ローテーターカフトレーニングは「チューブ外旋だけ」で考えない
ローテーターカフ(腱板)トレーニングというと、肘を脇につけてチューブを外側へ引く外旋運動が代表的です。しかし、ローテーターカフは棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋から構成され、それぞれが単独で働くのではなく、三角筋や肩甲帯筋群などと協調しながら肩関節の運動と安定性に関与します。
理学療法では、まず外旋・内旋方向の筋力を高めたいのか、上肢挙上中の腱板機能を高めたいのか、頭上動作や荷重課題へつなげたいのかを整理すると、種目や肩関節肢位を選びやすくなります。
| 目的 | 候補となる種目 | 主な確認点 |
|---|---|---|
| 低負荷で外旋筋群を使う | side-lying ER、チューブER | 肘位置、肩甲骨、体幹回旋 |
| 内旋方向へ負荷を加える | チューブIR、等尺性内旋 | 肩甲骨前傾、体幹回旋、肩前方偏位 |
| 挙上中の腱板機能を高める | scaption、full-can系 | 肩すくみ、疼痛、上腕骨と肩甲骨の協調 |
| 頭上肢位で外旋機能を高める | 挙上位ER | 肩関節肢位、体幹伸展、肩甲骨位置 |
| 実際の動作へつなげる | 荷重、リーチ、投球・頭上動作など | 肩甲帯・体幹・下肢との協調 |
筋別トレーニングを一覧から確認したい方は、筋力トレーニングメニューハブもご覧ください。

ローテーターカフトレーニングの種目を目的別に選ぶ
ローテーターカフの運動では、「この種目なら棘上筋だけ」「この運動なら棘下筋だけ」と完全に分離して考える必要はありません。肩関節運動では複数の腱板筋、三角筋、肩甲帯筋群が共同して働くため、対象者にどの方向・肢位・負荷条件で力を発揮してほしいかを先に決めます。
1.side-lying external rotation|外旋筋群へ負荷をかける
side-lying external rotationは、棘下筋・小円筋を含む外旋筋群へ負荷をかける代表的な運動です。側臥位で肘を曲げ、上腕を体側付近に保ちながら前腕を持ち上げます。
この運動では重力そのものを抵抗として利用できるため、チューブがなくても実施できます。また、外部抵抗を追加する場合も負荷量を調整しやすい特徴があります。
観察したいのは、前腕をどこまで高く上げられたかだけではありません。肘が身体から大きく離れる、肩甲骨を過度に内転させる、体幹を後方へ回旋して外旋範囲を稼ぐといった動きがないか確認します。
肩関節外旋のROMを超えて肩甲帯や体幹が動き始める場合は、そこで運動範囲を見直します。
2.チューブ外旋|立位で外旋トルクを調整する
立位で行うチューブ外旋は、臨床でも使用しやすいローテーターカフトレーニングです。肘を体側付近に置き、外旋方向へ抵抗を加えます。
タオルを上腕と体幹の間に挟む方法もありますが、タオル自体が必須なのではありません。上腕位置を一定にしやすくするためのキューとして利用できます。
負荷が高すぎると、肩関節外旋より先に体幹回旋、肩甲骨内転、肘の移動などが大きくなります。その場合はチューブ抵抗や運動範囲を下げます。
また、「肘を脇へ強く押しつける」ことを目標にすると、余分な肩甲帯・上腕筋活動が増える場合があります。上腕を必要な位置に保ちながら外旋できることを優先します。
3.抵抗下内旋|肩甲下筋だけの運動とは考えない
肩関節内旋へ抵抗を加える運動では、肩甲下筋を含む内旋筋群が活動します。ただし、大胸筋や広背筋、大円筋なども内旋作用をもつため、「チューブ内旋=肩甲下筋だけを鍛える」とは考えません。
肩甲下筋を含む腱板機能へ負荷を与える一つの課題として位置づけます。
観察したいのは、内旋する際に肩が前方へ大きく移動する、肩甲骨が過度に前傾する、体幹ごと回旋するといった代償です。
外旋運動と同様、運動範囲を大きくすることより、肩関節運動としてコントロールできているかを確認します。
4.scaption|挙上中のローテーターカフ機能を考える
