PDAS・PDI・RDQの違いと使い分け【慢性痛の生活障害評価】

評価
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このページの狙い

慢性痛領域で日常生活の障害度を評価する代表的な尺度として、 PDAS(疼痛生活障害評価尺度)、 PDI( Pain Disability Index )、 RDQ( Roland-Morris Disability Questionnaire )があります。本ページは 3 尺度の違いと使い分けに特化し、「どの症例でどれを組み合わせるか?」という臨床の迷いを減らすことが目的です。単一尺度の詳しい解説は、当ブログの基礎記事(疼痛評価スケールの基礎)も参考にしてください。

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PDAS・PDI・RDQ の比較表

慢性痛の生活障害評価:主要 3 尺度の比較(成人・外来を想定)
尺度 対象 / 特性 項目・採点 合計点 強み 注意
PDAS 慢性痛一般/日常生活行動の妨げ(日本発) 20 項目・各 0–3 0–60(高いほど障害) 短時間で実施可・縦断追跡に適する/臨床で 10 点前後の慣用目安 疾患特異性は低め。非運動器疼痛では変化が小さい症例もあり、他尺度との併用が望ましい
PDI 慢性痛一般/ 7 領域の役割・参加の障害(日本語版 PDI-J あり) 7 項目・各 0–10 0–70(高いほど障害) 社会・心理面を含む広い「生活機能」を把握しやすい/国際比較しやすい レンジが広く、数値イメージが掴みにくい患者もいるため、アンカーの意味を事前に説明する
RDQ 腰痛特異的/動作困難(主に腰痛による制限) 24 項目・二択 0–24(高いほど障害) 腰痛研究・臨床で最も普及/日本語版の信頼性・妥当性が確立 腰痛以外には不向き。放散痛や広範な痛みでは、 PDAS や PDI などの汎用尺度を併用する

出典:PDAS 開発論文および国内臨床研究、 PDI-J 妥当性検証論文、 RDQ 原著および日本語版の信頼性検証(下記文献)。

使い分けの実務フロー

  1. まずは「汎用 + 特異」のセット:腰痛なら PDAS + RDQ を基本セットにし、腰痛以外の慢性痛では PDAS + PDI を選択します。疾患特異尺度がない場合は、 PDAS / PDI のペアだけでも十分なことが多いです。
  2. 心理と自己効力を最小限で確認: PHQ-4 / PCS / PSEQ のいずれかを併用し、 PDAS や PDI の高値が「痛みそのもの」由来か、「恐怖回避・不安抑うつ・自己効力低下」由来かを概ね切り分けます。
  3. 追跡は同じパッケージで:初診時と同じ組み合わせで再評価し、合計点だけでなく変化量( Δ )に着目します。 PDAS / PDI は生活障害のトレンド、 RDQ は腰痛特異的な動作制限のトレンドを見るイメージです。

併用の推奨バンドル

  • 痛み強度: NRS( 0–10 )
  • 生活障害(汎用): PDAS( 0–60 )
  • 腰痛特異: RDQ( 0–24 ) ※腰痛症例
  • 社会・役割の障害: PDI( 0–70 )
  • 心理・認知: PHQ-4(不安・抑うつ)、 PCS(破局化)、 PSEQ(自己効力)

臨床では、時間に余裕がない場合でも「NRS + PDAS(または PDI)」「NRS + RDQ(腰痛)」のように、少なくとも痛み強度と生活障害の 2 軸だけは押さえておくと、介入効果の説明がしやすくなります。

実務の注意

  • PDAS は「生活行動」への影響を可視化します。痛みの NRS が改善しても PDAS が十分に下がらない場合は、行動活性化・段階的曝露・恐怖回避の是正など、行動面への介入不足を疑います。
  • RDQ は腰痛特異的な尺度です。頚部痛・肩痛・全身痛などでは、 PDAS / PDI を優先し、必要に応じて疾患特異的な尺度(頚部障害指数など)を追加します。
  • PDI は社会・役割機能まで含めて評価できる一方、数値の解釈が患者にとって難しいことがあります。「 0 =全く支障なし」「 10 =まったくできない」など、アンカーを最初に共有してから回答してもらうと誤解が減ります。
  • 尺度の複製・配布時には出典を明記し、研究利用では各誌や学会の方針に従ってください。必要に応じて著作権者・出版社への許諾確認も検討します。

