PDAS・PDI・RDQ の違い【比較・使い分け】

評価
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このページの狙い(先に結論)

評価は「痛み強度 × 生活障害」を同じセットで追うだけで、説明と意思決定が一気に楽になります。 評価設計の型を見る( #flow )

慢性痛のアウトカムで迷いやすいのが、「生活障害」を何で押さえるかです。本稿は PDAS(疼痛生活障害評価尺度)、PDI( Pain Disability Index )、RDQ( Roland-Morris Disability Questionnaire )の違いと使い分けに特化し、症例に応じた“最小セット”を 1 ページで固定できるように整理します。

ゴールは「どの症例で、どれを、どう組み合わせて、同じパッケージで追跡するか」を決めることです。点数の上下だけで終わらせず、どの生活場面が詰まっているかまで言語化できるように、比較表 → 実務フロー → 併用バンドル → 詰まりどころ → FAQ の順でまとめます。

迷ったらこの分岐

症例別の最小セット(外来・成人を想定)
症例 基本セット 追加を検討する条件
腰痛が主(腰痛中心の外来) NRS + PDAS + RDQ 仕事・家事など役割の詰まりが強い → PDI を追加
腰痛以外の慢性痛(肩・頚部・術後痛など) NRS + PDAS + PDI 疾患特異尺度がある → それを 1 本だけ追加
広範痛・複合要因(睡眠/ストレス/不安が強い) NRS + PDI(または PDAS) 介入が頭打ち/訴えと活動が乖離 → 心理/自己効力を最小確認

PDAS・PDI・RDQ の比較表

慢性痛の生活障害評価:主要 3 尺度の比較(成人・外来を想定)
尺度 対象 / 特性 項目・採点 合計点 強み 注意
PDAS 慢性痛一般/日常生活行動の妨げ(日本発) 20 項目・各 0–3 0–60(高いほど障害) 短時間で実施可・縦断追跡に適する/臨床で 10 点前後の慣用目安 疾患特異性は低め。非運動器疼痛では変化が小さい症例もあり、他尺度との併用が望ましい
PDI 慢性痛一般/ 7 領域の役割・参加の障害(日本語版 PDI-J あり) 7 項目・各 0–10 0–70(高いほど障害) 社会・心理面を含む広い「生活機能」を把握しやすい/国際比較しやすい レンジが広く、数値イメージが掴みにくい患者もいるため、アンカーの意味を事前に説明する
RDQ 腰痛特異的/動作困難(主に腰痛による制限) 24 項目・二択 0–24(高いほど障害) 腰痛研究・臨床で普及/日本語版の信頼性・妥当性が確立 腰痛以外には不向き。放散痛や広範な痛みでは、PDAS や PDI などの汎用尺度を併用する

出典:PDAS 開発論文および国内臨床研究、PDI-J 妥当性検証論文、RDQ 原著および日本語版の信頼性検証(下記文献)。

使い分けの実務フロー( 10 分で決める)

  1. まずは「汎用 + 特異」を固定:腰痛なら PDAS + RDQ、腰痛以外の慢性痛なら PDAS + PDI を基本セットにします。疾患特異尺度がない症例は、PDAS / PDI のペアだけでも運用が回ることが多いです。
  2. 心理と自己効力は “必要時だけ” 最小確認:生活障害が高値で頭打ち、訴えと活動が乖離、恐怖回避が強いなどの場面では、PHQ-4 / PCS / PSEQ のいずれかを併用し、介入の焦点(痛みそのものか、行動・認知か)を整理します。
  3. 追跡は同じパッケージで:初診と再評価で尺度を変えると変化量( Δ )が追えません。合計点だけでなく、「どの生活場面が改善したか」をセットで記録し、説明の一貫性を作ります。

併用の推奨バンドル(フルセット/簡略版)

運用しやすい “ 2 段階パック ”(初診フルセット → フォロー簡略版)
目的 初診フルセット(例) フォロー簡略版(例) 使いどころ
腰痛が主 NRS + PDAS + RDQ(必要に応じて PDI) NRS + PDAS(または RDQ のどちらか 1 本) 短期で動作制限が動きやすい → RDQ を残す/生活全体の詰まりを追う → PDAS を残す
腰痛以外 NRS + PDAS + PDI NRS + PDAS(または PDI のどちらか 1 本) 役割・参加が主課題 → PDI を残す/行動面の変化を追う → PDAS を残す
認知・心理が疑わしい 上記 + PHQ-4 / PCS / PSEQ( 1 本だけ) 必要時のみ( 2〜4 週おき等) 全例固定にしない。詰まる症例に “追加” する運用が現実的

実務の注意(点数を “次の一手” に変える)

