前脛骨筋トレーニング|姿勢別メニューと A4 記録シート
関連:大腿四頭筋(姿勢別) / 下腿三頭筋(姿勢別)
前脛骨筋トレーニングは、つま先クリアランスや初期接地のコントロールを整える目的で使います。臨床では「筋力を上げる」だけでなく、立位・座位・ベッド上のどの姿勢でも背屈を確実に出すことが重要です。
本記事では、姿勢別メニュー、代償の見方、A4 記録シートの使い方までを 1 本化します。立位が不安定な患者では座位やベッド上から始め、フォーム・症状・代償を記録しながら次回の進行/維持/後退を判断してください。
結論|前脛骨筋は「できる姿勢で背屈を出す」と続けやすい
前脛骨筋トレーニングは、 1 ) 姿勢を選ぶ → 2 ) メニューを 1〜2 個に絞る → 3 ) 代償が増える手前で止めるの順で組むと失敗しにくくなります。最初から立位にこだわるより、安全に背屈を反復できる姿勢を選ぶことが優先です。
目安は 8〜12 回 × 2 セット、週 3〜5 回です。ただし、回数よりフォームを優先します。疼痛、ふらつき、息切れ、足部内反の増加があれば中止または負荷を下げ、次回方針を記録に残します。
前脛骨筋を鍛える目的は「つまずき」と「フットスラップ」を減らすこと
前脛骨筋は足関節背屈に関わり、遊脚期のつま先クリアランスや初期接地時の足部コントロールに影響します。機能低下があると、つまずき、フットスラップ、歩行時の不安定感として現れやすくなります。
一方で、体幹後傾、膝屈曲、足部内反で代償すると、前脛骨筋を狙った運動から外れます。そのため、メニュー名だけでなく「どの代償を見て、どのキューで修正するか」まで統一しておくことが大切です。
姿勢別メニュー比較|立位・座位・ベッド上の使い分け
開始姿勢は、患者の支持性、疲労、転倒リスクで決めます。立位でフォームが崩れる場合は、座位またはベッド上へ下げても問題ありません。狙いは一貫して「踵を安定させ、つま先を上げる」ことです。
スマホでは表を左右にスワイプできます。まずは安全に反復できる姿勢を選び、代償が少ない状態で実施量を増やしてください。
| 姿勢 | 代表メニュー | 目安 | よくある代償 | 修正キュー |
|---|---|---|---|---|
| 立位 | トゥレイズ(壁・手すり支持) | 8〜12 回 × 2 セット | 体幹後傾、膝屈曲、支持物への過度な依存 | 「すねを上げる」、膝は正面、反動を使わない |
| 座位 | 踵接地でのつま先挙上 | 10〜15 回 × 2 セット | 股関節屈曲、足部内反、踵が浮く | 踵は床、つま先は天井方向、ゆっくり下ろす |
| ベッド上 | 背屈運動(自動介助/セラバンド) | 8〜12 回 × 2 セット | 股関節外旋、反動、足趾だけの伸展 | つま先正面、上げ 1 秒・下ろし 2 秒 |
A4 臨床記録シート|説明・実施・記録を 1 枚でそろえる
この PDF は、前脛骨筋トレーニングを「実施姿勢」「メニュー」「実施量」「症状」「代償」「次回方針」まで 1 枚で記録できる臨床用シートです。説明、実施、記録を同じ流れで扱えるため、担当者間のブレを減らせます。
記録欄では、当日の実施内容だけでなく、代償の出方や次回の進行/維持/後退まで残せます。継続的に使うことで、負荷調整と再評価の判断がしやすくなります。
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記録の書き方|次回方針まで短く残す
記録は「姿勢・メニュー・量・症状・代償・次回方針」の順に残すと、次回の判断が速くなります。特に、何回目からフォームが崩れたか、NRS が前後で変化したかを残すと、負荷調整に使いやすくなります。
記録例は「座位で踵接地つま先挙上 10 回 × 2 セット。NRS 0→0。8 回目以降に右足部内反あり。次回は座位でテンポを落として維持」のように、実施量と代償、次回方針を 1 文でまとめます。
現場の詰まりどころ|回数より代償を見逃さない
よくある失敗は、回数達成を優先して体幹後傾、膝屈曲、足部内反を見逃すことです。背屈運動に見えても、反動や足趾伸展で代償していると狙いが変わります。
対策は、代償が出る反復数を記録し、その手前を当日の適量にすることです。「できた/できない」ではなく、「何回まではフォームを保てたか」で次回負荷を調整します。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
立位が不安定な患者はどこから始めるべきですか?
座位またはベッド上から開始します。姿勢を下げても狙いは同じで、踵を安定させてつま先を上げることを優先します。
目安回数は毎回 8〜12 回で固定ですか?
固定ではありません。代償、RPE、症状変化に応じて調整します。質を保てる反復回数を優先してください。
足部内反が強いときはどう修正しますか?
つま先の向きを正面にそろえ、踵接地を保ったまま背屈します。反動で引き上げると内反が強まりやすいため、上げ下げのテンポを落として確認します。
フットスラップがある場合、背屈筋力だけ見ればよいですか?
背屈筋力は重要ですが、立脚期の安定、足部アライメント、歩行全体のタイミングも関係します。まず背屈を安定させ、必要に応じて他筋のトレーニングや歩行練習も組み合わせます。
中止判断で最優先する所見は何ですか?
疼痛増悪、めまい、息切れ増悪、ふらつきです。該当時は中止し、再評価のうえ施設プロトコルと医師指示を優先してください。
次の一手
まず 1 週間、同じ A4 記録シートで実施率、症状、代償、次回方針を継続記録してください。記録がそろうと、進行・維持・後退の判断が定量化しやすくなります。
続けて読む:筋トレメニュー ハブ/下腿三頭筋トレーニング
参考文献
- Li Q, Chen L. Effect of tibialis anterior muscle resistance training on ankle and foot dorsum extension function in hypertensive cerebral hemorrhage hemiplegia patients: A randomized controlled trial. Medicine (Baltimore). 2023;102(31):e33827. doi:10.1097/MD.0000000000033827 (PubMed:37543805)
- Ng SS, Hui-Chan CW. Contribution of ankle dorsiflexor strength to walking endurance in people with spastic hemiplegia after stroke. Arch Phys Med Rehabil. 2012;93(6):1046-1051. doi:10.1016/j.apmr.2011.12.016 (PubMed:22440486)
- Bohannon RW. Muscle strength and muscle training after stroke. J Rehabil Med. 2007;39(1):14-20. doi:10.2340/16501977-0018
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


