PDQ-39とは?パーキンソン病QOLスコア|評価方法と評価用紙

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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「PDQ-39」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

リハビリくん
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理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

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PDQ-39 とは

PDQ-39(Parkinson’s Disease Questionnaire-39)は、パーキンソン病に特異的な QOL(生活の質)評価尺度であり、疾患が日常生活や心理社会的側面に及ぼす影響を多面的に把握するために用いられます。対象者に対する面接形式の質問、または自己記入によって実施されます。

この評価法は、活動性・ADL・情緒的健康・恥辱・社会的支援・認知・コミュニケーション・身体的不快感という 8 つの分野から構成され、計 39 項目で構成されています。

各項目は「過去 1 か月間にどの程度困難であったか」を 0 点(全くない)から 4 点(非常にある)までの 5 段階で評価します。全項目の合計点は最大 156 点であり、得点率が高いほど QOL が低いことを示します。

また、合計点だけではなく、総得点および各分野ごとの得点率(得点 ÷ 最大得点 × 100)を算出し、分野別の QOL への影響を分析することが可能です。

診療ガイドライン、信頼性と有用性

Schrag ら(1998)は、PDQ-39 を用いた研究において、抑うつ、姿勢の不安定性、認知機能の低下がパーキンソン病患者の QOL に大きな影響を及ぼすことを報告しています。これにより、PDQ-39 は医学的・リハビリ的介入の効果を QOL の観点からも評価できる重要な指標とされています。

また、日本では河本らにより日本語版 PDQ-39(PDQ-39J)が作成され、国内のパーキンソン病患者に対する適用の妥当性が検討されています。その結果、内的整合性(Cronbach の α)および構成的妥当性が十分に認められたことから、臨床でも安心して活用できるツールとなっています。

PDQ-39 評価項目

PDQ-39 は以下の 39 項目より構成されています。

可動性(運動能力)

1 やりたい余暇の活動を行うのに支障を感じましたか
2 家の事をするのに支障を感じましたか、例えば日曜大工、家事、料理など
3 買い物の荷物を持つのに支障を感じましたか
4 1000 m を歩くのに困難を感じましたか
5 100 m を歩くのに困難を感じましたか
6 好きなように家の周りを歩くのに支障を感じましたか
7 人込みの中で移動するのに支障を感じましたか
8 外出の際に付き添いが必要でしたか
9 人前で倒れるのではないかと恐ろしくなったり、心配になりましたか
10 望む以上に家にひきこもらなければなりませんでしたか

日常生活活動(ADL)

11 自分の身体を洗うのに不都合を感じましたか
12 着替えをするのに不都合を感じましたか
13 ボタン掛けや靴ひもを結ぶのに苦労しましたか
14 字をきれいに書くのに苦労しましたか
15 食べ物を切るのに苦労しましたか
16 飲み物をこぼさないように持つのに苦労しましたか

精神的な健康観(情緒的健康)

17 気分が落ち込みましたか
18 疎外感、孤独を感じましたか
19 涙ぐんだり、泣きたくなったりしましたか
20 怒ったり、憤慨したりしましたか
21 心配(不安)になりましたか
22 自分の将来が心配になりましたか

病気であることによる精神的負い目(スティグマ:恥辱)

23 自分がパーキンソン病であることを人に隠さなければならないと感じましたか
24 人前で食べたり飲んだりするような状況を避けましたか
25 パーキンソン病であるために人前で恥ずかしい思いをしましたか
26 他人の自分に対する反応を心配しましたか

社会的支援

27 人間関係に問題がありましたか
28 妻/夫や同棲者からあなたが必要とする支えが得られないという事がありましたか
29 家族/親しい友人からあなたが必要とする支えが得られないという事がありましたか

認知

30 日中気が付かない(予期せぬ)うちに眠ってしまったことがありましたか
31 注意力に問題がありましたか。例えば、読書やテレビを見ているときなど
32 記憶力が悪くなったと感じましたか
33 いやな夢や幻覚を見ましたか

コミュニケーション

34 話をするのに支障がありましたか
35 適切に他人と会話ができないと感じましたか
36 他の人から無視されたと感じましたか

身体的不快感

37 苦痛を伴う筋肉のけいれんやひきつけがありましたか
38 関節や、体に痛みを感じましたか
39 不快に寒さや、暑さを感じましたか

PDQ-39 評価方法

PDQ-39(Parkinson’s Disease Questionnaire-39)は、パーキンソン病患者の生活の質(QOL)を評価する目的で開発された質問票です。評価は対象者への質問もしくは自己記入によって実施され、計 39 項目から構成されています。

各項目に対して、過去 1 か月間にどの程度困難や問題があったかを 5 段階で回答します。この回答は以下のように点数化されます。

  • まったくなかった :0 点
  • たまにあった   :1 点
  • ときどきあった  :2 点
  • しばしばあった  :3 点
  • いつもあった   :4 点