scaptionは、肩甲面付近で上肢を挙上する運動です。棘上筋を含むローテーターカフだけでなく、三角筋や肩甲帯筋群も活動します。
そのため、scaptionを「棘上筋だけを鍛える種目」と説明するのは適切ではありません。上肢挙上という課題の中で、腱板が三角筋などと協調して働く運動として考えます。
負荷設定では、ダンベルの重さだけでなく挙上角度やレバーアームも影響します。
肩をすくめる、体幹を側屈する、腰を反らす、痛みを避けるために挙上面が大きく変化するといった場合は、重量・ROM・運動面を調整します。
5.full can・empty can|「棘上筋を狙う形」で固定しない
肩関節外旋を伴うfull-canと、内旋を伴うempty-canは、どちらも肩の筋活動研究で用いられてきた運動です。
しかし、どちらかを「棘上筋だけを選択的に鍛える運動」と考える必要はありません。棘上筋だけでなく、三角筋や他の腱板筋も活動します。
特に肩関節内旋を伴う挙上で症状が出やすい対象者に対して、empty-can肢位を無理に選択する理由はありません。挙上面や回旋肢位を変えながら、症状と運動の質を確認します。
種目名から選ぶのではなく、どの肢位なら必要な挙上負荷を安全に加えられるかで判断します。
6.挙上位外旋|頭上動作へ近づける
肩関節外転・挙上位での外旋運動は、肘を体側につけた外旋とは異なる負荷条件になります。
研究でも、上腕の挙上角度や運動面によって棘下筋・棘上筋の活動分布が変化することが報告されています。そのため、頭上で外旋力を発揮する必要がある対象者では、目的に応じて挙上位外旋を選択できます。
一方で、低負荷の外旋で症状が出る対象者に最初から90°挙上位を用いる必要はありません。
挙上角度を高くすると、腱板だけでなく肩甲帯や体幹への要求も変化します。腰椎伸展、肋骨挙上、肩甲帯の過剰な固定などがないか確認します。
7.リーチ・荷重・投球へつなげる|局所運動で終わらせない
ローテーターカフトレーニングの最終目標は、強いチューブで外旋できることではありません。日常生活や仕事、スポーツでは、さまざまな肩関節肢位や速度、外部負荷の中で上腕骨と肩甲骨をコントロールする必要があります。
局所的な外旋・内旋運動では問題がなくても、頭上リーチで肩すくみや腰椎伸展が増える、荷重課題では肩甲骨運動が崩れる、投球動作では体幹や下肢との連動が不十分になる場合があります。
そのため、必要な局所筋力を確認した後は、リーチ、荷重支持、押す・引く動作、投球・頭上動作など、対象者に必要な機能課題へ負荷を広げます。
ローテーターカフトレーニングで確認したい代償
腱板トレーニングでは、「肩の奥に効いている」という感覚や回数だけで判断せず、肩甲骨・上腕骨・体幹がどのように動いているかを確認します。
| みられる反応 | 考えること | 調整例 |
|---|---|---|
| 外旋で体幹ごと回る | 現在の抵抗が高い、またはROMが大きい | 抵抗・ROMを下げる |
| 肩甲骨を強く寄せ続ける | 肩関節運動を肩甲帯固定で補っている | 肩甲骨を過度に固定せず再実施する |
| 肘が設定位置から大きくずれる | 設定した肩関節肢位を保てていない | 負荷を下げ、上腕位置を再確認する |
| 挙上で肩を過度にすくめる | 負荷やROMに対して運動パターンが変化している | 重量・挙上範囲を調整する |
| 挙上で体幹が側屈する | 肩関節運動を体幹で補っている | 重量を下げ、挙上面を調整する |
| 頭上運動で腰を反る | 肩・肩甲帯運動を体幹伸展で補っている | 挙上角度や負荷を下げる |
| 息を止める | 努力量が高すぎる可能性がある | 負荷を下げて自然呼吸を保つ |
ローテーターカフ4筋の役割を「1筋1動作」で固定しない
ローテーターカフは、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4筋から構成されます。
| 筋 | 代表的な作用 | トレーニングを考える際のポイント |
|---|---|---|
| 棘上筋 | 肩関節外転など | 挙上・外旋など複数課題で活動する |
