Braden スコア別 褥瘡予防バンドル|最優先 1 手

臨床手技・プロトコル
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本記事のねらい(スコアを見た瞬間に “ 最優先 1 手 ” を決める)

褥瘡予防は「評価 → 優先順位 → 再評価」の順番を固定すると、病棟でも在宅でもブレにくくなります。 理学療法士のキャリアガイドを見る

本稿はスケール解説ではなく、Braden スコア帯ごとの即実行プラン(ケアバンドル)に特化します。褥瘡発生の低減に効くのは、評価後の「体位変換」「支持面」「微気候」「踵・医療機器のオフローディング」「栄養」の 5 本柱です。国際ガイドラインは、リスク評価と皮膚・軟部組織評価を反復し、ケアを束ねて実施する方針を示しています。

結論だけ先にまとめます(まず 1 行で決める):
≤ 12:支持面を即時強化 + 踵完全免荷 + デバイス圧の監視を “ 仕組み化 ”。
13–14:体位変換の “ 質 ”( 30° 側臥位・ずれ対策)を固定し、湿潤/失禁を前倒しで潰す。
15–18:離床量の “ 日次モニタ ” と皮膚チェックで、局所の偏りを早期に修正。
19–23:手術・鎮静・発熱・下痢などの変動要因が出たら 即再評価してバンドルを切り替える。

褥瘡予防の全体像(評価 → 介入 → 再評価の基本フロー)は 褥瘡予防 × PT の基本フロー にまとめています。本記事は “ 今日やる 1 手 ” の意思決定に集中し、迷いを最小化します。

Braden スコア帯別:最優先タスク(表 1 枚で意思決定)

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Braden スコア帯別の最優先タスク(成人・2026 年版)
帯域 最優先 1 手(最初に決める) ケアバンドル( 5 本柱の要点) 再評価タイミング(目安)
≤ 12(高〜極高) 支持面を即時強化(低エア損失/交互圧など)+ 踵完全免荷 体位変換は “ 一律 2 時間 ” ではなく、湿潤・発熱・鎮静・循環不安定などの所見をふまえて個別化。微気候(失禁バリア・発汗対策)、栄養スクリーニングの早期実施、医療機器圧(マスク・チューブ・装具)のオフローディングをルーチン化 12–24 時間ごと+ 皮膚所見の変化時は随時。
13–14(中) 体位変換の頻度より “ 質 ”( 30° 側臥位/ずれ対策/踵免荷)を固定。 支持面は静的高機能への格上げを検討。湿潤・失禁( IAD )を前倒しで管理。離床可能例はベッド上のみで完結させず、座位・立位・歩行で “ 動く体位変換 ” へ。 24–48 時間ごと+ 体調変化(発熱・下痢・鎮静)で随時。
15–18(低) 離床・活動性の日次モニタ+ 皮膚チェック。 枕・体位で局所圧の偏りを是正。シーツのしわ、牽引線、コード類などの “ 隠れ圧 ” を除去。患者・家族教育でセルフモニタの土台を作る。 48–72 時間ごと+ 活動性低下時は随時。
19–23(無〜最小) 変動要因(手術・鎮静・発熱・下痢・食事低下)出現時の即再評価 セルフモニタ教育。医療機器圧(マスク・スプリント・ギプス)の点検を “ 作業手順 ” に組み込む。 週 1 回(状況安定時)+ 変動要因出現で即。

現場の詰まりどころ(ここが抜けると褥瘡が増えます)

  • スコアは付けたのに、最優先が決まらない:「支持面」「踵免荷」「微気候」「デバイス圧」のうち、まず 1 つだけを “ 今日やる 1 手 ” として固定します。
  • 体位変換が “ 回数だけ ” になる:角度( 30° 側臥位など)と、ずれ(前滑り)を同時に管理しないと、頻度を上げても局所圧が残ります。
  • デバイス圧がノーチェック:マスク・固定具・装具は、圧の位置が毎回少しずれます。観察とパッド再配置を “ ルーチン ” にします。

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介入 5 本柱の実践ポイント(迷いを “ ルール ” に落とす)

1)体位変換(頻度より、所見×姿勢の質)

圧の分散は「頻度 × 姿勢の質」です。臨床では “ 2 時間おき ” が独り歩きしがちですが、エビデンスは「どの頻度・どの肢位が最適かは不確実」という整理が一般的です。したがって本記事では、湿潤(失禁・発汗)/発熱/鎮静/循環不安定/活動性低下などの所見をトリガーに、間隔と肢位を個別化する方針でまとめます。

基本は 30° 側臥位などで、仙骨・大転子への直圧を避け、踵は常に免荷します。離床可能例は座位・立位・歩行で “ 動く体位変換 ” へ移行し、ベッド上のみの対策にとどめないことが重要です。

2)支持面(Support Surface)

高リスク(例:≤ 12 )は入院当日から高機能マットレスへ切り替えます。寝返り不能・大量発汗・失禁が重なる場合は低エア損失などの優先度を上げます。座位時間が長い症例では、車椅子クッション適合(座面傾斜・フットサポート高・前滑り対策)をセットで評価し、ベッドだけで完結させないのがコツです。

3)微気候(湿潤・温度)

失禁関連皮膚障害( IAD )は褥瘡リスクを押し上げます。吸収体は早期交換し、皮膚バリア製剤を併用します。発汗には通気性寝具や送風で対応し、シーツのしわ・湿ったパッド・衣類の縫い目が “ 隠れ圧 ” になる点にも注意します。微気候対策は「乾かす」だけでなく、過乾燥を避けるバランスも意識します。