このように、各項目は 0 点から 4 点で採点され、最大 156 点(39 項目× 4 点)となります。

評価スコアの算出方法

PDQ-39 は、以下の 8 つのドメイン(領域)に分類され、それぞれのドメインごとに得点率(スコア)を算出します。

  • 活動性:最大 40 点(10 項目)
  • ADL:最大 24 点(6 項目)
  • 情緒的健康:最大 24 点(6 項目)
  • 恥辱:最大 16 点(4 項目)
  • 社会的支援:最大 12 点(3 項目)
  • 認知機能:最大 16 点(4 項目)
  • コミュニケーション:最大 12 点(3 項目)
  • 身体的不快感:最大 12 点(3 項目)

各ドメインのスコアは、以下の式で算出します。

ドメインスコア(%) =(得点合計 ÷ 最大得点) × 100

この得点率が高いほど、そのドメインにおける QOL の低下が大きいことを意味します。つまり、スコアが高い=生活上の困難が大きいと解釈されます。

評価の注意点

回答は、「過去 1 か月間」の状況に基づいてもらう必要があります。 本人が回答困難な場合は、家族や介護者の補助のもとで実施しても構いませんが、主観的評価であることを踏まえて解釈することが重要です。

8 つのドメインの中で特にスコアの高い領域は、患者にとって日常生活での負担が大きい部分と考えられ、リハビリテーションや介入の優先順位決定に有用です。

評価用紙

PDQ-39 の評価法をダウンロードできるようにしておきました!☺︎

評価表が必要なかたはこちらからどうぞ!

結果の解釈

PDQ-39 は以下の 2 つの観点から評価を行います。

  • 総得点(0 ~ 156 点):全体としての QOL の状態を示します。
  • 8 つのドメインごとの得点率(%):活動性、ADL、情緒的健康、恥辱、社会的支援、認知、コミュニケーション、身体的不快感の各領域での QOL を個別に把握できます。

各ドメインのスコアは次の式で算出します。

ドメインスコア(%)=(ドメイン得点 ÷ 最大得点)× 100

この得点率が高いほど、その領域での問題が大きく、生活の質が低下していると解釈されます。

結果の臨床的な意味

PDQ-39 の評価結果からは、単に QOL の水準を把握するだけでなく、患者が日常生活のどの側面で困難を感じているのか、どの領域に心理的な負担を抱えているのかといった、重要な気付きを得ることができます。以下に例をあげます。

  • 活動性スコアが高い場合:移動や外出に強い制限がある
  • 情緒的健康のスコアが高い場合:抑うつや不安といった心理的問題が疑われる
  • 恥辱や社会的支援スコアが高い場合:社会的孤立感や自己肯定感の低下が示唆される

これらの情報は、医療者が個別性の高い介入計画を立てるうえでの指針となります。また、介入前後のスコアを比較することで、治療やリハビリテーションの効果を客観的に把握する手段としても有用です。

注意点

PDQ-39 は主観的評価であるため、身体的能力の評価と組み合わせて総合的に解釈することが重要です。 本人の理解力や認知機能の状態によっては、回答の精度に偏りが出ることもあるため、必要に応じて家族や支援者の協力を得ることも検討します。

PDQ-39 カットオフ値

PDQ – 39 には、QOL の水準を区別するための公式なカットオフ値はありません。しかし、いくつかの研究では、PDQ-39 のスコアと他の指標との関連性を調べて、参考値を提案しています。

例えば、ある研究によると、PDQ-39 の全体スコアとホーエン・ヤール分類(パーキンソン病の重症度を分類する方法)との間に有意な相関が示されております。この研究では、以下のようなカットオフ値を提案しています。

  • ホーエン・ヤール分類 1 ~ 1.5 :PDQ-39 全体スコア 20 未満
  • ホーエン・ヤール分類 2 ~ 2.5 :PDQ-39 全体スコア 20 ~ 39
  • ホーエン・ヤール分類 3 ~ 5 :PDQ-39 全体スコア 40 以上

別の研究では、PDQ-39 の全体スコアと SF-36(一般的なQOL評価尺度)の物理的健康要約スコア(PCS)との間に有意な負の相関が示されております。この研究では、以下のようなカットオフ値を提案しています。

  • PCS 50 以上 :PDQ-39 全体スコア 25 未満
  • PCS 40 ~ 49:PDQ-39 全体スコア 25 ~ 34
  • PCS 30 ~ 39:PDQ-39 全体スコア 35 ~ 44
  • PCS 29 以下 :PDQ-39 全体スコア 45 以上

これらのカットオフ値は、あくまで参考値になりますが、PDQ-39 の結果と他の評価表を組み合わせて効果検証をすることは効果的であるといえるでしょう。

QOLの評価について

QOL の評価は、人が人間らしく満足して生活しているか、自分らしい生活が送れているか「生活の質」を評価する概念になります。まずは、QOL についておさらいしていきます。

医療におけるQOL

QOL という概念は、医療のあり方とともに発展してきました。従来の西洋医学では、病気の原因を取り除いて人の身体を治すことに重きを置かれていたために、「病気は治ったが患者は死んだ」と揶揄されるような問題が生じました。