| 棘下筋 | 肩関節外旋 | 外旋肢位によって活動の仕方が変わる |
| 小円筋 | 肩関節外旋 | 棘下筋などと協働する |
| 肩甲下筋 | 肩関節内旋 | 他の内旋筋との共同作用を考える |
この表は、それぞれの筋が一つの動きだけを担当するという意味ではありません。肩関節運動では複数の腱板筋が共同して上腕骨頭周囲に力を加えます。
したがって、「棘上筋ならscaption」「棘下筋なら外旋」と機械的に一対一対応させるのではなく、必要な肩関節機能から運動を選びます。
外旋トレーニングは体側位と挙上位で目的が違う
外旋運動では、肩関節の肢位によって腱板や肩甲帯に求められる機能が変わります。
上腕を体側付近に置いた外旋は、比較的シンプルな条件で外旋筋群へ負荷を加えやすい課題です。一方、上腕を挙上した状態では、肩甲帯で上肢を支持しながら外旋トルクを発揮する必要があります。
| 条件 | 特徴 | 使いやすい目的 |
|---|---|---|
| 上腕体側付近 | 外旋動作を確認しやすい | 基礎的な外旋筋力、低負荷運動 |
| 軽度挙上位 | 肩甲帯支持の要求が変化する | 中間的な負荷調整 |
| 90°付近の挙上位 | 肩甲帯・体幹を含む要求が高まる | 投球・頭上動作などへの応用 |
これらを「初心者・上級者」という固定段階として扱う必要はありません。対象者が実際に必要とする肢位と、症状・筋力・動作の質から選びます。
腱板だけでなく肩甲骨・体幹もみる
ローテーターカフは肩関節周囲で重要な役割を担いますが、実際の上肢運動は肩関節だけで完結しません。
上肢挙上では肩甲骨が動き、頭上動作や投球では体幹・下肢からの力も関与します。
そのため、高いレベルの上肢機能を求める対象者に、局所的なチューブ外旋だけを繰り返しても目的動作へ十分につながらない場合があります。
外旋・内旋など局所課題で必要な能力を確認した後は、肩甲骨運動、リーチ、荷重、体幹・下肢を含むkinetic chainへ負荷を広げます。
肩甲骨制御を重点的に確認したい場合は、前鋸筋トレーニングの種目選択と負荷調整もあわせて確認してください。
ローテーターカフトレーニングの負荷をどう調整するか
ローテーターカフトレーニングの負荷は、チューブの強さやダンベル重量だけで決まりません。肩関節肢位や運動範囲を変えるだけでも、腱板・三角筋・肩甲帯・体幹に求められる負荷は変化します。
- 外旋・内旋の運動範囲を変える
- 肩関節挙上角度を変更する
- 上腕を支持する・しない条件を変える
- チューブやダンベルの抵抗を変更する
- 等尺性から動的運動へ変更する
- 動作速度を変更する
- 求心性・遠心性の負荷を調整する
- 局所運動から全身運動へつなげる
負荷を高めた結果、体幹回旋、肩甲骨の過剰固定、肩すくみ、肘位置の変化、腰椎伸展などが大きくなる場合は、回数を増やす前に課題設定を見直します。
筋力を高めたいのか、持久性を高めたいのか、特定肢位での安定性を高めたいのかによって負荷設定は変わります。そのため、すべての対象者に同じ回数・セット数を当てはめる必要はありません。
肩痛があっても「腱板が弱い」と即断しない
肩痛患者ではローテーターカフの筋力低下がみられる場合がありますが、「腱板が弱いから肩が痛い」と一方向に説明することはできません。
肩痛には、疼痛による筋力発揮低下、腱板関連の病態、関節可動性、肩甲帯機能、活動量、仕事・スポーツ負荷など複数の要因が関与します。
ローテーターカフ関連肩痛では、active exerciseやstrength trainingを含むリハビリテーションが重要な選択肢になりますが、個々の患者に必要な種目や負荷は同一ではありません。
運動中に症状が増える場合は、単に「効いている証拠」と考えず、抵抗量、ROM、肩関節肢位、運動後の症状変化を確認して調整します。
腱板修復術後は一般的な筋トレ記事をそのまま使わない
腱板修復術後のリハビリテーションでは、本記事で紹介した一般的な負荷調整をそのまま適用しないことが重要です。
