運動器 PROM の使い分け| NDI ・ DASH ・腰痛( RDQ / ODI / PSFS )まで “最小セット” で迷わない
運動器の PROM(患者報告アウトカム)は、たくさん入れるほど良いわけではありません。現場で強いのは、「まず 1 つ選ぶ」→「測定条件を固定」→「再評価日を先に決める」の 3 点が揃った運用です。本ページは、部位別に “まず 1 つ” を選び、評価 → 記録 → 再評価までが回る状態を作るためのハブです。
迷いが出やすいのは、同じ症例で指標が毎回変わる、想起期間や説明がブレる、点数だけが残り介入に落ちないことです。この記事では、部位別インデックスと早見表で「選択」を終わらせ、次に “条件固定の型” を入れて、チーム共有まで一気に通す設計にしています。
最短導線( 3 分 ):迷ったらここから
5 分で決める: PROM 選択フロー
最短で迷いを終わらせる手順は、①主訴の部位で 1 つ選ぶ → ②目的を言語化 → ③測定条件を固定 → ④再評価日を先に決めるです。まず “尺度選び” を終わらせてから、運用の再現性(説明・想起期間・記入方法)を揃えます。
- 部位で 1 つ決める:頸= NDI /上肢= DASH(急ぎなら QuickDASH )/下肢= LEFS /股= HOOS /膝= KOOS / OA 共通= WOMAC /腰= RDQ or ODI /個別課題= PSFS
- 目的を決める:術前後の経過/外来での変化追跡/在宅での生活課題共有
- 測定条件を固定:説明文・想起期間・介助有無・記入方法(自記 / 読み上げ)
- 再評価日を先に決める:外来 2〜 4 週、入院 1〜 2 週など
- 客観指標を 1 つだけ足す:歩行速度/ TUG /階段/立ち上がり など(足しすぎない)
関連:腰痛は “選び分けの親ページ” を先に読むとブレません → 腰痛 PROM の選び方( RDQ / ODI / PSFS )
部位別インデックス:まず 1 つ(成人・運動器)
同じ部位でも複数の PROM が存在しますが、運用が回るのは「役割分担」が明確なときです。下の表で “まず 1 つ” を決め、詳細は各記事で採点・欠損・解釈まで固定してください。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 部位 / 目的 | まず 1 つ | リンク | メモ(使い分けの型) |
|---|---|---|---|
| 頸部(頚部痛・頸椎) | NDI | NDI の評価方法 | “頸の生活障害” を共有する軸にする |
| 上肢(肩〜手) | DASH / QuickDASH | DASH の評価方法 / QuickDASH の評価方法 | 精度なら DASH、短時間運用なら QuickDASH |
| 下肢(股〜足:疾患横断) | LEFS | LEFS の評価方法 | 関節がまたぐ症例・高機能まで拾いたいときに強い |
| 膝(外傷〜 OA ) | KOOS | KOOS の評価方法 | Sport / Rec・ QOL まで含めて “ズレ” を拾う |
| 股( OA / THA など) | HOOS | HOOS の評価方法 | 下位尺度の “どれが動いたか” を主役に読む |
| 膝・股の OA を標準的に追う | WOMAC | WOMAC の評価方法 | レンジ( 0–96 / 0–100 )表記を必ず固定 |
| 腰痛(生活障害) | RDQ / ODI | RDQ の評価方法 / ODI の評価方法 | まず 1 つを固定し、必要なら PSFS を足す |
| 個別課題(生活の最重要課題) | PSFS | PSFS の使い方 | 固定項目で拾いにくい “本人の最重要課題” を追う |
測定条件の固定|ブレを止める “ 4 点セット ”
PROM は、点数そのものより 実施条件 が結果を左右します。最低限、①想起期間 ②説明文 ③記入方法 ④介助の有無を固定し、カルテに 1 行で残すと、次回の比較が崩れません。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 論点 | NG(よくある) | OK(おすすめ) | 記録の一言(例) |
|---|---|---|---|
| 想起期間 | その場で毎回違う | 施設で 1 つに固定 | 「想起:この 1 週間」 |
| 説明文 | 担当者ごとに言い回しが違う | 説明テンプレを固定 | 「説明テンプレ使用」 |
| 記入方法 | 自記と読み上げが混在 | 初回と同じ方法で統一 | 「読み上げで実施」 |
| 介助の有無 | 手伝ったのに残らない | 介助の有無を固定して明記 | 「介助:なし(自記)」 |
| 欠損対応 | その場しのぎで埋める | 欠損ルールを固定し明記 | 「未回答 1(欠損あり)」 |
| 再評価日 | 決めない(気づいたら間が空く) | 初回で固定し、同条件で再測定 | 「再評価:2 週後(同条件)」 |
現場の詰まりどころ|よくある失敗と、戻し方
運用が崩れる原因は、だいたい 「選びすぎ」と 「条件のブレ」と 「点数だけで終わる」です。詰まったら、下の表の “第一手” だけ先にやると復旧が早いです。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 詰まり | よくある原因 | 第一手(最小で戻す) | 確認(再評価) |
|---|---|---|---|
| 指標が多くて回らない | 症例ごとに追加し続ける/担当者で選択が違う | 部位で 1 つに戻す(まず 1 つを固定)→ 部位別インデックス | 同一 PROM が継続して取れているか |
| 比較できない | 想起期間・説明・記入方法が毎回違う | “ 4 点セット ” を 1 行で固定して残す → 測定条件の固定 | 前後差の解釈が一貫するか |
| 点数だけで終わる | 困りごと(行動)が記録に残らない | 高得点(または残存)だった “困りごと” を 1 行追記(例:階段 / 立ち上がり / 持ち上げ) | 次回の介入目標が 1 行で言えるか |
