2026年臨時介護報酬改定とリハ職の働き方|給料・人員配置はどう変わる?

制度・実務
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2026 年臨時介護報酬改定とは?リハ職に関係するポイント

介護保険では原則 3 年ごとに介護報酬改定が行われますが、2026 年度には例外的に「臨時改定(期中改定)」を行う方針が示されています。背景にあるのは、慢性的な人材不足と物価高騰の中で、介護現場の賃金水準を底上げし、人材を確保したいという政策的な狙いです。これまでの処遇改善加算に加えて、基本報酬の引き上げや配分の見直しが議論されており、「介護職員だけでなく、介護に携わる多様な専門職」をどこまで賃上げの対象に含めるかが大きな論点になっています。

本記事では、介護老人保健施設・特別養護老人ホーム・通所リハ・通所介護・訪問リハなど、介護保険領域で働く PT ・ OT ・ ST の視点から、2026 年の臨時介護報酬改定が「給料」「人員配置」「役割・働き方」にどう影響しうるかを整理します。2026 年度介護報酬改定の全体像や LIFE ・自立支援・重度化防止など制度面の論点整理については、別記事の2026 年度介護報酬改定とリハ職が今から備えるポイントでまとめているため、ここではあくまで介護保険フィールドにおける処遇・働き方にフォーカスし、「自分のフィールドで何を準備しておくと良いか」という実務的な視点を重視して解説していきます。

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どこまで給料が上がる?処遇改善と臨時改定の関係

賃上げ策としては、これまでも介護職員処遇改善加算や特定処遇改善加算などが用意されてきましたが、「加算の仕組みが複雑でわかりにくい」「職種間で不公平感がある」といった課題が指摘されてきました。2026 年の臨時介護報酬改定では、こうした既存の枠組みを土台にしつつ、基本報酬の引き上げや、加算の対象をどこまで広げるかが検討されています。ニュースでは「月 1 万円程度の賃上げ」などのフレーズが先行しますが、一時的な給付と恒久的な報酬引き上げは性質が異なり、どの職種がどの枠で評価されるかが重要なポイントです。

リハ職にとっては、「介護職員」として処遇改善加算の恩恵を受けるのか、それとも「専門職」として別枠の評価を受けるのかによって、実感できる賃上げの幅が変わってきます。また、事業所側が加算をどれだけ取得し、どのように配分しているかによっても手取りは大きく異なります。2026 年の臨時改定の動向を追いつつ、自分の所属する法人が現在どの加算を届け出ていて、賃金や賞与にどう反映しているのかを早めに把握しておくことが、リハ職としてのキャリア戦略を立てるうえでも大切です。

老健・特養・通所・訪問リハでの影響イメージ

介護老人保健施設(老健)では、リハ職は個別リハや短期集中リハに加え、在宅復帰・在宅療養支援の機能を担っています。ADL 維持向上加算や在宅復帰支援に関する評価が強化されれば、リハ職が評価・カンファレンス・家族支援に関わる場面はさらに増える可能性があります。特別養護老人ホーム(特養)では、専従または兼務の PT ・ OT が少数配置されているケースが多く、「個別リハ」だけでなく、ポジショニングや離床促進、摂食・嚥下支援など、日常ケアの質を底上げする役割がより重視されると考えられます。

通所リハ・通所介護では、機能訓練加算や ADL ・活動量の評価が、報酬と利用者家族への説明の両面で重要になってきます。フレイルやサルコペニア、栄養状態の評価を含めた「総合的な機能訓練」を提供できる事業所ほど、今後の報酬体系の中で選ばれやすくなるかもしれません。訪問リハは、介護報酬だけでなく医療保険側の動きとも関連しながら、在宅医療チームの一員としての位置づけが強まっています。2026 年の臨時改定を「自分のフィールドの価値をどう高めていくか」という視点で捉えると、学ぶべき評価・介入スキルや、連携のあり方が見えやすくなります。

人員配置・シフト・役割分担はどう変わる?

「介護報酬が上がる=人が増えて楽になる」とは限らないのが現場の難しいところです。実際には、財源には限りがあり、報酬の引き上げと同時に、サービス提供時間や人員配置、アウトカム指標などについて、より厳密な管理が求められる可能性もあります。リハ職に対しては、個別リハの単位数だけでなく、集団リハや生活場面での介護職への関わり、加算要件を満たすための評価・計画・カンファレンス運営など、「間接的な生産性」を含めた役割が期待されやすくなります。

シフト面でも、早番・遅番・土日勤務への対応が求められる場面は増えるかもしれません。特に、通所や訪問では「朝・夕のニーズ」や「土曜営業」が利用者視点で重視される一方、職員のワークライフバランスも守る必要があります。リハ職としては、自分たちだけが無理をするのではなく、ケアマネや看護職、介護職と一緒に「どの時間帯にどの専門職がいると利用者にとって一番メリットが大きいか」を話し合い、現実的なシフト案を提案していくことが大切です。

現場の詰まりどころと、リハ職が今からできること

臨時改定のニュースが流れると、「給料が上がるらしい」「でも自分の職場にどこまで反映されるかわからない」といったモヤモヤが生まれがちです。また、「加算を取るための書類仕事だけ増えて、本当に大事なリハの時間が削られる」「リハ職が委員会やカンファの仕事を引き受けた分が評価されているのか不安」といった声もよく聞かれます。こうした詰まりどころを放置したまま改定を迎えると、せっかくの処遇改善の流れが現場の疲弊感だけを強めてしまいかねません。

今からできることとしては、まず自事業所の介護報酬や加算の仕組み、人事評価制度について、上司や事務担当者に確認しておくことが挙げられます。そのうえで、リハ職として「どの場面でどのように成果を出せているか」を、評価指標や事例を通じて言語化し、法人内で共有していくことが重要です。また、「もし賃上げや人員体制の見直しがあった場合、自分はどのような働き方をしたいのか」「どのような職場環境なら力を発揮しやすいのか」を、家族や同僚とも話しながら整理しておくと、いざというときに迷いにくくなります。

おわりに|「介護だから安い」で終わらせないために

これまで、「介護だから給料が安いのは仕方ない」「好きでやっている仕事だから我慢するしかない」といった言葉が、現場で半ばあきらめのように語られてきました。しかし、国として介護職の賃上げを明確に打ち出し、臨時改定まで行おうとしている流れを見れば、「介護だから仕方ない」という前提は少しずつ変わりつつあります。ただし、すべての事業所・すべての職員が自動的に報われるわけではなく、報酬の取り方や人事制度、地域でのポジショニングによって、今後の差はむしろ広がるかもしれません。

その中で、リハ職としてできることは、「どんなケアや体制が利用者のためになり、それが報酬や評価にも結びつくのか」を理解し、自分の働き方や職場選びを少しずつアップデートしていくことです。制度の変化をきっかけに、将来のキャリアや転職も含めて整理しておきたいと感じたら、面談準備や職場評価の視点をまとめたマイナビコメディカル活用ガイドも参考にしながら、「どんな環境なら自分らしく介護・リハに関われるか」を考えてみてください。

参考文献・資料

  • 厚生労働省:社会保障審議会 介護給付費分科会 資料(2025 年度). 臨時の介護報酬改定に関する検討状況.
  • 厚生労働省:介護職員の処遇改善に関するこれまでの取組と今後の方向性(事務局説明資料).
  • 内閣府・厚生労働省:物価高騰等への対応としての賃上げ支援パッケージ(介護・障害福祉分野)関連資料.
  • 各種業界団体・学会による介護報酬改定要望書・意見書(老健・通所・訪問系団体など).

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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