Durkan テスト|手根管圧迫で CTS の確認を標準化する
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Durkan テスト(手根管圧迫テスト)は、手根管部を直接圧迫して正中神経領域のしびれ・疼痛を誘発し、手根管症候群( CTS )の可能性を確認する検査です。結論として、現場でブレを減らす鍵は「症状分布」「保持時間」「記録の型」を先に固定することです。
この記事では、Durkan テストをいつ使うか、どう実施するか、陽性をどう判定するか、カルテにどう残すかを整理します。Phalen テストなどを増やす前に、まず Durkan を同条件で再現できる形に整えることで、評価の共有が安定します。
いつ使う?|分布と夜間症状が合うときに確認する
Durkan テストは、母指〜中指を中心とした正中神経領域のしびれ、夜間〜起床時の増悪、把持・つまみ動作での悪化がある場面で使いやすい検査です。最初に症状の分布と時間帯を確認し、CTS らしい仮説が立つ場合に実施します。
一方で、小指側のしびれが主症状、頸部症状を伴う、広範囲の感覚異常がある場合は、Durkan 単独で判断しないことが重要です。必要に応じて頸部・尺骨神経領域の評価も組み合わせ、症状分布との整合性を確認します。
手順|保持 30 秒を基準に、圧と位置を一定にする
Durkan テストは、屈筋支帯上を一定圧で圧迫し、正中神経領域の症状再現を確認します。再現性を落とす主因は、圧の強弱、圧迫位置、保持時間のばらつきです。まずは保持 30 秒を基準に固定し、同条件で左右差を確認します。
| 手順 | やること | 観察ポイント | 中止目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 症状を 1 行で確認する | 母指〜中指中心か、小指側が混在するか | 評価前から強い疼痛がある |
| 2 | 手根管部に一定圧を加える | しびれと局所圧痛を分けて聴取する | 急激な疼痛が出現する |
| 3 | 保持 30 秒を基準にする | 症状出現までの秒数を記録する | 冷汗・気分不良がある |
| 4 | 左右を同条件で比較する | 左右差が主訴と一致するか確認する | 再現性が得られない |
陽性基準|局所痛ではなく正中神経領域のしびれで判定する
陽性は、圧迫により正中神経領域のしびれ・疼痛が再現または増悪する場合です。局所の押された痛みだけを陽性にすると、腱・関節・皮膚の圧痛が混ざりやすくなります。判定では「どの分布に」「何秒で」「何が出たか」を主語にします。
| 判定 | 所見 | 記録で残すこと |
|---|---|---|
| 陽性 | 母指〜中指など正中神経領域のしびれが再現する | 出現秒数、分布、左右差 |
| 陰性寄り | 局所圧痛のみで、しびれの再現がない | 局所痛のみ、正中神経領域しびれなし |
| 保留 | 広範囲の痛み、尺骨神経領域のしびれ、頸部症状が混在する | 分布不一致、追加評価の必要性 |
記録の型|何秒で、どこに、何が出たかを書く
カルテでは「Durkan 陽性」だけで終わらせず、実施条件と症状分布を残すと共有しやすくなります。最低限、保持時間、症状出現までの秒数、症状分布、局所圧痛との区別、左右差を記録します。
| 項目 | 記載例 | 意図 |
|---|---|---|
| 条件 | 手根管部を一定圧で圧迫、保持 30 秒 | 再現性を担保する |
| 結果 | 12 秒で母指〜中指のしびれ再現(+) | 陽性内容を明確にする |
| 左右差 | 右(+)、左(−) | 主訴との整合性を見る |
| 補足 | 局所圧痛のみなし/小指側しびれなし | 偽陽性を避ける |
解釈|単独確定ではなく、病歴・分布・他所見と統合する
CTS は Durkan テストだけで確定するものではありません。病歴、症状分布、感覚障害、筋力低下、母指球萎縮、他の誘発テスト、必要に応じた神経伝導検査などを統合して判断します。Durkan は「確認 1 本」として位置づけると、検査を増やしすぎずに評価を整理できます。
評価設計を俯瞰したい場合は、評価の全体像(ハブ)で検査の位置づけを確認しておくと、単体テストの解釈が揃いやすくなります。
現場の詰まりどころ|迷いは圧・時間・分布に戻す
現場で詰まりやすいのは、局所痛だけで陽性にしてしまうこと、保持時間が毎回変わること、結果を記録に落とし込めないことです。迷ったら、次の 3 点に戻します。
