離床を伴わないリハは「ベッド上だったか」だけでは判定できません
令和8年度診療報酬改定で新設された「離床を伴わないリハビリテーション」は、単にベッド上でリハを行った患者を一律に減算する仕組みではありません。判断の中心は、個別療法を実施した日にベッド上から移動していないか、ポジショニングまたは拘縮予防等を主目的とした他動的な訓練のみを行ったかです。
本記事では、厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その2)」の問67・問69をもとに、車椅子移乗、能動運動、言語療法、離床練習、一部だけ他動的訓練を行った場合など、判定に迷いやすい境界を整理します。制度全体の説明ではなく、「今日行ったリハは減算・単位数制限の対象となる特定の患者に該当するのか」を判断したいPT・OT・ST向けの記事です。
先に結論:「ベッド上で実施した」「結果的に離床できなかった」という事実だけでは対象になりません。当日の移動・主目的・実際に行った訓練内容を確認し、そのうえで対象外条件を確認します。
最終確認:2026年9月23日。令和8年度診療報酬改定、疑義解釈その2(2026年4月1日)、疑義解釈その12(2026年9月2日)をもとに整理しています。
判定は「移動・目的・訓練内容」の3点から始める
最初に確認するのは、「ベッド上のみ」「ポジショニングまたは拘縮予防等が主目的」「他動的な訓練のみ」の3点です。これらを満たしたうえで、減算・単位数制限の対象外となる条件に該当しないかを確認します。
| 確認点 | 確認する内容 | 迷いやすい例 |
|---|---|---|
| 1. 移動 | 個別療法を実施した日にベッド上から移動していないか | 車椅子へ移乗した場合は「ベッド上のみ」ではない |
| 2. 主目的 | ポジショニングまたは拘縮予防等が主たる目的か | 離床や耐久性向上、言語療法などが目的なら別に考える |
| 3. 訓練内容 | 上記を目的とした他動的な訓練のみを行ったか | 能動運動など別の訓練を適切に行った場合は「他動のみ」ではない |

重要なのは、実施場所だけでなく「何のために、何を行ったか」まで見ることです。対象となる疾患別リハビリテーション料、減算率、単位数制限、対象外条件の全体像は、疾患別リハの訓練内容評価の総論で整理しています。
疑義解釈その2・問67|一部に他動訓練が入るだけでは該当しない
疑義解釈その2の問67で重要なのは、1単位の一部にベッド上での他動的訓練が含まれているだけでは「特定の患者」には該当しないことです。
たとえば、1単位の中で拘縮予防を目的とした他動的な関節可動域訓練を実施していても、それ以外の訓練が適切に行われている場合について、厚生労働省は「特定の患者に該当しない」と示しています。
判断のポイント:「他動ROMを実施したか」だけを見るのではなく、その日の個別療法がポジショニングまたは拘縮予防等を主目的とする他動的な訓練のみだったかを確認します。
疑義解釈その2・問69|6事例では①〜⑤が非該当、⑥のみ該当
問69では、離床を伴わないリハビリテーションの判定で迷いやすい6事例について、「特定の患者」への該当性が示されています。結論は、①〜⑤が非該当、⑥のみ該当です。
| 事例 | 判定 | 判断の境界 |
|---|---|---|
| ① 最初はベッド上、その後に車椅子へ移乗 | 非該当 | 車椅子へ移乗しており「ベッド上のみ」ではない。訓練内容も他動的訓練のみではない |
| ② ベッド上で自ら膝を動かす運動や排痰を促す訓練 | 非該当 | ベッド上ではあるが、対象となる他動的訓練以外を行っている |
| ③ ギャッジアップして高次脳機能障害・構音障害等への言語療法 | 非該当 | ベッド上ではあるが、ポジショニング・拘縮予防等を目的とした他動的訓練のみではない |
| ④ 離床を目指したが、結果的に端坐位まで至らず終了 | 非該当 | 結果ではなく目的・内容で判断する。離床や耐久性向上を目的とした訓練である |
| ⑤ 車椅子で訓練室へ移動後、ベッド上で他動ROMのみ実施 | 非該当 | 訓練室ではベッド上でも、当日に車椅子へ移乗しているため「ベッド上のみ」ではない |