そこで、病気を治すために患者の人間らしい生活を著しく損なうことは本末転倒であるという考えから、QOL が重要視されるようになったのです。たとえば、効果が同じであれば、機能をできるだけ温存するために縮小手術を選択するなど、治療効果だけではなく QOL も考慮した医療が行われるようになってきています。

QOLとADLの関連性について

QOL と密接な関わりがある用語に ADL(Activity of Daily Life)があります。ADL は、日常生活を送るために必要な基本動作のことで、食事や更衣、排泄、入浴などがこれにあたります。

多くの人が、自分で食事ができたり、また家族や友人など親しい人と会食したりすることに幸福感を抱きます。また、排泄を自力で行うことは、個人の尊厳を守ることに繋がります。

こういったことから、ADL と QOL は密接な関係があり、ADL の維持は QOL を向上させるために大きな役割を担っているといえます。

QOL評価の種類

医療関係で QOL 評価をする際は、健康と関連した QOL を評価すると思います。このことを健康関連QOLといいます。

健康関連 QOL とは、「疾患や治療が、患者の主観的健康感(メンタルへルス・活力・痛みなど)や、毎日行っている仕事・家事・社会活動にどのようなインパクトを与えているかを定量化したもの」であると言われています。

健康関連 QOL を分類すると、包括的尺度と疾患特異的尺度の 2 つの尺度があります。それぞれ長所・短所があるので、自分が使う時にどれが良いのか検討する必要があります。

包括的尺度について

包括的尺度とは、測定対象を特定の疾患患者に限定しない QOL 尺度です。疾患を患っていない、いわゆる「健康な人」を評価することができます。

包括的尺度の代表的なものに、SF-36 と EQ-5D などがあります。

たとえば SF-36 と呼ばれる代表的な評価法は、科学的な信頼性の高さから国際的に広く使用されています。SF-36 は、36 の問いによって 8 つの健康概念「身体機能」「日常役割機能(身体)」「体の痛み」「全体的健康感」「活力」「社会生活機能」「日常役割機能(精神)」「心の健康」のスコアを算出し、QOL を評価します。

疾患特異的尺度について

疾患特異的尺度は、病気ごとの評価票です。他の疾患の患者では使用できず、また一般人と比較することはできません。

一方で疾患の症状に起因する状態をしっかりと測定できるように質問項目が並んでいるので、治療などの効果判定には、敏感に反応します。

PDQ-39(Parkinson ’ s Disease Questionnaire-39)は疾患特異度尺度に該当します。

UPDRSとの違い

パーキンソン病の評価において、「PDQ-39」と「UPDRS」は混同されることがありますが、両者は目的や評価内容が異なる、まったく別の評価尺度です。それぞれの特性を正しく理解することで、臨床における適切な活用が可能となります。

【PDQ-39】

パーキンソン病に特化した生活の質(QOL)を評価する質問票です。患者自身の主観に基づき、日常生活における困難や心理的負担を把握することができます。

  • 対象:患者の主観的な生活の質
  • 評価項目数:39 項目(8 つのドメインに分類)
  • 評価方法:0 ~ 4 点の 5 段階評価
  • 主な評価内容:活動性、ADL、情緒的健康、社会的支援、認知など

【UPDRS】

パーキンソン病の重症度や進行度を総合的に評価する臨床尺度です。医師や医療従事者による観察・問診に基づき、運動症状を中心とした多面的な評価を行います。

  • 対象:パーキンソン病の症状と機能障害の重症度
  • 評価項目数:旧 UPDRS では 4 部構成(改訂版 MDS-UPDRS ではさらに詳細化)
  • 主な評価内容:精神・行動・気分、日常生活動作、運動機能、治療による合併症など
  • 評価者:主に医師や医療従事者による評価

PDQ-39 と UPDRS は、目的が異なる評価法であるため、両者を併用することでより包括的な患者理解が可能になります。たとえば、UPDRS で運動機能が改善していても、PDQ-39 で QOL が低下している場合は、心理社会的な支援が必要であると判断できます。

UPDRS については、他の記事で詳しくまとめています!《UPDRSとは?42項目パーキンソン病スコアの評価スケール|PD》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️

まとめ

最後までお読み頂きありがとうございます!

こちらの記事では、QOL の基礎知識とパーキンソン病の QOL 評価となる PDQ-39 についてまとめさせていただきました!

パーキンソン病の方に対して、評価法を用いて ADL や IADL を評価することは重要になりますが、それらに加えて疾患特異的な評価尺度を用いることで、より対象者の状態を正確に捉えることができます。

特に PDQ-39 についてはパーキンソン病に特徴的となる身体機能・運動能力から精神面まで細かく評価することができます。是非、評価法をダウンロードして、活用して頂ければと思います!

参考文献

  1. 久永欣哉,高橋信雄.パーキンソン病のリハビリテーション.Jpn J Rehabil Med.2012,49,p738-745.
  2. 中西亮二,山永裕明,野尻晋一,出田透.パーキンソン病の障害評価とリハビリテーション.Jpn J Rehabil Med.2013,50,p658-670.
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