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、個人の理解だけでなく、評価手順・記録様式・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。評価・記録・報告の型をまとめて整理したい方は、PT キャリアガイドも参考になります。
評価・記録の型を整理したい方へ
よくある失敗|局所痛だけを陽性にしない
失敗の多くは「局所圧痛だけで陽性」「保持時間のばらつき」「圧と位置の不一致」です。対策は、しびれの分布を主語にする、保持 30 秒を固定する、左右差を同条件で取る、の 3 点に集約できます。
| NG | なぜ起きるか | まず直す 1 点 | OK 記録例 |
|---|---|---|---|
| 局所圧痛のみで(+)にする | 痛みとしびれを混同する | 正中神経領域のしびれを確認する | 母指〜中指しびれ再現(+)/局所痛のみ(−) |
| 保持時間が毎回違う | 基準が決まっていない | 保持 30 秒に固定する | 保持 30 秒、12 秒でしびれ(+) |
| 圧の位置・強さが一定でない | 強く押すほどよいと誤解する | 一定圧・同一位置を優先する | 一定圧で実施、左右差は同条件で確認 |
回避の手順|5 分で増やさず決める
- 症状を 1 行で要約する:分布、夜間増悪、増悪動作
- 母指〜中指と小指側の感覚を分けて確認する
- Durkan テストは保持 30 秒で固定する
- 局所痛のみなら陽性扱いにせず、圧・位置・分布を見直す
- 必要時に Phalen テストなどを補助で追加し、所見の整合性を確認する
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Durkan テストが陽性なら、CTS で確定できますか?
確定はできません。病歴、症状分布、感覚障害、他の誘発所見などを統合して判断します。Durkan テストは「確認 1 本」として使い、単独診断にしないことが重要です。
局所が痛いだけでも陽性ですか?
局所圧痛のみは陽性の根拠として弱く、偽陽性につながります。正中神経領域のしびれ・疼痛が再現するかを主語にして判定します。
保持時間は 30 秒と 60 秒のどちらがよいですか?
日常臨床では 30 秒を基準に固定すると共有しやすくなります。必要時のみ 60 秒まで延長する場合も、記録には実際の保持時間と症状出現までの秒数を残します。
Phalen テストとどちらを先に行うべきですか?
典型例では Phalen テストを入口、Durkan テストを確認 1 本として使うと整理しやすいです。手関節掌屈位が取りにくい場合は Durkan テストを先に行う選択もあります。
次の一手|手部テストの中で位置づけを揃える
Durkan テストは単体で覚えるより、手関節・手部の整形外科テスト群の中で位置づけると使いやすくなります。まずは同ジャンルの導線を 2 本に絞って、評価の順番を整えましょう。
- 全体像を確認する:整形外科的テスト一覧
- 手部評価に戻る:手関節・手部の整形外科テスト
参考文献
- Durkan JA. A new diagnostic test for carpal tunnel syndrome. J Bone Joint Surg Am. 1991;73(4):535-538. PubMed: PMID 1796937
- D'Arcy CA, McGee S. Does this patient have carpal tunnel syndrome? JAMA. 2000;283(23):3110-3117. doi:10.1001/jama.283.23.3110(PubMed)
- MacDermid JC, Wessel J. Clinical diagnosis of carpal tunnel syndrome: a systematic review. J Hand Ther. 2004;17(2):309-319. doi:10.1197/j.jht.2004.02.015(PubMed)
- Ozdag Y, et al. Sensitivity and Specificity of Examination Maneuvers for Carpal Tunnel Syndrome: A Meta-Analysis. PMC10446104
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