| ⑥ ベッド上で拘縮予防・褥瘡予防を主目的に他動ROMとポジショニングのみ実施 | 該当 | 「ベッド上のみ」かつ「拘縮予防等を目的とした他動的な訓練のみ」に当たる |
6事例を通して共通するのは、最終的にどの姿勢まで到達したかではなく、その日に実際に行った移動と訓練の目的・内容で判断することです。
実務で特に迷いやすい3つの境界
問69の6事例を臨床へ当てはめると、迷いやすい境界は「離床できなかった場合」「ベッド上で別の訓練を行った場合」「途中で移乗した場合」の3つに整理できます。
離床を試みたが、結果的に端坐位へ至らなかった場合
「離床できなかった=特定の患者」ではありません。 問69④では、起立性低血圧を有する患者に離床を目指した訓練を行い、結果的に端坐位まで至らなかったケースは非該当とされています。
つまり、判定は「最終的に離床できたか」だけでは行いません。耐久性向上や離床を目的として臥位から座位へ進めたのであれば、結果としてベッド上で終了していても、ポジショニング・拘縮予防等を目的とした他動的訓練のみを行ったケースとは区別します。
ベッド上で能動運動や別目的の訓練を行った場合
実施場所がベッド上でも、訓練内容が異なれば非該当です。 問69②・③では、自ら行う運動や排痰を促す訓練、言語療法を行ったケースが非該当とされています。
「訓練室へ行かなかった」「ギャッジアップまでだった」といった場所や姿勢だけで区分せず、その日に何を目的として何を実施したかを確認します。
途中で車椅子へ移乗した場合
当日に車椅子へ移乗した場合は、「ベッド上のみ」ではありません。 問69①・⑤では、途中で車椅子へ移乗したケースと、車椅子で訓練室へ移動してからベッド上で他動ROMのみを行ったケースのいずれも非該当です。
ベッド上で実施した時間や他動ROMの部分だけを切り取るのではなく、その日の個別療法全体を確認します。
「特定の患者」に該当した後に10%減算・2単位制限を確認する
「特定の患者」に該当するかどうかの判定と、該当後の算定方法は分けて考えます。特定の患者に対して離床を伴わずに20分以上の個別療法を行った場合は、所定点数の100分の90に相当する点数で算定し、患者1人につき1日2単位までとなります。
混同しないポイント:「20分以上」「100分の90」「1日2単位まで」は、特定の患者かどうかを決める3つの判断軸ではありません。特定の患者に該当した後の算定ルールです。
診療報酬明細書では、特定の患者に離床を伴わない個別療法を行い100分の90で算定する場合、摘要欄に「離床減」と表示して合計点数を記載する取扱いが示されています。
対象外となる患者は該当判定とは別に確認する
「ベッド上のみ」「対象となる目的」「他動的な訓練のみ」に当てはまる場合でも、通知で定められた対象外条件に該当する患者は、減算・単位数制限の対象となる「特定の患者」から外れます。
対象外には、一定の救急・集中治療等に係る入院料を算定する患者や、早期リハビリテーション加算・初期加算・急性期リハビリテーション加算を算定する患者、疾患・状態によりベッド上からの移動が困難な15歳未満の小児患者などがあります。
また、ベッド上からの移動が困難で、個別療法を3単位以上行うことが医学的に必要であると医師が特に認めた患者も対象外となります。「3単位実施した」という結果だけで自動的に対象外になるのではなく、医学的必要性を医師が特に認めることが前提です。
対象外条件を含む制度全体は、疾患別リハの訓練内容評価の総論で確認してください。
3単位以上の例外では記録要件を分けて考える
3単位以上の個別療法が医学的に必要と医師が特に認める対象外条件では、通常の該当判定とは別に記録要件があります。通知では、ベッド上からの移動が困難な医学的理由、長時間のリハビリテーションが必要な理由、訓練内容を診療録と診療報酬明細書の摘要欄へ記載することが求められています。
さらに、2026年9月2日の「疑義解釈資料の送付について(その12)」問13では、診療報酬明細書への記載は毎月、診療録への記載は状態に変化が生じた際に随時行い、状態に変化がない場合でも少なくとも月1回記載すると明確化されました。
