バーク側方突進スケール(BLS)評価|カットオフ3点

評価
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Burke Lateropulsion Scale(BLS)とは?

BLS(Burke 側方突進スケール)は、寝返り・座位・立位・移乗・歩行の 5 場面で「受動的な姿勢修正への抵抗」や「側方へ押す挙動」を観察し、0–17 点で重症度を定量化する評価法です。プッシャー行動(lateropulsion)の有無と変化を素早く把握でき、急性期〜回復期の方針決定や経過モニタリングに適しています。

文献では信頼性( ICC 0.93–0.94 )や並存妥当性が報告され、近年はカットオフの最適化(≥ 3 点)も提案されています。臨床では SCP(Scale for Contraversive Pushing)4PPS と使い分けることで、分類の精度と変化検出力を補完できます。

BLS の特徴と強み(SCP/4PPS との違い)

BLS は機能場面に沿った 5 項目で構成され、特に立位の配点(0–4 点)が大きいのが特徴です。評価の焦点は「どの角度・どの時点で抵抗が生じるか」「どれほど強く押しや傾きが出るか」です。SCP は 3 成分で簡潔に診断しやすい一方、BLS は寝返り〜歩行までをカバーし、小さな変化の検出に強いと報告されています。

実施手順( 5 場面のコツ)

  1. 寝返り(仰臥位):体幹を中間位へ誘導し、反対側へ押し戻す反応や抵抗の発現角・強さ・持続を観察します。
  2. 座位:外乱や修正誘導に対する復元への抵抗と、座面での側方押しを確認します。
  3. 立位(配点大):直立の確保と修正への抵抗の強さ・発現角を重視します。
  4. 移乗:座位↔立位の過程で非麻痺側への能動的な押し/修正拒否がないかをみます。
  5. 歩行:側方への推進傾向や介助入力への反応を追います(歩行時のみ出る軽度例に注意)。

スコアリングは「抵抗の発現角・強さ・持続」の組合せで段階化します。再評価は同一の合図・同一介助レベル・同一視線条件で行い、記録用紙に条件メモを残すと信頼性が向上します。

項目別ガイド(趣旨/判定基準のヒント/観察ポイント/閾値)

① 寝返り

  • 趣旨:臥位での重心移動に対する修正反応と、受動修正への抵抗の有無をとらえる。
  • 判定基準のヒント:誘導に対し一貫した抵抗が出るか/戻りの強さがあるか。
  • 観察ポイント:肩帯・骨盤の先行、体幹の復元方向、呼吸や顔面緊張の増大。
  • 臨床閾値:軽度=一過性の抵抗で合図に反応、中等度=複数回で持続、重度=明確な押し返しや介助を要する。

② 座位

  • 趣旨:支持面上での対側押し傾向と、外乱への修正容認度をみる。
  • 判定基準のヒント:外乱に対し自発的な復元があるか/修正誘導の受容があるか。
  • 観察ポイント:骨盤の側方偏位、上肢での支持・押し、足底荷重の左右差。
  • 臨床閾値:軽度=見守りで保持、中等度=最小介助を要す、重度=持続的介助が必要。

③ 立位(配点大)

  • 趣旨:抗重力下での直立と修正への抵抗を評価(重症度判定に寄与大)。
  • 判定基準のヒント:直立保持の可否/修正誘導への抵抗の強さ・持続
  • 観察ポイント:体幹の傾き・骨盤の側方滑り、非麻痺側下肢への過荷重、頭部の偏位。
  • 臨床閾値:軽度=合図で直立回復、中等度=何度も修正が必要、重度=介助でも直立困難。

④ 移乗

  • 趣旨:姿勢転換の過程で出る能動的押しと修正拒否の有無をみる。
  • 判定基準のヒント:立ち上がり・着座の局面で持続する押しがあるか。
  • 観察ポイント:起立時の骨盤側方シフト、上肢での押し、足部の外旋・踏み替え。
  • 臨床閾値:軽度=声かけで行為継続、中等度=段階的介助が必要、重度=安全上の中等度介助以上。

⑤ 歩行

  • 趣旨:動的課題で顕在化する側方推進・修正抵抗を評価。
  • 判定基準のヒント:側方への一貫した逸脱修正への抵抗があるか。
  • 観察ポイント:立脚期の側方押し、骨盤の横移動の大きさ、杖・手すりへの過依存。
  • 臨床閾値:軽度=見守りで軌道修正、中等度=最小〜中等度介助、重度=安全確保に常時介助。