| 腰痛で迷う | RDQ と ODI を混在/ PSFS の位置づけが曖昧 | RDQ or ODI を 1 本化し、必要時のみ PSFS を追加 → 腰痛 PROM の選び方 | 同一尺度で経過が追えているか |
| 痛み強度と生活障害が混線 | 痛み NRS と生活障害を同じ“良し悪し”で判断 | “痛み強度 × 生活障害” を分けて読む → PDAS・PDI・RDQ の違い(比較・使い分け) | 介入の焦点が「行動」に落ちているか |
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
PROM はいくつ入れるのが正解ですか?
正解は “数” ではなく、再評価で比較できるかです。まずは部位で 1 つに固定し、想起期間・説明・記入方法・介助の有無・欠損ルールまで揃えた上で、必要が出たときだけ追加(例:腰痛で RDQ に PSFS を足す)にすると運用が崩れにくいです。
DASH と QuickDASH は混ぜて比較してよいですか?
混ぜて比較すると解釈が崩れやすいので、同じ症例ではどちらか 1 つを固定するのがおすすめです。短時間で回すなら QuickDASH、詳細に追うなら DASH、のように目的で決めると迷いが減ります。
腰痛は RDQ と ODI のどちらを使えばよいですか?
まずは RDQ か ODI のどちらか 1 つを固定し、必要なら PSFS を足して「本人の最重要課題」を追う型が回りやすいです。選び分けは親ページにまとめています:腰痛 PROM の選び方( RDQ / ODI / PSFS )
点数だけで終わってしまい、介入に落とせません
点数に加えて、困りごとを 1 行で残すと介入に落ちます(例:「階段で痛み」「買い物袋が持てない」「 30 分座ると悪化」など)。次回は、その 1 行が “介入の焦点” と “再評価の問い” になります。
次の一手(行動)
環境の詰まり(教育体制・標準化・記録文化)も点検する
「運用を整える→共有の型を作る→環境の詰まりも点検(無料チェックシート)」の流れで、次の行動に繋げられます。
参考文献
- Vernon H, Mior S. The Neck Disability Index: a study of reliability and validity. J Manipulative Physiol Ther. 1991;14(7):409–415. PMID: 1834753
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- Beaton DE, Wright JG, Katz JN, et al. Development of the QuickDASH: comparison of three item-reduction approaches. J Bone Joint Surg Am. 2005;87(5):1038–1046. DOI: 10.2106/JBJS.D.02060
- Binkley JM, Stratford PW, Lott SA, Riddle DL. The Lower Extremity Functional Scale (LEFS): scale development, measurement properties, and clinical application. Phys Ther. 1999;79(4):371–383. DOI: 10.1093/ptj/79.4.371
- Roos EM, Roos HP, Lohmander LS, Ekdahl C, Beynnon BD. Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score (KOOS)—development of a self-administered outcome measure. J Orthop Sports Phys Ther. 1998;28(2):88–96. DOI: 10.2519/jospt.1998.28.2.88
- Nilsdotter AK, Lohmander LS, Klässbo M, Roos EM. Hip disability and osteoarthritis outcome score (HOOS)—validity and responsiveness in total hip replacement. BMC Musculoskelet Disord. 2003;4:10. DOI: 10.1186/1471-2474-4-10
- Westaway MD, Stratford PW, Binkley JM. The Patient-Specific Functional Scale: validation of its use in persons with neck dysfunction. J Orthop Sports Phys Ther. 1998;27(5):331–338. DOI: 10.2519/jospt.1998.27.5.331
- Roland M, Morris R. A study of the natural history of back pain. Part I: Development of a reliable and sensitive measure of disability in low-back pain. Spine. 1983;8(2):141–144. DOI: 10.1097/00007632-198303000-00004. PMID: 6222486
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著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