注意:この「医学的理由・長時間リハが必要な理由・訓練内容」と記載頻度の規定は、3単位以上の個別療法が医学的に必要と医師が特に認める対象外条件について示されたものです。通常の「特定の患者」全例に同じ記載要件を広げて解釈しないよう区別します。
院内では「なぜその判定か」が追える記録にする
以下は診療報酬上の指定様式ではありませんが、判定を担当者間で再確認しやすくするには、移動・目的・訓練内容・判定を簡潔に記録しておくと整理しやすくなります。
| 確認項目 | 記載例 |
|---|---|
| 当日の移動 | 個別療法実施日にベッド上からの移動なし |
| 主目的 | 拘縮予防・ポジショニング調整 |
| 訓練内容 | 他動的関節可動域訓練、ポジショニングのみ |
| 判定 | 対象外条件を確認したうえで、特定の患者への該当性を判断 |
この表は「公式の記録テンプレート」ではなく、判定過程を院内で共有するための実務整理です。診療報酬明細書や診療録に必要となる正式な記載事項は、対象となる算定・例外条件に応じて公式資料を確認してください。
また、「離床」という言葉を院内でどの姿勢・移動まで含めるかが担当者によって異なる場合は、診療報酬上の判定と院内の離床レベルを混同しないことが重要です。院内表記をそろえる考え方は、離床レベルの定義と記録方法で整理しています。
よくある質問
Q1. ベッド上でリハをした日は、すべて10%減算になりますか?
いいえ。ベッド上で実施したことだけでは判定できません。個別療法を実施した日にベッド上から移動していないことに加え、ポジショニングまたは拘縮予防等を主目的とした他動的な訓練のみを行ったかを確認します。さらに対象外条件の確認が必要です。
Q2. 離床練習をしたものの、端坐位まで行けなかった場合は対象ですか?
結果だけでは対象になりません。疑義解釈その2の問69④では、離床・耐久性向上を目的として臥位から座位へ進め、結果的に端坐位に至らなかったケースは「特定の患者」に該当しないとされています。
Q3. 1単位の中で他動ROMを行ったら対象になりますか?
それだけでは対象になりません。疑義解釈その2の問67では、1単位の一部に対象となる他動的訓練が含まれていても、それ以外の訓練が適切に行われる場合は「特定の患者」に該当しないとされています。
Q4. 車椅子へ移乗した後、訓練室のベッドで他動ROMだけを行った場合は対象ですか?
いいえ。疑義解釈その2の問69⑤では、車椅子へ移乗しているため「ベッド上のみ」ではなく、特定の患者に該当しないとされています。
Q5. 3単位以上が必要な患者の診療録と摘要欄は毎日記載しますか?
疑義解釈その12の問13では、診療報酬明細書への記載は毎月、診療録は状態変化時に随時行い、変化がない場合でも少なくとも月1回記載するとされています。これは、ベッド上からの移動が困難で、3単位以上の個別療法が医学的に必要と医師が特に認める対象外条件についての取扱いです。
次の一手
本記事では、疑義解釈その2の問67・問69を中心に「特定の患者へ該当するか」の境界を整理しました。10%減算、2単位制限、対象外条件など制度全体を確認する場合は、疾患別リハの訓練内容評価|令和8年度改定の総論へ進んでください。
参考資料
- 厚生労働省保険局医療課. 疑義解釈資料の送付について(その2). 令和8年4月1日. 厚生労働省資料
- 厚生労働省保険局医療課. 疑義解釈資料の送付について(その12). 令和8年9月2日. 厚生労働省資料
- 厚生労働省. 診療報酬の算定方法(医科診療報酬点数表). 令和8年度改定反映版. 厚生労働省法令等データベース
- 厚生労働省. 診療報酬請求書等の記載要領等について. 令和8年度改定関連. 厚生労働省資料
- 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定について. 厚生労働省
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