4)踵・医療機器のオフローディング

踵は骨突出と血流特性から優先度が高い部位です。枕 1 つでの浮かしはずれやすいため、下腿全長を支える方法を基本とし、ズレたら “ 直す ” を作業手順に組み込みます。NIV マスク・頬パッド・頸装具・ギプスなどは接触点の皮膚観察とパッド再配置をルーチン化し、「装着したまま 24 時間ノーチェック」を避けます。

5)栄養

低栄養は創傷リスクを増大させます。たんぱく質と総エネルギー目標を設定し、摂取不足が続く場合は早期に栄養チームへ連携します。在宅移行前には、食形態・補助食品・服薬状況を評価し、家族への教育を含めて計画します。Braden スコアが改善しても、体重・筋量・食欲が追いついていない場合は、栄養介入の継続可否を再検討します。

場面別の使い分け(病棟/回復期/ ICU/在宅)

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現場別:評価と介入の勘所(成人・2026 年版)
場面 評価(回し方) 介入の優先順位(最初に決める) 再評価のトリガー
一般病棟 Braden + 皮膚・軟部組織所見。状態に応じて 24–48 時間ごとに反復。 踵免荷/微気候/体位変換の質を先に固定し、必要時に支持面を強化。 手術・鎮静・発熱・下痢・活動性低下・湿潤増加。
回復期 Braden(必要に応じ他尺度併用)。生活場面の支持面(ベッド外)も含めて評価。 離床量の最適化と栄養、在宅移行を見据えた用具選定・教育を優先。ベッドだけでなく、車椅子・ポータブルトイレ・ダイニング椅子の “ 生活場面での局所圧 ” を評価。 離床量の急低下、座位時間の延長、介護者交代、体重減少。
ICU 12–24 時間ごとに反復(状況に応じ ICU 向け尺度併用も検討)。 デバイス圧対策/微気候/踵免荷/高機能支持面の早期導入が最優先。体位制限下でも “ ベッド側でできること ” を最大化。 鎮静深度の変化、循環作動薬、機械換気、体位制限の変更。
在宅・施設 評価尺度よりも「日々の変化」と「継続できる資源」を織り込む。 ベッド・車椅子の支持面調整、ポジショニング、介護者教育が主軸。できる範囲でバンドルを “ 継続 ” する設計。 介護力の低下、発熱・下痢、食事量低下、活動性低下、皮膚の発赤。

運用・モニタリングのコツ(やめ時=デエスカレートを先に決める)

褥瘡予防では「やり始め」だけでなく、やめ時(デエスカレート)をあらかじめ設計しておくことが重要です。支持面を格上げしたら、疼痛・睡眠・皮膚所見・看護負荷・コストの 4 指標を日次でモニタし、48–72 時間で変化が乏しければ “ 体位の質(ずれ)/クッション/微気候/デバイス圧 ” のどれかを優先的に見直します。

Braden スコアが数日安定して上向きでも、局所所見(発赤・硬結・熱感)が残る場合は、間隔を広げる前に原因(ずれ・湿潤・支持面)を再点検します。カンファレンスでは「最優先 1 手/代替 1 手/次回再評価時刻」の 3 点をセットで共有すると実装率が上がります。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1.Braden 14 点は “ 危険 ” ですか?病棟と在宅で同じ意味ですか?

A.点数は “ リスクのサイン ” ですが、同じ点数でも背景(鎮静・失禁・活動性・介護力)で優先順位が変わります。病棟は資源(支持面・人手)が動かしやすい一方、在宅は “ 継続できるバンドル ” が鍵です。本記事の表は、点数そのものより「今すぐやる 1 手」を決める用途で使ってください。

Q2.体位変換は結局、何時間おきが正解ですか?

A.一律の正解は決めにくく、研究でも最適頻度は不確実という整理が一般的です。臨床では “ 所見(湿潤・発熱・鎮静・循環不安定・活動性低下)× 支持面 ” で間隔を個別化し、頻度だけでなく “ ずれ(前滑り) ” を同時に管理する方が再現性が上がります。

Q3.30° 側臥位をよく使う理由は何ですか?

A.仙骨・大転子への直圧を避けやすく、姿勢の質(ずれ・骨突出)を整えやすいからです。ただし万能ではなく、疼痛・拘縮・呼吸状態などで許容できない場合は、支持面や微気候を強化して代替します。

Q4.医療機器(マスク・固定具・装具)の圧は、何を最優先で見ればいいですか?

A.まず “ 接触点の皮膚所見 ”(発赤・びらん・湿潤)を最優先で確認し、パッド位置の再配置をルーチンにします。「装着したままノーチェック」が最大の落とし穴です。高リスク帯(≤ 12 )では、観察頻度そのものも前倒しにします。

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参考文献

  1. European Pressure Ulcer Advisory Panel, National Pressure Injury Advisory Panel and Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. The International Guideline. Emily Haesler (Ed.). 2019. Guideline
  2. Agency for Healthcare Research and Quality. The Braden Scale(Hospital Toolkit). AHRQ
  3. Gillespie BM, Walker RM, Latimer SL, et al. Repositioning for pressure injury prevention in adults: An abridged Cochrane systematic review and meta-analysis. Int J Nurs Stud. 2021;120:103976. doi: 10.1016/j.ijnurstu.2021.103976 (PMID: 34090235)
  4. Higgins J, Casey S, Taylor E, Wilson R, Halcomb P. Comparing the Braden and Jackson/Cubbin Pressure Injury Risk Scales in Trauma-Surgery ICU Patients. Crit Care Nurse. 2020;40(6):52-61. doi: 10.4037/ccn2020874 (PMID: 33257967)
  5. 岡田克之. 褥瘡のリスクアセスメントと予防対策. 日本老年医学会雑誌. 2013;50(5):583-591. PDF

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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