術後は、修復した腱、断裂サイズ、術式、組織の状態、術後経過、主治医の指示などによって、許可されるROMや筋収縮、抵抗運動の開始時期が異なります。
特に抵抗を伴う外旋・内旋、挙上位での負荷、荷重運動などは、治癒過程を無視して開始すべきではありません。
術後患者では、施設・主治医のプロトコルを確認したうえで進めます。
PTは「チューブ外旋ができるか」から目的動作までみる
ローテーターカフトレーニングのゴールは、強いチューブで外旋できることではありません。
臨床では、次のように整理すると目的と種目を対応させやすくなります。
- 方向:外旋・内旋など必要な方向へ力を発揮できるか確認する
- 挙上:上肢挙上中も肩関節をコントロールできるか確認する
- 肢位:必要な肩関節角度で筋力を発揮できるか確認する
- 負荷:抵抗や速度が変わってもフォームを保てるか確認する
- 動作:リーチ、荷重、仕事、投球・頭上スポーツへつなげる
この流れは、全員が同じ順序で進む固定プロトコルではありません。実際に必要な肢位や運動能力から課題を選び、症状とフォームの反応をみながら調整します。
ローテーターカフトレーニングのよくある質問
ローテーターカフを鍛えるならチューブ外旋だけで十分ですか?
外旋運動は重要な選択肢ですが、ローテーターカフ4筋の機能すべてをチューブ外旋だけで補えるわけではありません。目的に応じて内旋、scaption、挙上位外旋、荷重・動作課題なども選択します。
外旋は肘を脇につける方法と90°挙上位のどちらがよいですか?
目的によって異なります。上腕体側付近では比較的シンプルに外旋動作を確認しやすく、挙上位では肩甲帯や体幹を含めた要求が高まります。投球や頭上動作を必要とする場合には、挙上位での外旋が重要になることがあります。
棘上筋を鍛えるならempty canがよいですか?
empty canだけを棘上筋の専用種目として選ぶ必要はありません。scaptionや外旋運動などでも棘上筋は活動し、複数の筋が共同して働きます。肩関節肢位、症状、目的に応じて選択します。
トレーニング中に肩が痛くても続けてよいですか?
すべての運動で完全な無痛が必須とは限りませんが、痛みが強くなる、動作が大きく崩れる、運動後も症状増悪が続く場合は負荷設定を見直します。抵抗、ROM、肢位を調整し、必要に応じて肩痛の原因評価を行います。
腱板修復術後にもこのトレーニングを行えますか?
術後は修復部位や手術内容、治癒段階によって負荷制限が異なります。本記事の一般的なトレーニング進行をそのまま適用せず、主治医・施設の術後プロトコルに従います。
まとめ
ローテーターカフトレーニングでは、単に「チューブで外旋する」と考えるのではなく、外旋・内旋方向へ力を発揮するのか、挙上中の腱板機能を高めるのか、頭上肢位や実動作へつなげるのかを先に整理すると種目を選びやすくなります。
side-lying ER、チューブ外旋・内旋、scaption、挙上位外旋では身体に求める課題が異なります。体幹回旋、肩甲骨の過剰固定、肩すくみ、肘位置の変化、体幹側屈、腰椎伸展などが増えた場合は、回数を増やす前に抵抗、ROM、肩関節肢位を調整します。
また、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋を完全に切り離して鍛えることを目標にせず、肩甲帯・体幹・下肢を含め、対象者に必要な上肢動作へつなげることが重要です。
前鋸筋・腹直筋・大臀筋など、ほかの筋別トレーニングはこちらから確認できます。
参考文献
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- Whittaker RL, et al. Regional Electromyography of the Infraspinatus and Supraspinatus Muscles During Standing Isometric External Rotation Exercises. Sports Health. 2022.
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