反応的バランスとは?(定義と臨床意義)
反応的バランスは、予期しない外乱で 重心( COM )が支持基底面( BOS )外へ逸脱しかけた瞬間に、姿勢方略(足関節・股関節・ステップ)で転倒を回避する即時応答の能力です。転倒は多くが「不意の加速・方向変化」で起こるため、この領域の評価と訓練は転倒予防の核心を担います。
用語や全体像は バランス概念ハブを参照し、本記事では外乱応答とステップ方略にフォーカスして、Mini-BESTest・FGA・mCTSIB と結びつけた臨床運用をまとめます。
評価の入口(何で測る?どこを見る?)
全体像は Mini-BESTest の反応的姿勢制御で把握し、歩行中の難所は FGA で抽出します。感覚統合の偏りが強い場合は mCTSIB で視覚/体性感覚/前庭のリウェイティングを確認し、外乱応答の土台を整えます。
観察ポイントは ①一歩反応が出るか/方向は適切か、②反応時間、③二歩以上必要か、④上肢保護・把持への依存。自己効力が低い症例では ABC・FES-I を併用して心理面を把握します。
※この表は横にスクロールできます。
場面 | 推奨評価 | 見るポイント | 所要 | 補足 |
---|---|---|---|---|
立位での外乱応答 | Mini-BESTest | 一歩反応・方向・反応時間 | 約 15 分 | 総合像の把握に最適 |
歩行中の難所抽出 | FGA | 方向転換・速度変化・視覚操作 | 約 10 分 | 屋内外の転倒場面を想定 |
感覚統合の偏り | mCTSIB | フォーム/閉眼での保持 | 約 5 分 | 土台調整の要否判断 |
訓練:ステップ方略の段階づけと安全管理
原則は 小外乱 → 単方向 → 多方向 → 予測困難 の順で段階づけます。先行して mCTSIB で感覚統合の土台を整えると介入が安定します。安全管理(介助者配置・環境クリアランス・吊り具/ベルトの有無)を明確にし、失敗を恐れず十分な試行回数を確保します。
- 前後一歩反応:軽い徒手外乱 → 弾性バンド → プッシュ&リリース
- 側方一歩反応:片側 → 両側 → ランダム提示
- 多方向:前/後/左右/斜めをカード抽選で提示
- 把持戦略の縮小:壁/手すり依存 → 独立へ
生活課題への橋渡しとして、FGA の苦手課題(方向転換・速度変化・ヘッドターン等)を再現し、介入フローに沿って再評価まで 1 サイクルで設計します。
デュアルタスク × 外乱(転倒場面の再現)
反応的課題は認知負荷で破綻しやすい領域です。早期から少量のデュアルタスク(逆唱・名詞列挙・ 7 の引き算など)を重ね、妥当なレベルで成功体験を積み上げます。改善の可視化には ABC・FES-I を用います。
よくある質問(FAQ)
反応的バランスを強化すると何が変わる?
不意の外乱に対する一歩反応と反応時間が改善し、歩行中の方向転換・速度変化・障害物回避での転倒リスク低減が期待できます。
どの評価から始めれば良い?
まず Mini-BESTest で全体像を掴み、FGA で歩行中の難所を特定、感覚統合の偏りは mCTSIB で確認します。
訓練の順序で失敗しやすい点は?
外乱の強度と方向のステップアップが急すぎる、安全管理が甘い、土台(感覚統合)を整えずに反応課題だけ進める—の3点に注意します。