  • PDAS が下がらない:NRS が改善しても PDAS が十分に下がらない場合は、行動活性化・段階的曝露・恐怖回避の是正など、行動面の介入不足を疑います。「痛みは軽いが生活が戻らない」群の拾い上げに向きます。
  • RDQ は腰痛以外に使わない:RDQ は腰痛特異的です。頚部痛・肩痛・全身痛では PDAS / PDI を優先し、必要があれば疾患特異尺度を 1 本だけ追加します。
  • PDI は “ 0 と 10 の意味 ” を先に共有:PDI は 0–10 の主観尺度なので、アンカーの説明がないと回答がぶれます。例:「 0 =全く支障なし」「 10 =まったくできない(生活が止まる)」を最初に揃えます。

患者説明の一言テンプレ(その場で使う)

  • PDAS:「痛みがあることで、日常の行動がどれくらい “やりづらいか” を数字にします。痛みの強さとは別の物差しです。」
  • PDI:「家事・仕事・余暇など “役割” の支障を見ます。 0 は支障なし、 10 は全くできない、で教えてください。」
  • RDQ:「腰痛で “動作がどれくらい制限されているか” を見ます。腰痛に特化した質問です。」

現場の詰まりどころ

  • 毎回スケールを変えてしまう:初診と再評価で別の尺度に乗り換えると、変化量( Δ )が追えず「良くなっているのか分からない」になりがちです。ベースラインに使った組み合わせは、原則としてフォローアップでも維持します。
  • 点数だけ見て生活の中身を確認しない:PDAS・PDI の合計点だけで判断すると「どの場面が一番困っているか」が見えません。スコアを手掛かりに、具体的な動作や役割(家事、仕事、趣味など)を聞き取る一手間が重要です。
  • RDQ だけで腰痛のすべてを説明しようとする:RDQ は動作制限にフォーカスするため、睡眠障害や職場ストレスなどは拾いきれません。腰痛症例でも、PDAS や PDI と組み合わせると背景要因を立体的に把握しやすくなります。
  • シートを盛り込みすぎて記入負担が大きくなる:全例フルセット固定は破綻しやすいです。「初診フルセット」「フォロー簡略版」を先に決め、運用を回しながら微調整します。面談前に整理しておくなら、チェックリストを 面談準備チェック(ダウンロード) のように 1 枚に集約しておくとブレが減ります。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. PDAS・PDI・RDQ のうち、まず 1 つだけ導入するならどれが良いですか?

慢性痛一般であれば、まずは PDAS を 1 本目に導入するのが現実的です。多くの診療科・職種で使いやすく、縦断追跡もしやすいためです。腰痛を多く扱う施設では、RDQ をセットで導入すると「腰痛特異的な動作障害」と「汎用的な生活障害」を並行して追跡できます。

Q2. 3 尺度すべてを毎回とる必要はありますか?

全員に毎回フルセットをとる必要はありません。初診は「 NRS + 汎用( PDAS または PDI ) + 疾患特異(該当があれば)」を基本にし、フォローアップは症例の負担と時間枠を見ながら優先度の高い 1〜2 尺度に絞る運用で十分です。

Q3. 点数があまり変化しないとき、リハビリの効果がないと判断すべきですか?

点数変化が小さい場合でも「悪化を防げている」「痛み強度は上がっているが生活障害は増えていない」など、臨床的に意味のある解釈が可能です。NRS や他のアウトカムとあわせて「どの領域が頭打ちか(動作か、役割か、心理か)」を整理し、次の一手(目標再設定・説明の仕方・介入の焦点)を決めるのが実務的です。

Q4. 心理尺度( PHQ-4 ・ PCS ・ PSEQ など)は必ず併用すべきですか?

必須ではありませんが、「痛みの強さに比べて生活障害が大きい」「生活障害が長期にわたり高値で頭打ち」という症例では、判断材料になります。全例に実施できない場合は、問診や観察で違和感がある症例を優先して絞り込むと運用が回ります。

次の一手(読む順番)

参考文献

  1. Arimura T, Iwaki R, Jensen MP, et al. Development of a Japanese version of the Pain Disability Assessment Scale. Japanese Journal of Behavior Therapy. 1997;23(1):7–15. DOI
  2. Ase C, et al. PDAS change differs by diagnosis after interdisciplinary pain treatment. Jpn J Society of Pain Clinicians. 2024;31(6):99–105. DOI
  3. Yamada K, et al. Reliability and validity of the Japanese PDI (PDI-J). PLOS ONE. 2022;17:e0274445. DOI
  4. Roland M, Morris R. A study of the development of the Roland-Morris Disability Questionnaire. Spine. 1983;8(2):141–144. PubMed
  5. Suzukamo Y, et al. Psychometric evaluation of a Japanese version of the RDQ. J Orthop Sci. 2003;8(4):543–548. PubMed
  6. Takahashi N, et al. Multidisciplinary pain management program for chronic pain patients. J Pain Res. 2019;12:2563–2571. PMC

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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