Tips:各場面での「抵抗の再現性」「介助量」「持続時間」をメモすると、次回評価の比較精度が上がります。

カットオフと解釈(≥ 2 と ≥ 3 の使い分け)

  • 従来:BLS ≥ 2 をプッシャー行動スクリーニングの目安として使用。
  • 近年の提案:≥ 3重度のバランス障害と整合し、SCP との一致や妥当性が改善(研究場面や重症度層別化に推奨)。
  • 変化の判定:急性期の目安として MDC ≈ 2.18SEM ≈ 0.792 点前後の改善で「真の変化」可能性を検討します。

運用例:拾い漏れ回避を重視する施設は ≥ 2 でスクリーニング、研究や重症度分類では ≥ 3 を採用する、など施設方針として定義しておくと判定のブレが減ります。

BLS・SCP・4PPS の使い分け(比較表)

プッシャー関連 3 指標の比較(成人・急性〜回復期)
指標 構成 主な判定観点 カットオフ 強み/留意点
BLS 5 場面(寝返り・座位・立位 0–4 点・移乗・歩行) 受動修正への抵抗、側方への押し ≥ 2(従来)/≥ 3(妥当性向上) 機能場面で小さな変化に敏感。軽症〜回復期で SCP と不一致が出ることがあり、両者の併用が有用。
SCP 3 成分(姿勢左右差・伸展・修正抵抗) 座位/立位での左右差と修正抵抗 構成成分の閾値に準拠 短時間で簡潔。重度例の識別に有用。歩行や寝返りの情報は反映しにくい。
4PPS 4 段階の単純化スコア プッシャー行動の有無・程度 研究提案に準拠 実用性が高く信頼性良好。詳細な変化量把握は BLS 併用が無難。

評価体制や教育設計は、PT キャリアガイド(評価スキルの体系化)も参考になります。

よくあるミスと対策

  • 角度の見積り誤差:床・壁の垂直基準(テープ等)を用意し、写真/動画で事後確認します。
  • 介助のバラつき:同じ介助者・同じキュー・同じ手順で再評価。記録用紙に条件メモ欄を確保します。
  • 軽症例の見逃し:歩行のみで出現する例あり。BLS の歩行項目で確認し、SCP も併用します。
  • 分類の不一致:BLS と SCP で割れることあり。≥ 3 を重症指標として意思決定を明確化します。
  • 頭位・視線の影響:視覚入力を一定化(同一注視点)。頭部偏位は別途メモします。

配布:記録用紙/クイックリファレンス

参考文献

  1. D’Aquila MA, Smith T, Organ D, Lichtman S, Reding M. Validation of a lateropulsion scale for patients recovering from stroke. Clin Rehabil. 2004;18(1):102–109. DOIPubMed
  2. Clark E, Hill KD, Punt TD. Responsiveness of 2 scales to evaluate lateropulsion or pusher syndrome recovery after stroke. Arch Phys Med Rehabil. 2012;93(1):149–155. DOIPubMed
  3. Bergmann J, Krewer C, Müller F, Jahn K. A new cutoff score for the Burke Lateropulsion Scale improves validity in the classification of pusher behavior in subacute stroke patients. Gait Posture. 2019;68:514–517. DOIPubMed
  4. Bergmann J, Krewer C, Rieß K, et al. Inconsistent classification of pusher behaviour in stroke patients: a direct comparison of the SCP and the BLS. Clin Rehabil. 2014;28(7):696–703. DOIPubMed
  5. Chow E, et al. Reliability and Validity of the Four-Point Pusher Score (4PPS). J Rehabil Med. 2019. Europe PMC
  6. RehabMeasures Database. Burke Lateropulsion Scale. Web

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

BLS の「≥ 2」と「≥ 3」はどちらを使うべきですか?

拾い漏れ回避のスクリーニング目的では ≥ 2、重症度の明確化や研究・介入計画では≥ 3を推奨します。施設方針として両者の使い分けを事前に定めると、判定のブレが減ります。

改善の「有意」な変化量はどのくらいですか?

急性期報告の目安として MDC ≈ 2.18SEM ≈ 0.79)があります。再評価は同一条件(介助レベル・合図・視線固定)で実施し、記録用紙に条件を残しましょう。

SCP/4PPS はいつ併用しますか?

軽症や回復期で BLS と SCP の判定が割れやすい症例、短時間スクリーニングが必要な場面で併用が有用です。BLS の歩行/立位のみで症状が出るケースもあるため、場面ごとの差に着目してください。

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