現場の詰まりどころ

  • 毎回スケールを変えてしまう:初診と再評価で別の尺度に乗り換えると、変化量が追えず「良くなっているのか分からない」という事態になりがちです。ベースラインに使った組み合わせは、原則としてフォローアップでも維持します。
  • 点数だけ見て生活の中身を確認しない:PDAS・PDI の合計点だけで判断すると、「どの場面が一番困っているか」が見えません。スコアを手掛かりに、具体的な動作や役割(家事、仕事、趣味など)を聞き取る一手間が重要です。
  • RDQ だけで腰痛のすべてを説明しようとする:RDQ は動作制限にフォーカスしているため、睡眠障害や職場ストレスなどは拾いきれません。腰痛症例でも、PDAS や PDI と組み合わせることで背景要因を立体的に把握しやすくなります。
  • シートを盛り込みすぎて記入負担が大きくなる:NRS・PDAS・PDI・RDQ・心理尺度…と一度に詰め込みすぎると、慢性痛患者には大きな負担です。「初診時のフルセット」と「フォローアップの簡略版」を事前に決めておくと運用しやすくなります。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. PDAS・PDI・RDQ のうち、まず 1 つだけ導入するならどれが良いですか?

慢性痛一般であれば、まずは PDAS を 1 本目に導入するのが現実的です。多くの診療科・職種で使いやすく、点数変化も解釈しやすいためです。腰痛を多く扱う施設では、RDQ をセットで導入することで「腰痛特異的な動作障害」と「汎用的な生活障害」を並行して追跡できます。

Q2. 3 尺度すべてを毎回とる必要はありますか?

全員に毎回フルセットをとる必要はありません。初診時は「NRS + PDAS(または PDI) + 疾患特異尺度(該当があれば)」を基本とし、フォローアップでは症例の負担や時間枠を見ながら優先度の高い 1〜2 尺度に絞る運用で十分です。研究や介入プログラムでは、プロトコルに応じて追加するイメージです。

Q3. 点数があまり変化しないとき、リハビリの効果がないと判断すべきですか?

点数変化が小さい場合でも、「悪化を防げている」「痛み強度は上がっているが生活障害は増えていない」といったポジティブな解釈が可能なことがあります。NRS や他のアウトカムとあわせて解釈し、「どの領域が頭打ちか(動作か、役割か、心理か)」を整理してから次の一手(目標再設定・説明の仕方の工夫など)を決めるのが実務的です。

Q4. 心理尺度(PHQ-4・PCS・PSEQ など)は必ず併用すべきですか?

必須ではありませんが、「痛みの強さに比べて生活障害が大きい」「生活障害が長期にわたり高値で頭打ち」という症例では、心理尺度の併用が判断材料になります。全例に実施できない場合は、問診や観察で違和感がある症例を優先して絞り込むと現実的です。

おわりに

慢性痛の評価では、「痛みの強さ」と「生活障害」を別々の物差しで押さえ、同じセットを継続して使うことで、変化の向きと大きさを丁寧に追うことが重要です。PDAS・PDI・RDQ は、それぞれ得意とする領域が異なり、組み合わせて使うことで初診からフォローアップまで一貫した評価ストーリーを描きやすくなります。

本記事の内容を参考に、担当症例のパターンや施設の枠組みにあわせて「うちの標準パッケージ」を決めておくと、スタッフ間で評価の言語が揃い、カンファレンスや患者説明の質も高めやすくなります。まずは 1 尺度からでも構わないので、明日からの外来・病棟で少しずつ試してみてください。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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参考文献

  1. Arimura T, Iwaki R, Jensen MP, et al. Development of a Japanese version of the Pain Disability Assessment Scale. Japanese Journal of Behavior Therapy. 1997;23(1):7–15. DOI
  2. Ase C, et al. PDAS change differs by diagnosis after interdisciplinary pain treatment. Jpn J Society of Pain Clinicians. 2024;31(6):99–105. DOI
  3. Yamada K, et al. Reliability and validity of the Japanese PDI (PDI-J). PLOS ONE. 2022;17:e0274445. DOI
  4. Roland M, Morris R. A study of the development of the Roland-Morris Disability Questionnaire. Spine. 1983;8(2):141–144. PubMed
  5. Suzukamo Y, et al. Psychometric evaluation of a Japanese version of the RDQ. J Orthop Sci. 2003;8(4):543–548. PubMed
  6. Takahashi N, et al. Multidisciplinary pain management program for chronic pain patients. J Pain Res. 2019;12:2563–2571.( PDAS のカットオフ 10 点に言及 )PMC
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