どう良くなったか」で語れること。記録が揃っている施設ほど、制度変更のたびに迷いが減ります。
現場の詰まりどころ/よくある失敗(ここを直すと強い)
制度が「中身」を見に来る方向に進むほど、弱点になりやすいのは抽象的な訓練名と目的不明なメニューです。まずは「何を直せばいいか」を、OK / NG で見える化しておくと、チームで揃えやすくなります。
なお、記録テンプレを整えるときは、面談準備のチェック(院内の運用整理にも効きます)も合わせて使うと早いです:マイナビコメディカル(面談・準備チェックを開く)
| 観点 | NG(弱い記録) | OK(強い記録) | 最小の修正ポイント |
|---|---|---|---|
| 目的 | 歩行練習、筋トレ | 屋内独歩に向けた「方向転換時の支持性」改善 | 1 行で「何の活動を、どの場面で」まで書く |
| 内容 | バランス練習 | 段差 10 cm 昇降:手すりあり → 片手支持へ段階づけ | 課題(タスク)を具体化(条件と段階) |
| 量(負荷) | 実施 | 反復 30 回、RPE 13、介助量 2 人 → 1 人へ | 回数/時間/強度/介助量のうち 2 つを必ず残す |
| 結果 | 改善傾向 | TUG 12.8 秒 → 11.6 秒、ふらつき減少(観察所見) | 数値 1 つ+所見 1 つの「 2 点セット 」で残す |
今から整える「記録の型」:目的 → 内容 → 量 → 結果
制度がどの方向に進んでも、損をしにくい準備は共通です。ポイントは、訓練の中身を“再現できる粒度”で残すこと。ここでは、チームで統一しやすい最小限のテンプレを提示します(紙でも電子でも運用できます)。
評価指標の選び方や、評価の全体設計(どれを共通指標にするか)で迷う場合は、評価ハブに全体像をまとめています。病棟・外来で「共通言語」を作ると、記録と介入が同じ方向に揃います。
| 欄 | 書く内容 | 例(そのまま真似して OK) |
|---|---|---|
| 目的(活動) | いつ/どこで/何ができるように | 病棟内:トイレ移動を 1 人見守りで |
| 訓練内容(タスク) | 課題、条件、段階づけ | 方向転換( 90 度 )+停止:歩行器 → T 字杖へ段階 |
| 量(負荷) | 回数/時間/強度/介助量のうち 2 つ以上 | 10 m × 8 往復、RPE 13、介助:軽介助 → 触れる程度 |
| 環境 | 補装具、路面、手すり、混雑など | AFO あり、手すり片手、床材:P タイル |
| 結果 | 数値 1 つ+所見 1 つ(または安全性) | ふらつき減、停止が安定。TUG 12.8 秒 → 11.6 秒 |
| 次の一手 | 次回の条件変更(難易度の上げ下げ) | 方向転換を 180 度へ、混雑時間帯を 1 セットだけ追加 |
Ⅲ-4(4)以外も「セットで」押さえる( 1 分要約 )
Ⅲ-4 には(4)以外にも、退院時指導、医療機関外での上限単位、運動器の上限緩和対象、書類の簡素化、リンパ浮腫の評価見直しが並んでいます。現場では(4)だけ単独で見るより、“入口(対象・上限)”と“中身(訓練内容)”と“書類(計画)”が同時に動く可能性として把握しておくと安全です。
特に外来や医療機関外の運用、運動器リハの上限緩和の考え方は、施設の算定方針に直結します。詳細が出た段階で「自施設の対象患者」「提供場所」「標準メニュー」を 1 枚で整理できると、議論が早いです。
| 番号 | 論点(要約) | 現場への影響が出やすい所 |
|---|---|---|
| (1) | 退院時リハビリテーション指導料:対象患者の要件見直し | 誰に指導するか、指導内容の標準化 |
| (2) | 医療機関外の疾患別リハ:上限単位数の見直し | 提供場所と単位運用、連携の設計 |
| (3) | 運動器リハ等:上限緩和の対象患者見直し | 対象の線引き、記録・同意・説明 |
| (4) | 疾患別リハ:訓練内容に応じた評価へ | 訓練の粒度、量(負荷)、結果の記録 |
| (5) | リハ総合計画評価料:評価等の見直し(書類簡素化の観点) | 書類の作り方、運用負担、監査耐性 |
| (6) | リンパ浮腫複合的治療料:実態に即した評価へ | 対象、実施体制、記録の整合 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. これは「もう決まった」話ですか?
A. いいえ。ここで示されているのは「これまでの議論の整理(案)」で、点数や要件が確定した内容ではありません。ただし、今後の個別改定項目(いわゆる短冊)議論の土台になるため、方向性としての重みはあります。準備としては、訓練の中身を説明できる記録の整備が先に効きます。
Q2. 「訓練内容」とは何を指すのですか?
A. 現段階では定義は明示されていません。一般には、訓練の目的(活動)、課題の具体性(タスク)、負荷量(回数・時間・強度・介助量)、環境条件、結果(数値・所見)など、提供したリハの“再現性”に関わる要素が含まれ得ます。まずはテンプレで残せる形に整えるのが安全です。
Q3. 外来や医療機関外のリハにも影響しますか?
A. Ⅲ-4(2)に「医療機関外における疾患別リハの上限単位数の見直し」が並んでいるため、提供場所の議論とセットで動く可能性があります。詳細が出たら「どこで」「誰に」「どのメニューを標準にするか」を施設で 1 枚に整理すると迷いが減ります。
Q4. いま現場で一番やるべきことは何ですか?
A. 訓練名を具体化し、目的 → 内容 → 量 → 結果を 1 セットで残すことです。「抽象名+実施」から「タスク+条件+負荷+結果」へ。制度がどう転んでも、これは臨床の質そのものを上げます。
次の一手(院内で迷わないために)
- まず 1 週間だけ、上のテンプレ(目的 → 内容 → 量 → 結果)で記録を揃え、チームで「揃えにくい欄」を特定する
- 運用の棚卸しとして、物価・賃上げ等の制度論点も同時に押さえる:介護従事者の賃上げ( 2026 年 6 月 )まとめ
- 評価の共通言語を作る(病棟・外来で指標を揃える):評価ハブ(全体像)
参考資料
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

